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第368号 原材料メーカー、加工食品メーカー対象「原材料識別のためのバーコードガイドライン」の紹介~効率的な管理・トレーサビリティの確保にむけて~ (2017年7月18日発行)

執筆者  岩崎 仁彦
(一般財団法人 流通システム開発センター
ソリューション第1部 グロサリー業界グループ 上級研究員)

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 2009年より一般財団法人 流通システム開発センター勤務
    • 主に、世界110以上の国・地域が加盟し、サプライチェーンの効率化をめざしているGS1標準の動向調査や普及活動に従事
    • 国内においては主に小売り・グロサーリー・原材料業界におけるGS1標準を活用した効率化・安全性向上等を担当

 

目次

1.はじめに

  近年加工食品メーカーや原材料メーカー等、食品を取り扱う企業にとって食品の安全・安心やトレーサビリティの確保はますます重要になっている。この安全・安心の向上やトレーサビリティの確保を効率的に実施する手段の一つにバーコードの活用がある。バーコードを活用すれば、情報を素早く正確に読み取り、コンピュータ処理を可能にする。したがって、人手による管理では100%防止することが困難な、うっかりミスや勘違いを防止する事が可能になる。
  しかしながら原材料メーカーと加工食品メーカー間で取引される食品原料および資材(以下原材料)は、バーコードが表示されていない商品が多く存在する。また、バーコードが表示されていても、異なる項目やフォーマットで情報をバーコードに表示しており、(表示することを原材料メーカーに要求しており)標準が普及していない。
  この結果、原材料メーカーでは、同一の原材料でも取引先ごとに異なる項目・フォーマットのバーコードを表示することが必要になり、「対応する原材料メーカーの負荷が大きくなる」あるいは「負荷が大き過ぎて対応できない」という事態が発生する等、課題が出てきている。
  そこで、一般財団法人流通システム開発センターは原材料メーカー、加工食品メーカー、システムベンダー、有識者等からなる作成委員会を立ち上げ、「原材料識別のためのバーコードガイドライン」(以下ガイドライン)を発行した。このガイドラインは加工食品メーカーが自社の製品を製造するうえで使用するに表現する標準データ項目とその項目を表示する推奨バーコードを定めている。今後、より多くの原材料にバーコードを表示し、安全・安心の向上やトレーサビリティの確保を効率的に実施するには原材料メーカー、加工食品メーカーの双方が持続的に運用することが可能な標準の普及が必要である。

図1 委員会メンバー
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2.安全管理・トレーサビリティ向上の必要性とバーコードの活用

  消費者の安全・安心に対する関心は高い。例えば、近年でも米の産地偽造や不適正なメニューの表示、さらには意図的な毒物混入や廃棄物の横流し等の問題が発生し、大きな社会問題となった。万が一消費者に健康被害が生じるような重大な事件・事故が発生すると顧客の信頼を失い、その結果取引停止となったり、事業の継続が困難になるなどその損失は計り知れない。またIT技術の進展やSNSの普及により消費者が発信する意見・声の拡散するスピードは速く、その影響力は大きくなっている。もし原材料に起因する問題が発生した場合は、その原材料がどこから来たか、その原材料はどの製品に使用され、その製品はどこへ行ったかを特定することが求められる。
  したがって原材料メーカーや加工食品メーカーはよりきめ細かい原材料管理やロット単位の追跡・遡及を可能とするようなトレーサビリティがますます求められている。この対策の1つとしてバーコードの活用がある。
  バーコードは、情報を機械で素早く正確に読み取り、コンピュータ処理するためのしくみである。もしバーコードが原材料に表示されていると、これまで手作業で実施していた入出荷管理やトレーサビリティの記録、管理にこのバーコードを活用し、原材料の正しい情報を素早く確認して正確にシステムに取り込み、より素早く、正確に処理記録することが可能となる。
  原材料にバーコードを表示し活用することによる具体的な期待効果は、主に以下の3点があげられる。

1)精度の高い入出荷業務を効率的に実現できる

  バーコードを入出荷業務に活用することにより、目視で確認していた作業を、バーコードを活用した作業へ移行することが可能になる。これにより、目視確認や勘違いによる入出荷ミスを防止するだけでなく、商品チェック作業の手間を減らし、作業者の負担を軽減すると同時に、時間や人的コスト軽減することが可能となる。

図2 精度の高い入出荷業務
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2)入出荷データのすばやく正確な記録・保存が可能になる

  トレーサビリティ確保の観点から、万一商品に問題が発生した場合、問題の発生した箇所を迅速に特定できるように原材料をロット単位で「いつ(入出荷日)、どこから(入出荷先)、何を(品名)、どれだけ(数量)」入荷・出荷したか記録・保存しておく必要がある。この記録・保存作業は、手作業ですることも可能だが、バーコードを活用することにより、素早く正確に記録・保存することが可能になる。

図3 データ入力省力化・正確化
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3)出荷記録に関する迅速な問合せ対応が可能になる

  消費者または取引先からの問い合わせに対応する場合や、万一、商品に問題が起きたとき、原材料の入出荷記録を参照する必要がある。このような記録は紙で保存しておくことも可能だが、システムで保存、管理すれば、データの照合に要する時間が格段に短くなり、迅速な対応を可能にする。

図4 迅速な問合せ対応
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3.バーコード表示普及に不可欠な標準項目

