第576号 海運へのモーダルシフトのお薦め(前編)(2026年3月17日発行)
| 執筆者 | 長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問 |
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目次
- 1.海運モーダルシフトとは
- 2.フェリーに乗ってみよう。
- 3.海運モーダルシフトの進め方
1.海運モーダルシフトとは
海運へのモーダルシフト(以下、「海運モーダルシフト」という)は、鉄道へのモーダルシフトに比べて、輸送ルート(航路・港湾)が限定される。
主な航路・港湾は「海上定期便ガイド」(内航ジャーナル社)や国土交通省、各船社のホームページなどに掲出されているので、海運モーダルシフトを進める際に活用されたい。
海運モーダルシフトは、一般的には、定期航路を利用することになる。そこで、対象となる船型(船のタイプ)は、旅客船であるフェリーと内航貨物船であるRORO船・コンテナ船となる。後者2タイプの内航貨物船は、「モーダルシフト船」と呼ばれていたこともある。
わざわざ、旅客船・内航貨物船と記したのは、同じような船型・航路であっても、適用される法律が異なるからである。フェリーは、外航船などと同じく「海上運送法」が適用となるが、内航貨物船は海上運送法の特別法とも言える「内航海運業法」が適用となる。内航海運業法では、船員労働における外国人船員の配乗禁止や、需給調整としての実質的な「船腹調整制度」があるが、ここでは誌面の都合で省略する。
なお、3-(2)で紹介する、国土交通省の「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」では、フェリーも内航船として取り扱われている。
海運モーダルシフトで活用されるフェリーは、長距離フェリーに多い。フェリー船社の業界団体である日本フェリー協会では、航路が300km以上のフェリーを「長距離フェリー」としており、後述のように関東〜北海道、関西〜九州のように15航路に37隻が就航している(2023年 JTB総合研究所調べ)。
最近は、モーダルシフト需要の高まりや、環境対策(燃料のC重油からLNGへの転換)もあり、船舶の更新・大型化が進んでいる。
瀬戸内海の離島航路では自動運転フェリーが就航するなど、陸上輸送以上に自動化・省力化が進んでいる。
RORO船の「RORO」とはロールオン・ロールオフの省略であり、「ロール」は車輪(車輪付きであるロールボックス・パレットの「ロール」も同じ)、「オン・オフ」はスイッチの入切ではなく「乗り降り」である。つまり、トラックやトレーラ(シャーシ)が自分の車輪でランプウェイ(可動式のスロープ=斜路)を利用して乗船・下船できるタイプがRORO船である。
船内(貨物や車両を積むスペースを船倉と言う)は、幾層にも分かれていて車両甲板と言う。
したがって、フェリーも船型としてはRORO船である。
RORO船に対して、クレーンやフォークリフトなどでコンテナを積卸しするタイプを、LOLO船(リフトオン・リフトオン船)と言うが、「コンテナ船」と呼ぶのが一般的である。
これ以外には、RORO船とコンテナ船を一隻に合造した通称「ロロコン船」や、フェリーの特例で実質的にはRORO船の「貨物フェリー」も、過去にはあったが最近は見られない。
伊豆諸島航路や南西諸島航路では、在来船型(船倉を備えている)の貨客船に、船に備えたデリッククレーンでコンテナ(ISOのDタイプである10フイートまたは、JR貨物の鉄道コンテナと同サイズの12フィート)を船倉内あるいは甲板上に積載している例もある。
RORO船には、上記定期便ガイドに掲載されている「定期航路」以外に、自動車メーカー・製紙メーカーなど大手荷主の専用船化している船舶・航路がある。
この場合、往航(海運では往路を「往航」、復路を「復航」と言う)では完成車や紙製品を輸送するが、空荷となる復航に一般荷主の貨物を輸送する例も見られる。
完成車を輸送する船は、「車両甲板が複数階ある」という基本的な構造はRORO船と同じであるが、PCC(ピュアー・カー・キャリア=自動車専用船)と言われる。船内に幾層にも車両甲板が張られ、ショッピングセンターなどの多階建て駐車場のように、船内のランプウェイを利用して、隙間なく自動車を積み込む。内航用のPCCは最大級で約2000台の乗用車を積載できる。これも空荷となる復航には一般荷主の貨物を積む例がある。復航で車高があるラック・トレーラを積むために、車両甲板の一部が取り外せるようになっている。
一方のRORO船では1万総トン・長さ200m弱・幅26m、DWT(載貨重量)約7千トン、13mシャーシ150台が、最大級である。
