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グローバル・ロジスティクス

第198号ドイツのトラック業界事情(2010年6月15日発行)

執筆者 鈴木 準
サン物流開発 代表
    執筆者略歴 ▼
  • プロフィール 1933年9月22日 東京都江東区出生
    学歴
    • 東京経済大学商学部卒業
    • 産業能率短期大学生産管理科卒業
    • 日本電子専門学校電子計算機科卒業
    職歴
    • セーラー万年筆(株)経営企画室主任
    • (株)長崎屋 物流部・電算部部長・システム本部副本部長
    • (株)サン商品センター代表取締役社長
    • (有)サン物流開発代表取締役
    • サン物流開発代表 現在に至る
    講師
    • 専修大学講師・早稲田大学講師及び早稲田大学アジア太平洋研究センター講師経験
    • JILS 物流現地フォーラムコーディネーター 20年経験
    • 日経ビジネススクール講師
    • 文化ファッションビジネススクール講師
    • 中小企業事業団登録専門指導員経験
    資格・所属団体等
    • 物流管理士、販売士1級、日本物流学会会員、国際物流管理士
    その他
    • 海外物流視察100回、内外合わせて1,000施設視察
    • 2006年 (社)日本ロジスティクスシステム協会 物流功労賞受賞

目次

ベルリン・ブランデンブルグ交通・物流連盟

今回紹介するベルリン・ブランデンブルグ交通・物流連盟は狭い地区の物流業者の利益保護団体である。会員はベルリン・ブランデンブルグ地区の物流企業、会社数は150社、社員は12,000人1社当たり80人である。業種はトラック輸送、引越し(美術品輸送)倉庫、3PLであり、荷主も入会することができる。運送、倉庫、ロジスティクスに分類されている。ドイツでは3PLの呼称は使わない。ロジスティクスの分類に入り、オルガナイザーと呼んでいる。最近トランクルームと家具、引っ越しと美術品輸送が入っている。協会の大きな仕事はロビー活動である。ベルリンは行政上は州で、その中に市が含まれる。

1.ドイツの物流産業

(1)ドイツの物流産業

   事務局長 Mr.Marten

 レクチュアをしてくれたマーチン事務局長からロジスティクスの定義が聞かされなかった。ここではロジスティクスを物流とした。ドイツの運送を含む物流業は急成長した。事務局長はロジスティクスは魅力的な仕事であると語っている。ドイツの物流産業の売上高は約 1,500億ユーロ(約2兆円)GDPの7.5%を占め、2007年までは年率6%成長してきた。ベルリン市を含むベルリン州とブランデンブルグ州の主要区域には物流では15万人が従事しており、労働人口の9%を占めている。ドイツは輸出立国であり、輸送を重要な産業としている。故に交通省がある。

(2)雇用者組合

2009年、リーマンショックにより、ドイツの物流業界は売り上げが20%低下している。特に、トラック業界は30%売り上げが低減している。ベルリンには雇用者組合というものがあり、業界団体150社が加入している。物流では運送業、引っ越しを含む家具運送業、倉庫業、物流業(ここでは3PLと思う。)に分類されている。しかし、ドイツでは3PLと言う言葉は使わないそうである。オルガナイザーと言っている。加盟企業の従業員は1万2千人である。

(3)物流関係業界団体

  • FIATA :国際輸送代理店業
  • FEDEMAC :欧州家具運送業連盟の上部組織
  • DSLV/BSL :ドイツ貨物輸送・ロジスティクス産業連盟/ドイツロジスティクス連盟
  •  :欧州運送業者連合
  • VVL :交通・物流連盟

(4)輸送手段別構成比

   輸送手段別構成比 トン・キロ

 不況に対し、企業はワークシェアリングで対応しようとしている。労働時間を減らすのではなく、1人当たりの運ぶ量を減らすのである。フォークリフトで200kg運ぶのも400kg運ぶのも労働時間は同じである。この対策には政府の補助と指導がある。
2009年の当協会(連盟)は暗い話題ばかりなので、いかに明るい話を流すか努力している。話題づくりに苦労した。しかし、先行きは暗くない。たとえば食品は売り上げが減少していない。ベルリンには文化事業があり、博物館や劇場の仕事が多い。これも見通しを明るくしている。ドイツ経済は2008年まで、年率6%の成長をしていた。

 ドイツは労働組合の強い国である。そこで、当協会は労働組合とも協定を結んでいる。また、荷主であっても協会に加盟できる。加盟すると労働組合と連携ができ、労働条件の交渉がスムーズにできる利点がある。当協会は中小企業が多いが、協会と労働組合の協定が適用されるので、中小企業には有利(?)である。

2.ロジスティクス業界の労働環境

労働時間は、鉄道は週35時間、運送関係は週6日まで、40時間である。賃金は15~20ユーロとなっているが実際は7~9ユーロ(1,000円~1,300円)である。所謂、ヤミトラ、日本の白ナンバーと思う。日本と違うのは、免許制はあるが営業ナンバー制はないそうである。運転手は運転免許があれば良い。協会{連盟}の仕事にはFIATAやDSLVなどの業界のワールドセンターへ提出する書類の代行がある。

