ロジスティクス・レビュー

第153号 スーパー業界における生鮮EDIの取組み(2008年8月7日発行)

執筆者 西山 智章
(財団法人流通システム開発センター 国際流通標準部 次長)
    執筆者略歴 ▼

  • プロフィール
    • 入所以来、流通情報システムに関する標準化と関連インフラシステムの普及などに携わる。
      現在、コード(GTIN、GLNなど)、データベース(GEPIR、JANコード商品情報、POS情報)、EDI(流通BMS)、データキャリア(GS1データバーなど)の利用と普及推進を担当。
    • 生鮮分野の情報化研究にも取り組む。

目次

  食品や日用品等を取り扱う総合スーパー(大手量販店)や食品スーパーなどの小売業(以下、スーパー業界と総称)とその取引先において、EDI(企業間電子データ交換)の再構築が始まっている。
  スーパー業界と取引先の卸売業や商品メーカーの間では、これまで長年に亘ってEDIの通信手順としてJ手順が広く普及、利用されてきた。J手順は、今から30年近く前のホストコンピュータ時代に開発された方式であり、電話回線により固定長のテキストデータをやり取りする。
  今日、インターネットの急速な普及に伴い、様々な形式のデータをJ手順の数万倍以上のスピードで低コストにやり取り可能となってきており、こうした技術を利用した新しいEDI方式への転換が急務の課題となっていた。

次世代EDI標準を開発

  こうした背景のもと、経済産業省では06年度からの3ヵ年計画で、スーパー業界などの小売業とその取引先との間の次世代EDI標準の実現に向けて、流通システム標準化事業を推進している。
  具体的には、まず加工食品や日用品などのグロサリー分野において、EDI取引における業務プロセスとメッセージの標準化を進め、実証運用を経て昨年4月に「流通ビジネスメッセージ標準(以下、流通BMS)基本形Ver1.0」としてリリースした。
  流通BMSは、インターネットに対応した通信手順の採用により、従来に比べてハイスピードで柔軟性の高いEDIを実現する。加えて、これまで企業間でバラバラに取り決め、運用されていたEDI業務プロセスやメッセージ項目などの標準化を進め、取引の伝票レス化推進も併せて業務の一層の効率化を目指している。

生鮮分野でもEDI標準化を推進

  一方、生鮮食品分野では、受発注業務をはじめとして未だにtelやfaxの比率が高く、EDI利用が遅れている。
  これは、鮮度が重要視される生鮮食品は、発注精度をできるだけ上げようとして締時間が遅くなる傾向にあることに加えて、商品の産地や規格、数量、価格などが発注段階では必ずしも確定できない(出荷段階になって確定する)、食肉や水産物における不定貫商品(原価が納品時重量で確定)の存在などの固有特性があり、これらに対応した多様な取引形態や複雑な業務プロセスが多く存在していることが一因と考えられる。
  このため、昨年度の生鮮分野への取り組みでは、前述の基本形Ver1.0をベースとして、まず青果、食肉、水産物それぞれの取引業務プロセスを整理した上で、必要なデータ項目の整理を進め、生鮮標準EDIメッセージ(流通BMS生鮮Ver1.0)として取りまとめた。また併せて、青果と食肉におけるEDI取引のキイとなる標準商品コードの標準化を進めた。

流通BMS生鮮Ver1.0の概要

  生鮮分野の標準取引業務プロセスと標準メッセージの開発は、グロサリー版をベースとして、これに生鮮に特有な部分を加味する形で検討が進められている。(「図表-1 生鮮取引における全体業務プロセスモデル」参照)

図1 ファミリーマートの海外店舗展開の特徴

  生鮮においても、基本となる取引業務プロセスは、グロサリーと同様のターンアラウンドシステム(T/A)である。これは、発注を基点とする取引データを、請求・支払業務に至る一連の各取引業務へ順に引き継いでいく仕組みであり、発注時に付番される取引番号をキイとすることで発注から支払いまでの一連取引の追跡が可能となるだけでなく、取引の伝票レス化実現の基盤ともなるものである。
  さらにこれに生鮮固有の取引方法やプロセスとして、発注した商品や重量などが出荷時に確定する出荷変更基準の考え方や、発注書型、集計表活用型、仮伝票型、出荷型などの各プロセスが検討された。(詳細は後述)
  この結果、青果、水産物、食肉のそれぞれに共通的なプロセスやメッセージとして、基本取引6種類とオプション1種類からなる生鮮EDI標準メッセージが開発された。

