第95号国際標準コード(GTIN、GLN)(2006年3月9日発行)
執筆者 | 市原 栄樹 財団法人 流通システム開発センター 国際流通標準部 上級研究員 |
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目次
本稿で紹介する国際標準コードは、主に消費財とその原材料、サービスを識別する商品コード(GTIN)と、企業を識別する企業コード(GLN)である。これらのコードは、GS1(旧国際EAN協会)が規定した標準である。GS1は、JANコード(EANコード)の標準化に始まり現在に至るまで標準化活動を推進してきた世界規模の標準化団体であり、現在100以上の国と地域が加盟している。当センターは、GS1の日本の代表機関である。
1.GTINとは
GTINとはGlobal Trade Item Numberの略称であり、企業間取引で使用するJAN(EAN)コード、ITFコードを、14桁の体系に取り纏めたコードである。米国のUPCも、GTIN体系に包含される。GTINは、コンピュータファイル上の商品コードを1種類の項目で表すことが可能となる。
なぜ、GTINを整備する必要性が出てきたか。GS1では、商品メーカーコード、企業コードのデータベースであるGEPIR、企業間で商品情報を同期化するGDS、詳細な商品情報をRFIDタグで可能とするEPCの整備を進めている。GEPIRは企業名称や住所、GDSは商品コード単位の商品情報、EPCは詳細な標準の情報(例えば、バッチナンバー単位、ロットナンバー単位)の情報を取り扱う。これまで、グローバルに市場展開するメーカーと小売業は、個々の国の取引条件に影響されない共通な情報システムインフラの整備を、GS1やGCIを通じて要望してきた。この3つのシステムは、グローバル企業の要望に応えたものである。3つのシステムを通じて、企業は企業情報、商品情報、商品の個別情報を効率的に入手することが可能となる。現在、GEPIRは76カ国のGS1加盟MOが各国の商品コードを持つ企業情報を登録し、GDSNでは、北米地域を中心に約30万件の商品情報が交換している。EPCは標準化を進めつつ、多くの課題を抱えながら、米国の小売業とその取引先メーカーが利用を拡大しつつある。
この3つのシステムを連携させつつ効率的に利用するには、システムが相互に参照できるデータ項目が必須となる。GS1では、商品コードのGTIN、企業コードのGLN、商品分類のGPCを共通なデータ項目として制定した。GPCは、GTIN、GLNに比べて整備が遅れ気味である。GTINは、GS1の共通仕様書にまとめた。この仕様書は、GS1関係者が全世界で共通に守るべき標準のルールブックであり、既存のバーシンボルの仕様なども規定する。当センターでは、グローバル標準との調和と、わが国におけるGTINの普及上の課題を検討するために、実務者代表による委員会組織を設けて検討を進めた。その成果は、当センターのホームページに、『GTINアロケーションガイドライン』として公開している。(http://www.dsri.jp)GTIN導入により、既存システムに影響が発生する例えば、商品の入荷検品システムが挙げられる。GTIN導入予定企業の関係者は、一読を是非願いたい。
簡単にガイドラインのポイントを紹介する。ガイドラインは、GTINの設定原則、変更基準と対応スケジュールの2点から構成される。GTINの設定基準、変更基準は、GS1のグローバル標準に準拠した。
GTINの設定原則は、既存のJANコードの設定原則を見直したものである。今回の原則の見直しによって、グローバルと日本の設定原則の相違はなくなる。ガイドラインでは、わが国では利用されていない原則を省き、設定原則と変更基準を図示している。
GTIN導入のスケジュールは、以下の予定で進める。ITF16からITF14への移行作業を、2007年3月から2010年3月までに完了する。ITF16は2010年4月以降、利用できない。「不一致型」商品コードの利用と設定原則の適用を、2007年3月より開始する。2010年4月以降は、今回のアロケーションルールだけが有効となる。
ガイドラインでは、わが国のGTIN導入上の課題を3つ挙げている。
・TIF16桁の廃止
GTIN化に伴いITF16が廃止される。国際標準を遵守するために、ITF16を
ITF14に変更しなければならない。
・「不一致型」コードの採用
