ロジスティクス・レビュー

第14号日本の物流とこれからの国際物流の方向(2002年08月23日発行)

執筆者 木村 徹
西濃シェンカー株式会社 課長
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1985年4月 渋沢倉庫株式会社入社
      配属部署(通関部門・貿易代行部門・海外引越部門・大井埠頭の保税倉庫)
    • 1997年2月 同社退職
    • 1997年3月 リーボックジャパン株式会社入社 ロジスティクス部 課長代理
    • 1999年10月 同社退職
    • 1999年11月 マースク株式会社入社
      マースクロジスティクス株式会社 SCM課 課長
    • 2002年8月 同社退職
    • 2002年8月 西濃シェンカー株式会社入社 ロジスティクス部 課長
      現在に至る。
    所有ライセンス 通関士、ジェトロ認定貿易アドバイザー、危険物取扱者、海技士(Navigator)他
    誌紙出稿
    • 流通設計21(旧 ロジスティクスジャーナル) (2001年1月より現在連載中)
    • ジェトロセンサー (2000年11月&2002年2月)
    講演実績
    • サカタウエアハウス ワークショップ
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:貿易取引と為替決済)
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:ロジスティクスの実際)
    • (財)静岡県国際経済振興会 (内容:物流企業の生残り)
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:ロジスティクスの実際) 他
    所属学会
    • 日本貿易学会
    • 日本物流学会

目次

1.Introduction

 ユニクロが中国で多品種で大量の商品を生産し日本に輸入して自己の店舗で売るという新しいビジネスモデルを活用し、アパレル業界で一人勝ちをした。
 これはSPA(製造小売り;規格・製造から直営店での販売までを一社で全て行う)という手法であり、米国ではギャップがこの方法を用いて大成功を収め、日本ではやはりアパレルのワールドがアパレル業界で一番初めに手がけた。
 また、100円ショップも安い人件費を享受できる中国等にて多品種を大量に買い付け、自己の店舗で販売している。
 これらを可能にしたのは大量発注と一括仕入れ、そしてそれを販売する器である自己店舗であるといえよう。

 しかし、それを支えているのは「物流」なのだ。「物流」は表には出てこないので忘れられがちだが人が生きて行くためには必要不可欠な行為である、工場へ原材料を輸送する行為も、出来上がった製品を工場から店舗へ運ぶ行為もなしでは人の生活を脅かすことになるのは間違いない。
 そして海外へ工場がシフトしつつある現在、国際物流がクローズアップされてきている。その物流もロジスティクスと呼ばれ、またサプライチェーンマネージメント(SCM)と呼ばれることによって物流の質がどんどん高度化し複雑化し、コンピュータライゼーションの波にもまれてきている。

 この物流がどのように変化をしてきているかを考察して行きたい。

2.従来の国際物流

 従来は、在来船、コンテナ船や航空機で港(空港)から港(空港)へ貨物を移動する行為が国際物流の主流であった。そしてそれを担っているのは「船会社」や「航空会社」のキャリアーといわれる会社である。
 それはFOB、CFRやCIF(インコタームで決められた輸送契約条件)で運ぶのが一般的であり、輸入者は輸出地で貨物が本船に積まれた以降の責任を有するだけで済んでいた。
 また、輸出国における国内輸送・輸出通関等の本船に積み込むまでの取扱い、海上(航空)輸送、そして日本着後の取扱いは各々違う会社に業務を委託するのが一般的であった。

3.新しい国際物流

 その後、フォワーダーの出現により混載貨物(Less Than Container Load)の取扱いに変化が生じた。
 それは、船会社はコンテナ単位貨物(Full Container Load)の取扱いに重点を置き、混載貨物はフォワーダーが扱うという図式である。
 実際、航路によっては混載貨物を取り扱っていないという船会社が多くなった。
 また、一般的に船会社の業務は港から港までの貨物の移動(輸送)であるが、フォワーダーはその前後の業務である輸出取扱いと輸入取扱いも海上(航空)輸送といっしょに行って、船会社の行っていないワンストップショッピング(1社で全ての業務を取扱うこと)のサービスを提供する事で、単なるNVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier)からの脱皮を図っている。

 物流の世界では「海運」、「陸運」、「航空」の各業務に縛られず、それら全てを包含する意味で「ロジスティクス」という言葉が使用されるようになった。
 実際、海運会社の動向を見ると、外資系船会社であるMaersk SealandはMaersk Logisticsを、APLはAPL Logistics、日本の船会社である日本郵船はNYK Logisticsを、商船三井はMOL Logistics を川崎汽船はK Line Total Logisticsを、それぞれ持つことによって船舶運航会社の域を超えたトータルロジスティクスを目指している。
 特に、邦船各社は求心力を高める事によるスケールメリットを打ち出してきている。

