第91号ロジスティック革命のツール電子タグ(EPCglobal)(2006年1月12日発行)
執筆者 | 宮原 大和 財団法人流通システム開発センター電子タグ事業部 部長 |
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目次
- 1.EPCglobalの設立
- 2.EPCglobalネットワークシステムの概要
- 3.Transportation and Logistics Service Business Action Group (TLS-BAG)
- ◆4つのワーキンググループとその目的
1.EPCglobalの設立
EPCglobalは電子タグの国際標準化機関で、2003年秋、国際的な流通標準化機関である国際EAN協会(現GS1)と米国の流通コード機関Uniform Code Council(現GS1 US)により、設立された非営利法人である。RFID(Radio Frequency Identification)技術とインターネット技術を融合したグローバルなEPCglobalネットワークシステムの構築および導入を推進している。 日本の窓口は(財)流通システム開発センター(EPCglobal Japan)である。(図1 EPCglobal Inc.の組織と開発体制を参照)
これまでEPCglobalでは、日用雑貨・加工食品を中心とした消費財流通業界(Fast Moving Consumer Goods)、医療・医薬品等のヘルスケア関連業界(Healthcare and Life Sciences(HLS))を中心に標準開発作業が進められてきた。
その成果として、UHF帯域用の通信プロトコルの標準規格(クラス1ジェネレーション2、以下 Class1Gen2と表記)がISOに提案中であり、06年春にはISOで国際標準として承認される見込みである。これを受け、米国では、大手小売のウォルマート社、国防総省が05年1月から導入を始めている。大手小売のベストバイ社が06年1月からの導入を決めている。欧州でも、ドイツ・メトロ社のフューチャーストアや英国・テスコ社を初めとして既に導入を開始している。また、日本国内においては、ヨドバシカメラが06年6月からEPC Class1 Gen2の電子タグの導入を発表した。
2.EPCglobalネットワークシステムの概要
EPCglobalネットワークシステムは、RFID技術とネットワークの技術を組み合わせたグローバルなシステムで、国際的な産学連携により共同開発された。
このシステムでは、サプライチェーン上にある電子タグを付けた商品やパレットなどを、無線スキャナーにより識別する。電子タグに書き込まれた商品のEPCコードをキーにして、インターネット経由で関連データベースにアクセスし、その商品の属性情報を即時に取得することができる。
システムは、非常に柔軟で発展性があり、流通の効率化に多大の貢献が期待されるほか、経済社会システムにも大きなインパクトを与えることが予想されている。
EPCglobalでは、図2に示す通り4種類のEPC TAG(Class1、Class2 、Class3、Class4)の開発を計画している。
Class1のタグは、キーとなるタグデータ(ソースタグデータ)を1度タグに書き込んだ後、読み込み専用で利用するタイプである。タグ容量が64ビットのものと96ビットのものが開発されている。
Class2は、ソースタグデータに、さらに必要な情報をタグ内に追記あるいは、書き込みや書き換えを可能とするタイプである。
Class1およびClass 2は、タグ自体に電源を保有せず、アンテナやリーダからの電波や電磁波により電流を起こし、情報を伝達(作動)するパッシブタグである。
Class3は、タグ自体に電源を保有し、アンテナやリーダーからの起動により作動する、セミパッシブタグである。
Class4は、タグ自体に電源を保有し、センサーやタイマーと連動しタグ情報を伝達するアクティブタグで、433MHzでの利用が想定されている。
3.Transportation and Logistics Service Business Action Group (TLS-BAG)
物流分野においても、既に企業単位での電子タグの導入が行われつつあるが、今後の拡大・普及を見すえて物流のための国際標準化策定に対する関心が高まっていた。また、既に標準化を進めている消費財流通やヘルスケア関連の業界からも物流分野での電子タグ導入に対する要望が強まっていた。そうした動きを背景に、05年4月より国際大手物流業を中心に、ビジネス・アクション・グループ立ち上げの準備が進められてきた。
06年1月TLS-BAGの発足として第1回TLS-BAG ミーティングが、神戸で開催される。
EPCglobalの標準化作業は、ユーザー主導の開発形態をとっている。今回発足するTLS-BAGについても、国際宅配便業者をはじめとする物流業者、海運業者、倉庫業者など物流に携わり、電子タグを導入するユーザー企業が参加し、業界特有の課題を踏まえて業界要件をとりまとめていく。
ビジネス・アクション・グループの共同議長は、EXEL社およびDHL社が務め、日本郵船、Maersk Line, APL, Schneider Logisticsなど世界有数の国際物流企業が積極的に関与している。
TLS-BAGの中には、課題別に標準化要求仕様を策定するため、既に以下の4つのワーキンググループ(WG)が立ち上げられ、この内2つのグループにおいて日本がリーダーを務めて積極的にグループをリードしている。
◆4つのワーキンググループとその目的
1.Transportation
拠点間輸送におけるRFID適用のメリット分析と標準の開発
2.Four walls
拠点内物流における要件定義、仕様決定
3.Import Export Clearance
RFID利用の輸出入通関プロセスの開発
4.Integration
国際サプライチェーン全体をカバーする共通標準の開発
以上
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