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グローバル・ロジスティクス

第208号TEKNOSAトルコ最大の家電量販店の物流センター(2010年11月16日発行)

執筆者 鈴木 準
サン物流開発 代表
    執筆者略歴 ▼
  • プロフィール 1933年9月22日 東京都江東区出生
    学歴
    • 東京経済大学商学部卒業
    • 産業能率短期大学生産管理科卒業
    • 日本電子専門学校電子計算機科卒業
    職歴
    • セーラー万年筆(株)経営企画室主任
    • (株)長崎屋 物流部・電算部部長・システム本部副本部長
    • (株)サン商品センター代表取締役社長
    • (有)サン物流開発代表取締役
    • サン物流開発代表 現在に至る
    講師
    • 専修大学講師・早稲田大学講師及び早稲田大学アジア太平洋研究センター講師経験
    • JILS 物流現地フォーラムコーディネーター 20年経験
    • 日経ビジネススクール講師
    • 文化ファッションビジネススクール講師
    • 中小企業事業団登録専門指導員経験
    資格・所属団体等
    • 物流管理士、販売士1級、日本物流学会会員、国際物流管理士
    その他
    • 海外物流視察100回、内外合わせて1,000施設視察
    • 2006年 (社)日本ロジスティクスシステム協会 物流功労賞受賞
    連絡先 事務所 〒274-0822千葉県船橋市飯山満町3-1761-105

目次

訪問日 2010年6月23日(水)10時
所在地 Baris Mah, 1804 Sok,No:Gebze/Kocaeli Turk
業 種 家電量販店
ご案内 Mr. Dilek Goncer, Lojistik operasyons yoneticisi

1.会社概要

 Gebze Distribution Center

 社名のTEKNOSAのSAはサバンジュ財閥のイニシャルである。サバンジュ財閥(Sabanci grubu)は、持株会社のサバンジュ・ホールディング(Sabanci Holding)を頂点とする、トルコ最大の財閥です。
現在のサバンジュ・ホールディング会長は、Gebze Distribution Center女性のギュレル・サバンジュ(Guler Sabanci)。 先代のサクップ・サバンジュ(Sakip Sabanci)は慈善家として知られ、特に教育・医療機関に多額の寄付を行っていました。

この功績を讃えられ、サクップの葬儀は国葬として執り行われました。
主な企業は、金融部門のアクバンク(Ak Bank:銀行)、アク・シゴルタ(Ak Sigorta:保険)。自動車部門のトヨタ・サ(Toyota SA:トヨタ自動車との合弁、乗用車)、テム・サ(Temsa:バス)、流通部門のカルフール・サ(CarrefourSA:スーパーマーケットのカルフール)などほか多数あります。トヨタ・サではカローラなどを生産し、ほとんどが欧州へ向けて輸出されています。内、上場企業は13社。最近では、崩壊したウザン財閥から預金保険基金(TMSF: Tasarruf Mevduati Sigorta Fonu)に移管された携帯電話会社テルシム(TelSim)の買収に強い意欲を示している。グループの社名の最後にSAが付いています。

(2)TEKNOSAと云う会社

 テクノサ店舗数の変遷

 テクノサの正式社名は(Teknosa Domestic and Foreign Trading Ink) 2000年10月に Haci Omer Sabanel ホールディングスによって設立されました。技術製品の供給を専門とする供給チェーン「テクノ・ストア」及びエアコンとボイラーの販売を行っているIklimasaはテクノサ貿易社の傘下で運営しています。

トルコ国内の66の都市にある256の店舗を通じて、テクノサはソニー、HP、ノキア、ソニー・エリクセン、LG、フィリップス、サムスン、パナソニックをはじめとする100種以上の世界のブランドを供給しています。テクノサは売り場面積9万平米に及ぶスペースを誇るトルコ最大の家電販売チェーン店です。
①サプライヤー
  テクノサのサプライヤーであるメーカーや卸売業は200社以上あり、ほとんどがイスタンブールに拠点を持ち、テクノサのDC又は店舗に納品しています。取引の87%はゲブゼの中央物流センターに納入されます。そして仕入れ商品の1%はデポに納品されています。デポの大部分はサードパーティによって運営されています。修理センターは中央物流センターの近くにあります。
②小売及び卸売りと顧客
  61都市に223店あり、店舗は標準化しています。また、ボイラー等、業務用機器の販売業務の事業を担当する会社”Iklim”があり、500のデイラ―を持っています。
販売商品の3%は自宅に配達されますが、その三分の二は物流センター又はデポから配達されます。サービスセンターはトルコ全域に800以上あります。修理品は店からサービスセンターか修理センターに送られます。
③従業員
  従業員は3,500人、従業員は「人々に技術の恩恵を」という理念のもとにお客様に奉仕しています。
④社会貢献事業
  社会貢献事業の一つに女性のための無料パソコン教室があります。
テクノサの経営理念には、「すべての人に技術を」、「女性に技術を」があります。
女性のための無料パソコン教室は2007年5月からスタートし、受講者は6千人に達しています。


出所:www.flickr.com/photos/33772521@N06/3142485308/

出所:www.flickr.com/photos/33772521@N06/3142484384/
店内の光景

 

