| 執筆者 | 長谷川 雅行 (一社)日本物流資格士会 顧問 |
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執筆者略歴 ▼
目次
- 3.海運モーダルシフトの進め方
(2)内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド - 3.海運モーダルシフトの進め方
(3)運賃・料金 - 4.おわりに「モーダルシフト基本法」
3.海運モーダルシフトの進め方
(2)内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド
「物流の2024年問題」を契機として、関係省庁では2024年6月「物流革新に向けた政策パッケージ」を打ち出し、「鉄道・内航の輸送分担率を今後10年間で倍増する」という目標を掲げている。近々、閣議決定される「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)にも、この目標が盛り込まれると思われる(2026年1月執筆時点)。
筆者としては、鉄道・内航の輸送力を10年間で倍増させることは、かなり困難ではないかと思う。
まず、鉄道について。JR貨物がコンテナ列車を増発しようとしても、レールを旅客会社から借りている以上は難しい。次に、レールのように制約がない海上ルートはどうだろうか。フェリーやRORO船を建造すれば輸送力は増強できるだろうか。筆者は港湾側の能力不足が心配である。今でも、苫小牧港などはフェリー・RORO船用の埠頭が混雑していて、利用しやすい時間帯に船便を増やすのが難しい。埠頭建設には時間もコストもかかる。あとは、日本海側西部の航路でも述べたように、トレーラ100台超という船腹を満たせるだけの需要があるか否かにもよる。例えば、中部~中九州の航路も需要が少なく減便になっている。
しかし、鉄道モーダルシフト倍増の見通しが厳しい状況下では、輸送ロットが大きい長距離の貨物輸送における内航海運の活用は、喫緊の課題でもある。
国土交通省が、上記政策パッケージを受けて2024年秋に実施した「モーダルシフトに関する内航海運の新規需要調査」では、「内航船の利用方法がわからない」「どこに相談すればよいかわからない」といった荷主企業や物流事業者の声が多く挙がった。
その声に応えるべく、具体的な検討手順やメリット、実際の航路情報などを分かりやすく提示するとともに、併せて、モーダルシフトを資金面で支援する3つの補助金制度の活用も呼びかけている(本稿では、誌面の都合で補助金制度は省略するので、「ガイド」を参照されたい)。
国土交通省では、これまでモ―ダルシフトの推進については、手を変え品を変え、各種政策を展開してきたが、今回は、情報不足の解消と具体的なアクションを促すことで、停滞気味だった海上モーダルシフトの本格的な推進を目指している。
今回の「ガイド」は、荷主・物流事業者が、それぞれの状況に合わせて海運モーダルシフトのメリット・デメリットを総合的に評価し、具体的な検討を進める上で役立つことが期待され、筆者としても支援したいと思う。
同ガイドは、
1 背景・目的
2 利用・検討方法
3 海運モーダルシフトの事例
から構成されている(図表4の年刊「海上定期便ガイド」と似ている)。
「1 背景・目的」では、「本ガイドでは、新たに内航船を利用することや、さらなる利用拡大を検討されている企業担当者に向けて、フェリー、RORO船、コンテナ船の3つの船種における内航海運のサービスや利用方法、利用検討に向けた手順、内航船を利用することのメリットなどを、アンケートやヒアリング、実証調査によって得られた事例などとともにに紹介します」としている(本稿では、そのなかからフェリー・RORO船を取り上げた)。
出所 国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(2025年5月)
図表9では、フェリー・RORO船・コンテナ船ごとに、それぞれのサービスの特徴、メリット・デメリット、利用に適した貨物の種類、輸送ロット、リードタイムの考え方などを具体的に紹介している。
さらに、「2 利用・検討方法」では、内航海運の利用を検討するにあたって、情報収集、船会社・利用運送事業者への相談、見積もり依頼、契約、トライアル輸送などの具体的なステップを分かりやすく示している。
「検討開始から利用までの流れ」として、「検討開始→船会社の確認→打合せ→契約締結・内航船利用」の4ステップが掲げられ、その順に記載されている。
各ステップを見ると、まず「検討開始」では、
