ロジスティクス・レビュー

第378号 様々なロジスティクス組織との出会い:需給管理をどう円滑化するか (2017年12月19日発行)

執筆者  野口 英雄
(ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表)
    執筆者略歴 ▼

  • Corporate Profile
    主な経歴
    • 1943年 生まれ
    • 1962年 味の素株式会社・中央研究所入社
    • 1975年 同・本社物流部
    • 1985年 物流子会社出向(大阪)
    • 1989年 同・株式会社サンミックス出向(現味の素物流(株)、コールドライナー事業部長、取締役)
    • 1996年 味の素株式会社退職、昭和冷蔵株式会社入社(冷蔵事業部長、取締役)
    • 1999年 株式会社カサイ経営入門、翌年 (有)エルエスオフィス設立
           現在群馬県立農林大学校非常勤講師、横浜市中小企業アドバイザー、
           (社)日本ロジスティクスシステム協会講師等を歴任
    • 2010年 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表
    活動領域
      食品ロジスティクスに軸足を置き、中でも低温物流の体系化に力を注いでいる
      :鮮度・品質・衛生管理が基本、低温物流の著作3冊出版、その他共著5冊
      特にトラック・倉庫業を中心とする物流業界の地位向上に微力をささげたい
    私のモットー
    • 物流は単位機能として重要だが、今はロジスティクスという市場・消費者視点、トータルシステムアプローチが求められている
    • ロジスティクスはマーケティングの体系要素であり、コスト・効率中心の物流とは攻め口が違う
    • 従って3PLの出発点はあくまでマーケットインで、既存物流業の延長ではない
    • 学ぶこと、日々の改善が基本であり、やれば必ず先が見えてくる
    保有資格
    • 運行管理者
    • 第一種衛生管理者
    • 物流技術管理士

目次

1.マーケティング本部とロジスティクス本部の並立:車の両輪として

  いつの時代でも企業活動にとってマーケティングとロジスティクスは車の両輪であり、これを組織としてどう位置付けるかでその経営の意図が明らかになる。某酒類大手でこれを両本部制とした組織は、実行力としてまさに圧巻であった。(図表1)の左側に示す組織の狙いは需給調整の円滑化にあり、ロジスティクス本部のトップに営業部門で実績を上げた人物を配置していた。酒類は典型的な大量消費財かつ重量物でもあり、物流コスト管理もさることながら、特にビールは鮮度管理が生命であった。
  ロジスティクスの要諦とは情報を駆使した計画と統制であり、そのコアは需給管理である。必要情報は例えば需要予測やリアルタイムの在庫量等で、これを基本に需給調整が行われる。それはまさにマーケティング部門とロジスティクス部門が協働化すべき仕事であり、この精度が競争を左右することになる。需要予測とは売りたい目標数字ではなく、実需をそれに如何に近付けるかという努力が伴うはずだ。
  マーケティングとロジスティクスを二つの本部制にして、連携を図らせる経営の真意は明快である。ロジスティクス部門のトップに営業経験者を充てたのも、それを補完する意味があるだろう。鮮度向上のためには在庫回転を上げる必要があり、在庫極小化と欠品回避を両立させなければならない。管理サイクルは日配品に近くなり、迅速なコミュニケーションが問われるのは当然である。

(図表1)理想的なロジスティクス組織

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2.マーケティング部門に物流を包含:ロジスティクスと一体化

  マーケティング本部に物流部門を取り込んでしまい、需給管理を一体化させた組織も狙いは同じだろう。独立した物流部門がマーケティング部門と対等の立場で需給管理を行うのは不可能に近く、これを一つのラインとして集約した。(図表1)の右側の組織だが、需要予測権限を物流部門に持たせた。結果として需給管理精度が向上し、両部門の関連要員削減というメリットも生まれた。スタッフ部門としての物流機能では、どんなに努力しても自ずと限界がある。
  この体制で需要予測はより客観化され、在庫のリアルタイム把握はもちろん物流部門としてはお手のものである。これは食品企業の例であるが、加工食品といえども市場からの鮮度要求は厳しく在庫極小化が求められ、このような組織に帰結したとも言える。これはもはや物流管理の次元を超えた、まさにロジスティクスとしての展開である。鮮度が後退しても売れる社会合意を目指すのは、その管理体制強化が伴わなければ意味がない。
  この企業には物流子会社があり、後にコールセンター機能をそこにアウトソーシングした。物流実務に顧客との接点機能を担わせるのは、別に悪いことではない。むしろ在庫状況は鮮度も含め豊富な情報を保持しており、実需状況を需給調整に生かすという極めて積極的な意味がある。これは受注機能をロジスティクスに含めるとした一例である。

