第402号 在庫管理と経営戦略 第3回 発注方式と在庫精度の向上(後編) (2018年12月18日発行)
執筆者 | 長谷川 雅行 (株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問) |
---|
執筆者略歴 ▼
目次
2.各種発注方式の特徴と使いかた
(5)定量発注方式(発注点法)
「定量発注方式」は、在庫が注文点(発注点)まで減少したら、「一定量を発注する」方式であり、狙いはある程度在庫を持ってもよいから、それよりも発注や管理の手間を省こうということである。
定量発注方式のポイントは、
「発注点の求め方(いつ発注するか)」
「発注量の求め方(定量とはどれだけか)」
「安全在庫の求め方」
である。
図9の「発注点」は、在庫がここまで減ったら注文しようと決めておく。注文(発注)量は200なら、200に決めておく。
一般市販品のように需要がほぼ安定しているものは、品目ごとに「発注点」と「発注量」をコンピュータに登録しておけば、自動発注が可能になる。
コンビニでは、「商品Xは、棚の在庫が3個になったら、5個発注する」と決めておけば、パート・アルバイトでも簡単に発注作業ができる。コンビニで多用されているGOT(Graphic Order Terminal)では、このようなロジックが組み込まれている(実際はもっと高度で複雑である)。
1)定量発注方式の特徴
定量発注方式の特徴は、先ほどコンビニの例で説明したように、「管理の手間が少なくてすみ、多数の商品の取り扱いが可能である」ことである。コンビニの3千SKUについて、定期発注方式で毎回発注量を計算することは不可能である。
一方で、需要変動の激しい商品では、発注間隔が短くなって結果的に発注量が多めとなり、在庫量が増える恐れがある。急に暑くなって清涼飲料を頻繁に発注したが、届くまでに気温が下がると在庫が増えてしまう。
そこで、定番商品、相対的に需要の少ない商品(C品目。コンビニでは文具など)等の利用に適する。また、物流センターでの在庫管理や、多数の商品を扱う流通業で用いられる場合が多い。
「管理の手間が少ない」のは、コンビニの例で先述した通りであるが、ときどき、発注ミスも起こる。
数年前のことであるが、「京都の某大学生協で、プリンを20個発注するところ、間違えて20ケース(4000個)を発注してしまい納品された。他生協に協力を頼んだり、35%引きで売った。大学生もツイッタ-で友人に協力を頼み、無事売り切った」と報道されていた。
つい最近も、三浦半島にある小売店で、鶏卵をパック数で発注するところを、ケース数で発注してしまって売れ残って困ったと聞いた。
誤発注に備えて、多くの発注システムでは、異常に多い発注量に対しては、システムから「本当に、こんなにたくさん発注しますか」と聞き返す警告が組み込まれている。
2)発注点
「発注点」の計算方法は、
となるが、実務的には、
「補充商品の納入を待っているうちに欠品しないよう、発注点を設定する」
「発注点は常時一定とせず、需要動向等の応じて柔軟に見直す」
「発注点に達したときの発注数量は、商品別に月次・週次・日次等の需要量に応じて設定した一定量を、毎回継続して用いる」
等がポイントとなる。
とくに、発注数量については、配送の効率化を考慮して、できるだけオリコンやケース単位に取りまとめることが望ましい。例えば、13個であれば、10個入ケースと単品3個となり、単品3個は物流センターでは、ケースから3個取り出してポリ袋に入れて縛るなどの作業が発生する。作業要員・時間・コストが無駄ではないだろうか。
2)出荷確率の考慮
先ほどの「定期発注方式」でも同じであるが、「定量発注方式(発注点法)」でも、たまにしか出荷が発生しない商品の場合は、在庫が過大となりやすいので、実務的には、出荷確率を考慮する。
とくにCランク商品の場合は、必ず毎日出荷があるとは限らないので、この出荷確率を考えないと、ロット生産してしまった結果、前回以前に紹介したように「何年分も在庫がある」ということが生じる。
3)ミニマックス方式