 航空貨物の場合も同様であり、航空運送と輸出入通関そしてそれ以外の周辺業務(バリューアデッドサービス:バーコード、バイヤーズコンソリデーション、受発注代行 他)を扱う航空フォワーダーが増えてきている。特に外資系航空フォワーダーが顕著である。
 Schenker、Danzas、Excel、Expeditors等は IT-system を武器にしたSCM サービス(物流における情報サービス)を荷主に提供することで物流に付加価値を付けている。
 日系のKWE(近鉄エクスプレス)は受発注代行を行う別会社を設立し、大手コンピューター会社の物流業務を受注代行から国際輸送、そして国内輸送までも請け負いトータルロジスティクスサービスを提供している。 また、航空フォワーダーは国内運送会社と手を握る事によりノンストップサービスを荷主に提供できるようになった。Schenkerと西濃運輸、UPSとヤマト運輸、DHLと佐川急便が代表的なところであろう。

 航空フォワーダーでありながら自ら航空機を所有し運行しているインテグレーターと呼ばれる新しいカテゴリーの会社も出現している、DHLやTNT、UPS、Federal Expressがそれである。

4.3PL、4PL 、SCMサービスプロバイダー

 物流が進化していくに連れて、物流全般をアウトソーシング(外注)する荷主企業も現れてきている。荷主としては物流のワンストップショッピングを行うことで窓口が一つになるため、連絡体系の簡略化や請求書の統一が可能になるのだ。
 また、アウトソーシングを行っている荷主企業の一番の目的はボリュームディスカウント(数量割引)によるコストの削減であり、そして情報の一元化であろう。

 荷主企業の要求を満たすために、物流企業はIT関連への投資を余儀なくされ、かえって物流業者のコストがあがっているという実態も報告されている。
 しかしこれらITツールが差別化サービスとなりその顧客をビジネスモデルとして新規顧客の獲得に繋げるというコマーシャル効果を産んでいるのも事実である。

 3PL(Third Party Logistics)、4PL(Fourth Party Logistics)としては、輸出・入を伴うビジネスが増大していく中で日本国内だけのビジネスに留まっているのは片手落ちと言わざるをえないであろう。
 そのため海外にどのようなネットワークがあるかがLSP(Logistics Service Provider = 物流業者)の重要な要素であり、それが同系列の会社であれ代理店であれ、いかに海外との連携を上手くとってJIT(Just In Time)サービスを提供出来るかが物流企業と荷主企業との間のロングタームビジネスのカギとなるはずだ。

 だが、海外との間では、言葉の問題、慣習の違い、商習慣の違い、法律問題、通関方法、税金の課税方法、非居住者在庫が認められているかどうか等の様々な問題が生じてくるので、荷主企業・物流企業共にそれらを事前に検討すべき点は多い。

 3PL若しくは4PLの要件としてはいろいろと言われているが、最低限下記の項目全て備えている企業が本来の意味での3PL(4PL)と言えるであろう。

  • ITシステム等を効率的に使用し、情報サービスに対応出来る。
  • 社内の倉庫、トラック等のアセット(資産)にとらわれることなく自由に競合他社の資産を活用することにより、最適な物流方法の構築を行うことが出来る。
  • 荷主企業から言われる事のみを行うのではなく、自分達から積極的に提案する事が出来る。(ビジネスプランの提案・構築が出来る)
  • コンサルタント能力があり、必要に応じてABC分析やABM分析を行う能力がある。

 但し、3PL、4PLやSCMサービスプロバイダーと標榜している会社であっても、従来の物流との違いを何ら打ち出していない会社も多く、また、これらの言葉が単なるファッションとしてのみ使用され、この言葉を用いさえすれば良いと考えている物流企業が存在しているというのも事実である。
 物流会社は実際としての3PL、4PL、SCMサービスプロバイダーとしての要件を備える必要があり、荷主企業はそれらを見抜く目を備えて行かなければなるまい。

 残念なことにLSPにおける日本の現状は世界に立ち後れている感がある。
 それというのも多くの荷主企業が、情報は無料だという意識を持っているからなのだ。この厳しい物流事情の中で生き残って行くためには情報化、コンピュータライゼーションの更なる高度化が必要である。
 そのためには、ネットワーク等に多額の投資をしなければならない訳だが、荷主企業がその費用の負担を行わないために情報の遅れが生じていくことになるのではないのだろうか。

 今までは「物流」というと後処理型物流が主流であったが、今は違う。
 物流を戦略として捕らえロジスティクスから発生する情報群をいかに経営戦略に組み込むかが、会社の生命を左右していくといっても過言ではないのだ。
 物流は全ての場面で製品と向き合っている。特に製造業では製品が製造される前から(調達物流)、製造され納品される時(販売物流)まで最前線で生きた情報を持っているのである。

