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経営戦略・経営管理

第48号食品メーカーとしてのサプライチェーン構築への取組(2004年1月30日発行)

執筆者 川島 孝夫
味の素ゼネラルフーヅ株式会社 常勤監査役
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1966年 大阪外国語大学卒業 ゼネラルフーヅ(現AGF)入社
    • 1972年 鈴鹿工場総務課長
    • 1976年 本社人事課長
    • 1978年 情報システム部課長 米国本社1年システム研修
    • 1986年 情報物流部長 米国本社3ヶ月Logistics研修
    • 1990年 インフォメーション・ロジステックス部長
    • 1995年 理事就任 ロジステックス部長兼システム担当
    • 1997年 理事 情報システムセンター長兼ロジステックス担当
    • 2001年 常勤監査役就任
      現在に至る
    委員・所属団体等
    • 経済産業省XML-EDI及びJEDICOSーXML標準化委員会委員
    • (財)流通システム開発センター酒類・食品企業間標準システム研究会(F研)名誉顧問
    • (財)日本ロジスティクスシステム協会ITフォーラム企画委員会副委員長及び能力開発委員会副委員長(ロジスティクス経営士認定機関)
    • 千葉敬愛大学経済学部非常勤講師

目次

1.はじめに

  当社は、日本最大の食品メーカー味の素と米国最大の食品メーカークラフトの合弁企業である。クラフトは、世界最大のタバコ産業フィリップ・モリスが十数年以前から世界大手食品メーカーのゼネラルフーヅを皮切りに、クラフト、イギリス大手コーヒーメーカーのケンコ、ヤコブス・シュシャ-ル、大手菓子メーカーのナビスコ等を買収し、米国最大の総合食品メーカーとした企業である。 味の素とゼネラルフーヅの合弁企業となって、今年で30年である。又、フィリップ・モリスが株主になって12年である。
  営業・マーケティングは味の素、生産技術・研究機能はクラフトと役割を明確にしている。システム・ロジスティックスは比較的進んでいるクラフトに学び日本での味の素ゼネラルフーヅ(以降AGFとする)の経営活動に活かしている。ここでは、このクラフトでのSCM戦略の概略を説明し、AGFとしてどのように我が国で展開したかを紹介したい。

2.SCMの定義

  クラフトからみると、日本は「定義が曖昧」らしい。つまり「いきなりHowから入っていくが、そもそも目的は何か?SCMとは、何か、範囲は、目的は等々を明確にしないで、現状改善論議ばかりしている」と指摘している。そして、定義が不明確ということは、目的が不明確だからだとも指摘する。
  クラフトのSCM定義は、「原料・包材から消費者に至るまでの、全ての調達・購入・移動(物流)・保管・受注出荷・システムの管理を全体最適化すること」である。世界最強のアメリカ軍の管理概念を企業活動管理に焼き直したものとしている。
  したがって、次にこの目的に沿った企業としての進め方(Step)を明確化することが重要である。

3.SCMの進め方(Step) 参照:図表―1

  図表―1はクラフトのSCMの進め方(取組Stepとその範囲)を一覧表にしたものである。
  第一段階は、原料・包材の調達・購入から小売店までの範囲でのロジスティックスとEDIの取り組みである。我が国では、EDIについては活用技術は固定長・J手順と古典的ではあるが、実用化され業界インフラとして十分機能している。ロジスティックスについては、部門名としては相当普及したが、クラフト定義に見合う機能を持っている酒類・加工食品メーカーは未だほんの数社しか存在しない。物流部の英訳部門と誤解している。したがって、今回はAGFでのロジスティックスの進め方とその成果を中心に紹介したい。

図表ー1.SCM Relationship



  第二段階は、ロジスティックとEDIが企業間で出来た上で、所謂ECRに進める。ECRのスタートは企業間の在庫削減・物流費削減・受発注関連業務等の効率化を狙ったビジネスプロセスの変更であるCRP(自動補給プロセス)である。このことは、メーカー・小売間での最適生産ロットへの追求を惹起せしめ原料・包材メーカーをも巻き込んだ原価開示をベースとした所謂戦略同盟関係(アライアンス)と発展していくことになる。CPFR(協働して予測し計画策定する企業間同盟関係)へと発展していく。クラフトは大手グローバル小売(ウオルマート、カルフール、テスコ等)とCPFRレベルにある。我が国では、この概念を論ずること自体大変非現実的である。即ち、ロジスティックスも初期的レベルである、ABCコスティングも殆ど取組まれていないので原価も曖昧等々の基本的な問題もあるが、我が国の流通機構が欧米社会と大差があり、 それも日本人の日常食生活が魚中心(世界の約25%を消費している)であることに起因していると考えられる。したがって、原価開示を前提として、全体最適を取組むことは現時点では非現実的と言わざるをえない。

