第566号 最適化AIの技術を活用したシフト表の自動作成 ~「勤務シフト作成お助けマン」の導入で実現した改善事例のご紹介~(前編)(2025年10月21日発行)
| 執筆者 | 新井 祐一 氏 鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長 |
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執筆者略歴 ▼
*サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回、鉄道情報システム株式会社 営業推進本部 営業開発課 副課長 新井 祐一 様の講演内容を2回に分けて掲載いたします。
*掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。
目次
- 勤務シフト作成お助けマン
- 会社紹介
- Agenda
- 1.物流の2024年問題とは
- 2.働き方改革関連法とは
- 3.人手不足の問題
- 4.シフト管理におけるよくある問題
- 5.勤務シフト作成お助けマンとは
- 6.お助けマン利用企業の業種・業態
- 本論文は、前編、後編の計2回に分けて掲載いたします。
(以上前編)
勤務シフト作成お助けマン
JRシステムの新井と申します、よろしくお願いいたします。我々のサービスとしては、勤務シフト表の自動作成というサービスがありますので、本日はサービス内容について、改善事例を含めてご案内できればと思います。
会社紹介
先ほどご紹介いただきました通り、私は2015年から勤務計画ソリューションの企画、マーケティング、営業を担当しております。弊社の概要について紹介させていただきます。正式名称は鉄道情報システム株式会社、略称JRシステムと申しまして、設立が1986年12月9日ということで、国鉄が分割民営化された時(1987年4月1日)の、少し前に設立した会社となります。
元国鉄のシステム部門が独立してできたという経緯がありますので、各旅客鉄道会社が株主という形になっております。
弊社の一番のコアな事業として、JRの「みどりの窓口」の座席予約のシステム(旅客販売総合システム「MARS」, https://www.jrs.co.jp/guideline/mars/)があり、こちらのシステムの開発・運用に取り組んでいます。現在その他に、JR以外のお客様に対して提供可能なサービスとして、いくつかこちらの資料の右側に記載させていただいております。
例えば、行楽・観光情報データの提供サービスでは、「季節情報提供サービス」(https://www.jrs.co.jp/service/product/season/)だったり、「らく通」(https://www.jrs.co.jp/service/product/rakutsu/)というのは、ホテルのサイトコントローラーといいますが、旅行会社・予約サイトの予約情報や在庫・料金調整を一元的に管理するシステムです。あとは、データセンターサービス(https://www.jrs.co.jp/service/product/data_center/)です、自社でデータセンターの拠点を保有しており、データセンター事業を提供しています。
それ以外にもセキュリティや金融関連のサービスであったり、あとはJR貨物さんのコンテナの管理を長年行っており、そういったところから物流企業向けに、配送ルート計画ソリューション(https://www.jrs.co.jp/service/product/plan_root/)を提供しています。
本日ご紹介する「勤務シフト作成お助けマン」((公式サイト)https://www.otasukeman.jp/)のお話になりますが、これが使う技術自体は、いろんな問題を解くことができるものになります。
この後少しご紹介しますが、勤務シフトを自動で作っていて、この技術を使うと、例えば配送ルートを最適化するような計算ができたり、また、プロジェクトがあって、人をアサインしないといけないとか、マッチングするとか、そういったところへもこの技術を使うことで、自動化して答えを出すことが可能であり、そういった技術を使って(勤務シフト作成の)サービスを提供しています。
Agenda
アジェンダとしてこちらに記載しています。最初に少しお話した部分もありますが、物流2024年問題とか、人手不足のお話、シフト管理に関する問題とか、そういったところで、「勤務シフト作成お助けマン」がどのようなところで使われていて、どういった改善ができたのか、そういったお話をさせていただき、最後に、(お助けマンの)デモンストレーションをできればと思っています。実際のデモを見ていただくと、機能や操作性を直感的にご理解いただけます。ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
1.物流の2024年問題とは
この部分は、働き方改革関連法によってドライバーの時間外労働時間の上限が設定されることが2024年問題として取り上げられていますが、それによってドライバーの1日の運転時間が短くなり、1人当たりの走行距離が減少するため、物が運べなくなるのではないか、そういった点が課題として指摘されています。
2.働き方改革関連法とは
