第282号 物流現場の小集団活動を考える!(2013年12月17日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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執筆者略歴 ▼
目次
1.はじめに。
物流は労働集約型の産業であり、今後も大きく変わらない基本条件が揃っています。
さらに、長期的に見た場合、高齢化、出生率の低下に伴い、特に物流現場の労働力の
減少は、避けられない見通しであり、自動化には馴染まず、労働環境が厳しくなる一方
の産業形態になっています。
一方、景気の長期低迷(アベノミクスで上昇機運に乗るか?)に伴い、全産業的に社員の削減と社員の労働時間の見直しを推進する動きが広がっています。
顧客(荷主)の満足度を維持するために社員、パートを問わず、自社の物流現場に適応した人材の育成、パートと社員が上手に業務を分担、物流現場から収益が確保できる職場風土づくり、物流現場の活性化が今後の大きな成長のキーポイントになると言われています。物流現場の活性化を支援する小集団活動を考えて見たいと思います。
2.物流現場の活性化手段として小集団活動があります。
物流現場のキーワードは、「サービス性を高めること、品質・精度を維持・向上させること、コストを必要最小限に軽減すること」だと考えます。
個々の物流活動を様々な評価基準(保管効率、在庫回転率、車輌積載率、など)を基に評価・分析、物流改善に繋げていくことも物流現場の重要な役割の一つです。
誰でも、いつでも働き甲斐!を感じる職場の実現、現場物流を制する者が「物流業の
勝者」になれる! と考えています。
誰でも、いつでも喜んで働ける(生産性を後押し)環境を提供すること、各プロセス(作業工程ごとに・・・)において社員・パート、ほかが日々安全で安心して働き甲斐、生き 甲斐を持ち、生産性を高める環境を満たすことが求められています。
その物流現場環境を高める手段として小集団活動が有り、小集団活動を育て、成功させることが物流現場の活性化に繋がると考えています。
小集団活動を成功させるには、物流現場を知り、現場改善能力を高めることです。
物流現場の改善の手段として小集団活動が効果的ですが、日々の業務の改善に必要な能力として気付きが重要です。
日々の業務を実践する中で、何が問題で何が問題に関する因果関係があるかを把握できることが重要な要素になります。
先ず、現状を把握する力をつけること、自社の経営方針、物流部門の事業目標を理解すること、部門の役割や売上・利益といった経営状況を理解しておくこと。
自社の物流の基本を認識すること、自らの扱っている商品が調達から販売の工程の中でどのようにモノと情報の流れになっているかを理解しておくこと、自社の現場の実態と技術と手法を認識しておくこと、物流現場の品質、コスト、生産性の実態を日々データを用いて正しく認識できること、かつ必要に応じて数値が把握できることが重要です。
物流部門のスタッフは、経営方針、事業方針をもとに現場の実態を常に把握・分析能力を養い、物流現場から自社の収益向上に寄与することを自覚して欲しいものです。
改善案の優先順位を決め、具体的に実行可能な計画(目的、活動内容、担当者、必要な投資、推進体制、難易度、スケジュールなど)を建てられるようにすること、現場の担当者全員が理解できる分かりやすい目標を設定すると共に問題点や課題の改善案を企画、策定する能力を持つことが重要です。
例えば、手法や改善案を立案する上で、特に小集団活動で必要な発想手法(例えば・・・ブレーンストーミング、KJ法など)を習得することを望みます。
さらに、実行計画と目標を現場の担当者に分かりやすく説明し、周知徹底させることが出来ること、実行推進力を醸成するため、教育・指導力などの現場担当者の実行力を評価して、現場改善に必要な教育・指導を適切に実施することが肝要です。
成熟しつつある物流現場の改善は、小手先だけでなく、物流現場の総合力の発揮が必須条件になっています。
その物流現場の総合力の中には、トラブル対応力も求められると思います。
改善を実行する段階で、予期せぬトラブルや障害が発生し、改善の妨げになる事象が起きた場合、迅速・適切にトラブル解決の対策をとることが出来ることです。
物流現場からの相談・報告などスピード感を持って正しくは発進できること、上司、スタッフ、部門長などとの意思疎通が常に図ることが出来ること。
上司への報告や関連部署との適時(タイミング)話し合いを図り、改善を円滑に進めることが肝要と考えます。
また、改善を実行する力として、進捗スケジュールと進捗評価指標を設定し、現状の進捗状況を正しく評価することが出来ること、評価の結果、必要に応じて改善活動の促進(現場モチベーション向上・支援体制の強化など)や計画の見直しを行い、目標の達成に繋げる支援も必要です。
改善した内容が後戻りしないように、現場をフォローし、標準化(マニュアルの見直
し、継続的な教育の実施)等により定着化させることが肝要です。
3.グループ(小集団)活動の考え方。
小さなグループをたくさんつくること。
