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第212号GS1の概要~GS1の組織と標準化の動向~(2011年1月18日発行)

執筆者 関川 仁美
財団法人 流通システム開発センター 流通標準本部 国際部/GS1 Japan 部長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴 成蹊大学文学部文化学科卒業後、財団法人 流通システム開発センター入所。
    流通コードセンター 研究員、研究開発部 主任研究員などを経て、現在、流通標準本部 国際部 部長。
    JANコード及びPOSシステムの普及、商店街共同システムの導入支援、EAN International の会議出席などを経て、現在は国際部においてGS1全般を担当している。

目次

1.GS1とは

  始まりは1974年にバーコードと商品識別コードの標準化組織として設立された北米(米国・カナダ)のコード管理機関UCC(Uniform Code Council)からであった。1974年には欧州12ヶ国によりEAN(European Article Number)協会が設立され、その翌年、日本は13番目の、欧州以外では初めて国として加盟国した。
  二つの組織は互換性を持ちながら進んだが、2004年に”GS1″(略称ではなく正式な組織名)という一つの組織に統合された。GS1本部はベルギーのブリュッセルに、米国支部はプリンストンに置かれている。
  GS1標準が対象範囲は食品・雑貨などのFMCG(Fast Moving Consumer Goods)から始まっているが、その後、アパレル、家電、書籍等、消費財全般に、さらに近年では、ヘルスケア業界や電子タグの関連では国際物流、航空産業に至るまで20を超える分野に広がりつつある。
  また、バーコードから始まった標準は、EDI(電子データ交換)や電子タグの標準化へと広がり、マスター同期化のためのデータプールとネットワークのグローバルな仕組みも構築するに至っている。さらに、GS1の目的の一つである「サプライチェーン効率化」も、カバーする範囲が、製造、卸、小売の間から、モバイルなどの普及により消費者までを範囲とした概念に変わってきていると共に、製品安全に対する関心の高まりなどから、製造業よりさらに川上までを含んだシステムの範囲に広がってきている。
  一方、加盟国の広がりを見ると、世界109の国と地域がGS1に加盟している。各国の加盟組織はMember Organization(以下MOと略す)と呼称される。GTINの中に表現される国の識別番号は、表①にある通りプリフィックス(3桁)で表わされ、プリフィックスは、小売業のインストアコードや書籍、クーポンなどの識別にも使われている。

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  GS1本部によれば、150ヶ国でビジネスを展開する100万を超える企業にGS1標準が利用されているという。企業間の協業のためのプラットフォームであるGS1標準は、現在「最も広く使用されているサプライチェーン標準システム」と言っても過言ではないだろう。
  GS1は自身の役割を「グローバル標準を計画、遂行し、分野を超えてのサプライ・ディマンドチェーンの効率性と可視性を向上させる解決策に貢献するグローバル組織」とし、目指すビジョンとして「物や関連する情報が、日々いたる所でビジネスの利益や人々の生活の向上のため、効率よく安全に動く世界」を掲げている。

2.GS1の標準体系

  GS1の標準体系は、①バーコード&ID、②e COM 、③GDSN、④EPC globalの4本柱で体系づけられてきた。GS1がこれまでに制定し、普及してきた基本的なGS1標準である。
  この4本柱には、GS1標準のベースとなる「GS1キー」が含まれている。

(1)9つの「GS1識別キー」

  「GS1識別キー」と呼ばれる識別番号は、既に9種類が規定されている(表②参照)。各国MOが付番貸与するGS1企業コード(JANメーカーコード)を使ってつくることができる識別番号である。

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  「日本でもおなじみのGS1キーは、GTIN(表②参照)、GLNだが、ほかにも物流単位の識別番号(SSCC)やそれより大きな単位になるGSIN(出荷単位の識別番号)、リターナブル(企業間での繰り返し利用)を前提としたGRAIなどがあり、一部使用が始まっている。
  「これらの識別キーを表示するデータキャリアとしてはUPC、EAN、JAN、ITF、GS1-128、EPCタグなどがあり、GS1データバーも今後、有力なツールになると予想される。

(2)GS1標準体系の4本柱

  GS1が標準化の柱と位置づけ、それぞれの分野で標準開発を進めてきたのが以下の4つである。
① バーコード&ID(自動認識の国際標準)
  バーコードとその中に符号化されるデータの標準である。UPC、EAN(JAN)に始まり、現在までに図①に見るように多種類のバーコードが用途などに応じて標準化されている。データの種類で分けると、「GTINのみ」か「GTIN以外の情報項目を含む」に大別され、後者の場合はアプリケーション識別子AIが用いられる。AIにはロット番号、有効期限、製造年月日、販売期限日、シリアル番号などがあり、使用可能文字や桁数などが決められている。既に約100項目がGS1標準になっているが、今後も増えていくと予想される。日本でのAIの使用例としては、食肉業界の標準物流ラベルの中に、GS1-128というバーコードを使って牛の個体識別番号や重量などを表示する例がある。
  小売店の定置式POSレジで読むバーコードは、長年UPC、EAN(JAN)のみであったが、2014年には新たにGS1データバーが加わることになる。日本でも研究と一部導入が始まっている。