補充点(発注点)と最大在庫量をあらかじめ設定し、在庫量が補充点を切った時点で、現時点の在庫量と最大在庫量の差を補充する在庫補充方式を、「ミニマックス方式」という。ミニ(補充点=最小在庫)とマックス(最大在庫)から名付けられ、定量発注方式(発注点法)の変形と言える。
在庫量の変動の大きい品目に運用するのが適している。一般に、最大在庫量(マックス)は、「安全在庫量+○日分の出庫量」などで設定するので、○日の間に次の補充がなされる必要があり、調達リードタイムもマッチするように設定する。
また、季節商品等の場合の最大在庫量は、需要予測に合わせて設定することも多い。
(6)定期発注方式と定量発注方式の比較(適用品目)
ここで、一部繰り返しになるが、定期発注方式と定量発注方式の比較を、「適用品目」「利点」「欠点」に分けてお浚いする。もう一度読み直して、「自社では」あるいは「この品目では」どちらを採用するか、考えて欲しい。
1)適用品目
①定期発注方式
A品目(高価格の品目)
B品目のうち設計変更や陳腐化危険品目、需要変動の大きい品目
②定量発注方式
B品目(発注点方式)・C品目(ダブルビン方式)
A品目のうち需要予測しにくい品目
2)利点
①定期発注方式
厳密な在庫管理で在庫削減が可能
適切な生産計画の樹立が可能
②定量発注方式
管理の手間が簡素化
在庫管理基準による適切な在庫管理
経済ロットによる発注が可能
3)欠点
①定期発注方式
管理の手間がかかる
経済ロットでの発注が困難
担当者のカンや経験に頼りがちとなる
②定量発注方式
在庫が多くなりがちである
在庫調整が困難で、形式的な運用となりやすい
適切な生産計画がたてにくい
3.在庫把握と在庫精度の向上
毎日の入出荷作業を続けていると、帳簿やコンピュータ数と実数が合わないということが、よくある。その原因としては、いろいろなミスがある(図10は、QC七つ道具の一つ「特性要因図」、通称「魚の骨」で原因を探るのに使う)。
しかし、最近のような複雑な多品種になると、往々にして「モノの流れ」と「情報」の時間差が問題になる。
コンピュータでは、「在庫あり」となっていても、実際は出庫してしまってモノがないということになる。「営業マンが顧客の要望で、倉庫から勝手に持ち出してしまう」などは論外である。
在庫管理の第一歩は、まず正確な在庫数を把握することにある。
それは、「どこに」「どの商品(SKU)」の在庫が「何個」存在するかを、常時、正確に把握することが、「在庫管理」の前提であり、出発点である。
第二に、置き場所(ロケーション)を決めて、必ずそこに置くことである。
第三に、入庫・出庫は必ず伝票を発行して行う(情物一致)ことである。
(1)企業間における在庫情報の共有化
今や、在庫はサプライチェーンの中で、原料・部品・半製品・製品(商品)と形を変えながら動き、かつ滞っている。
それら生産工程(委託生産を含む)・流通過程に漂う在庫を管理するには、「企業間における情報の共有化」が重要である。
最近では、パートナーである企業との情報共有化が多くなってきた。たとえば、部品メーカーであれば、納入先のメーカーの生産計画があらかじめ入手できるということ、つまり、調達ネットワークと生産ネットワークを統合させるということである。
また、大手量販店やコンビニでは、販売データを公開している。販売データを製販で共有し、「在庫」の「適正化」等につなげようとしている。
滋賀県を中心に展開しているスーパーの平和堂は、販売データをカトーレックという食品卸と共有化して、カトーレックが平和堂の物流センターを請負い、各店舗に自動補充納品をしている(ECR=Efficient Consumer ResponseあるいはCPFR=Collaborative Planning Forecasting and Replenishmentと呼ばれる。詳しくは、日通総合研究所編「ロジスティクス用語辞典」参照)。製造業でいえば、VMI=Vender Managed Inventoryも同様である(同書参照)。
ブルウィップ現象(効果)というのは、図11では右端の消費者の末端需要(例えば3個売れた)が、左側へ、小売~卸売~メーカーと流れていくうちに、
「今日は3個売れたので、明日は5個売れるかも知れない、6個仕入れよう」
