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第573号 1年半経った「物流の2024年問題」(後編)(2026年2月5日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(一社)日本物流資格士会 顧問

 執筆者略歴 ▼
    略歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    • 2017年(一社)日本物流資格士会 顧問
    活動領域
    • 日本物流学会
    • (一社)日本SCM協会
    • (一社)日本物流資格士会会員
    • 流通経済大学客員講師
    • 港湾短期大学校非常勤講師
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
  • 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
  • ※前編はこちら
  •  

    目次

    • 3.行政による評価
    • (1)「2025年版交通政策白書」の総括と今後の取り組み
    • (2)「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導・送検等の状況」
    • 4.「物流の2024年問題」への取り組み強化
    • (1)「物流の2024年問題」から「物流の2026年問題」「物流の2027年問題」へ
    • (2)トラック運賃改定が物価高の張本人か
    • (3)外国人労働力の「特定技能」は、ドライバー不足の切り札か
    • 5.おわりに
    •   

      3.行政による評価

      ここでは、国交省と厚労省の白書等から、行政が「物流の2024年問題」の推移・動向について、どのように評価しているかを見たい。
      取り上げた資料は、国交省の「2025年版交通政策白書」と厚労省の「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導・送検等の状況」の2つである。他にも「『標準的な運賃』に係る実態調査結果」(国交省)や「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果等」(中小企業庁)などの最新かつ有益な資料も多いが、誌面の都合で割愛する。

      (1)「2025年版交通政策白書」の総括と今後の取り組み

      国交省では、「2025年版交通政策白書」以外にも「国土交通白書」をはじめ、各種の白書・調査があるが、白書は閣議決定を経てオーソライズされているので、これが国交省の「公式見解」と言っても良いのではなかろうか。最近は、各省庁の白書等も「冊子」ではなく、ホームページにPDFで公開されているので、容易に入手できる。
      同白書では、「現時点では懸念された物流の深刻な停滞は生じていないところであるが、この問題は年々深刻化する構造的な課題でもあり、引き続き取組を進める必要がある」と述べている。

      図表10 令和7年版交通政策白書の概要(抜粋)

      (出所)国土交通省「令和7年版交通政策白書の概要」

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      その背景には、トラックドライバーなど物流分野における構造的な人手不足が解決しておらず、「2030年にはトラック運送能力が34%不足する可能性がある」という問題は積み残されたままとなっていることがある。以下、図表9に沿って、国交省の取り組みを概説する。
      1)2030年までを物流革新の「集中改革期間」
      そこで、政府は、輸送力不足が年々深刻化する2030年までの期間を物流革新の「集中改革期間」と位置付け、物流全体の適正化や生産性向上、自動運転等の抜本的なイノベーションに取り組むと掲げている。
      2)労働力不足対策と就業構造改善
      関連法律を整備して労働力不足対策と就業構造改善に取り組む。
      なお、人材を確保することが困難な状況にある交通事業における労働者不足に対応するため、2024年3月に自動車運送業分野鉄道分野を特定技能制度の対象分野に追加した。外国人材の早期受入れ開始に向け、分野別協議会の設置や技能評価試験などを進めつつ、物流倉庫分野についても対象分野に新たに追加すべく調整中である。
      3)物流DXの推進
      新たな物流形態として、道路空間を活用した「自動物流道路」の社会実装に向けた準備を進め、2027年度までの社会実験の実施、2030年代半ばまでの第1期区間での運用開始等を予定している。
      サプライチェーン全体の輸送効率化を推進するため、引き続き、関係事業者が連携したAI、IoT等の新技術の活用について実証を実施し、物流分野における機械化・デジタル化を進めるとしている。
      さらに、物流標準化実現を推進するため、標準仕様パレットの導入に係る設備改修や、標準仕様パレットの効果的な活用や、物流情報の標準形式を定めた「物流情報標準ガイドライン」を活用した共同輸配送を支援する。
      4)モーダルシフトの推進等
      トラックドライバー不足に対応するため、従来の鉄道・内航海運に加え、ダブル連結トラック、自動運転トラック、航空貨物輸送など陸・海・空のあらゆる輸送を総動員した「新たなモーダルシフト」の選択肢を広げる。
      特に、鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)については、今後10年程度で輸送量・輸送分担率を倍増させることを目指しており、大型コンテナ導入等に係る支援を行う、
      過疎地域等における物流網の維持には、ドローン物流の環境整備を進める。
      従来、国交省がモーダルシフト推進の理由として、①環境対策(GHG排出量の削減)、②省エネルギー(脱・化石燃料)、③道路渋滞の緩和、④ドライバー不足の4本柱を掲げていたことからすると、「GHG排出量の多い航空輸送などもモーダルシフトか」と違和感があるが、国交省は「総合交通体系」という観点に立ち戻ったのかも知れない。
      未来志向的かつ総花的な記述もみられるが、「2030年までを物流革新の『集中改革期間』と悠長なことを言わないで立法化した、4項の「物流の2024年問題」解決を加速するための「新・物流二法」「トラック新法」の取り組みに期待したい。