3.ロジスティクス(物流業界)の職業教育

ドイツでは職業教育に熱心である。高校を卒業するか高卒の資格検定に受かった者は3年制夜間の運輸大学に入学できる。これを卒業すると大学卒業資格や物流専門士の資格が授与される。授業内容は物流全般で、陸運、海運、内航、輸出梱包、倉庫、引越し、鉄道、港湾荷役などとロジスティクスがある。実地訓練もあるが無給である。3年間の学習が終了すると終了試験がある。ただし、就職は個人の努力である。ドイツにはトラック運転免許証がある。(日本の大型車運転免許)
2009年9月1日より、運送に関する新法が施工された。トラック運転免許を持っていてもキャリアアップの教育を受けなければならない。家具・引っ越し専門士という資格試験もある。家電品の家庭内でのセットアップの資格である。手工業のマスターのようなものである。
ドイツの運送会社はトラックを持っていない。西濃運輸と提携しているSchenkerがそうである。今、ヨーロッパの運送は48時間以内でヨーロッパ全域に配送しなければならない。通関手続きがなくなったのでそれが可能である。但し、ロシアは通関手続きが必要である。ドイツの運送業の人員の規模は5人以下が67%、500人以上は3%である。ドイツを代表する総合重機メーカー、ジーメンスは自社輸送率は50%、トラック業者に委託25%、ブローカー(手配業者)25%である。

4.トラックの環境問題

トラックの環境のための基準はEuro1からEuro5まであり、年々レベルが上げられる。排ガス規制は1998年にEuro1規制がスタートした。その後、2003年はEuro2、2006年にはEuro3。規制は年年厳しくなっている。そして、この規制は世界に導入されつつあり、日本では2006年にEuro3より厳しい規制が実施されている。

 排ガス規制値

トラックのサイズについては環境保護から決められる。ドイツのトラックの最大は最長18.75m、40t、今後は 25.25m、40tになる。普通車は16m、2アクセルである。ベルリンなど大都市では”環境ゾーン”を設ける構想が進んでいる。高速道路の市内への延長にはベルリン市民の反対が強い。ベルリンの場合は、Sバーンの内側への排気ガス対策をした自動車以外は交通禁止である。乗用車5万台、トラック 2,900台、ベルリンで120万台が規制の対象になる。
排気ガス対策をした車両はその排気ガス排出量に対応して、黄色と緑のステッカーを貼る。2010年1月1日からは緑のステッカーを付けた車だけが規制区域に入れる。5万台の車が規制の対象になる。緑のステッカーを取るには4千ユーロから7千ユーロかかる。(40万円から90万円)2006年以後のトラックは黄色ステッカーであるが間もなく環境ゾーンに入れなくなる。クレーン車も規制対象である。宅配便4社は90%天然ガス車を使用している。

5.ドイツの都市交通

   Sバーン

 日本は路面電車が少ないがドイツではどの都市でも見られる。しかも、緑のトンネルの中を走り、乳母車やサイクリング車の利用が多く見える。
この路面電車はトラムと呼ばれ、市内の短距離の交通を担っている。
長距離の交通機関はDBで日本のJRに相当する。DBとトラムの中間に位置し、市と市を結ぶのがSバーンである。日本の私鉄に相当する。

これに加えて地下鉄がある。ドイツの電車には改札がない。しかし、時々抜き取りで検札があり、罰金が非常に高いので、きせるや無札乗車は少ない。
ドイツが目指すのは単純な脱車社会ではない。車は、現在も未来も無くてはならない交通手段の一つであり、特に郊外では自家用車無しの生活など考えられない。

   パーク&ライド

 しかし、無駄な車の利用を抑え、できるならば公共交通を利用できるようにするのが、現在の地域交通の考え方だ。Sバーンを利用している60代のあるご夫婦は「普段はSバーン・トラムを使い、買い物に行くときは車を使う」と話していた。”Sバーン・トラムか車か”という排他的な2者択一ではなく、必要に応じて交通手段を使い分けられるような交通環境 を提供する。パーク&ライド(P&R)と呼ばれ、通勤だけでなく行楽で利用する人も多い。また、カーシェアリングもはやっている。街で大きな催し物があるときなどは車で市街地に行くことは困難だから、P&Rがとても便利である。

 Sバーン・トラムと車の理想的な共存の道を探っているわけだ。

  *(注)本項は松田雅央氏のホームページを参照しました。
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松田雅央(まさひろ) 1966年盛岡生まれ カールスルーエ市在住ジャーナリスト。
92年東京都立大学(現首都大学東京)工学研究科大学院修了、95年渡独 ドイツ及びヨーロッパの環境保全やまちづくりをテーマに、雑誌・インターネット等への寄稿、講演活動、委託調査、視察コーディネート、通訳、翻訳に従事。
著書は「環境先進国ドイツの今(学芸出版社)」、「ドイツ・人が主役のまちづくり(学芸出版社)」等。
ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員
※参照サイト www.tiara.cc/~germany
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6.トラックの排ガス規制


(注)otto Motor=無鉛ガソリンを使ったエンジン

7.車両サイズ

8.高速道路料金

ドイツには1万2千Kmの緻密な高速道路網がある。今、通行料金の有料化が問題になっている。料金所を設けるのは難しいそうだ。①ガソリンスタンドでステッカーを買う方法②クレジット会社に払う方法③日本式のETC④インターネットで支払うなどが話題になっている。また、トラックの重量検査も厳しくなる予定だ。
今までポーランドの車がドイツで営業することは出来なかったが、これが自由化された。われわれの観光バスでサンクトペテルブルグ生まれの運転手がいて、道がわからず苦労した。

以上



(C)2010 Jun Suzuki & Sakata Warehouse, Inc.

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