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経営戦略・経営管理

第457号 卸売市場法改正と最近の生鮮食品流通(後編)(2021年4月8日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)

 執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

 

目次

*前号(2021年3月16日発行 第456号)より

4.生鮮食品流通を巡る最近の動向

  それでは、生鮮食品流通を巡る最近の動向について、とくに物流との関わり合いにおいて述べたい。それは、生鮮食品の輸配送を担っている事業者にも少なからず影響が出てくると思われるからである。

(1)市場外流通する輸入農水産物

  第381号の図表5では、北海道の大手スーパーにおける青果部門の仕入先構成(金額比)は、札幌中央卸売市場30.0%、生産者(JA等)直取引31.7%、商社等38.3%で、市場流通のシェアは3割である(その後2年経過し、2項の築地市場から豊洲市場移転でも分かるように、さらに市場流通のシェアが低下していることが想定される)
  その理由は、第381号図表5にあるように、中央卸売市場経由の「荒利率」が18.8%と、生産者直取引(同25.5%)、商社等(同22%)と比べて低いからである。スーパー側からは、「市場を通して仕入れるのでは(荷受・仲卸のマージンもあるので)儲けが少ない」ということである。
  これは、例示した北海道のスーパーだけではなく、筆者が聞き取りをした限りでは、全国的にも同様な傾向にある。
  このうち、「商社等」には輸入青果物も含まれていると思われる。農林水産省の「農林水産物の輸出入概況(各年版)」を見ると、「冷凍野菜」が年々増加している。最近は「カット野菜」が増加著しい。
  水産物についてはサケ・エビ・マグロ・ウナギ・タコなど、輸入が多いことはご存知の通りである。
  これら、輸入農林水産物については、市場を経由しないで直接取引されることが多いので、国内消費に占める輸入シェアの増加は、市場シェアの低下にもつながる。
(筆者注:商社だけでなく、荷受自身も農水産物を輸入して販売するケースもある)

(2)既存の生鮮食品流通チャネルの革新

  第447~448号「続・軽トラ運送が熱い」では、「買い物難民」対策としても増加しつつある移動スーパーを掲げ、とくし丸の事例を紹介した。ただし、とくし丸は提携したスーパーから生鮮食品を仕入れているので、既存の生鮮食品流通チャネルのなかで、移動スーパーという販路革新をもたらしたと言えよう。
  また、最近はECやネットスーパーでも、生鮮食品の取扱いが増えている。
  例えば、第447号で紹介したアマゾン・フレッシュでは、ECで注文を受けると、アマゾンのエージェントである水産仲卸が、卸売市場で鮮魚を調達して、フルフィルメントセンターに運んで加工・包装し、アマゾン・フレックが配送する事例が、TV番組で紹介されていた。
  ネットスーパーでは、既存の市場ルート・市場外ルートで仕入れた生鮮食品を、ネット販売して宅配している(ライフでは、アマゾン・フレックの配送チャネルを活用している)。
  アマゾンやライフも既存の生鮮食品流通チャネルを利用して、当日配送システムにより個人宅に届けているビジネスモデルである。仲卸が飲食店・小売店向け、あるいは個人向けにネット通販を始めた事例もある。

(3)新たな生鮮食品流通チャネルの構築

  これとは別に、市場や中間業者(商社・卸売など)を通さず、生産者が消費者に直接届けようという新たな生鮮食品流通チャネルの構築が始まっている。
  例えば、オイシックス・ラ・大地やポケットマルシェのような産直や、漁港で水揚げされた水産物を漁船から直接買い付けて(産地卸売市場を通さず)、消費地の飲食店・鮮魚店に届けるという例も増えている。
  青果物の場合は、複数産地の農家・JAと契約すれば、安定的供給のために品種・数量の確保は可能となるが、天候等により魚種・漁獲高が左右される水産物の場合は、たとえ契約があっても魚種・数量の確保は難しい。筆者も2017年秋に道東で、A漁港では鮭が不漁なのに、少し離れたB漁港では豊漁という場面に遭遇した。
  また、生産者側も、途中の取引マージン削減やリードタイム短縮で高く売れるのは良いが、安定的に買ってくれなければ不安であり、取引の安定確保は産直に付きまとう問題である。
  それを乗り越えて、新たな生鮮食品流通チャネルの構築が始まっているので、その幾つかを紹介したい。