      (2)「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導・送検等の状況」

      厚労省では、労働基準監督署が、労災事故の発生や従業員からの申し出等に基づき、全業種の事業場に立入検査をして、その結果を公表している。筆者も、労働基準監督署の研修会に参加したときに、「これから近くの事業場を見たい」と言われて監督官を案内したことがある。
      2024年(暦年なので、「物流の2024年問題とは3ヵ月ズレている」に全国の労働基準監督署等において、労働基準関係法令違反が疑われる自動車運転者を使用する4,328事業場(バス、ハイヤー・タクシー・トラックの事業用自動車だけでなく、自家用自動車の運転者も対象)に対して監督指導を実施したところ、その81.6%に当たる3,532事業場で同法令違反が認められたと、2025年8月に公表された。

      図表11 自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況
      (主な違反事項)

      (出所)厚労省「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6
      年の監督指導・送検等の状況」

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      図表12 自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況
      (改善基準告示違反)

      (出所)図表11に同じ

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      筆者は、毎年のように「トラック運送業に労基署が立入検査で入ると、8割の事業場が労基法等の違反、6割以上が改善基準告示違反」と警鐘を鳴らしているが、残念ながら、「物流の2024年問題」期間に入っても、状況は「好転」していない(労働時間が減っていないので、改善基準告示違反も減らない)ように見受けられる。
      労基法は罰則規定があるが、改善基準告示には罰則規定がない。そこで、改善基準告示で定める時間をさらに短縮するとともに、改善基準告示にも罰則規定を設けようという考えもあると聞く。
      改善基準告示は、運転者の「労働時間」つまり「健康」を通じた「輸送の安全確保」が目的であるが、安全については、安全な荷役作業も重要である。
      これも繰り返し警鐘を鳴らしているが、トラック運送業(労災統計では陸上貨物運送事業)は、2024年の労働災害(休業4日以上)が16,292件(2023年比77人、0.5%増)と、製造業・建設業と並んで労働災害の多い業種である。全体の約7割が、荷役作業時の墜落・転落等の事故で発生しており、また同じく約7割が荷主等(荷主・配送先・元請事業者)の事業場で発生している。
      そこで、厚生労働省では「陸上貨物運送事業の荷役作業における労働災害防止対策の推進について」という通達(通称「荷役通達」)を2015年に発出し、荷主等に以下の対策を求めている。
      ①労働災害防止のため陸運事業者と協議する場の設置
      ②荷役作業の有無、内容、役割分担の陸運事業者への通知
      ③自社以外の者に荷役作業を行わせる場合の安全対策(作業手順及び安全設備)
      ④自社の労働者と自社以外の労働者が混在して作業する場合の安全対策
      ⑤自社以外の者にフォークリフトを使用させる場合の事項等
      物流事業者も荷主等(元請事業者を含む)と協議して安全対策を推進する必要がある。物流事業者が元請事業者である場合は、荷役通達を遵守する努力義務がある。
      2-(5)の賃金動向や、3-(2)の労基法違反・改善基準告示違反を見る限りでは、「物流の2024年問題」の改善は進んでいないと言えよう。

      4.「物流の2024年問題」への取り組み強化

      日本人は激し易く、冷め易い性格と言われる。また「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という諺もある。
      しかし、トラック運送の持続的な提供のためには、トラックドライバーの確保が欠かせないし、そのためには3-(1)の交通政策白書に掲げられているように労働時間の短縮、処遇の改善が不可欠であり、長期的・構造的な取り組みが必要である
      後述するように、荷主の側では「それより、2026年問題(新・物流二法の施行=物流統括管理者の選任・届出など)の方が、喫緊の課題だ」、トラック運送事業者の側では「いやいや、2027年問題(トラック新法の一部施行=下請け委託次数制限等)の方が、大変だ」と、「2026年問題」「2027年問題」が取り上げられている。それも、「物流の2024年問題」という大きな課題を解決するための手段として、取り組んでほしい。
      ここでは、今後の取り組みの参考になるよう、幾つかの方策を述べたい。