・内航船輸送サービスの理解
・輸送要件整理
・航路確認
次に「船会社の確認」では、
・船会社への問合せ
続いて「打合せ」では、
・船会社のサービス詳細確認
・輸送要件のすり合わせ
最後に「契約締結・内航船利用」では、
・契約締結
・トライアル輸送の実施
と、海運モーダルシフトに不慣れでも進められるようになっている。
さらに、「内航船のメリット」として、「トラックドライバー不足への対策」「BCP対策」「CO₂削減」「輸送品質(振動)」が掲げられている。
「検討開始」の「輸送要件の整理」では、「荷主・利用運送事業者にて事前に整理すべき要件項目」として
・輸送貨物
・輸送区間
・輸送時期(輸送頻度の種類=スポット利用か定期利用か)
・物量
・輸送機器
・出荷元・出荷先での荷役
が挙げられている。
筆者は、このなかで最も重要なのは、「ガイド」では「出荷先での荷役」とされている「出荷先(荷受人)の了承・合意」ではないかと思う。筆者が担当した鉄道モーダルシフトにおいても、最大の難関が「出荷先の了承・合意」であり、トライアル輸送が成功しても、了承・合意が得られなかったケースもある。
逆に言えば、「出荷先の了承・合意」が得られれば、モーダルシフトはスムーズに進む。筆者が、横浜市内の製壜会社から北海道のビール会社に大量の新壜をスポット輸送(このときは鉄道コンテナであったが)に携わったときも、出荷先であるビール会社からの「輸送方法の指定」という形で、大量出荷に対する割引運賃や輸送枠の確保など、モーダルシフトにあたっての諸問題を乗り切った。
「ガイド」では、「(内航船輸送)リードタイムの目安」として「トラックと同日数もしくは+1日での輸送が可能なケースもある」と説明されているが、リードタイムが延びることについての出荷先の拒否反応は、まだまだ強いのではないだろうか。「到着時間帯」によっては、出荷先の入荷作業計画にも影響が出る。トレーラ化すれば、輸送ロット(出荷先から見れば発注ロット)も変わる。
「ガイド」でも、「内航船を効率的に活用するためにはロット数の確保が必要となりますが、『納品頻度を減らす』、『最低発注ロット数を増やす』などの取組が行われています」と記載されている。
さらに、トラック・トレーラに満たない貨物(国際コンテナでいうLCL貨物)については、複数荷主の貨物を集約する「小口混載サービス」を提供している船会社や海陸一貫輸送事業者もあるほか、JR貨物の鉄道コンテナと同じ12ft・5トンの内航コンテナ輸送に対応できる船会社もある。
それ以外にも、荷送人(「ガイド」では「出荷元」)側も、車両・輸送資材やドライバーの変更などへの対応が必要となる。モーダルシフトは、海運・鉄道とも最低6カ月程度の準備期間が要るのではないだろうか。
最後の「3 海運モーダルシフト事例」では、図表5と同様に、内航船利用を「社内物流」「BCP対応」「小口混載輸送(ロット数確保)」「コスト削減」「大型トラックの無人航送」という5つの視点での具体的な事例を紹介している(図表5では、「CO₂削減」「ドライバー運転時間削減」が、効果として表されている
併せて公表された「航路情報一覧」は、現在各船会社が提供しているフェリー、RORO船、コンテナ船の航路情報を集約している。発着港・運航頻度・主要寄港地・船会社連絡先などが一覧化されており、荷主や物流事業者は、自社の輸送ニーズに合致する航路を効率的に検索し、船会社へ直接問い合わせるための情報源となる。
最近では、3カ月に一度、これら航路の利用状況が、国土交通省から公表されている。一般的には、利用率(海運や航空では「消席率」と言われる)が70%を超えると、スポット予約はかなりタイトな状況と言われている。
「航路情報一覧」
https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk3_000104.html
誌面の都合もあって、「ガイド」の内容は詳細にご紹介できなかったので、ぜひ、参考に掲げた国土交通省のホームページからダウンロードして、ご一読願いたい。
なお、筆者は、さらに海運モーダルシフトを進めるには、制度的な取り組みも必要ではないかと思う。
例えば、内航海運業界やトレーラによる海陸一貫輸送事業者が長年にわたって要望している、以下のような航送用シャーシ(トレーラ)の車検制度や税制の改正である。
①航送用シャーシは、発着地~発着港間は道路を走るが、発港~着港間の長距離輸送は船上に留置されているので、年間走行距離が少ない。年間走行距離が少ないにも関わらず、一般の陸上輸送用トレーラと同様に年1回の車検が必要であろうか。