「今日は6個仕入れてもらったので、明日は8個仕入れてくれるかも知れない、10個取り寄せておこう」
「今日は10個出荷があったので、明日は15個出荷があるかも知れない。20個作ろう」と思惑が思惑を呼んで、実需が大きな仮需要を生じさせることである。
ブル(牛)ウィップ(尻尾)ということで、根元の小さな動きが先っぽでは大きな振れになることから名づけられた。
販売データであるPOS(実売)情報が、小売り店頭からメーカー・サプライヤーまでSCM上で共有化・使いまわされていれば、このようなことは起こらないと思う。
その反対の現象は、かつてのパソコン販売で見られた。
パソコン販売店はメーカーからのリベート(販促金)が欲しいので、あるメーカー製品が売れていても「お宅の商品の売れ行きは良くありません」と販売(POS)情報を隠したり、販促金目当てに実需以上の仕入れをしたりと、実需と大きくかけ離れた商取引であった。大量仕入れ・不良在庫は、メーカーに返品するかディスカウントショップに叩き売って、ますます市況を下げてしまう。それが、今に続くパソコン販売の苦境の一因となっている。
(2)保管方法の整備
在庫精度を向上させるには、保管方法を整備する必要がある。何がどこに幾つ置いてあるか分からないのでは、「在庫管理以前」の状態である。
現場の技法である「ロケーション管理」「5S」「定点撮影法」を説明する。
1)ロケーション管理
「ロケーション管理」は、置き場所を明確にして、「どこ」に、何が、どれだけ、あるかがはっきり分かるようにしようということである。
置く場所に所番地を付ける。それをコンピュータに連動させる。「このスマホは105番地に格納せよ」「105番地から10個取り出せ」という指示を出す。
①ロケーションの番号の付け方
ロケーション管理で最も重要なことは、ロケーション番号(コード=棚番地)の付け方である。
②ロケーション・コードの例
A02-01-06
(棚№)(段)(番地=奥行き方向)
エリアを棚№の前に振る場合もある。
③ロケーション・コード付けのポイント
現場作業者が間違わないよう、作業がし易いよう、
「格納場所は、出荷頻度によってABCに分ける」
「荷動きの激しいA商品は、入出庫し易い場所に置く。BC商品は奥のほうでも良い」
また、棚の高さでも作業し易いように、
「作業者の目の高さにA商品を置く」
「段は、表示の『上』か『下』か迷わないよう、矢印を付ける」
「よく似た品番・SKUは間違わないよう、離れた場所に置く」
「高価品・危険品・易損品は別管理する」
などに気を付ける。
④固定ロケーションとフリーロケーション
自動倉庫などでは、フリーロケーション(空いている棚に商品を入れて、入れた棚番地を、品番と紐付けしてコンピュータが記憶し、品番で出荷指示されれば、紐付けされた棚番地に取りに行く)が、保管効率を上げるために活用されている。
1-(3)で述べた、アマゾンFCの「本棚」もフリーロケーションである(図書館ではNDCで管理しているので、固定ロケーションである)。
東京国際空港(羽田)にあるTIACT(東京国際エアカーゴターミナル)では、フリーロケーションが導入され、天井の梁にバーコードが書かれていて、貨物を置いたら、その真上の梁のバーコードを読んでロケーション登録していた。
⑤倉庫管理システム(WMS)
筆者はICTの専門家でもなく、当レビュー誌面の都合もあり、各種システムのユーザーの立場から簡単に述べる。WMSについての実務書も多いので、詳しくはそちらを参照されたい。
WMSは、コンピュータで「入荷・入庫→ロケーション・在庫管理→ピッキング・検品→出荷・出庫」という一連の物流センターのオペレーションと、それが計画(指示)通りに行われているかどうか、「進捗管理」「作業(労務)管理」を行う、倉庫管理システムであり、ロケーション管理が行われていないとWMSは使えない。
WMS導入の目的の一つは、誤出荷(品違い・数量違い)や在庫の不整合(帳簿在庫と実在庫が合わない)をいかに防止するかである。
最近は、金融商品取引法など内部統制上からも、厳正な在庫管理が必要とされている。
とくに食品・化学品(医薬品・危険品)等では、安心・安全のためにロット管理や、トレーサビリティ(追跡管理)まで可能な、WMSが導入されている。