3.一般的な物流管理本部:コストセンターからの脱皮なるか

  多くの企業で物流部門はスタッフ機能としての物流部で、単なるコストセンターに留まっているのが実情であろう。これを(図表2)の左側組織のように物流管理本部に格上げして、各ライン機能と対等に働かせようとする動きは一歩前進である。しかし物流コストを精密に把握して、ライン部門に警鐘を与えることはできるとしても、肝心の需給管理については手が出せないというところに落ち着きがちなはずである。
  事業部門が行う需給管理に対し、物流コストという観点からどこまでインパクトを与えられるかはその把握範囲による。支払物流費として顕在化されたコストだけではなく、潜在的部分をどこまで把握できるかが重要である。例えば在庫にまつわるコストで、陳腐化及び廃棄対応等である。需給管理の精度を、コスト面から厳しく評価していく。
  しかしどう頑張ってもこの組織体制では、強力な事業部門に太刀打ちできないだろう。需給管理についてどこまで権限を与えられ、日常業務にまで関与できるかが問われる。もちろん物流部門としてマーケティング施策を充分に理解し得る感性も必要になる。これは物流事業者が3PLとしての顧客獲得を行う際も同様である。

(図表2)一般的な物流部門組織

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4.物流子会社へフルアウトソーシング:需給管理実務まで委託

  市場からの鮮度要求が高まり、流通から要求される稼働日の違いから生じるギャップも深刻な問題になる。もちろん物流業務の過酷な労働状況を無視するわけにはいかないが、これらを乗り切るため需給管理を含めた実務を物流子会社へフルアウトソーシングした事例もある。(図表2)の右側に示すように、自社の物流部門をスピンアウトした。これは企業としてのロジスティクスを外部化したことを意味する。このようなことが本当に機能するとは思えないが、もちろんその補完策が種々講じられていた。
  まず親会社が主催する関連会議には全面的に出席し、物流子会社にその経験者としての出向社員が何人かいた。そして前述したコールセンター機能とセットにした業務委託である。これでもマーケティングとロジスティクスが果たして車の両輪として機能するかどうかは疑問だが、何とかこの体制で運営されている。
  アウトソーシングは単なる機能外注とは異質なものであり、委託側が充分な管理基準を示し、その管理状況を常に把握していく必要がある。一たび管理状態から外れたら、直ちに処置しなければならない。管理基準も状況に応じて変化するものであり、そのメンテナンスを的確に行いアウトソーサーに示す必要がある。

5.もはや自社に物流部門を持たない:コアはマーケティングという妄信

  物流やロジスティクスは企業にとってもはやコアではなく、アウトソーシングするという安易な流れには異論を唱えたい。企業にとってマーケティングこそがコアであり、後はアウトソーシングという考え方は余りにも安直過ぎる。サプライチェーン全体の品質保証が充分に確保されなければならないが、そこには日常業務リスク対策や危機管理さえも丸投げするという危うさがある。(図表3)に示すように、本来アウトソーシングとは極めて高度な経営施策である。20年前の時点で、既に委託側の責任が重大であると警鐘を鳴らした慧眼は、今でも生きている。今、社会全体に余りにも安易なアウトソーシングが蔓延している。

(図表3)アウトソーシングの目的

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  これを3PLに簡単に委託するとか、3PLはそれを単純に受託するのも短兵急過ぎる。料金体系も変動契約として、単にコミッションを確保するだけというビジネススタンスも軽率である。サプライチェーンにおける品質管理責任をお互いにどう分担し、責任を果たしていくかという考えがなければ、実務システムとして意味がない。巨大ネットビジネスが市場を席巻し、その基盤はロジスティクスである。むしろそのシステムこそが競争を左右する、強力なツールとなっている。
  物流関連団体の会員構成を見ても、物流部門を外部化した荷主側企業の参加は激減し、今やマジョリティーとなっているのは物流事業者である。しかしこれは依然として物流次元の話であって、真にロジスティクスが市民権を得て正しく機能しているという姿ではない。円安株高で企業業績は一見向上しているが、経済改革が難航し出口が見出し得ない状況の一因は、ロジスティクスが未だ社会に正しく理解されていないことにもあるのではないか。それは物流と同じ程度と考えられるものではない。

以上



(C)2017 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.


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