ここでは、法整備の理由を引用していますが、時間外労働の限度時間の設定というのが、物流の2024年問題に関連した、「働き方改革関連法」の主な施策になりますが、物流以外の業種でも当然、この法律が適用されて、高度な専門的知識を必要とする業務に就いて、一定額以上の年収を有する労働者に適用される労働時間制度(「高度プロフェッショナル制度」)の創設というのがあります。あとは短時間・有期雇用労働者や派遣労働者と、通常の労働者との不合理な待遇の相違を禁止する、こういったようなことが盛り込まれています。
一番私が大事だと思っているのが、多様な働き方というところになります。当然法律としては、時間外労働の規制とかがあると思いますが、流れとしては、多様な働き方を選択できるということが今後さらに推進され、この部分の流れというのは基本的に変わらないだろうと考えています。
働き方改革関連法の施工スケジュールは、こちらに記載している通りです。自動車運転業務、建設業務、医師については2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されました。それ以外に、勤務間インターバル制度とか、年次有給休暇の取得とか、こういったことも追加されています。
実際に我々のこのサービスについては、物流企業のお客様からのお問い合わせが増えている部分もありますし、医師の働き方改革ということで、医療機関からの引き合いも増えています。
時間外労働の上限規制は、自動車運転業務を除いて、一般的に年間720時間以内に設定されています。
自動車運転業務に限っては、年960時間の上限が設定されており、現時点ではまだ優遇はされてる部分もありますが、今後の流れとしてこの部分がもっと厳しくなると考えています。
あとは物流分野とは若干異なる領域になりますが、勤務間インターバル制度の導入促進というのが、勤務シフト管理においては、非常に重要なポイントとなっています。これは努力義務として規定されていて、終業時間から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休憩時間を確保する仕組みの導入を求められています。こういう要素が加わると、シフト作成担当者にとっては、非常に多くのことを考えないといけないという点が一つあります。
二つ目は年次有給休暇の確実な取得という点で、これは全ての企業において、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対しては、年5日以上の休暇を取得させることが義務付けられています。
そのため、勤務シフトを作成する上では、年間5日の休暇が確実に取得できるかどうかを確認しながら、シフトを作成する必要があり、同時に、勤務に関して適切な指示をする必要があるため、管理上の負担を大きくしている要因となっています。
3.人手不足の問題
次に、シフト表を作る上で難しくさせているのは、人手不足という状況で、当然人が潤沢にいればそこまで悩むことはないのですが、(人手が)少ない中で何とか(シフトを)作らないといけない、というところがあるかと思います。
今、この人手不足による経営ダメージが深刻になっているというようなデータが出ています。帝国データバンクが出してる2024年度上半期のレポートでは、163件が人手不足倒産と呼ばれる理由で、倒産に至ったと報告されています。上半期だけで、倒産件数が確実に昨年度を超えるだろうと予測されていて、これは従業員の離職であったり採用難で人手が確保できなかったりというのが、主な要因として考えられています。
このレポートには、業種別の人手不足倒産件数が出ており、特に建設業・物流業が全体の45.4%をしめていて、非常に集中している報告となっています。従業員数別で見ると、従業員が少ない10人未満の小規模事業者が全体の82.2%をしめており、非常に多くなっています。これはコロナ渦明け後の経済回復、時間外労働の上限規制、これらのダブルパンチで、こういった倒産が多くなったのではないかと言われています。
あとは、2025年問題というのがあります。この先もずっといろんな問題があるかと思いますが、我々のシフト管理をする上でも、キーワード(課題)になっていて、ベビーブームに生まれた多くの人、いわゆる団塊の世代の人ですね、それらの方々が2025年から75歳以上の後期高齢者になりますので、人口における高齢者の割合が増加し、様々な問題が出るのではないかと言われています。シフト管理に関係する課題といえば、慢性的な人手不足、今も人手不足なのですが、これがずっと続くということが言われていて、そういったところが一つ問題としてあると考えています。
あとキーワードとしては、「ビジネスケアラー」への対応というのがよく出てきます。つまり、仕事をしながら家族の介護に従事する社員が増加するということです。今後は、こういった方々への対応も必要になってくると考えています。
4.シフト管理におけるよくある問題
こちらに、「シフト管理におけるよくある問題」を記載しています。シフト管理をする上で一番の問題は、一番目に記載している、作成の負担が非常に大きいということです。(シフト作成に)すごく時間がかかってしまうことで、重要度の高い管理業務に十分な時間がかけられない、そういった話をよく伺います。当然そのシフト表を作る人は管理する方なので、シフト表の一番上に出てくるような人が一生懸命作っていて、その管理者の方にどうしても負担がかかってしまいます。つまり、単価が高い人が(シフト表作成のために)、非常にコストがかかっているという業務になります。
