第269号在庫管理を考える。(後編)(2013年6月13日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
8.在庫管理(発注)の主な方式
需要が安定している商品(システム管理できる在庫)と需要が安定していない商品(営業などの責任に帰する在庫)の保管場所(ロケ)を分離して管理することが必要です。
EOS(電子データ交換)などによる受注データのロケ在庫引当の工夫が必要です。
1)在庫品の発注方式の選択(在庫方針)
アイテム毎の特性、売れ行きや出荷量の変動、 曜日別波動、月末・月初波動、特売商品、
催事商品、新商品、季節商品など、いまある在庫量で何日分の出荷に対応できるかなどで
発注(在庫コントロール)作業を行う必要があります。
出荷量の予測違い、発注タイミングが早すぎたり、遅すぎることにより過剰在庫、欠品
が生じないように「最適な発注方式」を選択する必要があります。
2)主な発注方式・・・変革している業種・業態の需要に適応した発注方式
3)在庫補充(発注)の基本は「在庫日数」
出荷量に対して在庫量だけでの在庫管理は「多い、少ない」の目安にならない!
商品毎に何日分(在庫量÷一日当りの出荷量=在庫維持日数)の在庫量を持つかで管理すること、1日当りの出荷量を基準に現在ある在庫量が何日分に相当するかを常にチェックし、 補充(発注)の量や発注タイミングを取ること。
9.在庫削減の着眼点
在庫削減への取り組み方法は、企業の事情によってそれぞれ異なります。
ここに挙げたものは、実務で実施した事例の一部です。
1)過剰在庫、不動在庫(デッドストック)の処分
過剰在庫、不動在庫となっている商品を可能な限り処分します。
損金処理となるので決断しにくいのですが、デッドストックを保管していても利益は、生み出しません。
下記の☆参考:在庫(ABC)の出荷量と在庫量分析(ABC)パレート図で某企業のアイテム毎の在庫状況の実績(6ヶ月平均)がよく見えてくると思います。
そこで、図表を用いて自社のアイテム毎の在庫の分析をしてみると自社の在庫管理方式、在庫決定ロジックを見直すことの可否を判断することになるでしょう。
在庫量が多いと判断した場合、在庫日数(在庫量)の削減で適正在庫にすることです。
2)アイテム別管理の徹底で過剰在庫、不動在庫の発生を押さえます。
商品の特性(定番品、大量出荷品、季節波動品、新製品等)に合わせて補充方式、保管方式を変更し、一定量を超えないように管理します。
3)アイテムの整理・・・アイテム・カットによる在庫の削減!
出荷量と在庫量のバランスと「コスト(採算)」を考えたアイテム・カット(在庫削減)を行います。
カット条件として☆参考:在庫(ABC)の分析で過剰・不動在庫(在庫日数)を求める!の図表でアイテム毎に出荷量の多い(ABC/IQ分析)順に出荷累計、在庫累計、在庫日数、などを見るとアイテム毎の動きが一目で理解できます。
年間、または6ヶ月に数回しか注文がなく出荷頻度の低い商品は廃番対象とします。
固定客や営業的な要求から社内の抵抗が大きい商品もありますが、廃番ルールにのっとってアイテム削減につなげます。
4)小ロット多数回物流による在庫削減
①ロットサイズを小さくすること。
1回の発注量を小さくすることによって在庫は確実に減ります。
但し、小ロット多数回物流の実現で物流コストの上昇につながります。
②場当たり発注と小ロット多数回物流を明確に分けてとらえること。
場当たり発注は、その場その場で、いま欲しいものを注文すると言うやり方、1日に複数回の注文が出されることもあります。
これは、もう小ロット多数回物流と言うものではなく、自社の在庫管理のお粗末さをカバーするために物流が使われていると言わざるを得ません。
10.最後に・・・。
在庫管理に特効薬はないようです。
在庫管理の基本は、現物在庫と理論在庫(コンピュータ情報)の不一致をなくすこと、沢山の企業の物流改善のお手伝いをしてきましたが、現物在庫と理論在庫にほぼすべての企業で差異が生じていました。
作業改善よりも在庫改善が優先されるべきと実感した次第です。
そして、在庫管理の多岐多彩の技術や手法に惑わされることなく、日々の作業の中で「少なすぎない、多過ぎない」を物流センター全員が意識した結果、物流作業者の意識で現状よりも在庫管理と在庫精度の改善につなげた企業も有ります。
在庫管理の多岐多彩な情報システムが導入できなくとも「作業者みんなの強い意識」だけで在庫数量と在庫金額(二重性)のレベルアップにつながります。
今日からでも全員一丸となって、在庫管理の向上につなげてほしいものです。
以上
(C)2013 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.