      (1)「物流の2024年問題」から「物流の2026年問題」「物流の2027年問題」へ

      「運べなくなる」という最悪の事態は避けられた。見方によっては「嘘っぱち」「オオカミ少年」に終わったが、地域や荷主の業種によっては、「トラックが足りない」という状況が続いていると言われている。
      トランプ関税や中東情勢により、さらに世界景気が後退して、国際貨物量が減ることも想定される。今や、国際物流と国内物流の垣根は低くなり、海外の動向が国内貨物輸送にも敏感に跳ね返る。
      筆者が住む神奈川県では、日産の工場廃止(追浜・平塚)により地域経済や貨物量に少なからぬ影響が出ることは、想像に難くない。また、横浜港からの完成車・自動車部品輸出の減少は、東日本を主体とする全国各地から横浜港への荷動きも心配である。
      また、一方でWeb−KITなどの求車求貨システムにおける求貨(空車)情報が減っているとも言われている。そのためか、Web−KITの成約運賃指数も130前後で高止まりしている。
      運行開始前に帰り荷が確保できて、往復実車運行の場合は、求車求貨システムを利用しない。帰り荷がない場合に限って利用されるので、元々が限界的な市場とも言われている。
      しかし、最近は帰り荷があっても運賃決済手段として、求車登録と求貨登録を事後的に行うという求車求貨システムを決済情報システムとする活用方法もあるようだ。
      2025年8月2日の日経新聞では、「中継輸送」や「共同配送」の増加によって、トラックの積載率が上がったと、楽観的な観測をしているが、本当にそうなのだろうか?
      筆者は、諸々のデータからトラック(ドライバー)不足は、深く静かに進んでいると感じている。
      既に、荷主やトラック運送業者の関心は、通称「新・物流二法」(「貨物自動車運送事業法」と「流通業務総合効率化法」)や通称「トラック新法」(「トラック事業適正化関連二法」)が施行される2026年および2027年(これが「物流の2026年問題」「物流の2027年問題」と言われている)に、関心が移っている。
      長期的・構造的な「物流の2024年問題」を解決する目的のために、行政やトラック運送業界が協力・構築した仕掛け(手段)なので、力が入るのは当然としても、何か、こちらの方が目的になっているような気がする。
      「新・物流二法」や「トラック新法」については、ロジスティクス・ビジネス誌の2025年8月号「連載・物流コンサル道場」でも取り上げられているので、参考にされたい。
      筆者も、別の機会にレポートしたいと思うが、今のところトラック運送事業者には、「お役所のお仕着せではなく、皆さん(トラック運送事業者)の『長年の宿願』(全ト協「広報トラック」号外)なので、(運賃競争による)抜け駆けや足の引っ張り合いは止めて下さい」と話している。「適正原価」の元では「帰り便だから、燃料費(と高速代)だけでイイよ」という限界利益的な考えはNGになる。「自助努力」だけではなく、トラック運送事業適正化のように「自浄努力」義務がある。

      (2)トラック運賃改定が物価高の張本人か

      本稿を執筆中の2025年8月も食品など必需品の物価上昇が著しく、筆者のような年金生活者には暮らしにくくなっている。生鮮食品などを除くコア品目では対前年比2~3%の上昇とされているが、生活者の実感としては、毎日の食品の値上げが強く感じられる(帝国データバンク調査)。
      そして、食品メーカーなどの値上げ理由には、決まって①円安による原材料費の高騰、②人件費(一方で、実質賃金が上がっていない)、そして③物流費の上昇の「3点セット」が挙げられている。
      食品の物流に携わっているトラックの運賃が、それほど高くなっているのだろうか(上がっていることは、トラックドライバーの処遇改善と言うことで、喜ばしいことではあるが)。物流費の上昇が、本当に物価上昇の大きな要因になっているのか、いつも疑問に思う。
      日本ロジスティクスシステム協会(以下、「JILS」と略す)が毎年調査報告している「売上高物流費比率」は、長年5%前後(100円の売上に対して、物流費は約5円)で推移している。これが多いか少ないかの議論は別として、分かりやすく物流費イコールトラック運賃と想定してみる(実際には、輸配送費は物流費の約50%)。
      同協会ホームページの「2024 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」のサマリーを見ると、
      「2024年度調査(有効回答191社)の売上高物流コスト比率は5.44%(全業種平均)となった。前年度から0.44ポイントの上昇。
      近年、物流事業者からの値上げ要請などを理由に、売上高物流コスト比率は長期的な上昇傾向にあると考えられる。実際に過去20年間の調査と比較しても、5.70%を記録した2021年度調査に次ぐ売上高物流コスト比率の高さとなっている。
      2022年度から2023年度の調査では、売上高物流コスト比率が2年連続で減少し、荷主企業による商品価格などの値上げが進む一方で、物流事業者からの価格転嫁が遅れている点が懸念されていた。2024年度の調査結果は、荷主企業から物流事業者への価格転嫁が一定程度進展したことを示唆している」
      と要約されている。
      2023年度の5.00%が、2024年度には5.44%になったのだから、単純計算では物流費は10.88%(=5.44÷5.00)と大幅上昇したことになる。