食品などでは、「日付管理・ロット管理」が必要で、「日付逆転」した商品は小売業に受け取ってもらえない。
そこで、WMSにより「日付管理」「ロット管理」をしているが、パレット納品など大量納品の場合、出荷段階でのパレタイズの過程で、WMS上の日付管理より古い商品が混入していることがあり、小売業の荷受場では段ボール1ケースごとに、「日付(製造日付・賞味期限)」や「ロット」を確認するので、納品作業に時間が掛かる例がある。
2)5Sの推進
現品管理の基礎的なことで、よく「5S」ということが言われる。
「整理」・・要るものと要らないものを分ける
「整頓」・・必要なときにすぐ取り出せるよう保管する
「清掃」・・必要なときにすぐ使えるようにしておく。整備も含む。
「清潔」・・3Sの繰り返しによる異常の顕在化と早いアクション
「躾」・・・・継続と訓練による習慣化
この「5S」は多くの会社で実践しているが、完全に実行して効果を挙げているところは少ないようである。それを成功させる鍵は、トップ自身が陣頭指揮でやっているかどうかにかかっているように思われる。
5Sの前は3S「整理・整頓・清掃」だったが、それに“2S”「清潔・躾」が加わった。日本電産では5Sに、もう一つ“S”「作法」を加えて、6Sを実施している。
有名な3PL企業であるが、「物流センターの5Sが行き届いていない」と筆者は感じたが、物流機器メーカーの人からも、同社の物流センターは「乱雑である」と聞いた。それでは、在庫も合わないのではないかと、他人事ながら心配になる。
3)定点撮影法
「定点撮影法」は、撮影場所を決めて写真を撮り、それを社内に掲示する。そして、次の撮影日を知らせる。
こういった簡単な手段で、不要在庫を削減する方法もある。今は、スマホで簡単に記録・通信できる。
面白いことに、5Sや定点撮影法を導入すると、それだけで在庫精度が向上することが多い。それは、物流センターの従業員が、「ウチの会社は、在庫管理に熱心だ」という意識が生まれるだけで、数え違い・誤ピッキング・汚破損が減るのではないだろうか。
以前に述べた、百貨店で輸入商品の前に担当バイヤーを立たせて写真を撮り、半年~1年後に、同じところで写真を撮影し、売れていなければ買い付け責任を問う、というのも、厳しい「定点撮影法」である。
(3)現品管理担当者の配置
①三定(定品・定量・定位置)の徹底
(この場合は、「定位置」は固定ロケーションという意味ではなく、「決められた場所」という意味である。作業中に「勝手に仮置きしない」ということ)
②現品管理担当者以外は在庫を持ち出さない(とくに営業部門・検査部門)
③入出庫(返品を含む)は、必ず伝票で行う
④返品処理のルール化(良品の選別と保管・再出庫、手直し等)
⑤ロケーションの決定
材料や部品の受け入れ、払い出しといった「現品管理」の担当者を決めておくことは、よくあるが、担当者以外の現場監督者や作業者には出庫業務をさせないようにする。
①~⑤は、当たり前のことであるが、なかなか徹底できていない(とくに、「営業部門や検査部門による伝票無しでの持ち出し」等)。
「返品処理作業」は、これだけで数回レビュー誌に載せられるくらい、煩雑である。
「必ず返品伝票(赤伝)と現物を確認する」
「良品と不良品を選別する」
「良品は手直しして保管・再出庫する」
「不良品はアウトレット・B級品として値下げ販売、社内販売する」
「産廃として処分する」
などの社内ルール通りの処理が必要である。
4.棚卸
棚卸は、在庫管理のPDCAサイクルの中で、在庫管理がうまく運用されているかどうかを評価する、重要な“C”(=Check)工程である。
それとともに、会社経営にとって重要な決算を行うための、資産価値の確定作業でもある。そこで、工場では生産を止めたり、店舗では棚卸休業をして、従業員総掛かりで棚卸をしたものである。筆者が担当していた大手GMSでも、8月末と2月末(決算日)には、「特休日」と称して、店舗も物流センターも、納品・配送業務も全てストップして、20万SKUという全商品の棚卸をした。