  第三段階は、IT技術革新をベースとしたE-Marketの展開と考えられる。日本人の食生活は、生鮮志向が欧米に比し極端に強い。また、ドライ(常温)食品と冷凍食品に比しチルド食品(温度管理食品)が急成長している状況から推察すると、物流機能の改善で、生産者と消費者がより直結した市場が成長することも想定される。高齢化社会では、益々その可能性が高まると考えられる。

4.ロジスティックスの目的 参照:図表―2

  ロジスティックスとはどういうことか?まず物流についてみてみると、アメリカでDistributionが、日本では「流通」と呼ばれるが、そのこと自体アメリカの定義と異なる。例えば、得意先と「物流」の議論をする場合、得意先は「販売物流」を意識する。つまり「販売物流」の保管費、荷役費、梱包費、運搬費等を物流費と捉えるが、メーカーにとっての物流費は原料・包材の調達物流はもちろん、工場内でのマテリアルハンドリングも、生産物流、構内物流として捉えている。したがって、トータル的に考えず、販売物流だけを考えるとメーカーに負担がかかる。

図表ー2.Logistics 目的・定義



  クラフトのロジスティックスの定義は、原料・包材メーカーから原料・包材を購入し、工場へ持ち込み、生産工程・包装工程を経て出荷し、D/Cを経由し店頭に並ぶ。 この流れが、サプライチェーンである。このサプライチェーンには縦の流れと横の流れが存在する。縦の流れで重要な管理概念は品質管理と生産性向上である。 横の流れで求められる管理ポイントは、カスタマー・サービスである。 日本では単に「お客様へのサービス」と捉えられがちだが、クラフトでは、「他社に対する競争力」と捉えている。例えば、他社の受注率に対してクラフトは何%なのか?日本では、情報が有価証券報告書だけだが、アメリカではGMA(アメリカ食品製造工業会)という組織があり、日本では社内的に使われているKPI(管理指標)を公表している。 受注率は、得意先に対するサービスレベルの実態の一つのKPIとして管理されている。 ゴルフに行くとか飲みに行くといった人間関係強化が日本のカスタマー・サービスと考えられてきたが、国際基準とは大きく異なっている。
  横の流れで、サプライヤー・工場・DC・店頭にも在庫が存在する。しかし、夫々形態が異なる。例えば、工場在庫は原料・包材・仕掛品等である。 出荷部門にも在庫があるが、品質検査完了品とそうでないものがある。
  このように、在庫は各ロケーションで存在するが、クラフトのロジスティックスに対する基本的考え方は、これら全ての在庫を一つのファンクションで管理することである。従って、ロジスティックスは在庫の一元統合管理機能である。 従来AGFでは、原料・包材在庫は資材部が、DC在庫は営業や物流部が個別に管理していたが、全てロジスティックス部門に統合した。この統合化がキーワードである。統合とは、中央に集中することではなく、新たな管理概念を構築することである。
  要約すると、クラフトのロジスティックスの目的は、在庫削減と得意先へのカスタマー・サービスレベル(競合優位性)の向上である。

5.ロジスティックス導入のステップ

  ロジスティックス機能導入について、クラフトのマニュアルでは三段階で導入することとしている。

  第一段階は、情報システムの統合化である。目指すべき在庫管理のあり方を明確にし、在庫情報の一元化を図る。販売管理用の在庫情報と原価管理用の在庫情報は、管理目的が異なることから一元化(同期をとる)は必ずしも必要でなかった。 しかし、クラフトの考え方では、全ての管理は先ず 情報の一元化にあるとしている。情報が輻輳する状態は、無管理状態であると断じている。そして、一元化された情報は誰もが簡単に検索・活用出来る状態にしておくことが求められる。換言すると、情報を一元化し共有化を図ること。