なお、「シャーシ」は「トレーラ(被けん引車)」の一種であり、コンテナを積載するために荷台等の架装がない骨組みだけの車体を指すが、フェリー・RORO船・PCCに搭載して海陸一貫輸送に利用されるトレーラ(平ボディ・バンボディなど)は、「航送用シャーシ」略してシャーシと呼ぶことが多い。道路運送車両法ではトレーラもシャーシも「大型貨物車(被けん引)」で区分されていない。
2.フェリーに乗ってみよう。
フェリーやRORO船を利用して海上モーダルシフトを進めようと思ったら、「先ず隗より始めよ」のように乗船することをお薦めしたい。
RORO船にもドライバーや輸送中の貨物監視者用に船室(定員は少ない)があるが、旅客は乗船できない。
そこで、一般船客としてフェリーに乗船することになる。出張の際に、片道だけでもフェリーに乗ってみても良い。
船内で車両甲板に載せられたトラック、トレーラの状況を見て、ドライバーのように船上で一夜を過ごす。
筆者も、長距離フェリーでは関東→北海道、四国→関西で乗船した。
一つ注意しなければならないのは、船室のクラス(等級)である。前述のようにフェリーは旅客船であり、旅客船は「タイタニック号」やクルーズ船のように典型的な階級社会である。国内長距離フェリーも、上は豪華な個室スイートルームから、下は、かつての国鉄青函連絡船のような大部屋の雑魚寝まで何段階もあり、乗船料(旅客運賃)にも大きな差がある。最近の傾向として大部屋・雑魚寝が減って、一般船室もカプセルホテルやビジネスホテル並みの個室が増えているのも、時代の流れである。
フェリーの車両航送料金には、ドライバー1名分が含まれている。仮に家族4人がマイカーで乗船する場合は、車両航送料金+3名分の旅客運賃となる。ドライバーの船室は、上述のように一般船室となる。
そこで、トラックドライバーと同じ、一般船室を利用することになる。
フェリーには浴場設備があるので、トラックドライバーも利用するが、上級船室のように浴衣・タオルは無い(ことが多い)。長距離トラックでは、各地のトラック・ステーション以外に大型車の駐車場付きの入浴施設は無いので、入浴をフェリーでの楽しみにしているドライバーは多い。
食事はバイキングなど用意されているフェリーが多いが料金が高いので、トラックドライバーはコンビニなどで買って持ち込むか、船内の自販機を利用する。冷凍食品などメニューも多く、電子レンジが完備している(図表1 参照)。
家族旅行・団体旅行用にロビー・映画・ゲームコーナーなどの共用スペース・娯楽設備もあるが、休息期間を確保するため、サッサと寝てしまうドライバーが多い。
なお、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称「改善基準告示」。2024年4月改正適用)の特例では、「フェリー乗船時間」は「休息期間」としてカウントされることになる。したがって9時間乗船していれば「連続9時間の休息期間」が確保できたので、下船から新たな「拘束時間」として取り扱うことができる。これは、乗船時間(乗船から下船まで)であって、フェリーの航海時間(出港から到着)ではないので、「乗船時間>航海時間」となる。苫小牧~八戸航路などが、改善基準告示の休息期間を遵守するために利用されている。

出所 MOLグループ資料
乗用車とは異なり、トラックは運行ダイヤの都合から「後入れ先出し」で乗下船する。筆者が乗った四国→関西フェリーでは、早朝に大阪南港フェリーターミナルに着くと、トラックは先を争って下船・出発して行くが、旅客(マイカー)は午前7時頃まで船内で滞留していてもよかった。
途中で寄港する航路では、フェリー会社では車両の積込み場所の調整が必要となる。
乗船予約・申込みは、定期的に利用する場合は、長期間の輸送契約(乗船契約)が結ばれる。つど利用のスポット契約の場合は、PC・スマホからフェリー会社のHPにアクセスして予約する。乗船申込みはWebが増えている。
乗船料金の支払いは、JR旅客各社の乗車券と同様に、「乗船(車)時に現金払い」が原則であるが、各種の決済方法についてフェリー会社は相談に応じている。クレジットカードなども使え、海の上にもキャッシュレス時代が到来している。
余談であるが、運輸機関は乗ったとき、貨物を積み込んだときに、運賃・料金を前払いするのが、商法の原則である。トラック運賃のように、「月末締め/翌月末払い」や「手形払い」の方が「特殊」である。なお、2026年1月1日から取適法により中小受託事業者(旧・下請業者)には、手形払いが禁止されている。
フェリー会社が定めた出発時刻(フェリー埠頭から離岸する時刻)に先立って、乗船締切時刻が設定されているので、それまでにトラック・トレーラをフェリー埠頭の所定場所(駐車場)に持ち込む。
