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第215号物流・ロジスティクス分野における人材育成に関するアンケート調査結果(前編)(2011年3月3日発行)

執筆者 五関 信之
(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 人材教育部 マネジャー)

 執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1999年 社団法人日本ロジスティクスシステム協会 入職

 
*今回は2回に分けて掲載いたします。

目次


 

1.調査概要

  わが国経済は依然として厳しい状況が続いている。この状況下で、国内外の厳しい競争に打ち勝つためには、経営戦略上、全体最適なロジスティクスシステムの構築と高度化が鍵を握る。そのため、物流やロジスティクスに関する広範な知識や技法を習得している優れたスペシャリストの存在が必要であり、かつ、育成が不可欠である。
  公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILS)は、①物流・ロジスティクスに関連する多くの企業の人材育成の実態を把握すること、②アンケートの対象企業にロジスティクス分野における人材育成の重要性を理解、再確認していただくことを目的として、人材育成に関するアンケート調査を実施した。調査の詳細は表1のとおりである。

表1 調査概要

2.調査項目について

  本アンケート調査は、アンケートの設問に回答しながら、人材育成の手順を確認し、どの段階で、どのような問題があるのかを確認できるよう、一般的な人材育成の手順にしたがって設問や選択肢を設定した。なお、一般的な人材育成の手順は、以下の6ステップとした。
<ステップ1> 現況把握
<ステップ2> 理想の人材像(能力要件)の策定と教育課題の把握
<ステップ3> 教育カリキュラムの策定
<ステップ4> 教育訓練の実施
<ステップ5> 評価やフォローアップ
<ステップ6> 社員の成長を支援する諸制度の策定

図1 人材育成手順のイメージ図

3.調査結果

3-1 ステップ1 現況把握

1)企業の人材育成の実施状況
  図2は、企業の人材育成の実施状況について示した図である。JILSは資格認定講座等の人材育成事業を行っており、この事業を利用することを目的として入会している企業が多いため、会員企業における人材育成への感心は高い。今回の調査は、会員企業を対象とした調査であるため、人材育成に取り組んでいる企業からの回答が大半を占める結果となった。
  また、経営理念や経営戦略と人材育成の関連性を見ると、大手の物流事業者では約8割、荷主企業、物流子会社、中小の物流事業者において過半数以上の企業が、人材育成を経営と直結して取り組んでいる様子が窺える。

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2)社員の能力の把握状況
  図3は、社員の現況能力の把握状況について示した図である。荷主企業で社員の能力を把握している企業の比率が85%と高くなっているが、これは、物流事業者と比較して、物流・ロジスティクス業務に携わる社員数が少ないためである。一方、物流子会社や物流事業者の約1/4が「把握していない」としているが、アンケート後のヒアリング調査では、「レベル感ぐらいは把握している」と回答する企業が多かった。
  また、現況能力の把握手法としては、①社員個別の面接の実施、②評価シート等のツールを活用、③日常業務の観察等が挙げられた。

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3-2 ステップ2 能力要件の策定と課題把握

1)能力要件の策定
  図4は、能力要件の策定状況について示した図である。傾向は、現況能力の把握状況と類似しているが、比率は若干下回る。ヒアリング調査では、能力要件までは策定していないが、「これぐらいのレベルであって欲しい」というレベル感(目安)は持っている、と回答する企業が多かった。

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2)課題の把握
  図5は、課題の把握状況と、把握方法について示した図である。荷主企業、物流子会社、中小の物流事業者では9割前後の企業が課題を把握できているが、大手の物流事業者では8割である。これは物流やロジスティクスに携わる社員数が多いことに合わせ、業務領域が広く、かつ、各物流現場に特有の業務がある等の理由で、社員個々の課題を細かく把握しきれていない状況が現れている。
  課題の把握方法については、①基準となる現状レベルよりも高い理想レベルを設定し、その差を課題とする’設定型’と、②現状レベルが、基準レベルに到達していないため、その差を課題とする’弱点克服型’の2つのタイプを設定して質問した。荷主企業、物流子会社、中小の物流事業者では弱点克服型の比率が高いが、大手の物流事業者では設定型の比率が高い。高い目標を掲げて人材育成を実施している様子が窺える。

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※後編(次号)へつづく


(C)2011 Nobuyuki Goseki & Sakata Warehouse, Inc.

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