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② eCOM(電子取引メッセージの国際標準)
GS1は取引業務の効率化・簡易化を図るため、EDIの国際標準作成に取り組み、以下の二つをGS1標準に制定している。
•EANCOM:UN/EDIFACTの流通サブセットとして1994年に公開。
•GS1XML:2001年にバージョン1が公開された。
  GS1本部が毎年実施するeCOM調査によると、2009年末でEANCOMは44か国で約10万のユーザーに、GS1XMLは31ヶ国で2万強のユーザーに利用されている。
③ GDSN(マスターデータの国際同期化)
  GDSN(Global Data Synchronization Network)は取引企業間のデータ交換の効率化や企業間のマスターの相違の回避を目指したもので、DP(Data Pool)を介して商品や企業、事業所情報の同期化を図るしくみである。特にGR(Global Registry)を介してデータ交換を行う場合をGDSNと呼び、それ以外の場合はGDSと呼ばれる。
  現在、28社のDPに630万件を超えるGTINが登録されている。
  なお、GDSNにおける商品情報の検索には、GS1の標準的な分類GPC(Global Product Code)が用いられる。
④ EPC global(RFID技術を利用した識別の国際標準)
  RFID(電子タグ)と通信ネットワークインフラ、EPC(Electric Product Code:一品毎に識別する番号)を結合した標準システムにより、サプライチェーンにおける効率性と可視性の向上を図る。(詳細は 「ロジスティクス・レビュー第214号|EPCglobalの最新動向」をご覧ください。)
  この4本柱は現在も有効であるが、標準作成・更新のプロセスに関して一つ変わった点がある。従来は図の中で、EPCだけが専用のプロセスで進められてきたが、2010年4月より、GS1標準の作成・更新プロセスの中に位置づけられた。

3.GS1の歩み

  1970年代に始まり30数年が立つGS1の歩みを振り返り、マイルストーンといえる事柄を記すと次のようになる。
◇1980年代
•EDIの標準化検討が始まる
•ISBN、ISSNとの合意
•ITF制定
•UCC/EAN128(現在のGS1 128)とAIの制定
•アパレル等一般商品のEANガイドライン公開
◇1990年代
•CEN&ISOとの提携
•EANCOM公開
•最初のデータプール(UCC net)発足
•新たな産業界とのコラボレーションが始まる(ヘルスケア、トランスポート、防衛など)
◇2000年代
•GS1XML公開
•GSMP(GS1標準策定の新たな枠組み)
•GEPIR運用開始
•EPC global発足
•GDSN Inc.(GDSN)発足
•トレーサビリティの研究グループ発足
•GS1誕生(UCCとEANの統合)
•GS1ヘルスケア発足
•GS1データバー導入決定
•GUSI(Global Upstream Supply Initiative)
•WCO(世界税関機構)と覚書交わす
•GS1モバイル・コム発足
•GS1データマトリックス(二次元シンボル)がGS1標準に
•UPU(万国郵便連合)と覚書交わす
  以上のように、80年代はPOSによる店頭の改革からサプライチェーンの効率化へ、90年代はEDI標準の普及と新たな業界との取り組み、そしてデータベースとネットワークへの取り組みが始まり、2000年代にはGS1の活動が大きく広がっていることが確認できる。
  2000年代の項目について補足すると、GEPIR(グローバルコード情報提供サービス)は、各国MOから貸与を受けている企業情報を、共通のシステムでインターネットを通じて提供するサービスで、わが国でも2003年から開始している。
  「トレーサビリティ」の研究グループは、商品別のガイドラインをまとめると共に、2009年にはGS1グローバルトレーサビリティ・コンフォーマンスプログラムを取り纏めた。この中で、数十項目にわたるチェック項目(GLN、GTIN、SSCCなどの適切な利用、原材料の入庫から出庫までのフローの文書化など)を定め、サプライチェーンにおける安全、安心の確保を狙いとしている。
  トレーサビリティはGS1が提案するソリューション(GS1標準を組み合わせて提供する)の一つで、GUSI、モバイル・コムもGS1ソリューションと位置づけられている。
  GUSIは2003年にGCI(現在のTCGF※)が消費財メーカーとその材料・資材企業間のサプライチェーンの協調を図る目的で始めた取り組みである。GS1ではそれを受けて、GS1標準を使った標準の業務モデルを作成している。
  また、GS1は関連ある様々な団体との連携を強めている。2008年にはWCOと覚え書きを交わし、税関手続きを含む輸送と物流にGS1標準を適用するための検討を行っている。
TCGF:The Consumer Goods Forumの略称。グローバルな消費財流通業界の組織で、70ヶ国から650社以上が参加している。