そこに、責任と自由度を与えること。
小さいグループの集まりであるからといっても、思いつきで集まったのでは、目標や問題意識を共に持つことが難しい・・・問題意識の共有化が前提です。
目標達成に向けて一定期間の継続的な活動で集団の人間関係(チームワーク)を深め、目標や問題意識を共有することが成果であり、職場の活性化に寄与します。
相互理解(チームワーク)づくりや深める集団を目指す以上、お互いを認め合う関係を深めることが小集団活動を行っていく上で重要なことです。
QC活動と同じように社内発表大会や社外の発表で意識高揚(刺激を与える)を高める活動も必要です。
出荷〆切時間に追われて息つく暇もない物流現場においても、小集団活動の活発化を進めたいと考えます。
小集団活動は、改善活動を実践しながら物流マンの人材育成や現場を活性化させる最高の実務教育です。
小集団活動とは、グループで職場の改善などを一定期間、継続する活動を小集団活動といい、チームワークで行う共同作業です。
小集団活動は、作業者が自ら参加することが重要です。
そして、作業者(個々人)の優れた能力をいかに引き出すかだけではなくチームワークという共同作業の中でそれらの多様な能力を有効に統合して目的達成に結びつけることが成否のポイントになります。
物流実務は、チームワークで成り立っていることを肝に銘じること、物流現場を運営する基本能力として、チームワーク力、リーダーシップ、コミュニケーション能力、状況判断力、情報分析力、調整力、交渉力などの能力が日常業務の中で求められています。
身近な課題を解決・改善しながら物流現場の「目配り、気配り、心配り」の心得など小集団活動を通して体得すること、職場風土として醸成していきたいものです。
主役は物流現場の作業者です。
トップ(社長・部門長)のコミットメントに沿って現場作業の内容、課題、改善のポイントなどを日頃、担当している作業者(身にしみて知っている)を主役にします。
小集団活動のポイントとしてグループリーダー(指導役)の心構えが醸成できます。
先ず、グループリーダー(指導役)を講習会などで教育、社内の指導資格を与え、指導役の意識高揚(指導役の心構え)を高めます。
指導に工夫を凝らします。
従来の物流業界・運送業界のイメージである根性主義を払拭します。
丁寧に教え、グループ員を感情的に叱らず、小さなことでも誉めることです。
定着率の確保とノウハウ(組織の力量)の継承を重んじます。
活動(改善)の進捗状況を社長(または部門長)が常に把握しておきます。
対策を実施に移す過程で、現状がどのように変わるかを観察しておきます。
他の部門との関係や仕事の進め方を変えなければならない時は、リーダーやメンバーと連絡しあい、速やかに調整します。
取り組んだ対策が効果的でない場合は、再検討し、速やかに練り直します。
日々実施状況がわかるように活動の推移をグラフやフローチャートなどで表します。
成果を確かめること。
改善実施前と実施後の状況をできるだけ数字やグラフで表すようにします。
当初のねらい以外に、別な効果があらわれていないかを確かめます。
改善を実施した事で新たな問題を引き起こしていないか確認します。
工夫すればさらに良くなるかを検討をします。
目に見えない効果がどのように現れているかを確認することが重要です。
4.小集団活動のメリット。
小集団活動は、軌道に乗ると職場内の活性化が促進されます。
メンバ-間や上司とのコミュニケーションが取りやすくなり、職場内の情報の伝達やコミュニケーションがスムーズになります。
チームワークがよくなり、職場内が活性化します。
職場の人間関係がよくなり、職場内が明るくなり、仕事が楽しくなります。
仕事面での効果(効率化)も期待できます。
改善意識や改善意欲が向上し、改善提案が増えてきます。
さらに、着眼点の視野が広がり、業務改善が進み、仕事がやりやすくなり、業務への取組み意識や品質意識が高まり、無理、無駄、ムラが少なくなり、コストダウンが進み、不良が少なくなります。そして、安全意識が高まり、事故が少なくなります。
社員(パート/アルバイトなど含む)の能力の向上(充実化)が図れます。
仕事への意欲、働きがいが生まれ、やる気が醸成され、問題、課題への意識の高揚
(発見)、問題、課題解決能力の向上が進み、自己啓発がはかられ、物の見方、考え方の幅が広がり、リーダーシップやコミュニケーション能力が向上します。
5.最後に。
小集団活動は、QCサークル活動が代表的ですが、物流現場の改善力と現場力を育むには、形にとらわれずチームによる小集団活動(問題解決活動)を通じて使命感、責任感、改善意欲と成長欲求、達成感と共感、スキル、リーダーシップ、メンバーシップ、コミュニケーション力などの自主性と自立性を育み、現場力を高める人材育成と組織活性化の場として、過去の経験から極めて有効なものが小集団活動の要素の中に沢山、含まれて、いると考えています。
早速、小集団活動を実践し、それぞれの物流現場に必要な実りのある成果を享受して
頂けることを願っています。
以上
(C)2013 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.