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第74号ロジスティクスの将来と雇用(2005年3月18日発行)

執筆者 木村 徹
西濃シェンカー株式会社 ロジスティクス部 課長
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1985年4月 渋沢倉庫株式会社入社
      配属部署(通関部門・貿易代行部門・海外引越部門・大井埠頭の
      保税倉庫)
    • 1997年2月 同社退職
    • 1997年3月 リーボックジャパン株式会社入社 ロジスティクス部 課長代理
    • 1999年10月 同社退職
    • 1999年11月 マースク株式会社入社
      マースクロジスティクス株式会社 SCM課 課長
    • 2002年8月 同社退職
    • 2002年8月 西濃シェンカー株式会社入社 ロジスティクス部 課長
      現在に至る
    所有ライセンス
    • 通関士
    • ジェトロ認定貿易アドバイザー
    • 危険物取扱者
    • 海技士(Navigator)
    誌紙出稿
    • 流通設計21(旧 ロジスティクスジャーナル) (2001年1月より現在連載中)
    • ジェトロセンサー (2000年11月&2002年2月)
    講演実績
    • サカタウエアハウス ワークショップ
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:貿易取引と為替決済)
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:ロジスティクスの実際)
    • (財)静岡県国際経済振興会 (内容:物流企業の生残り)
    所属学会
    • 日本貿易学会
    • 日本物流学会

  平成15年(2003年)4月に内閣府及び関係各省による「530万人雇用創出促進チーム」(座長-島田晴雄内閣府特命顧問)が発足し、同年6月10日には厚生労働省より「530万人雇用創出プログラム」が発表された。これは「日本経済の再活性化のために、規制改革等民間活力の活用による雇用創出型の構造改革の実現により、サービス部門を中心に今後5年間で530万人規模の雇用創出が期待できるとの試算を示した」というものである。
  その後、平成16年(2004年)6月21日の経済財政諮問会議で、竹中平蔵経済財政・金融担当相は、政府の「530万人雇用創出プログラム」の実行によって基準年である2000年以降5年間で約250万人の雇用の創出が見込まれると発表した。

  このプログラムの中に「ロジスティクスサービス」という項目があり、サードパーティー・ロジスティクス(3PL)が物流市場における大きな成長分野であると書かれている。
  (3PLとは、従来“物流”と言われてきたサービスをより専門化し、また高度化し、物流に付加価値を付けたサービスであり荷主から物流を一貫して請負う業務である。)
  更にこのプログラムの中では、基準年である2000年時点から2005年度までにロジスティクスサービスにおいて、概ね21万人の雇用が創出されると見込まれ、この数字は2007年度までに約36万人になるとレポートされている。
  因みに、このプログラムの中にはロジスティクスサービスと共に次の項目が盛り込まれている。

  そもそもこのプログラムの中のロジスティクスサービスという項目は、国土交通省(旧運輸省)が平成12年(2000年)3月に発表した「我が国におけるサードパーティー・ロジスティクスの現状と将来動向に関する調査」を基に作成されているのだが、この中では“米国の物流市場は約1兆ドルの市場規模(1999年)であり、そのうち、3PL市場は、約500億ドルの市場規模(物流市場全体の5%)がある”とされている。それに対して“日本の物流市場は約45兆円の市場規模があるので、3PLの市場は米国と同じ5%をあてはめ、約2.3兆円ある”というのである。その上“米国の3PL市場は毎年15-18%の伸びが推測されているので、日本においても米国同様に成長すると想定している”。そして、その結果として2005年度には約6.2兆円の市場規模になり、それにつれて雇用も約38万人に拡大されると書かれているのである(雇用創出プログラムとの間で2万人の誤差があるが、その誤差については触れられていない)。