  第二段階は、主要計画調整機能の統合化である。一般的にどの企業も事業計画は2-3年の単位で策定され、毎年1年ずつ見直していく。この事業計画の根幹を成すのが販売計画である。販売計画に準拠して生産計画、在庫計画、資材調達計画、投資計画、要員計画等が策定される。販売計画が変更されれば当然関連計画も変更せざるを得ない。そして、積極的であれ消極的であれどの企業も販売計画を見直さざる得ないのが現実である。 では、この販売計画の変更に伴なう生産計画や在庫計画・資材調達計画はどの部門が調整するのか?クラフトでは、その調整機能は全てロジスティックスに統合して行うことにしている。AGFでは、1990年からこの管理をトライしているが、人も在庫というクラフトの考え方は我が国では難しいので製品に関わる在庫管理(原料・包材・半製品・製品)と定義している。
  例えば、販売計画の調整機能について、ギフト商戦はどこも厳しいが、健康番組に取り上げられて以来、コーヒーギフトは大検討をしている。インスタント、レギュラー、リキッドとバリエーションが広がり、コーヒービジネスは産業規模としても1兆4千億円となり、化粧品業界を規模として抜いた。所が、ギフトのシーズンが最近短くなってきている。以前、お中元シーズンは6月下旬から7月中旬頃までが関東、7月下旬から8月中旬までが西日本となっていた。 しかし、人口の流動化が進み、お中元も7月初旬に集中するようになってきた。また、お歳暮12月初旬に集中化するようになった。このような状況では、ギフトの販売計画の調整をいちいち販売調整会議を開催して調整してるのでは間に合わなくなった。このため、ギフト販売計画のシーズン中の販売調整権限をロジスティックスに統合することが企業競争力として必須となってきた。
  この主要計画調整機能・権限をどこまでロジスティックスに統合できるかが、ロジスティックスとしての成功の秘訣である。我が国の大手メーカーでも、生産計画策定から販売計画の調整にいたる機能をもったロジスティックス部門を持っているメーカーはほんの数社に過ぎない。物流ネットの改善を担当する物流部門が大半であり、「ロジスティックス」機能の定義が希薄である。

  第三段階は、物流機能の統合化である。物流は、支店や工場で個別に管理するものでなく、ロジスティックスで一元統合管理するものである。在庫をゼロにすれば物流費はゼロに成る。この究極的な姿を追求することが物流管理である。 従って、在庫拠点の削減統合化を得意先へのサービスレベルを落とさず具現化することが求められる。得意先が求める通りに対応することが得意先へのサービスではない。例えば、2週間の在庫を常時保有している卸店に対し、「何故毎日発注するのか?2週間の在庫があれば、理論的には2週間に一度の発注でよいのでは?」との問題提起を卸点に行い、その原因は在庫管理にあり、共同で在庫削減に取組むことを提案するなど得意先との取組強化が必須である。

6.ロジスティックスの管理指標(KPI)

  ロジスティックスの管理指標(KPI)は以下の7項目である。いずれのKPIも計画値(目標)を年初に設定し、毎月実績との差異分析を行いその原因と対策をトップに定例報告会で報告する。

(1)在庫削減

  在庫については、最重要KPIであり、販売計画及び生産計画・資材購入計画から原料・包材、半製品、製品別在庫計画をWOS(週別)に策定している。 毎年、前年を下回る在庫計画を策定することが求められている。

(2)物流費削減

  物流費については、在庫をゼロにすれば物流費もゼロになるという究極的な姿を追求するスタンスをベースに、運賃・保管費・荷役料・構内物流費別に策定し目標管理している。

(3)SKU(Stock-Keeping-Unit、品種数)削減

  SKU数は、在庫との強い相関関係があり、その削減は在庫削減に多大の効果があることはAGFでも実証済みである。 SKU管理は、味の素で大変旨く管理されているのをAGFも見習った。即ち、SKU別売上・粗利ランク表を作成し、下から1%の売上に入るSKU数をカウントすると全SKU数の20%前後に上る。しかし、売上規模は全売上の1%前後しかない。原因は、所謂キャンペーン品が大半を占める。従って、キャンペーン管理がSKU管理であると定義付けても過言ではない。

(4)返品削減、(5)販売不良品(返品による)削減

  返品の大半は、ギフト品のシーズン終了時に発生する。通常品での返品は鮮度管理さえ緻密に行えば殆ど発生しない。ギフト品の発生については、業界の商習慣改善、メーカーとしての生産能力向上(受注生産型志向)等の取組を得意先別に取組むことが基本と考えている。

(6)配送ロット増・届け先数減

  届け先数を絞り込むにより、結果として配送ロットの増加を図る取り組みをメーカーとしての販売取引制度改訂の切り口で見直し、一定の成果をえているが更に、メーカーD/Cを経由しないで、工場直送を推進し在庫削減・物流費削減を図っている。

(7)受注・配送頻度削減

  得意先からの毎日受注・毎日配送を見直し、在庫管理拡充をベースに計画発注に基づく配送頻度低減を取組む。このことにより、受注関連業務削減・在庫削減・物流費削減を得意先と図っている。