1)やさいバス
  農家と小売店・飲食店を直接つなぐ「やさいバス」事業は、2017年に開始した。筆者が、やさいバスの創始者・加藤社長の講演を初めて聞いたのは、2018年2月の国土交通省の物流生産性向上セミナーであった。
  「地域の生鮮物流は人もつなぐ!~ コミュニケーション物流を目指して~」と題した短時間の報告は、物流生産性向上よりも地産地消による生鮮食品流通改革のように思われたので、その後も同事業に関心をもってウォッチしている。
  その後、やさいバスは静岡・長野・神奈川・茨城とエリアを広げ、さらには文字通り「客貨混載」にも広がっている。松本では地元のトラック運送会社が、3)項で述べるように、自社で農産物直売所も開設しながら、やさいバス事業に協力している。
  宅配便業者との提携、BtoBからBtoCへの拡大等も進めており、生鮮食品流通改革の旗手として期待されている。

図表4 やさいバスのビジネスモデル

(出所:やさいバス ホームページ)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  やさいバスは、図表4のように、農家があらかじめ決まった「バス停A」(デポ)に野菜を「持っていく」と、保冷トラックが決まった時間に集荷する。名称は「バス」であるが、路線バスの貨客混載ではなく、「トラック」が野菜を運んでいる。
  集荷した野菜は、レストランやスーパーなどの最寄りの「バス停B」まで運ばれ、それぞれの店の人が「バス停に取りにいく」という、「地産地消」のビジネスモデルである。
  筆者が住む神奈川県では、スーパーの富士シティオ2店が「バス停B」となっている。
  従来の農産物直売所(後述の、2)参照)は、生産者(農家)から消費者への一方通行であるが、やさいバスは、BtoBであるため、消費者の求める価値(品揃え・品質・価格等)を小売店・飲食店を通じて、生産者(農家)にフィードバックしている。
  発祥の地の静岡県内には、40数カ所のバス停があり、契約した4台のトラックが時刻表に合わせて、東西2ルートを運行している。
  利用者(生産者と小売店・飲食店など。予め登録制)は、それぞれ約200で、2020年2月期の売上高は2億円超と報じられている。
  上述の国土交通省セミナーで、加藤社長が紹介していたように、やさいバスは、既存の生鮮食品物流を2つの面で改革している。

①輸送費の削減
  小売店・飲食店が負担する輸送費は1ケース当たり350円と、宅配便の送料より安い。各農家から集荷すること、小売店・飲食店まで届けることを省いて、野菜をバス停(デポ)に集めることで、取扱ロットを大きくして輸送費を抑えている。
  最近の、ファーストワンマイル、ラストワンマイルとは一線を画した物流システムを構築している。

②BtoBをターゲット
  品質が高く競争力のある農水産物の多くは、大消費地で最も高く売れる東京の市場に流れる。鮮魚や高級野菜の生産地である地元ですら、東京の市場から「逆輸入」して高く購入せざるを得ず、鮮度も落ちる。
  地元の食材を入手したい飲食店と、地元に供給したい生産者のニーズはあっても、少量では輸送費が高くつく。それを、バス停方式によって共同集荷・共同配送したのが、やさいバスである。
  上述の富士シティオ店舗に行ってみると、やさいバスで入手した野菜を、「地産地消商品」として特別コーナーを設けて差別化を図っている。
  BtoBに絞ったことも大きい。飲食店・レストランは購入が安定する。また、購入に際して品質を重視するので、生産者に対するニーズも厳しい。そこで、やさいバスでは、出荷する生産者(仕入先)は専業農家に限定して登録制をとっている。の農家の紹介などをもとに、慎重に仕入れ先を増やしてきたことが、農産物直売所とは大きく異なっている。
  農産物直売所やスーパーの産直コーナーは、手数料を取っての委託販売が多く、生産者(農家)に場所を貸しているケースが多く、売れ残りリスクは生産者負担となる。やさいバスでは「買い取り」のため、小売店(スーパー)・飲食店のリスク負担となる。
  卸売市場を通さずに、地元の野菜を地元で消費するために考案されたシステムである、やさいバスは、その後、2019年には茨城でカスミと提携した(松本市での提携は、3)項のトラック運送事業者の事例として紹介する)。
  さらに、地元の静岡県では2020年7月から、静岡鉄道・静岡ガス、買い物代行会社のダブルフロンティアと提携して、コロナ禍で高まる宅配需要にも応えている。静岡市清水区では、買い物難民対策として、駿河重機建設が「バス停」となり同社駐車場にコンテナを設置して「ご近所八百屋」を開店し、やさいバスで届けられた有機野菜を週1回販売している。
  ヤマト運輸では、高齢化が進む多磨ニュータウン(東京都多摩市)に、3カ所のネコサポステーションを設置して地域の支援をしているが、その一環として、やさいバスとの提携を始めた。

