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第236号荷主における物流コストと物流品質の現状(後編)(2012年01月24日発行)

執筆者 久保田 精一
(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)顧客サービス部
JILS総合研究所 副主任研究員)

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1971年熊本県生まれ。
    • 東京大学教養学部教養学科卒。
    • (財)日本システム開発研究所(シンクタンク)等を経て、現職。
    • 物流コストやロジスティクスの指標管理等、物流や地域開発等のテーマでの自主研究、委託研究、コンサルティング等を主に実施。

 

前編(2011年12月20日発行 第234号)より
中編(2012年01月12日発行 第235号)より

*サカタグループ2011年2月8日「第17回ワークショップ/セミナー」の講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回は3回に分けて掲載いたします。

目次


 
コストを下げながら、顧客(事業者にとっての荷主、荷主にとっての着荷主)のCSを維持するために
  一つ目は、過剰サービスを提供することと品質向上とは分けて考えるべきではないか、ということです。余談ですが、今の消費トレンドをみますと、機能的にはシンプルを目指す、豪華なものからシンプルなものを目指していって、値段は安くするとこういうのが、支持されているトレンドの一つかと思います。例えばユニクロさんは非常に高収益・高成長企業であることは間違いないことだと思いますし、卑近な例では、立ち飲みの居酒屋さんみたいなお店が、非常に増えてきているというような傾向がありますが、これも、やはり過剰なサービスをするよりも実質重視、しかも値段は安くという傾向に変わってきているという世相が反映しているのかなと思います。
そういう流れで考えますと、物流においても同じ考え方ができるんじゃないか、要するに無駄なサービスを削ってそれによって価格を安くしようという方向性です。このような考え方に対して、違うんじゃないかと考える方もおられると思います。これまでずっと主流の考え方は、付加価値を追加して、またはより新しい商品を作って、メーカーであれば、それによって買い替えさせていくというのがこれまでのメイントレンドでしたので、サービスを削るというのは非常に抵抗のある選択だと思います。ただし、まずコスト下げてくださいということが、顧客に求めれられるとすると、機能を削るということもやはり考えていかなくてはいけない。これが現実論としてあるのではないかと思います。まとめると、品質を維持しながらコストを削減するために、優先度の低いところは削りましょう、という戦略がこれから受け入れられる余地が広がって行くんじゃないかと思います。物流でも同じような傾向が見られますので、それをこれからお話しします。

10.サービスレベル見直しの進展

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 少し文字が小さい表で恐縮ですが、私どもJILSで荷主さんが毎年どういう物流コスト削減策に取り組んでおられるかということを毎年調査しています。毎年200社ぐらいの荷主さんに協力をいただいており、こちらは、直近取り組んでおられる物流コスト削減策を選んでいただいて、それを多い順に上から並べた図です。ですので、上の方にいくほどよく実施されていて、定番的なものであるということになります。過去10年ぐらいあるんですがグラフ表示の都合上5年分ぐらいで計算しています。この5年ぐらいのトレンドを見ましても色々と変化がわかりますので、コスト削減のトレンドがどういうものがあるかなということが見えてきます。
さて、図をご覧いただくと、今増えてる一つのトレンドは、物流条件の見直しいうことがわかるかと思います。具体的な項目としては、商品のアイテム数を整理をしていく、配送頻度を見直す、物流を考慮したような商品設計をやっていく、このような物流を規定する基礎的な条件を見直しましょうという取り組みが、増えています。
物流の条件ということでお話ししましたが、サービスレベルと言い換えても良いでしょう。従って、過剰なサービスの見直しが進んでいると言えると思います。

11.求める「品質」の中身は、顧客によって違う

  2つ目のポイントは、品質とは何かということ自体が、実はお客さんによって変わってくるのであり、追求すべき品質の中身が違ってくるということです。お客さんといった場合、物流業者さんにとっては荷主さんがお客さん、荷主さんにとっては着荷主がお客さん、ただ実態としてはその次のお客さんまで、例えば最終ユーザーとかまで見据えてお客さんと捕らえているといった場合も多いと思います。お客さんのニーズを知ろうというのは、当たり前のことなんですが、それがきちんとできている会社は、やはり少ないんじゃないかと思い、あえてこういった項目をあげさせていただいた次第です。
顧客のニーズをつかむことが難しい理由の一つとして、顧客自身が何を望んでいるのかわからないという側面もあると思います。お客さんに対し
て、例えばアンケートで何を望んでいますかときいてもお客さんとしては、それは自分に聞かれてもわからない、むしろサービスの提供者であるあなた方に考えてほしいと思う場合があるかと思います。そういうことを考えてみても顧客が何を望んでるのかを知るというのは非常に難しいのかと思います。