生鮮固有の業務プロセス

  今回策定された生鮮メッセージの中で、生鮮固有の考え方やプロセスとして特徴的な部分には以下のものがある。
① 出荷変更基準

  生鮮では、出荷段階で(受注した)商品や原価などに変更が生じる場合が多いことから、出荷時に商品が変更されたと認識される基準(出荷変更基準)が以下のように整理された。
・商品の産地が変わった場合
・商品の価格(原価)が変わった場合
・商品の規格変更が商品コードの変更となる場合
・入数変更の場合
・過剰納品を受けた場合(過剰納品の該当基準は相対間で決定)

  例えば、出荷する際に商品の産地が分かれる、あるいは規格違いにより商品コード自体が変更となるなどの場合は、元の取引明細行とは別に、取引先側で新しい取引番号と行番号により新たに出荷データを追加作成する。(「図表-2 生鮮発注、出荷、受領時における各メッセージのセット例」参照)

② 発注書型プロセス
  市場買い付け商品、相場商品、不定貫商品などで行われる取引形態である。納品時に商品や原価が確定するため、発注時には取引番号をセットせずに発注書と呼ばれるオーダーを上げ、出荷時に取引番号を取引先側で発番して納品を行う。
③ 集計表活用型プロセス
  商品を小売物流センターへ総量納品する場合に、小売から取引先へ発注データとは別に、店別仕分作業用として集計表作成データを送る運用形態である。取引先は小売物流センターへ納品を行う際に、本データを元に店別ピッキングを行う。従来、小売業によっては集計表発注という呼び名で発注の一形態として扱われる場合があったが、今回、発注データとは別のオプションデータとして整理された。
④ 仮伝票型プロセス
  生鮮商品の特性上、単価などの取引条件が商品手配時(真夜中)に変更となり、その場では確定出来ないようなケースがある。こうした場合に対応して、ひとまず取引先側は仮単価で出荷し、後で確認が取れた段階で改めて確定データを送るような取引形態である。
⑤ 出荷型プロセス
  事前商談により発注内容が決まっている場合に、通常の受発注業務(発注データ)を経由せずに出荷業務(出荷データ)からEDI取引が始まるような取引形態である。このタイプとしては、客注対応、ルートセールス、契約に基づく取引先からの送り込みなどがある。

図表-2 生鮮発注、出荷、受領時における各メッセージのセット例

生鮮標準商品コードの概要

  生鮮標準商品コードについては、既に農林水産省が97年度からの食品流通情報化基盤開発事業で生鮮4品目(青果、食肉、水産物、花き)それぞれについて標準化を行っている。今回はこれらの商品コード体系との整合性を考慮しつつ、特に小売とその取引先がEDIで使用するという観点から見直しを進め、昨年度は青果および食肉の標準商品コード体系の整理確認と個々の商品に対する具体的なコード展開が行われた。
  いずれも13桁のJANコード体系の中で、生鮮商品を表す4922(生鮮フラグ)を先頭に、生鮮4品の区分に加えて、青果や食肉それぞれの標準品名や規格などの体系が確認、決定されている。

図表-3 青果および食肉の標準商品コード展開(部分)

今後の展開

  流通システム標準化事業の最終年である今年度は、これまでの積み残し課題への対応を進めていく。具体的には、生鮮分野については、昨年度の共同実証で明らかになった諸課題への対応をはじめ、懸案の週間予定や食肉個体識別番号などに関するメッセージの策定を進める。また標準商品コードでは、残る水産物について標準体系の整理などを実施する予定である。
  これらと併せて、当センターでは流通BMSの普及拡大に向けて、EDI基礎セミナーの開催をはじめメールマガジンの発行など、様々な形で積極的にPRを推進していく。グロサリー分野に引続いて、いよいよ生鮮食品分野においても、EDI推進に向けた取組みが本格化していくことが期待される。

(参考)流通システム標準化事業ホームページ http://www.dsri.jp/scmpjt/index.html

以上



(C)2008 Tomoaki Nishiyama & Sakata Warehouse, Inc.


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