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物流品質

第15号物流センターの処理能力評価手法について(2002年09月06日発行)

執筆者 吉井 宏治
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1989年 サカタ産業株式会社入社、工場内物流管理業務を担当。
    • 1990年 サカタウエアハウス株式会社(大阪本部)に異動。
      情報サービス部門に配属。
    • 1991年 鐘紡(現・カネボウ)株式会社 情報統括室コンピュータ部に1年間出向。
    • 1995年 サカタウエアハウス株式会社(門真営業所)に異動。
      アパレル物流管理業務を担当。
    • 1998年 株式会社サカタロジックスに異動。
    主な実績 物流改善,物流情報システム構築,物流ABC導入,
    物流アウトソーシング等の提案営業およびコンサルティングなどを担当。
    現在に至る。
    主な資格 物流技術管理士,第2種情報処理技術者,倉庫管理主任者

目次

新規の物流センター移転計画、または今後の売上げの増加等に対応した物流センターの処理能力を検討する場合、どのような点について分析すべきかについて弊社における経験、実績をもとに紹介する。

1.基本となる物流仕様の確認

将来の物流仕様の設定にあたり、まず次の面から現状の物流業務の分析を開始する。

(1) 拠点

拠点立地の見直しを含めて検討する場合、まず調達物流と販売物流における輸配送コストの面からおおまかな拠点立地の候補地を設定する。輸入比率が高い企業の場合は、輸入コンテナのドレイジ費用等も考慮する必要がある。あわせて調達物流、販売物流におけるリードタイムについても現状レベルを維持する必要がある。 次に考慮する点としては、庫内業務を実施する上でのパート従業員の募集のしやすさや通勤の利便性も重要である。また、拠点の周辺環境として、夜間の荷役作業や早朝のトラックのエンジン音に対する苦情等を未然に防止するため、住宅地域からある程度離れていることも必要である。望ましくは、近隣に営業倉庫が多く拡張性があるとなお良い。
弊社では、販売物流における輸配送コスト分析時、自社開発の「運賃シミュレーションシステム」を使用し、リードタイム等の制約条件を含めた利用運送(宅配便、路線便による輸配送)における輸配送コスト分析を実施している。

(2) 構内

構内の業務分析を実施する時には、入荷・入庫、保管、出庫・出荷にいたるまでの一連の業務の流れをまず確認する。企業の物流特性については、業務担当者や責任者に対し一定の質問書式にもとづき、直感的にとらえている事項やデータとして存在しないような事項(一日の入出荷状況、作業上の問題点等)についてヒアリングを実施する。データ分析の際には、一定期間の入荷、出荷、在庫データを入手しABC分析等を実施する。また物流センター内で使用しているピッキングリストや荷札ラベル等の帳票サンプルを取り寄せてヒアリングした作業内容の確認や帳票自体の作業性を確認する。構内の実際の作業状況、保管状況をデジタルカメラ等で記録しておくことも、後ほど資料を作成時、作業イメージを持つために有用である。
検討すべき内容としては、①受注処理、②構内作業方法、③事務処理 についての作業方法の効率化や、さらに、④保管エリアレイアウト、⑤ピッキングエリアレイアウト について検討することが必要である。

(3) 輸配送

輸配送の分析を実施する時には、まず輸送モード別に大きく、①宅配便、②路線便、③チャータ車、④ルート配送車 の4つに分けて、配送エリア、出荷ロット分布等の特性分析を行う。また納品時のサービス内容や商品取り扱いに対する注意点(時間指定、納品部署指定、免震パレットの使用等)も合わせて確認する。
データ分析時は、一定期間の運送送り状データ(出荷日、納品先、個口数、重量等)による分析を実施する。分析結果については、地図等を活用し、ビジュアルに作成することも重要である。

(4)在庫

在庫量の分析を実施する時には、①事業部(会社、販売チャネル、組織等)、②商品カテゴリ、③販促物、④包装資材 の4つに分けて、商品アイテム別、商品取り扱い単位別(ケース単位、パレット単位、中箱単位、ピース単位等)在庫量の分析を行う。
このとき重要な点は、物流センターにおける取り扱い単位で分析することであり、ケース単位やパレット単位での在庫把握により、前記(2)構内のレイアウト資料作成時の基礎データとして活用できる。