7.AGFの成果

  AGFにおけるロジスティックスの主要な成果としては、導入後5年間で以下の4項目がある。

(1)在庫削減

  在庫の一元統合化機能(ロジスティックス)による、従来の営業支店在庫から本社在庫一元管理への変更を行い在庫を約60%削減し、2.2WOSに出来た。
  しかしながら、現状もほぼ在庫レベルはこの範囲に留まっている。原因としては、より数多くの得意先との取り組み進展が見られないことによる。

(2)物流費削減

  在庫削減が図れたことから、物流費削減も大幅に達成できた。 売上比5.5%だったものを、3.4%に低減できた。従来営業支店在庫としていた在庫管理を本社在庫とし、所謂社内での「商物分離」を図ったことが最大のポイントであった。更に加えて、D/Cの統廃合を行い25D/Cを8D/Cに統合し在庫管理をより行いやすくしたことも大きいと考えている。
  現在では、更に8D/Cを4D/Cに統合し、工場直送を積極的に推進し、物流費のより低減を図っている。

(3)SKU削減

  通常品でのSKU削減は、前述した管理方法で着実に管理できておりスタート時に比し、売上は約35%増にも拘らず、SKUは約30%削減している。
  ブランドを絞り、SKUを絞り込み、この中で消費者のニーズをどのように捉えるかの戦略に変更した。バブル期見られた新製品重点志向を抜本的に見直し、高齢化社会への対応、リサイクル等地球環境及び資源保護、食の「安全」への取組SKU管理の基本となっている。

(4)受注センター設置(受注業務の統合化)

  従来得意先からの発注は、営業支店・営業所で受注していたが、EDIの標準化の進展を見込み一箇所に統合化した受注センターを設置した。開設にあたり電話・Faxによる発注は、EDIに変更するように得意先に要請した。
  現在電話による発注は基本的にゼロになり、一部Faxによる発注が残っているレベルになった。このことにより、支店・営業所にいた受注要員の70%を削減することが出来た。職種転換・退職補充をしない等の対策で、要員削減を図ることが出来た。更に、EDI活用により受注業務の標準化が促進し、パート要員の大幅な活用がはかれ、受注関連業務の大幅な固定費削減を実現した。

8.AGF成功の秘訣

  AGFでは、ロジスティックスコストの大幅な削減を図り、得意先との競合優位性も同時に可能たらしめたが、その成功の秘訣は以下の三点に要約出来る。

(1)トップの強い意思と決断

  トップが、ロジスティックス導入についての目的を明確に堅持しているかが最大のポイントである。そして、現状を改善するのでなく改革するという強い意思を持ち、EDI等業界標準の積極的な活用を決断し、競合優位性具現化への強い意欲を絶えず顕示されることが求められる。

(2)Plan-Do-Seeサイクル型業務遂行

  所謂「目標管理」型のロジスティックス業務遂行が必須である。年初・期初に事業部・営業・工場・ロジスティックスで目標を具体的に設定し、毎月各部署及びトップを含めたロジスティックス業績報告会で、レビューし問題点分析・原因対策を明確にするスタイルの業務遂行が求められる。
  それも、継続的に行うことが必須である。企業内でこのスタイルが定着すれば得意先との取組も可能になる。

(3)全従業員参画

  ロジスティックスは全従業員参画型でないと成功しない。単に、ロジスティックスの担当業務という位置付けでは成功は不可能である。
  AGFでは、人事評価制度は「目標管理」である。ロジスティックス項目を、全従業員の「業務目標」項目の一つに組み入れ、人事考課評価対象とした。
  いくらトップの強い意思・指示が示されても、全従業員の日常業務目標化を図れないと「目標」達成は容易でない。

9.おわりに(現状の課題と今後の取組)

  我が国では、ロジスティックスも未熟な段階にありSCMを求めるレベルにないと思われるが、現状の課題と今後の取組として列挙し、纏めとしたい。

(1)流通コストが高い

  AGFは、総合コーヒー製造工場を三重県鈴鹿市に持っている。 規模的に類似した工場をクラフトは世界で9箇所持っている。この9工場で、ベンチマーキング研究を取組み、ベストな工場づくりを目指している。例えば、マキシムインスタントコーヒー生産工程で34項目の生産性向上管理項目を持っている。 AGFは34項目で大半ベストである。換言すると、生産コストは同様生産設備を使用して最も安く生産していることになる。所が、包装(瓶)工程終了後のコストは世界で最も高くなり、店頭プライスではWal-Martの店頭価格に比し約1.7倍である。製造原価は、国際競争力はあるが、包材コストや特に流通コストは極端に高い事がわかる。
  何故流通コストが高いのか?中間流通に多くの卸が存在するからとの指摘があるが、間違った見方だと思われる。 図表―3を見てほしい。我が国には、食品を販売している小売店は約67万店存在する。この小売店に配送する機能として中間物流機能は不可欠である。従って、卸中抜き論は我々から見れば大変な非現実論である。