更に、国土交通省は平成15年(2003年)9月の「新総合物流施策大綱」においても3PLビジネスの促進に向けた支援方策の検討を唱えている。
  また、平成16年(2004年)3月に発表した「日本における3PLビジネスの育成に関する調査」についても調査の趣旨・目的の中で“3PLの重要性が増してきている”とレポートしている。
  この調査内容は非常に良くまとまっているので、物流事業から脱却し3PLビジネスの推進を模索している企業の方々に一読することをお勧めする。
  なお、参考までに目次の一部を下記に抜粋する。
  1.3PLの定義とアプローチの方向
  2.3PLビジネスの条件と特徴
  3.3PLビジネスに必要なリソースと特徴
  4.人材の確保・育成方法と研修の必要性、3PLに必要な人材と調達・育成方法
  5.荷主企業との関係
  6.3PLビジネスへの参入パターン
  7.3PL事業の拡大にあたって必要な条件整備
  平成16年(2004年)10月より国土交通省主催で「3PL人材育成研修」が行われているが、その中で、3PLに必要な人材は下記の様な能力が必要であると言っている。
1.チームリーダー/提案営業責任者
プロジェクトの企画・立案・プロジェクト全体の統括ならびに関連する部門・
機能の調整機能をはたすとともに、顧客企業に対する提案営業を行う人材。
2.オぺレーションの管理運営責任者
(1)のチームリーダーのコンセプトを理解して、現場において運営・実現す
る人材。
3.現場の作業戦力
物流センター・倉庫内での作業を行う作業員や、輸配送を担当するドライバー
などの現場での作業戦力。
  これらの他にも3PLに関するレポートが官僚主体で作成されているのだが、内容はどれも同じようなもので、倉庫業法、鉄道事業法、貨物運送取扱事業法、貨物自動車運送事業法等の改正により、参入に関する規制緩和が実施されて柔軟な事業展開が可能となったことや、ロジスティクスのアウトソーシングが3PLを後押ししていること等が書かれているが、官僚はこれらが本当に38万人の雇用を創出するだろうと思っているのであろうか。
  3PLを推進していくには特別な経験やスキルが必要であるということを考えると、社内での教育・研修による人材育成に加えて、や専門知識を有する外部戦力の取り込みも必要だと思われる。つまり、ロジスティクスという現在ある器の中での人材というパイの取り合いになり、新規雇用の増進につなげるのは難しいのではないだろうか。
  また、規制が緩和されれば参入者の増加によって益々競争が激しくなり、そのような状況は会社としての生存競争に繋がりサービス価格の減少を引き起し、新規雇用の創出に繋がるとは考えにくい。そしてアウトソーシングが進めば企業内で物流を担当していた者が企業内失業やリストラの対象となることが容易に想像できる。
  厚生労働省発表の完全失業者数を見ると、2000年は320万人、2001年は340万人、2002年は359万人、そして2003年は350万人である。2004年8月時点では314万人で、最悪期の2002年と比較すると45万人程減少しており0.6ポイントの改善になっている。然しながら、これが3PLで雇用が生まれたせいだと考えるのは妥当でないであろう。
  また、厚生労働省が2004年12月28日に発表した同11月の有効求人倍率も、前月より0.04ポイント上昇して0.92倍となり、11年10カ月ぶりに0.9倍台を回復した。
  厚生労働省は足元の雇用情勢について「厳しさは残るものの引き続き改善している」と判断している。なお、リストラなど「勤め先都合」による離職者は、前年同月比18万人減の76万人で16カ月連続の減少。定年なども含む非自発的離職者は同23万人減の105万人、転職などの自発的離職者は同10万人減の102万人である。
  「530万人雇用創出プログラム」では、あと1年間で基準年である2000年度と比較し21万人の雇用創出が可能であるとされているが、これは机上の空論に過ぎないというのが実務界の大方の見方ではないだろうか。
*ここに挙げたレポート、調査書やその他の数字は、各省庁のホームページからダウンロードすることが可能である。

以上



(C)2005 Toru Kimura & Sakata Warehouse, Inc.

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