(5)物流コスト

物流コストは、人件費、配送費、保管費、情報処理費、物流管理費 の5つに分類される。それぞれの費目について、財務諸表や支払い費用、請求費用から集計し、企業の売り上げに対する物流コストの比率を求め、公開されている同業他社の平均値と比較し、自社の物流費比率がどの位置にあるのかを確認することが重要である。また次のステップとしては、作業別のコストを把握する、いわゆるABCによるコスト把握も必要である。

(6)情報システム

情報システムの分析を実施する時には、①受注システム、②在庫管理システム、③出荷支援システム(マテハン系システムを含む)、④輸配送管理システム、⑤管理システム(コスト管理、保管容量管理、人員管理等) に分けて、各システムの導入状況や機能を確認する。確認ポイントとしては、各システム間の連携状況、物流関連マスターの項目の有無(商品ケースサイズ、入り数、パレット積載ケース数等)、管理者向けデータのサポート状況(データダウンロード機能等)、改善要望に対するシステム改訂状況などがあげられる。

2.業務改善手法

業務改善の目的としては、作業の効率化、コストダウン、作業品質・精度の向上、作業の標準化 等があげられる。
以下に具体的な業務改善に向けてのポイントを述べる。

(1)情報システムの改善

物流における効率化をはかる上で、WMS(倉庫管理システム)の導入がポイントとなる。商流を管理する販売管理システムと、物流を管理する倉庫管理システムにおける在庫管理の考え方は根本的に異なり、在庫更新タイミングや、処理の目的が異なるため、販売管理システムに物流機能を付加したシステムでは、在庫管理や出荷支援システムとの接続の面等で限界がある。また物流の改善を実施していく上で、大幅な機能追加や変更が必要であり、これとは切り離してWMSを導入し、双方のシステム間で必要なデータをやりとりすることが必要である。
WMSの導入効果としては、実在庫管理や在庫管理機能の拡張(ケース単位、パレット単位在庫管理、ロケーション管理等)、検品システム等の各種出荷支援システムとの連携の容易さがあげられる。

(2)作業の改善

作業の改善は、事務処理の改善と構内業務の改善に分けられる。ただし両者の業務は密接に関係し、現場のカンや作業後の実績に頼った業務(個口数確定、在庫引当て、商品補充、資材発注等)は、システム化によりできるだけ自動化することが望ましい。
(i)事務処理の改善
重複する作業をなくすこと、構内業務の作業性、精度を向上させることが重要である。具体的には、システム化による、運送送り状の転記作業や荷札ラベル出力時の納品先情報の入力業務の改善等があげられる。また出荷確定後、在庫引き落としを実施すると、事務処理が後工程となり残業を伴うことが多くなる。これを改善するには、循環棚卸しの実施による在庫精度の向上や、在庫管理システムの導入による受注時に在庫引当てのできる仕組みづくりが必要である。
(ii)構内業務の改善
構内業務の改善でもっとも効果があるのは、ピッキング方法の改善である。ケース単位の商品荷揃え業務を実施する場合、納品先別に個別にピッキングし検品するよりも、運送会社別に商品を一括荷揃えし、商品別の荷札ラベルを貼り付け、運送会社に一括荷渡しを実施することにより、作業性を大幅に向上することが可能である。
ただし、運送会社へ一括荷渡しを実施するためには、あらかじめ荷札ラベル上に、運送会社所定の仕分けコード(または着店コード)が荷札ラベル上に表示されていることが必要である。最近では、各運送会社が配布している荷札ラベルパッケージシステム等を導入することにより対応が可能である。  また、大口ロットの出荷の場合(Ex. 100個口以上)は、小口ロットの出荷商品と分けて荷揃えを実施した方が誤配送、口割れ等を防止する上で効果的である。  ピース単位、中箱単位で、商品をバラ出荷する場合は、商品をロケーション管理し、ロケーション順にピッキングすることにより、作業速度が大きく向上する。商品のロケーション配置時のポイントは、できるだけ動線(移動距離)を短くすることであり、多くの商品が棚に保管できることが望ましい。 棚から直接納品先別にピッキングする場合、一括荷揃え後その中から商品を探し個別にピッキングする場合に比べて、
(一括荷揃え時間+荷揃え商品検品時間)×運送会社の数
+(商品の置き場所がわからず、探すのに要する時間)
が短縮される。
ただし棚への商品補充にかかる時間が後工程に追加されることと、ピッキング場の面積が広くなることがデメリットとしてあげられる。
いずれにせよ出荷作業のリードタイムやトータルの作業時間が大幅に短縮されるメリットは大きいと思われる。