      図表13 売上高物流コスト比率の推移(全業種)

      (出所)日本ロジスティクスシステム協会「2024 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」

      *画像をClickすると拡大画像が見られます。

      仮にトラック運賃が、「標準的な運賃」に近づいて上記の単純計算のように10%上昇したとすると、5円が5.5円(図表12で換算すれば、5.44円)になり、そのまま商品価格に転嫁されても100.5円と0.5円(売上高の0.5%)しか上昇しない。つまり、単純計算では、トラック運送業者が運賃を10%値上げしても、商品価格は0.5%しか上がらないことになる。ところが、物価上昇の実態は2~3%、食品に至っては、「令和のコメ騒動」と言われたコメを除いても数%上昇している。
      「商品の価格変動は複雑な要因が絡み合っている」と、メーカー・流通業から反論が出るのは百も承知である。実際には、その通りであろうと思うが、「物流費上昇=物価上昇」とは、言い過ぎではないだろうか?
      上記JILS調査では、さらに
      「ただし、本調査(ミクロ物流コスト調査)ではサンプルサイズが200社前後と限られており、 とくに物流危機の影響が大きかった近年は、数値が乱高下する傾向が見られる。 このため、長期的な傾向を把握するには、『指数でみた物流コストなどの動向(概要版p.4)』や『マ クロ物流コストの調査(同p.6)』などもあわせて参考とする必要がある。
      『指数でみた物流コストなどの動向』によれば、物流コスト単価は上昇傾向にあるものの、 売上単価の伸びには追いついておらず、物流事業者による価格転嫁は依然として十分とは言えない状況であることが示唆されている。
      もう一つ、経済関係省庁の一つである内閣府(元・経済企画庁)の研究結果を見てみる。そこでは、
      「物流費の上昇は、食料品価格上昇の主因の一つとなるなど、各種財・サービス価格への転嫁を通して物価を押し上げる要因となっている。物流費の上昇による物価全般の押上げ効果について産業連関表を用いて定量的に分析したところ、物流費の10%の上昇は、生産及び流通段階で運送サービスを利用する様々な財・サービスの価格へ波及することで、物価全体を0.2%程度押し上げる可能性が示唆された」
      と、筆者の荒っぽい「0.5%」を下回る「0.2%」と推計されている。
      「物価上昇はトラック運賃が上ったから」という「物価高の張本人」呼ばわりは止めて欲しいと思う。
      逆に考えれば、もっと積極的に、「標準的な運賃」から自社の「適正原価」に基づく運賃改定を、トラック運送事業者は進めて行きたい。