  原材料メーカーによるバーコード表示普及のためには、標準項目を定め原材料メーカー、加工食品メーカーの双方が順守することが非常に重要である。もし、原材料のバーコードに表現する項目が標準化されていない場合、原材料メーカー・加工食品メーカーの双方に以下のような課題(デメリット)が生じる。
<原材料メーカー>
  同一の原材料でも取引先(各加工食品メーカー)ごとに異なるバーコード(項目)を表示することが必要となる。原材料メーカーにとってこのような条件で原材料にバーコードを表示することは非常に手間がかかり、原材料へのバーコード表示率向上は望めない。また在庫管理も困難になる。
<加工食品メーカー>
  原材料メーカーによる原材料へのバーコード表示(ソースマーキング)が進まなければ、加工食品メーカーでは入荷時に原材料に文字情報で記載されている商品名、日付情報、ロット番号等を目視で確認し、データを手入力をする必要がある。このため作業が煩雑になり、データ入力のミスや取り違えが発生する可能性もあり、非効率で高コストとなる。

図5 課題(デメリット)
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  このように、原材料に表示する基本項目を定め、原材料メーカー・加工食品メーカーの双方が順守することは、原材料へのバーコード表示率を向上し企業間で活用する上で重要なポイントであり、双方に以下のメリットがある。
<原材料メーカー>
  取引先(各加工食品メーカー)ごとに異なるバーコード(項目)を表示する必要はなく、標準のフォーマットで出荷することが可能となる。したがってより多くの原材料メーカーでバーコード表示(ソースマーキング率)が可能になることが期待される。
<加工食品メーカー>
  原材料メーカーによるバーコード表示率(ソースマーキング率)向上が期待される。バーコードが表示されている原材料が増加すれば、これらのバーコードを活用し、正確で効率的な入出荷管理、記録等が可能になり、トレーサビリティ構築にも役立つ。

図6 メリット
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4.バーコードに表現する基本データ項目とその考え方

  加工食品メーカー、原材料メーカー間で取引される原材料のバーコードに表現される項目は欧米のガイドラインの例も参考にしつつ、委員会で検討した結果、以下の基本原則をもとに定められた。
1) ロット単位で原材料を識別するために必要な最低限の項目を基本とし、商品規格書や商品情報のデータベースから参照できる情報(例:原材料名、商品規格書番号、製造工場名等)はバーコード化しない
2) 企業間取引に必要な項目に絞り込み、各企業の自社内の工程管理に必要な独自項目は表現しない
3) 国際的で多様な原材料の調達・供給網に配慮し、GS1の標準を採用する
具体的なデータ項目は以下に示す。

表7 バーコードに表現するデータ項目
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※ 重量・量目・寸法の項目は同じ商品でも荷姿毎の重さやサイズがバラバラで都度異なる不定貫商品にのみ使用。

5.推奨バーコードシンボル

  本ガイドラインでは標準項目を表現するバーコードとして二次元バーコードのGS1 QRコードと一次元バーコードはGS1-128シンボルを推奨している。

図8 推奨バーコードシンボル
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ただし、以下の点に留意する必要がある。
<原材料メーカーの留意点>
  GS1 QRコードはイメージスキャナが必要となるが一次元バーコードよりも小さいスペースに表示することができ、誤り訂正機能がある等メリットも多い。しかしながら、2016年現在、GS1標準において二次元バーコードシンボル(GS1 QRコード、GS1データマトリックス)の利用可能な分野は限定されており、GS1 QRコードも原材料メーカーと加工食品メーカーの間で利用できる標準とはなっていない。したがってGS1 QRコードを利用する際は以下の点を留意する必要がある。

  • GS1 QRコードは原則、納入先が日本企業である原材料が対象
  • 納入先企業でGS1 QRコードに対応可能であることを事前に確認する
  • 海外へ輸出する原材料は、 一次元バーコードシンボルである、GS1-128シンボルもしくはGS1データバー拡張型・拡張多層型を求められる可能性がある

<加工食品メーカーの留意点>
  海外の原材料メーカーはGS1 QRコードもしくはGS1-128シンボルではなく、GS1データマトリックスもしくはGS1データバー拡張型・拡張多層型を使用する可能性がある。したがって、これらの4種類のバーコードをすべて読取ることが可能なリーダを選択し、また、必要に応じて読み取る設定をする必要がある。1種類もしくは1部のバーコードのみをスキャンする前提にシステムを構築することは推奨しない。

6.おわりに

  「原材料識別のためのバーコードガイドライン」は今回紹介したガイドライン活用のメリットや基本項目及び推奨バーコードシンボルだけでなく、バーコードを表示するうえで基本となる情報から、原材料にバーコードを表示する手順、バーコードを表示する際の留意点、技術的な情報等も記載している。詳細はこのガイドラインを参照していただくか、流通システム開発センターまでお問い合わせいただきたい。
  当センターではガイドラインの作成委員・オブザーバーを中心とした組織と引き続き協力し、2017年度はガイドラインの普及とメンテナンスを実施する。また、原材料メーカーと加工食品メーカー間におけるサプライチェーンの更なる効率化をめざして、標準EDIや商品データベースの活用も検討・推進していく予定である。

以上



(C)2017 Yoshihiko Iwasaki & Sakata Warehouse, Inc.

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