4.10ヵ年経営戦略における新4本柱と重点取り組み分野

~2010年マレーシアGS1総会にて~

  2010年5月にマレーシアで開催されたGS1総会 で承認された経営の新たな4本柱は次のとおりである。
(1)GS1識別システム
  既存の標準(データキャリアおよびEDI)の普及促進とユーザー企業のニーズに基づいた新しいアプリケーションの開発など。
(2)データクオリティ
  GDSN、サービス、ソリューションを活用し、取引先同士のデータ交換の質の向上を図る。
(3)ビジビリティ
  GS1標準であるEPC、バーコード、EDI等を利用したサプライチェーンにおける可視化、(何が、何時、何処に、どれだけあるかなど)を実現する。

(4)B2C/モバイルコマース
  企業間取引および企業と消費者間の電子商取引中におけるGS1標準の利用を目指す。
  また、2020年に向けた重点取り組み分野としては、次の6項目が挙げられている。
① サプライチェーンの効率化
② ヘルス&ウェルネス(製品及び食品安全)
③ サスティナビリティ(企業のサスティナビリティ活動についてGS1標準が貢献する)
④ 患者安全(患者安全を向上するための仕組みの充実)
⑤ T&L(Transport&Logistics)(輸送と国際物流などの分野にGS1標準を広げる)
⑥ B2C

  ⑥のB2Cでは消費者がモバイルやインターネットを通じて商品の追加情報にアクセスする仕組みが想定されている。データクオリティー(情報の正確性など)の問題を含め、GS1が何をどこまで行うかについては、さらに検討を重ねることとしている。
  GS1はサプライチェーン効率化のための標準作りのみでなく、GS1が構築してきたデータベースとネットワークを組み合わせ、消費者や企業に信頼できる情報を提供することを目指し始めている。
  このほかに、GS1ではプロダクト・リコールの問題などにも取り組みを始めている。得意先や流通経路への告知・撤去・回収を迅速、正確に実施することを目的に企業間連絡システムのモデルを作り、普及していくことを検討中である。

5.GS1の組織と運営体制

(1)主な会議と理事構成

  GS1の組織的な特徴は、非営利団体かつ中立機関、ユーザードリブンで運営する組織であることである。
  GS1の運営は以下の会議を行われている。
•GS1総会:GS1の基本戦略、新加盟国の承認、活動計画・予算の承認など
•GS1理事会:具体的なプロジェクトの承認と活動プランの提案など
•EPC Board of Governors(EPC global理事会)
•GS1 Global Forum:GS1標準の説明と情報交換
•GS1 Industry & Standards Development Event:標準作成プロセスである新GSMPの中のフィジカル会議。ユーザー企業の参加可。
  このほかに、GS1アジア・パシフィック地域会議、GS1 Healthcare Conference、GS1モバイル会議などがある。
  なお、GS1理事会は現在、MOから8名(日本、米国、フランス、ドイツ、オーストラリア、ブラジル等)、産業界から20名(小売業はWal-Mart、Carrefour、Royal Ahold、Tesco等から、製造業はThe Procter & Gamble Company、Unilever、Janssen Pharmaceutica N.Vなどから)理事が就任している。2009年5月の総会で、日本から2名(イオンSCMグローバル(株)岩本隆雄社長、当センター 上野裕専務理事)が理事に選出され、活動中である。

(2)新しい標準開発プロセス

  2010年にスタートした標準開発プロセス「新GSMP」は以下の6分野の標準に関する開発とメンテナンスを行う。
• BarCodes & Identification
• Electronic Product Code (EPC)
• Global Data Synchronization Network (GDSN)
• eCOM (and EANCOM)
• Global Product Classification (GPC)
• Data Accuracy

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  GSMでの開発作業に入る前に、産業界のビジネスニーズを分析して取りまとめる役割は「IE(Industry Engagement)」の中のIUG(インダストリー・ユーザー・グループ)が担うことになった。IUGとして既に組織されているのは以下の3つである。
① Retail Value Chain IUG
② Transport & Logistics IUG
③ Aerospace & Defense IUG
  消費財流通に係わるテーマは主にRetail Value Chain IUGで取り扱われる。
  新GSMPでは従来、EPC globalの開発において適用されていた「IPポリシー」が適用されることになった。IPポリシーとは、GSMPワーキングクループに参加する者が、作成される標準の仕様書に係る所有必須特許に関し、原則として無償での使用を認める(ただし、GS1メンバーに対してのみ)ことについて、GS1との間で取り交わす同意書である。

6.終わりに

GS1標準は、消費財を中心にヘルスケア業界など幅広い分野のサプライチェーンにおいて、欠かせないインフラとして定着をしてきている。また、新  たなビジネスニーズに基づき、GS1標準の開発やメンテナンスは日々行われている。今後は、日本の業界のニーズをより一層、GS1標準に反映するため、流通システム開発センター(GS1 Japan)が国内ユーザー企業と密接に連携してニーズに応える努力をすると共に、GS1標準のユーザー企業等が積極的にGS1標準作成プロセスに係わり、標準作りに貢献されることが期待されている。

以上

※参考:GS1情報は下記URLからご覧いただけます。
http://www.gs1.org/
http://www.gs1.org/services/publications/online/index.html(GS1発行出版物のダウンロードサイト)


(C)2011 Hitomi Sekikawa & Sakata Warehouse, Inc.

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