      (3)外国人労働力の「特定技能」は、ドライバー不足の切り札か

      7月の参議院議員選挙では、「日本人ファースト」を掲げた参政党が議席を拡大したので、「外国人労働力」に関する発言には気を配らなければならないのかも知れない。
      しかし、今や、農水産業・製造業・建設業・飲食業・コンビニなどでは、外国人労働力がなければ持続できないのが実態ではないだろうか。
      最近の報道を見ると、特定技能2号の外国人労働力の導入に道筋が付けられた自動車運転のうち「トラックの運転」についても、全国各地で始まっている。大手トラック運送事業者にも積極的な拡大を進めているところがある。
      また、最近は人口減少や若年層のクルマ離れから経営に苦しんでいる、運転教習所・自動車学校などが途上国に進出して、外国人運転者(特定技能)の育成を図り、国内のバス・タクシー・トラック事業者に紹介している例もある。
      2024年度以降の5年間で受け入れる外国人は、特定技能1号・2号の16分野で最大82万人(年間平均16万人強)となっており、うち後発の「自動車運送」「林業」「鉄道」「木材産業」は、既存の「システム化」された「製造」「建設」「農業」「外食」等の12分野に比べれば、出遅れたので競争に不利となっている。
      注意しなければならないのは、外国人ドライバーは「低賃金」=人件費の削減にはならないことである。ドライバー職としての「同一労働同一賃金」の原則が適用される。ドライバー不足の対策として考えるべきである。
      また、先述のように「特定技能」全体での枠(人数制限)で、他の15業種との取り合いが始まっている。取り合いになれば賃金競争は避けられない。また、「自動車運転」ということで、バス・タクシー業界との競争もある(バス・タクシーへの外国人運転者も増えている)。
      外食では業界団体や大手外食業が、外食業界での外国人採用ノウハウを元に、ドライバー紹介に参入してきている。あるいは、外食業界(接客サービス)では適任でない外国人の就業先を考えているのかも知れない。
      特定技能が自動車運転(バス・タクシー・トラック)にも認められたことから、日本倉庫協会など倉庫関連団体も特定技能の外国人労働者を倉庫業界でも活用したいと、国に働き掛けている。
      「自動車運転」であれば、運転免許が「技能」の一つであるが、倉庫の従業者では、何が「特定技能」か明確でないので「倉庫管理」という職種にしている。「倉庫管理」というと、営業倉庫は各棟に原則1名配置しなければならない「倉庫管理主任者」が思い浮かぶが、同等の「特定技能」ということなのだろうか?
      いずれにしても、既存の15業界に加えて、物流業界のなかでも「ライバル業界」が生まれそうであり、外国人材の採用については早めの取り組みが必要なようである。

      5.おわりに

      (いつものことであるが)「新・物流二法」「トラック新法」「荷主責任(とくにトラックドライバーに対する安全配慮義務)」「在留資格(特定技能)」等については、説明不足になってしまった。
      またの機会があれば、取り上げてみたいと思う。
      トランプ関税によって、世界経済がグローバル化からブロック化へ大きく変わるかも知れない。日本の経済社会・国民生活への影響や、SCM(ロジスティクス・物流)の再構築もウォッチして行きたい。



      【参考資料】(全て西暦表示に統一した)
      1.NX総合研究所「2025年度の経済と貨物輸送の見通し」2025年7月、「企業物流短期動向調査(2025年6月調査)」2025年7月
      2.全日本トラック協会「第129回トラック運送業界の景況感(速報)」2025年5月
      3.NX総合研究所「物流の2024 年問題に関する追加調査(2025年6月調査)」2025年7月
      4.厚生労働省「毎月勤労統計調査2025年6月分結果速報」2025年8月
      5.東京商工リサーチ「2025年上半期(1~6月)のトラック運送業の倒産動向」「2025年7月
      6.国土交通省「交通政策白書」2025年版
      7.厚生労働省「労働基準監督署等が自動車運転者を使用する事業場に対して行った令和6年の監督指導・送検等の状況」2025年8月
      8.中央職業能力開発協会編「ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト『ロジスティクス・オペレーション3級(第4版)』2024年10月
      9.全日本トラック協会・日本貨物運送協同組合連合会「『求荷求車情報ネットワーク「WebKIT』成約運賃指数について(令和7年7月期)」2025年8月
      10.全日本トラック協会「機関誌『広報とらっく』6月5日号【号外】」2025年6月
      11.湯浅和夫「物流コンサル道場No.279『トラック事業適正化関連法』成立」ロジスティクス・ビジネス誌2025年8月号
      12.日本ロジスティクスシステム協会「2024 年度 物流コスト調査報告書【概要版】」2025年4月
      13.豊川浩気「『2024年問題』による物流費上昇の背景と物価に与える影響について」内閣府マンスリー・トピックスNO.74 2024年11月
      14.その他、本稿で引用した内閣府・国土交通省・厚生労働省・経済産業省・中小企業庁・公正取引委員会等の資料・ホームページ。
      15.長谷川雅行「500日を切った「物流2024年問題」前編・後編」2023年1月 ロジスティクス・レビュー第500・502号
      16.長谷川雅行「100日を切った『物流の2024年問題』前編・後編」2024年1月 ロジスティクス・レビュー第523・524号
      17.長谷川雅行「『負のスパイラル』から『正のスパイラル』へ」2024年11~12月 ロジスティクス・レビュー第543~546号)



      (C)2026 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

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