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2.TEKNOSA中央物流センター

(1)物流センター概要
①倉庫面積 3万㎡(150m×200m)高さ13.5m~17m
②立 地 フリーウエイまで350m、高速道路まで 900m、港まで10Km, Gebze税関まで2Km
(2)DC業務
①在庫数量 40万ピース/日
②出荷量 年間1,000万ピース、1日3万ピース、毎分32ピース
③輸送量 年間フルトラック換算6千台
④稼 働 1日2シフト、週7日稼働
⑤WMS 庫内の作業システムはテクノサが自主開発した。
⑥従業員 110人、中央物流センターのみ
⑦精 度 出荷精度 99.996%、破損なし 99.97%、配達時間 96.22%
⑧保 安 入荷30、出荷30、計60の出入り口に監視カメラがあり、かつ、記録
⑨管 理 ISO9001 2008年 計8タイトル取得

3.オペレーション

(1)ケースピッキング

 倉庫内のプレゼンテーション

 最近は商品の多様化とデザイン性が高っているために聞かれなくなったが、昔、家電は「白物」と「茶物」に二分されていた。
白物とはキッチンで使う家電で、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、電気釜等です。
茶物はリビングで使う商品で、テレビ、オーディオ、暖房機等である。
それに、多品種の個人用の小物と消耗品がある。

 大物家電の倉庫

 ピッキングはマニュアルでスーパーや食品卸と同じような保管方式であった。
自動倉庫はなく、固定のパレットラックで棚は6段である。
ケースピッキングは通常ラベル(シール)ピッキングです。
店別、在庫のロケーション別にピッキングする個数のラベルをプリントアウトします。

(2)ピッキングラベルの内容

 ピースピッキング1

①IDのバーコード
②配達コースと配達時間
③配達日
④ピッキングのアドレス
⑤商品コードと商品名
⑥顧客住所とお名前

 ピースピッキング2

 ピッキングの作業者はローリフトのパレットローダーにパレットを刺し、ピッキングラックの在庫のロケーションに行き、商品にラベルを貼って、ピッキングし、パレットに積み、出荷場のマーシャルヤードに置く。
ドライバーは商品に貼られたピッキングラベルのバーコードをHHTでスキャンして配達順序の逆にトラックに積む。

(3)小物のピースピッキング

  ピースピッキングは商品特性と出荷頻度で分けられている。やや、大きめで足の速い商品はスーパーのDCと同じで、下2段をピッキングのアクティビティラックにし、3段から上はリザーブラック(予備在庫)にしている。小物で克つ足の遅い商品は固定の平棚である。
ピッキングは世界の定番、スーパーの買い物のカートとハンディターミナルです。
ピッキング結果を無線でコンピュータを通して検査場に送ります。

  • ピッキング情報をHHTにダウンロードする。
  • HHTが表示するアドレスのロケーションに行き、指定の商品をピッキングして、EANのバーコードをHHTでスキャンし、台車に載せます。
  • 1バッチのピッキングが終わるとピッキング情報はコンピュータに送られ、検査係にも送られます。
  • 検品係はEANで検品し、間違いがなければ輸送用の箱に詰めて、荷札を貼り、出荷係に渡します。

  WMSは世界のスタンダードと云えるものです。ピッキング精度は出荷精度が99.996% ミスは10万分の4である。指定時間配達96.22%、破損率は0.03%(1万分の3)はやや高い感じである。

*画像をClickすると拡大画像が見られます。

4.まとめ

  日本小売業協会主催第12回欧州流通&物流視察では6社を訪問しましたが、そこで感じたことは物流管理と技術の水準が世界的に平準化していることです。特に、國々のトップクラスの企業は国の経済の国際水準に関係なく、WMSは均一化しています。ASN、EDI、HHT、Picking Cart, DPSはポピュラーです。ヨーロッパでは自動倉庫は、自動仕分機より普及しているようです。しかし、経済、労働事情などでは、国によって違いがあります。
  1970年、日本の物流の黎明期と比較すると格段に物流管理と技術は成長し、普及しました。1970年代、アメリカの食品卸の物流センターを視察しました。センター長は誇らしげに「当社のピッキングミスは1.5%である」と語っていました。当時、日本では物流品質についての統計データーを持っている企業は少なかったので、視察団の一同は感心しました。
  しかし、その頃、日本の製造業ではZD運動が盛んであり、その影響は物流分野にも波及しppmと云う言葉が聞かれるようになっていました。今、日本では十万分の一、即ち、10ppmがスタンダードと思いますが、今回訪問したトルコの企業は10万分の1に近く、十分な精度だと思います。しかし、日本の出荷単位がピースに対し、欧米のピッキング単位はケースなので、日本の物流品質は世界のトップクラスと云えるでしょう。
  今回の訪問企業の物流品質は日本の一流企業の物流品質水準に近いので、物流管理と技術の進歩と普及に驚かされました。最近話題の乗用車のリコールや韓国に後れを取るエレクトロニクスは日本企業の慢心の結果ではないかと思いました。テクノサのプレゼンテーションを聞いているとトヨタと変わらない水準に驚かされました。もちろんテクノサの持ち株会社サバンシュ財閥ではトヨタカローラの工場を持っているので、その影響でしょうか。
  システムハウスやマテハンメーカーのグローバル化やISOが世界の物流管理技術の水準を引き上げていると思います。我々は世界に情報収集のアンテナを張り巡らし、アジアのリーディングステーツとしての地位を守らなければならないと思います。その為に、このような海外視察は重要なプロジェクトだと思います。

以上



(C)2010Jun Suzuki & Sakata Warehouse, Inc.

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