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第243号「物流組織とフォロワーシップ」~物流組織を担う部下力を考える~(後編)(2012年5月10日発行)

執筆者 篠原 和豊
(篠原ロジスティクスオフィス代表)

 執筆者略歴 ▼
  • 略 歴
    • 1969年関西学院大学法学部政治学科卒業、伊藤ハム入社。
    • 企画宣伝室で宣伝・広報・各種調査分析等、デパート部で販売、営業、商品・店舗企画、人事教育、物流等の業務を歴任。
    • 1996年からロジスティクス部門。ロジスティクス管理を担当し全社物流コストの各種手法を用い把握、全社共有化を行う。又、独自の物流ABCにより業務実態分析と改善活動をパートナー企業と連携し継続的に行う。
    • 1998年、伊藤ハム物流㈱設立に関わり同社取締役を兼務、共同配送や環境負荷低減推進等にもあたる。
    • 2006年伊藤ハム退社、同年に篠原ロジスティクスオフィス開設し現在に至る。
    現在
    • コンサルティング
    • ロジスティクス思考の組織変革、現場改善、物流コスト体質改善、物流人材育成支援、物流戦略策定と構築支援、グリーン物流支援、その他を業態区分なく担う。

    • 直近に行ったセミナーテーマ
    • 物流現場のポカミス対策、物と人の動きを最適化するレイアウト改善、ムダ取り改善、在庫の圧縮と上手なコントロール、物流部門の情報システム活用法、物流ABCによるコストの見える化等

    • 所属団体
    • 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会個人会員
      日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)
      宝塚商工会議所会員

    • 連絡先等

 
前編(2012年4月17日発行 第242号)より
*今回は2回に分けて掲載いたします。

目次

2. フォロワーとフォロワーシップ

(3) フォロワーシップ

  本稿では上司(リーダー)のリーダーシップを補完しようと部下(フォロワー)が自主的な判断や行動で上司を支え、組織における成果の最大化をはかることを「フォロワーシップ」とする。リーダーがリーダーシップを発揮して組織を動かすにはフォロワーが良きフォロワーシップを発揮するかどうかにかかってくる。
フォロワーシップは組織力を最大化するために欠かすことの出来ないものである。一つは組織に対して適切に「貢献する力」である。それは、組織のビジョン実現のためにエネルギーを注ぐ、組織目標の達成のためにまい進することなどを指す。もう一つは正しく「批判する力」。これは、上司の指示が正しいのかを自分なりに考え、必要があればあえて上司に提言したりする力のことであり、言い換えると、上司の指示の正当性をいつも疑う冷静さとも言える。貢献しようとする意思の能動的なものである。
前項の類型分類では「協働型」に属する人は「良きフォロワー」であり次世代リーダーに近い存在でもある。実務型の場合は打算に走る部分を取り除いていくことで一回り大きくなりうる。孤立型は「貢献力」を、従属型は「批判力」を養成することが課題となる。消極型は組織活性化にはマイナスに働く存在であり、この層には隠れたプラスの意識に火を付けることが第一の課題となる。フォロワーシップ醸成の方法は個人別に異なる。

3.物流組織のフォロワーとフォロワーシップの条件

  一般的な組織においては集団を牽引する積極的な働きをする人達、集団の動きに従いながらそれなりに働く人達、そしてあまり貢献しない人達に分かれるとされる。
物流組織が企業集団の中で従属的であったが故に集団を牽引する人達も少なかった。しかしながら「ロジスティクス思考」を身につけた物流組織では積極的に部門改革にも取り組み、全体最適の視点から経営層や他部門にも提言、直言し企業活動に貢献する人材も多くなっている。

(1) ロジスティクス思考は必須条件

  物流組織に風穴を開けたのは「ロジスティクス思考」である。それは外部からの情報などでロジスティクスの重要性に気づいた経営層や物流部門の中でも外部から刺激を受けた先進的メンバーからのアクションによる。これは現状に対する「批判力」と組織への「貢献力」から生まれ出たものである。
図5左図では川上から川下までのモノの流れを情報共有に基づき各部門が自律的な動きでコントロールすることを表している。物流組織においても上層部と現場が一体となった糸で結ばれ連携した動きが行われることをイメージしている。全体最適の自律的動きが発生したことにより右図の成長型しくみができることになった。図1の一方的流れとは異なる。物流組織の現場末端まで情報を共有して一つ一つの作業にも「批判力」と「貢献力」をもってあたる良きフォロワーが登場、活躍する場が増える可能性が芽生えた。

図5 ロジスティクス思考組織と成長組織

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

「ロジスティクス思考」が組織に拡大するにつれ消極型フォロワー、批判型フォロワーそして従属型フォロワーの割合が減り協働型フォロワーが増えてくる。フォロワーが変化してくるとリーダーも変わらざるを得なくなる。一例としては与えられた量をこなす技術や技量を伸ばすことに腐心するだけでなく部下のやる気や成長意欲を引き出す工夫や環境を整える上司となることもある。又、上層部や他部門との折衝の割合も増えてくる。
フォロワー層でも改善活動を中心に案件ごとにリーダーの模擬体験をしながら貢献力と批判力を習得していく。これが継続加速することで組織活性化が進んでいく。