  ヤマト運輸のホームページによれば、サービス概要は、
①購入者は、 事前にやさいバスのサイトから会員登録をする
②購入者から注文を受けた生産者は、やさいバスのサイトに出荷場(バス停)として登録された宅急便センターに農産品を持ち込む
③商品は、ヤマト運輸が宅急便ネットワークで輸送する
④購入者は、受取拠点として指定したネコサポステーションで最短翌日に農産品を受け取ることできる
というものである。

  生産者のメリットとしては、
①やさいバスに出品することで、ECを活用した遠隔地への販路開拓が進められる
②消費者への直売だけでなく小売店や飲食店などへの直卸しが可能になり、 出荷団体を介した販売より、利益率の増加が見込める
③消費者に直接販売することで、こだわりの農作物を新鮮なまま消費者にお届けすることが可能
④両社のシステムを連携により、 出荷指示や送り状の準備など出荷業務の効率化が可能になる
等があり、購入者(消費者)のメリットは、
⑤生産者の顔が見える高品質な農産品を、さまざまな地域からスマホなどで簡単に仕入・購入することができる
とされている。

  生鮮食品流通の新たな旗手として、地域の課題解決に取り組んでいるやさいバスの事例を紹介したが、大手スーパー・鉄道・ガス・宅配便等の社会インフラ企業と各地で提携することにより、さらに発展していくことが期待される。

2)道の駅
  農林水産物の直売所は、農林水産省によれば、全体としては全国で2万3,700カ所(そのうち水産物直売所は311カ所と推計されている)、総販売額が約9,000億円(2013年度)と増加傾向にある一方で、出荷農家の高齢化等により、運営が厳しくなっている直売所も各地でみられるとされている。
  図表5は、筆者が以前に住んでいた横浜市戸塚区の商店街の一角にある、JA横浜の「やさい直売所」である(木・日は定休日)。筆者が住み始める前からあったので、すでに50年近いのではなかろうか。写真は祝日の午後であるが、駐車場がないにもかかわらず来店客が多い。

図表5 JA横浜の戸塚「やさい直売所」

(筆者撮影 2020年9月)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

  出荷生産者で、最も多い金額は「300 万円未満」(48.1%)、販売品目は「野菜」(51.3%)、「果実」(19.9%)が多いとされている(まちむら交流きこう。2018年調査)。

  農林水産省の資料では、農産物直売所の魅力について、次のように述べている。

①生産者にとっての魅力
・収穫したものを当日販売することから早く現金化できる
・市場出荷に合わない規格外品(2割~3割程度)も販売可能となる
・少量の販売も可能となることから、高齢者等の営農意欲の向上が図られ、耕作放棄地が減少
・流通コストがかからないことから手取りが増える
・地域で最も人が集まる場所となり、観光地の1つにもなりえる

②消費者にとっての魅力
・新鮮、旬、完熟な農産物の入手が可能になる
・生産者の顔が見え、話ができる場所として安全・安心感がある
・郷土料理、食文化に触れることができる