②また、道路の走行距離が少ないのであれば、道路の補修に充てられる自動車重量税も減免して欲しい。
例えば、一般のトレーラと航送用シャーシを車検証で区分すれば、①②は可能と思われる。航送用シャーシで車検を受けて、陸上走行されては困るという声が、すぐ出て来そうであるが、45フィートコンテナの陸上走行の関する経済特区のように、できるところから始めて行くべきではないかと思う。
3.海運モーダルシフトの進め方
(3)運賃・料金
(2)でも述べたが、運賃・料金は大きな課題である。「ドライバー不足に対応できる」「環境問題に貢献できる」「BCPとしてのリダンダンシーが向上する」と言っても、現状の輸送コストより増加することは、モーダルシフト推進の上での大きなネックとなっている。
「ガイド」が指摘している「内航船の利用方法がわからない」「どこに相談すればよいかわからない」以外にも、「内航船を利用したら幾ら掛かるのか分からない」こともあるのではないだろうか。
運賃・料金については、フェリーなど船会社への委託範囲(利用範囲)や輸送条件などにより大きく異なる(図表10)。
出所 国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(2025年5月)
一般的な利用方法は、図表10の「Port to Port」で、発着港間の海上輸送のみを船会社に委託するものである。
この場合、図表9の「出荷元から出荷先」までのトータル運賃(Aとする)と、「港までの集荷+海上輸送+港からの配達」の合計(Bとする)が、
A≧B
つまり、でなければ、モーダルシフトは難しいと思う。
これは、図表10の「Door to Door(ドア・ツー・ドア)」の海陸一貫輸送でも同様である。海陸一貫輸送では、陸上輸送(集荷・配達)のトラックが不要となり、車両・ドライバーの転用先をどうするかという問題が、新たに発生する。
「ガイド」では、フェリー運賃は「運賃+荷役料+BAF」で構成されると説明している。
「荷役料」は、港湾運送事業法による沿岸荷役の料金で、専用トラクタでトレーラを無人車駐車場から船内にけん引・固定する作業の対価である。
BAFは、Bunker Adjustment Factorの略で燃料費調整係数、つまり燃料割増料金のことで、燃料(重油)価格の変動に対して調整される割増料であり、航空運賃の燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)に相当し、原油価格に応じて月単位で変動する。
フェリー・RORO船の運賃は、何トン(載貨重量トン=DWT)ではなく、自動車(乗用車・トラック・トレーラ)が何台積み込むができるかと言う、車両甲板上の占有面積で決まる。したがって、貨物を積んだ実車も、空車も、車両長で決まる。そこで、車両長を確認するため、乗船受付窓口には車検証を提示する必要がある。これは、「フェリーが元々渡し船だった」ことに由来するのではないだろうか。
なお、高速道路利用料の車種別区分も、車両総重量ではなく、道路占有面積が基準になっているので、実車・空車とも同一料金となっている。この道路占有面積基準のため、標記トン数当たりの高速道路利用料は、トレーラが不利になっている。
また軸数(3軸・4軸など)によっても高速道路利用料には差がある。そこで、高速道路利用料を節約するため、高価かつ重量が増える車軸のリフトアップ装置を付けるという、本末転倒のようなことが行われている。
なお、フェリー・RORO船の船内や、ふ頭は、道路(公道)ではないので、道路関係の法令は適用されない。したがって、Port to Portだけで公道に出ない(陸上輸送に使用しない)航送専用シャーシは、ナンバープレートも不要で、車両総重量(GVW)の規制もなく、過積載にもならない。
外航のコンテナヤード内でコンテナを移送するトラクタやトレーラが、ナンバープレートを付けていないのと同じである。そこで、前述のような航送用シャーシの規制緩和の議論も出てくると思われる。
なお、海陸一貫輸送は図表10の下段「Door to Door海陸一貫輸送」のように、コンテナやトレーラという輸送器材を使って、陸上輸送→海上輸送→陸上輸送と、貨物を積み替えずに一貫して輸送することを指す。
国際輸送の場合は「国際複合一貫輸送」と言われる。
同図では、フェリーやRORO船など内航船を利用する事業を「海陸一貫輸送」と説明している。事業形態としては貨物利用運送(船舶)に該当する。
海陸一貫輸送事業者には、フェリーなど海運会社のグループ会社や、専門の陸上運送業者があり、いずれ各種トレーラやコンテナ輸送用のシャーシを多数保有している。