(2) 技術力を磨く

  従属的フォロワー集団であった時にもモノの出し入れやハンドリングする技術や保管する技術、配車技術に秀でたその道の達人と呼ばれる専門家が存在した。ただその技術は自身の作業遂行のためだけに使用された面があり組織成長とは縁遠かった。
物流のプロがその技術を全体で共有しようとしたり組織構成員同士が研究研鑽を行い相互啓発を行うようになると飛躍的に技術も開けてくる。
現在の物流組織においてもこの技術力を保有していることが良きフォロワーの条件でもある。プロとしての知識や技能を活用し組織能力を最大化しようとする気概も求められる。言い換えれば技術力の裏付けと組織に貢献する行動力がフォロワーシップ強化の条件である。現場への精通なくして良きフォロワーにはなりえない。

(3) チーム活動に積極的に関与する

  リーダーや組織への貢献という点では与えられた業務やテーマに進んで取り組み併せて技術を向上させることで日々、その度合いが高まる。さらには自身も良きフォロワーとして職場勉強会や改善活動で積極的に取り組むことでリーダー力も養っていく。この取り組みは人間関係やコミュニケーション能力をも高めることにつながる。

(4) 批判力を磨く

  リーダーから示されるビジョンや方針を素直に受け入れる姿勢が部下力には必要である。指示された案件をどうすれば実現できるかを考えるのも力を付けていく過程で必要である。併せてビジョンや指示に対しては他の選択肢や代案があることも思い浮かべそれを提案するいわば正しい「批判力」も持ち合わせることが求められる。組織はイエスマンばかりでは活性化はかなわない。常に現状を認めながらも満足することなく批判もしながら改善改革に取り組むことから成長への行動が繰り返されることになる。フォロワーの成長には「批判力」も重要である。

4.良きフォロワーが物流組織を強くする

  内向き組織とされた物流部門もロジスティクス思考の浸透もあり大きく外部に開かれた組織になった。元々、サプライチェーンの動きに敏感に影響される部門であるが故に日常的に多くの問題点が集まってくる。この問題点を発見、分析、そして関係部署に発信し連携して改善を行える段階まで物流部門は能動的な組織へ大きく変わってきた。顧客や他部門との関係性が強いことがフォロワー自身のフォロワーシップを高める好環境とも言える。

図6 情報発信し全社をリードする物流組織

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

図6はアクティブな組織体としての物流部門をイメージしたものである。常に問題点をとらえリーダーや他部門にも発信し、共同して改善活動を継続して行いながらメンバーがフォロワーシップを高められることを示している。
構成員は物流に関する専門的な「技術力」を磨き、常に「批判力」を持ち合わせて自身を高めることを日常業務や改善活動で身につける。又、リーダーを直接、間接に支え組織目標に対する貢献力もチームメンバーとの相互啓発などで高めていく。フォロワーシップを備えたいわゆる「協働型フォロワー」が一人でも多くなることによりやや批判力が欠けていたり貢献力の弱い方も巻き込む組織の大きなうねりが発生し継続して活性化していく。
物流組織は最も外部との接触が強く影響を受けていることが良きフォロワーを増加させ「フォロワーシップ」によって強い組織に育っていく可能性が強いのである。

5.まとめに替えての「自身の部下力強化を目指すみなさんへの10か条」

  組織図上に表れるリーダーは少数である。それに連なる組織メンバーとすれば圧倒的多くはフォロワーということである。強いリーダーが強い組織を作るとは限らない。組織メンバーがしっかりとしたフォロワーシップを持ち正しく行動することの方がより重要である。以下、部下力強化を目指す皆さんへのまとめを記しておきたい。

① リーダーの目標やビジョン、指示をしっかりと受け止める。
② 受け止めた目標やビジョンを評価する能力を高める。
③ ①に対してしっかりとコミットし実現する努力を行う。実現への意図的に努力を
注入し行動することで力をつける。
④ ②とは逆に見えるがリーダーの目標やビジョン、指示にも冷静な目で疑問や
不満、間違いを伝えることもフォロワーシップの根幹であり備えておくべき能力である。
⑤ 検討の判断は早く、実現可能なものはすぐ行動に、対案があるものはフィードバック。
⑥ 人材観察力も高めていく。(リーダーや組織メンバーとのコミットには重要)
⑦ 日常業務で自身の業務遂行能力をしっかりと高める努力を行う。
⑧ 組織メンバーと積極的にコミットしコミュニケーション能力を高める。
⑨ 業務上の問題を素早く発見する観察力と改善する行動力を身につける。
⑩ 継続しあきらめない姿勢を常に保つ。

以上



(C)2012 Kazutoyo Shinohara & Sakata Warehouse, Inc.

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