その作ったものが、すごくよいものだったらいいのですが、人によって上手い下手があったりして、なかなかよい結果が出ない、例えば、人件費、残業が減らないとか、そういったところも含めて、問題になっているということが一番目にあります。
2番目の問題は、シフト表作成が属人化しているという点です。
特定の担当者じゃないとシフト表の作成ができないとか、新しく担当者になった人に急に作ってと言われても、なかなかうまく作れない、そういったこともあるかと思います。あとは、勤務シフトを作成する担当者が違うと、働き方自体も変わってしまう、業務運営も変わってしまう、そういったようなところにも繋がってくると考えています。このため、前の人はOKでも次の人が作成すると駄目だとか、そういったケースもあります。
3番目の問題は、シフト表が原因で従業員満足度が低いという点です。
シフト表自体が働いている方々にとっては、すごく関心が高いのです。毎月、来月どういう働き方をするのか、きちんと休みを取れたかなど、すごく関心が高くて、そこの部分で、例えば、不公平感を持ってしまうと、すごくやる気を下げてしまったりとか、そういったことにも繋がるのです。シフト表を作る人も、公平なものを作りたいとは思っていますが、先ほどの法律(働き方改革関連法)であったりとか、人が足りないとか、そういった点を考慮すると、条件が複雑になり、もう人の手だけではなかなか(対応が)難しい、そういったケースもあります。
法律の知識がきちんとあって、従業員の希望もできるだけ叶えてあげたいという思いがあっても、やはり手作業でシフト表を作成するのは、限界があるというのが、物流業界だけではなくて、いろんな業界で、すごく皆さんが問題に感じている点であると考えています。
5.勤務シフト作成お助けマンとは
弊社がご提案している、「勤務シフト作成お助けマン」というサービスですが、こちらは最適化AIという技術を使ってシフト表を自動作成する、クラウドサービスになります。スタッフの希望、各種勤務条件を反映させることはもちろん、それ以外に、法令遵守だけではなくて、働きやすさとか、公平性、そのあたりを考慮した上で、シフト表を作成することができるサービスになります。
様々な業種業態にも対応していて、低価格でご提供している、そういったサービスになります。通常のシフト作成システムと何が違うのかという点ですが、おそらくほとんどの現場では、エクセルで作られているといったケースが圧倒的に多いかと思います。
これは業界を問わず、いろんな業界でも大手のお客様でも、やはり現場ではエクセルでシフト表を作っていますというのが、今のところ圧倒的に多いです。これを解決するためのサービスというのが今いくつか出てきていますが、大体はシフト作成のアシストツールと呼ばれるようなものです。
例えば、スタッフの方が、働いてる方からスマホでシフトの希望を集めて、シフト表を組むのは、手作業で組まなくてはいけなくて、その組んだ結果を共有できます、というようなものです。このエクセルをWebシステムに置き換えたツールというのは、大体アシストツールと呼ばれるもので、よくあるシフト管理システムであったり、勤怠管理システムのシフト作成機能というのは、この部類に入ると考えています。
ただ我々は、それだけだとこのシフト表を組む作業という部分に関しては、あまり工数を削減できないだろうと考えており、この部分の条件を入れることで自動生成され、最適なシフト表が出来上がるパズルみたいな作業はこのシステムが考えてくれるというサービスが、弊社の「勤務シフト作成お助けマン」になります。
6.お助けマン利用企業の業種・業態
こちらは、現在いろんな業種業態のお客様に、弊社の「勤務シフト作成お助けマン」をお使いいただいています。この事業を始めたのが、10年ちょっとぐらい前で、元々は我々はJRグループですので、駅の清掃要員の方々のシフト作成というのを、一番最初に取り組んできました。
そういった勤務シフト作成というサービスは、当然JRグループ以外にも使えるだろう、いろんなところで困っているだろう、ということで、このサービスを事業化したものです。当初は、病院だとか、介護施設というのが一番わかりやすく、看護師さんだとかが一番困っているだろうと考えて、サービスインしたのですが、サービスを開始してみると、更にいろいろなところからお問い合わせを頂いて、業種業態を問わずいろいろな企業のシフト表作成の問題を解決できるサービスということで、今ご案内しているところです。
勤務時間が非常に長くなれば、必ず業務を分担しないといけないので、勤務シフトというのが発生し、そういった現場であれば、シフト表作成が必要になるのです。物流現場でも土日関係なく動いているところは当然対象になりますし、小売り業でもすごく営業時間が長ければ当然シフトが発生する、そういったようなことがあり、いろんな業種でシフト作成が課題になっていると考えています。
※後編(次号)へつづく
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