トラックの場合は、フェリー会社の誘導に従い、車両甲板の所定位置まで乗船移動し、ドライバーは輪留めをしてからトラックから離れて、車両甲板から船室部に移動する(航海中の車両甲板は危険なので立入禁止)。
トレーラの場合は、フェリー埠頭で切り放した後は、フェリー会社(実際には港湾運送事業者)のトラクタで車両甲板の所定位置にけん引される(後述の「3-(3)運賃」のように、フェリーへの荷役料を別途支払う)。
冷凍車の場合は、フェリーに備えた冷凍機用電源のある位置にセットし、電源コードで接続する(乗船中は自動車のエンジンは切る)。大型フェリーの場合、50~100本の電源が用意されている。
フェリーを含めて船舶は航行中に、前後・左右・上下の直線運動と各軸を中心とした回転運動をする(自動車も同じ 図表2)。

出所 池田良穂「図解・船の科学」講談社、2007年
前後(X軸)を軸とした回転運動がローリング、左右(Y軸)を軸とした回転運動がピッチング、上下(Z軸)を軸とした回転運動がヨーイングである。人間は、この3方向の回転(揺れ)を不快に感じて「船酔い」を起こす。
車両もこれらの回転運動に伴う移動(転動という)を防ぐために、輪留めに加えて、専用の器材で車両甲板に固定(ラッシング)される。したがって、ラッシングできない(ラッシング器材を掛けるリングがない)トラックやトレーラは乗船できないが、一般的にはアオリ下部の金具に付けたリングを使って固定される(図表3)。

出所 MOLグループ資料
このような「揺れ」や「移動防止」を読むと、荒天などで欠航しないかと心配になるかも知れない。しかし、フェリー会社から公表されている欠航率は約2%である。フェリーは「旅客船」なので、「乗客の安全確保」という観点から、RORO船よりは欠航率が高いようである。
港に着くと、逆の手順でラッシング等が外され、ドライバーが乗り込んで、ランプウェイで埠頭に繋がるのを待って出発していく。トレーラは、フェリー会社(実際には、フェリー会社が契約した港湾運送事業者)がフェリーターミナルに引き出した後、引き取りの運送会社ドライバーが異常の有無を確認してトラクタと接続後に出発する(それぞれ、ドライバーにより走行前の点検等が行われる)
トラックの無人航送の場合は、トラックを車両甲板に載せるところまでは同じであるが、そこでドライバーは、トラックのキーをフェリー会社に預けて下船する。あるいは、フェリー会社の無人車駐車場で下車して、キーはフェリー会社の係員に渡す。
一方、到着港では待ち構えていたドライバーが乗船、フェリー会社からトラックのキーを受け取り下船、フェリーターミナルでトラックを点検してから出発する(トラックにキーを付けたままという例もある)。
あるフェリー会社の「無人航送」注意書きを抜粋する。
①行先ステッカー・キー札をお渡し致しますので、「行先ステッカー」はフロントガラ
スの内側から外に見える様に貼り付け、「キー札」は鍵に取り付けてください。
②車両預り書をお渡ししますので引取時にご持参ください。
③車両を無人車駐車場へ移動し、ステッカー貼り付け後、鍵は係員にお渡しください。
以上が、フェリーによるトラックやトレーラの航送の流れである。RORO船の場合も、基本的にはフェリーと同じである。
フェリーに乗船して貨物車用の車両甲板を眺めると、大型トラックやトレーラが所狭しと、隙間なくビッシリ並んでいるのが壮観である。
フェリー会社のポケットに手を突っ込むようで気が引けるが、航路が長くなるほど、収入をトラックに依存する割合が高いようである。航路にもよるが、トラック・トレーラが全体の70%、乗用車(運転者は無料)とその同乗者が20%、自動車を載せない一般乗客(修学旅行などの団体を含む)が10%という構成のようである。筆者も、連絡バスでフェリーターミナルに行き、一般乗客として乗船した。一般にフェリーターミナルは不便な所にあり、連絡バスは、フェリーの発着時間に合わせて運行しているので、乗り遅れないように注意されたい。
車両甲板には、中小型トラックや軽トラックも散見され、フェリーが元々は「渡し船」で、「海の上の国道」「海上バイパス」が実感できる(英語のferry boatは、「渡し船」「渡船」を意味している)。
RORO船は、大型トラック・トレーラの専用であり、一般旅客として乗船して見ることはできないが、100台以上載せているので、もっと壮観だろうと思う。北海道〜関東の航路では、生乳を積んだ20フィートのタンクコンテナを載せたトレーラの利用が多く、重要なフードマイルであることが伺える。筆者の自宅に近い横浜市旭区には、牛乳メーカーがあり、毎日、北海道からRORO船で運ばれたトレーラが生乳を届けている。