  最近は、農産物直売所に加えて、各地の「道の駅」が生鮮食品流通の場となりつつある。
  道の駅は、2020年7月1日現在、全国に1,180駅ある(上述の農林水産物直売所である道の駅も多い)。
  道の駅は、市町村等からの申請に基づき、国土交通省で、要件を満たすものを、道の駅として毎年登録している。主な要件については、以下の通りである。

・無料で24時間利用できる
  ➀ 十分な容量を持った駐車場
  ➁ 清潔なトイレ(原則、洋式)
  ➂ 子育て応援施設(ベビーコーナー等) があること
・道路及び地域に関する情報を提供する施設があること
文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設があること(下線は筆者)
・施設及び施設間を結ぶ主要経路のバリアフリー化がされていること
物販施設の有無は登録要件ではないが、地域振興のために農林水産物を販売している駅がほとんどである。

  総務省によれば年間利用者は2億人、売上高は2,100億円(2012年度)とされている。この売上高は、青果物・水産物に限らず、物販・サービスを含んでいる。
  一般に青果物の生産者が市場等に出荷する場合、輸送費・手数料などは品目にもよるが40~60%と言われている。即ち、生産者の手取りは販売価格の40~60%になってしまう。一方、農産物直売所や道の駅に出荷した場合の手数料(生産者が直接持込むため、輸送費は不要)は25%と言われ、手取りは75%となる(上記、「農産物直売所」の「①生産者にとっての魅力」参照)。消費者にとっても小売店より安価に購入できる。
  コロナ禍の新しい生活様式のなかで、ネットスーパーや外食等でもドライブスルー形態が増えている。卸売市場でも仲卸が、青果物や水産物をネット等で予約販売して、市場の駐車場でドライブスルーにより引き渡している例もある。
  「元祖」ドライブスルーの農産物直売所・道の駅をチャネルとした生鮮食品流通は、今後とも増加すると思われる。

3)物流事業者の参入
  それでは、このような生鮮食品流通の変化に対して、物流業者はどのように対応したら良いのであろうか。
  最初に紹介した卸売市場への輸送では、第381・382号で報告したように、これまで手積み・手卸しによる長時間荷役が課題であった。筆者たちの調査も役に立ったのか、農林水産省ではパレット化の推進が始まった。これも生鮮食品流通における大きな改善となろう。
  また、やさいバス事業や、道の駅などにおける地産地消の拡大は、遠距離市場への長距離輸送だけでなく、地域内での生鮮食品(青果物・水産物)輸送のマーケットがあることを示している。やさいバスでは、トラック運送業者が「やさいバス」として、青果物・水産物を巡回集荷・配送している。農産物直売所や道の駅では、高齢化等により農産物を直接持ち込めない生産者(農家)等からの集荷も見込めよう。地域内の貨物の掘り起こしで、新たな輸送需要の創造につながることが期待される。
  一方、流通業者のなかには、商圏確保や業務拡大のため、総合食品だけでなく青果流通に参入した例(国分グループ本社・デリカフーズそこで、取り組みのヒントとして、やさいバスとも提携しているアルプス運輸建設(松本市)と、農業の6次産業化としてR&R事業に取り組んでいるトワード(佐賀県)の例を簡単に紹介したい。)や、EC大手の水産物購入を代行している物流子会社もある。
  そこで、取り組みのヒントとして、やさいバスとも提携しているアルプス運輸建設(松本市)と、農業の6次産業化としてR&R事業に取り組んでいるトワード(佐賀県)の例を簡単に紹介したい。
  農業の6次産業化とは、第1次産業である農業が、農産物の加工(第2次産業である製造業)から販売(第3次産業である流通業)まで全部営もう(1次+2次+3次=6次産業)という構想である。

①アルプス運輸建設(松本市。従業員104名、車両台数74両)
  2019年6月に、松本市西部の農産物直売所「清流の里 梓川」に自社店舗を開設し、約200名の出荷者(農家)との契約、年間1億円の販売を目標としている。本業の運輸業に加えて、休耕田を借りて稲作にも取り組むなど農業生産も手がけ、直売所と合わせて農業の6次産業化を推進している。
  同社と松本地域の農家や飲食店・直売所などでつくる「松本地域地産地消研究協議会」が2019年4月に設立され、長野県や松本市など行政も支援して、同年9月から、やさいバスと提携して地元の農産物を飲食店に届ける新しい物流網づくりが始まっている。