集合包装用コードに、従来のアイテムコード「一致型」に加えて、「不
一致型」が加わるので、システム変更をおこなわなければならない。
・アロケーションルールの改定
わが国の流通の実態と商慣行を考慮して、GTINアロケーションルールが
規定された。既存のJANコードの設定ルールは廃止されるので、製配販
の各社は、新たなルールを遵守するよう徹底しなければならない。
最後にGTINを理解する上で重要なポイントを一つ上げる。GTINは商品コードの標準化が対象であり、バーシンボル自体は全く変更しない。例えば、GTINは14桁だが、JANシンボルは13桁、UPCシンボルは12桁である。そのため商品マスター上では、GTINがあらわすバーシンボルの種類を、新たな項目で規定しなければならい。GS1データ項目定義集、GDD(Global Data Dictionary)ではBarcode Attributeとよばれ、バーシンボルの種類をコードリストとして規定している。
2.GTINの物流システムへの影響
GTINの導入によって、「入荷検品システム」や「発注システム」に影響が発生する。
わが国では、ITFとJANコードは、同じ商品アイテムコードを利用してきた。これを「一致型」と呼ぶ。例えば、メーカーコード4912345で商品アイテムコードが、00001である場合、JANコードは4912345000019、ITFコードは14912345000016と表現できる。今回のGTINアロケーションルールでは、新たにJANコードとITFのアイテムコードが異なるコードの付番を認めた。これを「不一致型」と呼ぶ。例えば、JANのアイテムコードが0001で、ITFのアイテムコードが12345となる場合、ITFは、14912345123456となる。2007年3月より、わが国の加工食品メーカーが「不一致型」の付番の開始を決定している。「不一致型」コードの利用が始まると、JANとITFを関連付けるシステム(Item Referenceと呼ぶ)を考慮しなければならない。商品情報の同期化システム、GDSでは、この関係を商品階層(Item Hierarchy)とも呼ぶ。GDSでは、単品、集合包装単位、パレット単位といった物流単位別に商品マスターレコードを作製し、商品階層を介して情報を参照するシステムがある。GTINに関係する企業は、類似したシステムを構築するか、若しくは、既存の商品マスターの変更で対応することが求められる。既に商品階層を考慮したシステムを組み込んであれば、その影響は少ないと予想される。しかし、入荷検品システムでITFのPIを読み飛ばしてコードを取り込むシステムを採用している企業は、「不一致型」コードが採用されると、JANとITFの間でアイテムコードによる照合検品ができなくなる。「不一致型」は商品マスターの運用にも影響を及ぼすため、発注システム、請求支払いシステムなど、事前に影響調査とその修正を導入開始時期までに完了させておきたい。
ITF16の利用が2010年3月を目標に廃止される。ITF14では1商品あたり8種類の入り数違いや仕様違いを表現できなくなる。ITF16の廃止を機に「不一致型」を導入するメーカーの増加が予想される。
3.GLNとは
GLNは、Global Location Numberの略称であり、EDI(企業間電子データ交換)等に利用できる国際標準の事業所コードである。GLNは国際EAN協会が制定し、国内および国際間取引で、相互に企業や事業所等を唯一に識別できるコードとして位置づけている。
国際標準で定められているGLNは下図のとおりである。全体を13桁で表示することになっているが、GLN企業コードと個別ロケーションコードの桁数は、各国のコード管理機関に委ねられている。当センターでは、1999年5月よりGLNを導入している。その後、「共通取引先コード」の付番を停止し、新規に「GLN企業コード」の付番貸与を開始した。現在、わが国におけるGLN運用ルールを検討中である。
4.今後の動向
GTIN、GLNは、GS1のシステムを支える基盤であるものの、GTIN、GLNとも整備と普及の途上にある。当センターから情報公開を行う予定であるので、関係者はホームページを定期的にチェックと、重ねて自社システムの影響調査の実施を御願いしたい。
以上
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