第113号サプライチェーンとコストマネージメント(2006年12月7日発行)
執筆者 | 高沖 創一 東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 シニアコンサルタント |
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目次
1.経営者の不満
日本国内は、長期間にわたるデフレ経済の影響や、企業におけるキャッシュフロー重視の経営などから、売上債権や在庫の圧縮を進めた結果、キャッシュフロー創出の効率化がかなり進んだ。
図1.キャッシュフローマージンと営業利益率
内閣府今週の指標No.722「キャッシュフローからみる企業行動の変化」
(平成18年5月29日)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/shihyo/2006/0529/722.html
一方、その間にも消費者ニーズの多様化や、マーケットのグローバル化、インターネット等による調達手段の多様化が進み、製品ライフサイクルの短縮化が一段と加速した。このようなビジネス環境の中、家電メーカーに代表されるような“世界同時販売”という戦略が取られるようになっている。
図2.開発リードタイムと製品ライフサイクルの推移
<開発リードタイム>
<製品ライフサイクル>
「産業技術力強化のための実態調査」(1998年、社団法人経済団体連合会)より
それに合わせて、経営者はより早く・高度な意思決定が求められるようになり、結果として経営者に提供しなければならない情報が複雑になっている。しかし、これらの情報を提供できるような仕組みをもった企業は、日本にはまだ少なく、経営者は以下のような不満を持っているようである。
◇ | 製品の投入タイミングを判断するための情報が無い |
◇ | チャネル毎の費用と収益が把握できない |
◇ | 時間短縮のために緊急輸送などが頻繁に行われているが、そのためのコストが見合っているのか疑問 |
2.コストマネジメントの現状
ビジネス環境は、このように変化してきているものの、原価管理の仕組みは昭和37年の「原価計算基準」がベースとなった制度会計主体の原価計算と、計画・統制を念頭においた原価計算の仕組みに重点がおかれているのが現状である。このほかには、ABC/ABMのような考え方が物流などの個別部門に適用されたりしているものの、サプライチェーン全体を網羅的にカバーしたコストマネジメントを行っている企業は少数で、経営者の不満はもっともな話であり、これを解決するための仕組みが求められている。
図3.事業環境と原価管理
3.取り組み始めたサプライチェーンのコストマネジメント
コストマネジメントという位置付けからは、原価企画やライフサイクルコスティング、環境会計などのさまざまな管理手法があるが、ここでは先進的な企業がサプライチェーンをどのようなデータを用いて管理しているかをご紹介したい。
紙面の都合もあるので端的にご紹介すると、下記のようにコストと利益のマトリックスで管理している。これは、一見単純そうであるが、実は製品コードやBOMなどマスタ類の統一やグローバル管理指標の統一など、サプライチェーンマネジメントのグローバル標準化が出来ているからなせることであるという点に注意されたい。
図4.グローバルサプライチェーンの管理指標
4.マーケット価格へのアプローチ
最後に、これは本当に出来るのかどうかわからないが、将来への取組みをご紹介しよう。新製品の発売タイミングとチャネルコントロールにより、市場の創造と利益拡大を狙うという話。
『まず、新製品を投入する。これにより旧型は価格が低下する。しかし、価格下落は市場拡大をおこす。新製品による利益の獲得とともに、下落した製品は量による利益獲得を目指す。この動きを主導することで、他社の利益を圧迫し、市場から追い出しをねらう。』
ただし、これは、特定の市場において圧倒的に市場支配力のある製品を数世代先まで持っていることが必要なのだが。
図5.製品投入とマーケット
以上
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