(3) 構内レイアウトの改善

構内のレイアウトを改善する上では、適切な通路の配置、および通路巾の確保を優先し、次に保管効率を向上させるレイアウトを検討することが必要である。長期保管在庫を管理する場合を除き、保管効率を優先するとかえって作業性が落ち、人員数の増加や作業時間の延長が必要となり、トータルではコストアップにつながるからである。
またレイアウトを改善しても日々の適切な商品の配置、移動が実施されないと保管効率、作業効率が以前と変わらない状況になりうる。具体的には、アイテム毎の商品ロットの減少に合わせて、大ロット商品置き場から、中ロット商品置き場、小ロット商品置き場へ商品を移動させたり、1パレット未満の商品を複数アイテムパレットに混載する等の、いわゆる日々の「穴掘り」作業の実施が必要である。

3.業務改善効果の評価

業務改善の効果を示す管理指標としては、保管効率、荷役効率、作業品質の評価 があげられる

(1)保管効率

保管効率は、1坪あたりの保管パレット枚数(パレット/坪)、1坪あたりの保管ケース数(ケース/坪)、1パレットあたりの保管金額(円/パレット)等により、指標化し管理できる。ただし倉庫の仕様(階高、柱の数等)や、商品のケースサイズ、保管契約内容により比較時の前提条件が異なる場合、一律に比較ができないため検討が必要である。パレットの保管効率の目安としては、サポータまたはネステナを含むパレット1段あたりの高さが1.5~1.6mの場合、3段積み可能な倉庫で、最大約2.4~2.6パレット/坪、4段積み可能な倉庫で、最大約3.1~3.3パレット/坪 前後であると思われる。

(2)荷役効率

荷役効率は、①1人・1時間あたり出荷ケース数(ケース/人・時)、②1時間あたり入荷格納ケース数(ケース/時)、③1ケースあたりの荷役金額(円/ケース)等により、指標化し管理できる。これらの指標を計算する場合は、入出荷頻度、多忙期と閑散期の違い、倉庫の保管状況等により変動するため、年間を通して月単位で平均値を把握すべきであると考える。

(3)作業品質の評価

作業品質の評価は、①1ヶ月あたりの誤出荷件数(件/月)、②1ヶ月あたりの誤入荷件数(件/月)、③1ヶ月あたりの棚卸し過不足件数(件/月)等により、指標化し管理できる。誤出荷については、さらに原因別に、ピッキングミス、補充ミス、事務処理ミス、荷札ラベルの貼り付けミス、運送会社のミス(誤配、遅延、破損、紛失等)等の原因別に細分化し管理できる。
誤入荷とは、入荷時の納品書と商品数量の確認ミスを指し、入荷担当者の確認ミスや事務処理のミスによる場合と、ケースの入り数違い等の入荷先のミスによる場合がある。 いずれにせよ、物流における、入荷、入庫、保管、出庫、出荷の各工程において、正確に検品し処理する事が作業品質を向上させるうえで必要である。

4.最後に

2年後、3年後の物流センター像を検討するうえで、保管効率や荷役効率が向上し、かつ作業品質を維持または向上させることにより、トータルな物流センター全体における効率、収益の向上と顧客満足度の向上につながる。上記のような指標等を参考に物流センターの処理能力を評価し、物流管理を実践するうえで参考になることができれば幸いである。

以上



(C)2002 Koji Yoshii & Sakata Warehouse, Inc.

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