5.日本の物流の現状

 「系列」という言葉は世界で通用する言葉になっており、英語では”KEIRETSU”で通じる。だが、これは株式の持ち合いという図式を持っている日本独自の考え方であり、KEIRETSUは決してよい意味で使われていないことが多い。 当然ロジスティクスの世界にもKEIRETSUは大きく影響している。特に”商社”がその最たるものであるが、そういう意味では、物流子会社もKEIRETSUと肩を並べるであろう。
 現在、多くの物流子会社は親会社からの独立を迫られている。比較的外販比率が高い物流子会社であっても、せいぜい外販比率は60%程度であり、残り40%は親会社に頼っているのが現状である。
 親子の関係から親会社が赤字の時に子会社が黒字を計上することが出来ないという変な構図も生まれている。 全てが悪いとは言えないが、健全な競争社会を無視していると言えるだろう。
 100円ショップやユニクロ等プライスキラーの台頭により全ての商品の価格は低下傾向にあるが、これらの方向性も一昔前の「安かろう悪かろう」というような物ではなく、「安かろう良かろう」という方向に変わってきている。どうしてこのような「安かろう良かろう」いう現象が起こってきたのであろうか。
 それは全てのファンクションにおける効率化とコスト削減が行われたからである。当然、ロジィスティクスにも目が向けられている。
 特にプロフィットセンターではなくコストセンターであるロジスティクスの場合は、利益を産まない部門ということでコスト削減に対する風当たりは特に厳しいものがある。

 部品メーカーに至ってはVMI(Vender Management Inventory)という名の下にJIT(Just In Time)要求に乗っ取った、いじめとも言えるような厳しい商品納入条件を突き付けられているのが現状である。
 組立工場の周りにはVMIを行うために各部品Venderが倉庫を建設してVenderの責任において部品をストックし、組立工場から発注があり次第直ちに納入することが出来る体制を強いられている。
 それが出来ないVenderは、組立工場からの発注をもらうことが出来ないのだ。
 また、日本に残った部品Venderは、海外にシフトした組立工場からあたかも隣町にあるような感覚で発注をされ、船便はもとより、航空貨物にも間に合わなければVenderの社員が航空チケットを買いハンドキャリーで工場へ期日までに持っていかなければならないという現状もある。
 その発注遅れの原因が組立工場にあったとしても、部品Venderが航空運賃等の余分な出費を受け取ることが出来るのはまれであると言えるであろう。
 部品Venderもそれに対応しなければ次からの発注が来なくなるため無理を承知で対応せざるをえないという、まるで日本経済のデフレスパイラル状態と同じような構図になっている。
 しかしながら組立工場も一般消費者への販売の際の価格競争にさらされており、そのような事をしなければ生き抜いていけないという事情もあるのだ。

6.E-Logistics

 現在の物流業界で、Internetを含めたE-Logisticsに対応出来ないという会社が生き残って行くことは出来るのであろうか。
 危険品、バルクカーゴ、展示会、海外引越の、ある意味ではニッチサービスといわれる分野に特化すればそれも可能かもしれないが、一般的な物流をおこなって行く上では差別化サービスのためにもE-Logisticsは間違いなく必要である。

 今、投資をしなければ立ち遅れてしまい気がついたときには自分たちのサービスは陳腐化していて顧客のニーズに応えられない状態になっているであろう。
 特にこの変革の時代には「スクラップ・アンド・ビルド」や「ブレーク・スルー」という言葉が大きな意味を持つ。

 そしてE-Logisticsが世界をますます縮めていく事になる。例えば、日本の裏側の自動倉庫に保管してある在庫もWMS(Warehouse Management System)で管理され Internet経由でいつでも手に取るように在庫情報がわかり、EDIやInternetもしくはExtranet等で貨物の出庫オーダーを日本から行い、E-Bookingで船舶または航空機のスペースを押さえ、船会社(航空会社)またはフォワーダーのトラッキングシステムで洋上在庫をいつでも把握することが今以上に容易に行えるようになってくるであろう。

 そして全世界を網羅したE-Logisticsがキャッシュフローマネージメントを推進させるに違いない。
 そのためには世界中に張り巡らせれたネットワークが間違いなく今以上に重要になり、それらを行うことが出来るものが物流の世界を制していくであろう。

 日本の港湾の場合、2004年度のシステム本稼働を目指し国内主要9港(東京、横浜、川崎、清水、名古屋、大阪、神戸、北九州、博多)が「港湾物流情報プラットホーム」構築のための港湾物流IT化推進委員会を設置した。これによって各港で別々に開発していたデータシステムを標準化させ、官民の間でのデータ交換を容易にすると共に、諸手続きの1本化や貨物位置情報の共有化、港湾内におけるコンテナのリードタイム削減などを推進していくことが行われている。

7.終わりに

 現在日本は少子化問題に直面しており一人の女性が一生のうちに産む子供の数は約1.3人であるという統計も発表されている。これによって日本の人口は今後減少化傾向にあり、これに老齢化問題、産業の空洞化、人材の流出が加味されると、日本での物作りは今後一層後退していくであろう。
 そして長期的視野で見た場合、貿易黒字から貿易赤字に移行していく事は間違いない事実であるといえる。

 また、TC(Transfer Center)やDC(Distribution Center)といわれている倉庫のファンクションも費用の安い海外へのシフト化に拍車がかかって行くことも考えられる。
 そのような環境の変化は、「貿易」つまり「国際物流」なしでは益々やっていけなくなるというのが明らかである。
 これからの日本は国際物流を制す者が国内物流も制すという方向になるのではないであろうか。

以上



(C)2002 Toru Kimura & Sakata Warehouse, Inc.


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