12.業種による視点の違い

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 ニーズが異なる例として業種、業態による視点の違いをご紹介します。荷主さんを業種別にみた時に、どのようなKPIを重視をしているか、ということを調査をしたものです。重要だと考えているものほど外側にいくようなグラフになっています。右側のグラフでは、メーカーさんと卸さんを比較していますが、メーカーと比較しますと、卸売業は関心のポイントがずいぶん違います。特徴的なところに丸印をつけていますが、欠品率、誤出荷、返品、こういったものを特に重視していることがわかります。卸業は、中間流通の企業ですから、サプライチェーンをいかに効率的に築くか、それが卸さんの中核的な業務であるので、そこに関わるような、返品とか欠品、これに対してセンシティブになるというのは、当然かなと思います。
一方でメーカーさんの場合は、これもちょっと業種によって違いますが、例えば欠品というのは、あまり問題ないよねっていう業界も世の中には多いですね。例えば、車だと即納じゃなくても別に良いというのが普通だったり、産業機械もそういった扱いだったりすることがあります。つまり業界によって違いがあり、一律に評価してしまうのは危険じゃないかなということは言えると思います。

13.品質を維持する仕組みとしてのKPI

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 それに関連して3つ目のポイント、KPIの活用の話にはいっていきます。
KPIというのが問題解決を促す、この図のようなサイクルがあるのではないかと思います。問題解決の必要なポイントを絞って、それを測定し、それを「見える化」してコミュニケーションをとり、それにより、人とか組織が改善を自ら行うような仕組みを作っていこうというふうに整理をしていますが、KPIの最終的な目標は、この右上の「真に」関係すべき人、ないしは組織が自ら行動するようにそれを促すようなものでなければならない、ということかと思います。品質というのはすぐれて人的な問題であると思いますので、「人」に改善行動を促すことが重要であると思います。
なお、あえて「真に」と言いましたが、物流においては、問題が発生している人とか場所、すなわち現場と、原因をつくっている人とか組織が別であるということが、むしろ一般的であると言われます。生産とか営業のミスが原因で緊急出荷がおき、それがミスを誘発するとか、そういったことがよく起きているわけです。このようなケースへのよくない対応例で、現場のミスは現場担当者のせいだ、ということで、現場の担当者にしっかりやってくださいと注意をして終わり、というようなことがあるわけですが、それでは、問題の解決にならないことは言うまでもありません。そうではなくて、真に問題の解決すべき、人ないしは組織に、行動を促すべきであるということで、「真に」と言っているわけです。
さらに、この下のほうに3つの見える化と書いています。KPIの最大のメリット、これは「可視化」であると思いますが、あえて3つと書いたのは、問題そのものが見えるということも重要ですが、そこで止まってはもったいない。一番重要なのは、原因を作ってるものは何か、さらに言えば誰なのかということまで見えることなのです。右端にありますが、真の原因がわかるということが、本来KPIを使って「見える化」することのメリットであり、目指すべきゴールではないかと思います。
KPIの重要性はロジスティクスに限られませんが、さきほど述べたロジスティクスの特殊性を踏まえると、ロジスティクスの品質管理においては、特にKPIが重要であると言えると思います。

14.受けたくないサービスとは(飲食店を例に)

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 ちょっと気分転換にというか、一つクイズのようなものですが、これサービスの受け手として考えていただけたらと思います。もう行きたくない
飲食店のランキングという調査で、ここにあるような10個の項目が挙げられています。このなかでどれが一番かと思うと、実は店員の態度が悪いというのが圧倒的に多いという結果になっています。料理がまずいよりも、店員の態度悪いというのが嫌だということです。
これは一例ですが、物流もサービスですから、やはりサービスの品質というのは人間がつくるものであるということは、非常に強いのかなと思います。
これはいろんな意味があって、今の例のように、サービスの提供者の印象、現場レベルの対応の良し悪し、みたいなものがクレームにつながる、
あるいは逆に、現場の人の対応次第でクレームを回避できる、というような場合もあるかと思います。そういうふうにそのサービスを提供する人が左右するという側面が一つです。
もう一つは、ミスというのは極めて人間的なものであるということです。フェイルセーフなど仕組みの構築も重要ですが、やはり、ヒューマンエラーが大きいわけですから、そのミスをなくす上では、現場の方の努力とか注意、工夫、これが極めて重要なんじゃないかと思います。

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 人の要素の3点目は、管理者の姿勢、全体を管理されている方の態度と姿勢、これが究極的には会社全体とかオペレーション全体、ないしは委託先の品質も含めて、品質を左右するんじゃないかと思います。これは全体としてのまとめでもあるんですが、やはり品質は人間がつくってるということを認識することが全ての立脚点になるんじゃないかと思います。そのため、そこを改善していくためには、教育や環境作り、これが重要で、そういったことに力を入れていく、やはり個別の具体論よりもそういう人間の力を引き出すということがすごく重要であるのではないかと思います。
少し逆説的なんですが、人的要素に左右されるということは、逆にいえば、人任せとか委託先任せでは危険であるということでもあります。良くもなれば悪くもなるということです。極めてオペレーションレベルの高い、物流業者さんがおられて、完全に任せられる、ということもなくはないと思いますが、普通に考えると、管理される方が主体的に品質をあげて行くんだと、委託先まで含めてキチンと目を届かせていくというような姿勢が問われる分野なのかと考えています。
本日のお話は以上になります。長時間ご静聴いただきましてありがとうございました。

以上



(C)2012 Seiichi Kubota & Sakata Warehouse, Inc.

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