第288号 物流実務に役立つ管理指標(KPI)を考える。(2014年3月18日発行)
執筆者 | 髙野 潔 (有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長) |
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目次
- 1.はじめに・・・。
- 2.物流現場の管理指標(基準)の考え方
- 3.物流実務に密着した管理指標(目的・目標)
- 4.実務に役立つ物流管理指標(☆KPI:Key Performance Indicator)
- 5.トラックの利用効率を示す3ツの基本指標
- 6.最後に。
1.はじめに・・・。
物流実務の管理指標は、今はやりの見える化を演出、物流活動を評価する指標です。
管理指標は、リアル物流(実務)の良い点、悪い点を見る努力をすることにより、業務改善の着眼点のポイントを探し出し、保管効率、荷役効率や作業品質の向上、利益貢献度などのパフォーマンスの向上に寄与するために活用していきたいものです。
2.物流現場の管理指標(基準)の考え方
管理指標(KPI)には、企業レベルでの業績やリスク管理の状況と部門毎の業務の実績をモニタリングすることが一般的に行われています。
すなわち、企業レベルでも部門レベルでも、予め設定されている計画や目標、指示に関して、その進捗状況を随時チェックすることが求められています。
管理指標は、重要な目標および戦略などの達成状況に相関性をもった数値であり、この数値を把握・分析することで目標達成のために必要な対応を検討することができます。
想定したKPIに対して予想外の数値が示されている場合、事業活動や物流活動が目標達成に向かっていないことを意味しており、活動の修正が必要となります。
物流活動に絞って記述してみますと物流現場は生き物と同じ、日々変化しています。
先ず、管理のための管理(指標)になっていないこと、利益を生み出す活動「サービス、品質&精度、コスト」になっているか、効率化・生産性向上、売上増加支援、etcにつながるかを検証すること、一定期間の入荷、出荷、在庫データなどで実態を把握して作業イメージを作ります。
さらに、物流現場の作業状況や在庫保管状況をデジカメ、ビデオなどで記録し、データ分析と作業内容をもとに改善後の作業イメージ(あるべき姿)をつくります。
年間を通じて物流現場が対応しているそれぞれの物流特性を確認します。
直感的に捉えている事項やデータとして存在しない異常値と思われる入出荷状況、保管・ロケ状況、作業上の問題点などを日々の活動の中やヒヤリングなどで把握します。
管理指標(基準)の目標設定は、データなどの事実に基づいた基準に経営判断としてのあるべき姿を加味した管理基準(目標値・標準値)を設定したいものです。
3.物流実務に密着した管理指標(目的・目標)
物流業務全体の仕組みを知ること、物流実務で与えられたリソースをどのように使っているかを知ること、管理指標(基準)の目的は、物流管理と顧客指向(利益貢献度)、顧客満足度、物流コストの削減、作業の合理化・効率化(保管効率)、物流品質・精度の向上(荷役効率や作業品質の向上)、物流施設の有効利用などのパフォーマンスの向上に寄与するために活用していくものです。
作業結果「管理指標(基準)」を確認する目標値は、繁忙期と閑散期で変動します。
月毎の平均値を把握し、経営戦略を加味した「管理指標の設定」がポイントになります。
4.実務に役立つ物流管理指標(KPI:Key Performance Indicator)
物流管理のアプローチの切り口として沢山ありますが、問題をクローズアップさせるのに分りやすいのが目標(過去の実績、前年同月比、業界標準値、同業他社比など)と実績値(数値化)を比較することです。
簡単に言うと何がうまくいって何がうまくいっていないかを明確にすればよいのです。
数値で価値判断を共有化し、何が良くて何が悪いかという判断の統一が必要です。
それがなければ悪いと感じている人は改善を進めようとするが、悪いと感じていない人は見過ごし、同じ現象でも課題解決の行動を起こしません。
これがいわゆる物流管理指標(KPI:Key Performance Indicator)です。
管理指標で同じ価値判断を与え議論が起こり、課題解決のための行動を起こす切り口にすることが重要なのです。
物流管理指標が明確になっている企業は、まだまだ少ないと感じています。
物流管理指標が明確になっていれば、問題点や課題が見つけやすくなります。
課題が見つかると物流改善の意欲が湧いてきます。
現状の数値を把握する数値目標があれば、問題解決の糸口が見つけやすくなります。
データ収集に極力時間をかけず、必要最小限の管理指標を設定することが賢明です。
重要なこととして良くても悪くても管理指標と実績の照合結果を生かすことです。
適切な経営判断が物流現場の生産性向上、品質向上、これからの課題の抽出、少なくとも現状維持のキーポイントになります。
5.トラックの利用効率を示す3ツの基本指標
指標には様々なものがありますが、標準的なものとして、積載率、実車率、稼動率があげられます。
さらに、輸配送業者を対象にした主な評価指標として品質、納期、価格、安全、提案力などがあげられます。
6.最後に。
KPIは、業務の目標を達成する重要な業績評価の指標です。
達成状況を定点観測することで、目標達成に向けた組織のパフォーマンスの動向を把握できるようになります。
仮に、目標値とのギャップが生まれた場合には、物流活動が当初想定の方向に向かっていないことを意味し、活動の修正が必要です。
作業結果を確認する目標値は、業種業態によりますが、繁忙期と閑散期で変動します。
月毎の平均値を把握し、経営戦略を加味した「目標値の設定」が重要になります。
日常の業務の中で、管理指標を設定することで物流業務のレベルアップ、課題解消の切り口として不可欠なものだと考えます。
物流管理指標を有効に活用するためには、それらを理解するだけでなく、具体的な施策への落とし込み、実務に繋げることが必要であることは言うまでもありません。
以上
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