図表ー3.食品流通チャネル



  図表―4を参照してほしい。このフロー図は、酒類・食品メーカーの物流パターンを要約したものである。パターン1-4とパターン5-7を比較すると、パターン5-7はパターン1-4の概ね半額の物流費であることがAGFでも確認できた。 しかし、我が国の多くの食品メーカーの物流はこのパターン1-4が主体である。 このことが、工場から小売店までの流通コストを高くしている最大の課題の一つである。即ち、中間物流機能の全体最適化が最大の課題である。 メーカーとしては、メーカーD/Cを廃し工場直送実現への取組を得意先と具体的に推進する。 中間物流機能では、カルフールが行っているカーゴ・オリコンを使用せず、パッレト納品を主体にするなどの発想の転換を図らないと世界一高い流通コストの改革にはならないと思われる。

図表ー4.Delivery Pattern


(2)地球環境・資源保護への取組強化

  前述の如く、包装工程終了段階で高コストになっている原因は、包材コストが高いこともあるが、我々メーカーが欧米に比し態々高い包材を使用していることにも起因する。例えば、どうせ廃棄する製品ダンボールに3色印刷をするとか(欧米では多くのメーカーはダンボールを使用していない)、製品ラベルを6色・7色印刷する(欧米では、5色印刷以下が通常)とか過去の誤ったマーケティングに由来するものが存在する。
  今、求められているのはガラス瓶のリサイクルに見られるように、地球環境・資源保護の観点で包材そのものを見直す姿勢である。例えば、ビール瓶のようにリユースするシステム構築など資源の再活用等。そのことが、既存のロジスティックスの在り方再考に多大の影響を与えると思える。

(3)ライフスタイルの変化への対応

  農林統計協会「図説食料・農業・農林白書」によれば、この25年間で単身世帯は30%増加して全世帯数の約25%に達した。また、高齢者(65歳以上)比率も、210%増加し17%になった。このことは、所謂ファミリー層が減少したため、ファミリー層をターゲットとした総合スーパーの衰退を惹起せしめている原因の一つであると考えられる。
  また、経済産業省商業統計によると食品スーパー(250㎡以上で、食品取扱が70%以上のセル方式の店)の売上が10年間で200%になり、全食品売上の50%を超えた。
  即ち、大型総合スーパー成長時代は終焉し、食品スーパー中心時代に移っているのである。しかも、高齢者・単身世帯の増加はこの傾向を助長していくと考えられる。高齢者・単身世帯では従来のような特用サイズ(大瓶・大袋)はムダであり、必要なものを必要な時に買い消費する生活スタイルである。このライフスタイルへの変化に対応したロジスティックスが今求められているのである。

(4)三温度帯一括物流の必要性増大

  総務省「家計調査」によれば、食費支出に占める生鮮三品消費比率は過去3割を切った事がない。中でも、魚消費は1割を下回ったことがない。我が国の魚消費は「漁業白書」によれば、全世界の約25%(日本人口は世界の1.3%に過ぎない)を消費していることになる。日本人の食生活は、魚が主体である。 魚民族である。この生鮮三品を主力に売っている店が成長している食品スーパーである。
  更に、10年間の顕著な変化は、調理済食品消費が50%増加し全体の10%を超えた。調理済食品は一般的に温度管理が必須である。当然生鮮三品も温度管理が望ましい。即ち、食品の主力は温度管理が必要であり、単純な常温物流ではダメなのである。しかし、この温度管理(所謂チルド)物流・常温物流を同時に可能にする物流ネットは殆ど我が国には存在しない。食品スーパーの店からすれば、温度管理食品と常温食品が同時に配送される状態がベストであることは当然である。流通コストの低減及び流通機構の効率化の最大の課題であると思われる。欧米とは根本的に食生活が異なる。したがって、欧米に参考になるビジネスプロセスは存在しない。カルフールの我が国への参入の失敗は、この生鮮三品(特に魚)及び調理済食品のノウハウ不足によると思われる。
  総合スーパーの弱体化も同様な見方が出来るのではないだろうか。。。
  高齢化社会の進行が明確になった今こそ、中長期的な視点で発想の転換を図り小売店からみて一回の三温度帯中間物流の具現化に小売・メーカーも生き残りを賭けて取組む必要があるのではないか?

以上



(C)2004 Takao Kawashima & Sakata Logics,Inc.

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