在庫を正確に把握するには、このような決算日の「定期棚卸」だけでは不十分である。棚卸は「決算棚卸」といわれるように、「売上原価の正しい把握」という意味づけがあったが、今日では、「在庫精度を高める」という目的が大きくなっている。コンピュータ化が進むにつれて、棚卸の意味合いも変わってきている。
以前、大手日用品・化粧品メーカーのロジスティクスセンターを見学したことがあるが、同社では1バッチ(5千ケース)ごとに仕掛り在庫のチェックをしていた。それでも、1万個に1個はミスがあるとのことだった。自動化・機械化が進んでいても、毎日の棚卸は欠かせないようだ。
(1)棚卸のポイント
棚卸の実施にあたってのポイントは、「棚札」と「棚卸票(タグ)」の使用法である。
1)タグ方式
1SKU1タグとする。タグは2枚発行し、1枚は現品に貼付け、1枚は棚卸し後に回収する。予め「残数(帳簿残)」は書かない。
残数が書かれていると、棚卸作業者はカウントの際に書かれた「残数」に「数合わせ」することに気を取られてしまい、正しくカウントし損ねることがある。残数が書かれていなければ、カウントに専念する。
2)リスト方式
多SKU1リストとする。現品に貼付できないので、棚単位にリストを発行などの工夫が必要である。
品番順にリストを作成すると、庫内でアチコチ飛び歩くことになり、時間が掛かる。
3)バーコード方式
現品のJANコードなどをスキャンする。人為的ミスは少ないが、システム的ミスに注意する。
RFIDによる棚卸が注目されているが、もっと読み取り率が高まることを期待したい。
そのうち、深夜に倉庫内の通路に沿って、RFIDリーダー付のドローンを飛ばして「棚卸完了」ということになるかも知れない(倉庫内にドローンを飛ばしてみた企業では、前述の5Sとくに清掃ができていないと、「ドローンの巻き起こす風で、埃が舞い上がって困った」とも聞いた)。
在庫管理・出荷管理の精度が向上してくる(ミス率がPPM=百万分の一の世界)と、納品先での「ノー検品」が可能となる。
最近は、棚卸代行会社もあり、流通業では決算時の店舗棚卸などで、利用しているようである。
(2)循環棚卸の実施
現品の棚卸には、大きく分けて「定期(一斉)棚卸」と「循環棚卸」がある。
「定期(一斉)棚卸」は、月末や決算期などに行われるが、「循環棚卸」は、在庫品を毎日あるいは3日ごとなど、少しずつ倉庫内を循環しながら棚卸していく方法である。
1)循環棚卸の利点
「循環棚卸」は、「定期棚卸」に比べて、多くの利点がある。
①工場・物流センターを停止する必要がない
②棚卸サイクルが短縮されるので差異原因の判明が容易となり、在庫精度が向上する
例えば、「在庫が3ケース合わない」というときに、「そう言えば、先月、品質クレームがあったときに、検査部門がサンプルで
3ケース持って行った」など。
③棚卸回数が増え、棚卸業務の習熟者が数えることで、カウントミスが減る
④在庫や棚卸に対する意識が高まり、在庫が減る
2)ABC分析と循環棚卸の頻度例
しかし、在庫品目数が多いときに、全品目をすべて、きめ細かく棚卸するのでは、工数が掛かりすぎるので、例えば、ABC分析によって、「循環棚卸の頻度とやり方」を決めておく。
(例)
A品目は1カ月に1回の頻度で、一巡する循環棚卸しを実施し、在庫精度を高める
B品目は3カ月に1回の頻度で、一巡する循環棚卸しを行う
C品目は6カ月に1回の頻度で一巡するか、または期末(決算)棚卸しのみにする
次回は、いよいよ「在庫削減の具体策」に入って行きたい。
(つづく)
【参考文献】
- 平野裕之「在庫管理の実際」日経文庫、1991
- 勝呂隆男「適正在庫の考え方・求め方」日刊工業新聞社、2003。「適正在庫のマネジメント」同、2005。「適正在庫のテクニック」同、2006。「売上を伸ばす適正在庫の定め方・活かし方」同、2014
- 湯浅和夫「在庫管理ハンドブック」PHP研究所、2005
- 長谷川雅行「最適在庫の決め方と在庫圧縮・最適化~自社に最大の利益をもたらす~」「今後の在庫・物流管理と在庫管理・SCM」(一社)日本資材管理協会 セミナーテキスト、2012~2017各版
(C)2018 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.