前述した北海道から牛乳を積んだタンクコンテナも、海陸一貫輸送事業者のシャーシで運ばれて来る。
ここでは、参考までに某フェリー会社の料金表(税込み)を掲げておく。図表11では、「無人車乗船下船手数料」が「荷役料」である。冷凍車の「電源料」(電気使用料)も別建てとなっており、加えて電源接続の手数料がかかることが分かる。
出所 フェリー会社のホームページ
4.おわりに「モーダルシフト基本法」
1~3項で説明した、筆者なりの海運モーダルシフトの進め方(手順)は、次の通りである。
①海運モーダルシフトに適した航路の有無を調べる
②その航路にフェリーがあれば、まず乗客として乗って(体験して)みる
③海運モーダルシフトについて、出荷先(荷受人)の了承・合意を取り付ける
④「餅は餅屋」で、各船社・海陸一貫輸送事業者に相談する(現在、利用しているトラック運送事業者から相談してもらう)
「物流の2026年問題」がスタートした。
第一の問題は、1月1日施行の「取適法」である。現在、公正取引委員会では国土交通省のトラック・物流Gメンと一緒に、荷主等を訪問している。国土交通省職員には立入検査権はないが、公正取引委員会職員・労働基準監督署員には立入検査権があり、拒否はできない。公正取引委員会では、取適法の施行に伴う立入検査の増大に対応するため、2026年度から140名近い調査員を増員する予定であり、さらなる厳正な法執行が予測される。
第二の問題は、4月1日一部施行の「貨物自動車運送事業法」「流通業務総合効率化法」である。いよいよ、特定荷主等に物流統括管理者(CLO)の選任義務や物流業務の改善計画の作成義務が始まる。
これが「物流の2026年問題」であり、この物流関連法規の大改正にあたって、筆者が思い出すのは、民主党政権時代のことである。当時の民主党では、トラックに偏重した我が国の物流体系が、長時間労働問題・環境問題・交通問題など、さまざまな外部不経済の遠因となっているとして、さらなる「モーダルシフト」の推進を図ろうとして、「モーダルシフト基本法」制定の動きがあった。
ちょうど同じ頃、(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)では、閣議決定による「総合物流施策大綱」では何の強制力もないので、「物流基本法」を制定して物流政策を強力に推進しようという動きがあり、同協会の政策委員会の下で、筆者もWGに参加して「政府(行政)の義務」「荷主の義務」「物流事業者の義務」「消費者の義務」など、意見交換したことがあった。
「モーダルシフト基本法」も「物流基本法」も、その後の政治経済情勢の変化や「失われた30年」のなかで立ち消えになってしまった。
1990年の「物流二法」による「経済的規制の緩和」と「社会的規制の強化」のうち、前者の「経済的規制の緩和」は、結果として「トラック運送事業者の増加」に伴う「供給過剰による運賃低下」を招き、トラックドライバーの「長時間労働」と「低賃金」が続いた。
それが、2019年の「働き方改革」で「物流2024年問題」が起こり、トラックドライバー不足が深刻化している。2025年には「トラック適正化二法」が公布され、「経済的規制緩和」が30年ぶりに見直されている。
前述の「物流の2026年問題」のように、物流にも大きな変革が起こっているように思う。また、物流政策や立法も労働力不足対策や環境対策であれば、「何でもあり」のように変化が目まぐるしい。鉄道・海運の利用を法律で推し進める「モーダルシフト基本法」の動きも、再びあり得るのではないかと思うこの頃である。
最後に、筆者も会員になっている(一社)日本物流資格士会による東京港でのRORO船見学会の写真を付しておく。

筆者撮影
以上
【参考資料】
1.内航ジャーナル社「海上定期便ガイド」各年版
2.MOLグループ 「九州⇔関西・関東間 海上輸送サービスのご案内」2022年
3.池田良穂「図解・船の科学」講談社、2007年
4.国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」2025年5月
5.国土交通省「航路情報一覧」2025年5月
6.国土交通省「中・長距離フェリー RORO船のトラック輸送に係る積載率動向」(3カ月に1回、国土交通省HPで公表)
7.国土交通省・日本長距離フェリー協会・日本内航海運組合総連合会・フェリー各社・RORO船各社・海陸一貫輸送事業者・日本物流資格士会のホームページ
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