②トワード(佐賀県。グループの従業員470名、車両数約200両)
  筆者は、(公社)日本ロジスティクスシステム協会の会合で友田社長とお会いした当時は、JCN(日本コールドネット)協議会の主要メンバーとして、低温物流の共同化に取り組んでおられた。
  その後、同社は順調な発展を遂げて、神奈川県の厚木市に低温流施設を開設して首都圏に進出している。
  その発展のなかで、さまざまな事業を拡大している一つに、農業の6次産業化としてR&R事業がある。
  同社もアルプス運輸建設と同様、会社周辺で農業生産も手掛けている。それだけでなく、R&R(リバースロジスティクス&リサイクル)事業も展開している。
  同社ホームページによれば、「物流」と「農業」それぞれ異なるユニットを融合させた事業で、同社の物流網を活かし、顧客の店舗から排出される食物残渣や廃油を専用の容器で回収し、食物残渣は農産物の堆肥として、 廃油はボイラー燃料としてそれぞれ有効活用できるリサイクルループを構築している。
  同社では、回収した食物残渣を堆肥と使用・収穫した農産物は、食品残渣を回収したお客様に販売することで3R(Reduce:抑制、Reuse:再利用、Recycle:再生)推進のサポートにも取り組んでおり、食品リサイクル法に基づく再生利用事業計画(リサイクルループ)として、 2012年3月に北部九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分)で初めて国(農林水産省、厚生労働省、環境省)から認定されている。
  まさに、農産物の生産から加工・販売まで6次産業化を推進している。

図表6 トワードのR&R事業

(出所:トワード社ホームページ)
*画像をClickすると拡大画像が見られます。

5.終わりに

  豊洲市場移転や卸売市場法の改正を契機に、生鮮食品流通の最近の動向や物流事業者の対応策を述べてきた。
  少子高齢化は、農水産業の就業者減少を招き、食料自給率が低下し、さらに輸入生鮮食品が増加することが想定されるが、資源多消費型の長いフードマイル(調達距離)は、サステナブルという観点では疑問が生じる。
  地球温暖化による海水温度の上昇が、魚介類の生育を阻害して漁獲高が減少するという、水産庁の長期見通しも出ている。
  コロナ禍もあって食料自給率等の安全保障も論じられているが、国内の農業・水産業を伸ばすためには、生鮮食品流通の改善も大きな課題である。
  一方では、新技術の開発も進められて、植物工場や陸上養殖なども増えており、AIを活用した効率的な水産養殖や、ドローンによる青果物の生育状態の把握などアグリテックも進展しつつある。
  生協、オイシックス・ラ・大地、ポケットマルシェ、農業総合研究所など注目する企業、輸入農水産物についても触れたかったが、誌面の都合もあり、別の機会に改めたいと思う。
  さらには、農福連携(農業を通じて、障害者の社会参加を推進する)も、物流業界の障害者雇用拡大のヒントになるのではないかと注目している。
  各地のトラック・倉庫などの物流事業者は、以上ご紹介したアルプス運輸建設・トワードの2社と同様に、何らかの形で農業に関わっている例も多いと思う。また、海運・港湾であれば、同じ海の仲間である水産業に関連した仕事も考えられる。
  既存の荷主・取引先あるいは地域社会との関係をもう一度見直して見れば、新たな事業が生まれて来るのではないだろうか。
  本稿が、物流事業者による生鮮食品分野における取り組みにとって、一つでもヒントになれば幸いである。

以上


  
【参考資料】

  • 第381・382号に掲げた資料のほか、
  • 東京都及び東京都中央卸売市場の統計など各種資料
  • 農水省の卸売市場法改正関連の各種資料
  • まちむら交流きこう、国土交通省などの「農産物直売所」「道の駅」関連の各種資料
  • やさいバス、アルプス運輸建設、トワードなど各社・団体のホームページ・報道資料


(C)2021 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.

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