海運モーダルシフトを考えたら、フェリーへの乗船をお薦めするのは、こういう実態が分かるからである。
3.海運モーダルシフトの進め方
それでは、具体的な海運モーダルシフトの進め方について述べることにする。
(1)航路
トラックで輸送しているルートを代替可能な航路が無ければ、海運モーダルシフトは覚束ないので、運賃などよりも航路が重要になる。この点が、全国各貨物駅をネットワークしている鉄道コンテナ輸送と大きく異なる点である。
海運モーダルシフト事例を見ても、発着荷主から発着港湾まで100km以上離れているという例も多い。逆に言えば、港が少々遠くても、後述するさまざまなメリットから海運モーダルシフトを選択しているとも考えられる。
1項の冒頭でも述べたように、フェリーやRORO船の利用についてのガイドブックが「海上定期便ガイド」で、毎年内航ジャーナル社から刊行されている(図表4)。フェリー・RORO船の航路・運航ダイヤの変更は多いので、最新版を備えておかれたい。また、船舶には、自動車の定期整備に相当するドック入りがある。通常は閑散期に行われるが、ドック入りは長期に行われ、その間は欠航または代船(航路・運航ダイヤが変わることも)となるので注意されたい。
なお、鉄道モーダルシフトについては、(一社)鉄道貨物協会が毎年JR各社のダイヤ改正に合わせて発行している「貨物時刻表」を参考にされたい。

出所 内航ジャーナル社ホームページ
同社ホームページの「海上定期便ガイド」では、「モーダルシフトを進めよう」と題して、
①モーダルシフトとは
②モーダルシフトの必要性
③海運モーダルシフトの例
④海運モーダルシフトの輸送量
⑤モーダルシフトのメリット
⑥モーダルシフトの歴史
が列挙されている。古いデータもあるが、改正物流効率化法(2016年10月)の海運モーダルシフト認定例(図表5 2021年8月まで50件。単純計算では、年間平均10件)なども収録されており、「ドライバー運転時間削減率」はモーダルシフト推進の参考となる。

出所 内航ジャーナル社ホームページ
中長距離フェリー航路・RORO船定期航路については、少し古いが国土交通省が公表している(図表6・7)。
出所 国土交通省資料
出所 国土交通省資料
図表6・7を見ると、日本海側西部(敦賀~九州)を除き、太平洋ベルト地帯を中心にして北海道から九州まで海上ネットワークが張り巡らされている。両図では描かれていないが、九州~沖縄間にもRORO船の海上ネットワークがある。
日本海側西部は需要が少なく、運航→休航を繰り返しているようである。江戸時代には、「西廻り航路」の一環として、北前船などで栄えた航路であり、期待したい。
(2)内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド
元々、北前船のように沿岸航路が発達しており、図表6・7のようなフェリー・RORO船による海上定期便のネットワークが、ほぼ全国に張り巡らされているにも関わらず、海上モーダルシフトが進まないのはなぜであろうか。
このような視点から、国土交通省では2025年5月、内航海運へのモーダルシフトを後押しする新たな情報提供ツールとして、「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(図表8。以下「ガイド」という)と「航路情報一覧」を公表した。
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001891014.pdf「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」

出所 国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(2025年5月)
※後編(次号)へ続く
【参考資料】
1.内航ジャーナル社「海上定期便ガイド」各年版
2.MOLグループ 「九州⇔関西・関東間 海上輸送サービスのご案内」2022年
3.池田良穂「図解・船の科学」講談社、2007年
4.国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」2025年5月
5.国土交通省「航路情報一覧」2025年5月
6.国土交通省「中・長距離フェリー RORO船のトラック輸送に係る積載率動向」(3カ月に1回、国土交通省HPで公表)
7.国土交通省・日本長距離フェリー協会・日本内航海運組合総連合会・フェリー各社・RORO船各社・海陸一貫輸送事業者・日本物流資格士会のホームページ
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