インタビュー

第586号 ロジレビュー・インタビュー ~関 雅美氏(株式会社IHI物流産業システム)~

■はじめに

2022年7月より新たに開始しました、第13回目の今回は、株式会社IHI物流産業システム 関 雅美(せき まさよし)様にインタビューにお答え頂きました。物流やマーケティングの他、DX等に関する取り組みについてのお話を伺いました。
→過去のインタビュー記事はこちら

■ご紹介

株式会社IHI物流産業システム様は、 物流機器やFA機器をトータルで提供するソリューション企業です。
保管・仕分け・ピッキング・搬送を担うハード機器に加え、それらを最適に制御する情報システムまで、幅広いソリューションを提供してきた豊富な実績があります。
単なる機器提供にとどまらず、物流最適化を追求するシステム提案にも注力。動線設計、WMS/WES、シミュレーションを組み合わせ、最適な運用をデザインします。さらに、導入後の運用最適化から保守サービスまで、お客様のライフサイクルに寄り添った一貫支援を行っています。詳しくは会社HP(https://ihi-logistics.com/)をご参照ください。

株式会社IHI物流産業システム
取締役 営業部長 関 雅美 氏


インタビュー者略歴 ▼
  • ・1999年 3月 早稲田大学商学部 卒業
  • ・1999年 4月 石川島播磨重工業株式会社 入社
  •  (2007年7月1日より商号変更 株式会社IHI)
  • ・2013年 4月 同社営業本部関西支社第二営業部 主査
  • ・2014年10月 同社産業・ロジスティックスセクター
  •  物流システム営業部国内営業グループ主査
  • ・2019年 4月 ㈱IHI物流産業システム 物流プラント営業部 第2G グループ長
  • ・2022年 4月 当社 取締役 営業部長

■インタビュー

――貴社のご紹介と物流業界向けに提供されている貴社サービスの強みと、これまでの課題解決事例についてお聞かせください。
まず、当社の事業についてご説明します。
現在では「AIロボティクス」や「フィジカルAI」といった分野として語られることが多くなっていますが、当社はもともとマテリアルハンドリング(マテハン)を中心とした物流システム事業を展開してきました。
物流産業システム事業そのものは昭和38年(1963年)頃にスタートし、60年以上の歴史があります。当時から物流現場では、自動化や効率化が大きな課題となっていました。
その中で、1968年には日本で初めてパレット式自動倉庫を医薬品・製薬会社向けに導入しました。当社の事業の原点は、物流業界全般というよりも、製造業における工場内物流の課題解決にあります。
当時はパレット化も十分に進んでおらず、多くの作業が人手による労働集約型でした。そうした現場に対し、保管効率や作業効率、在庫管理などを含めた物流全体の効率化をご提案してきました。
その後、自動車業界や食品業界など製造業全般へと展開し、1980年代から1990年代にかけて多くの物流システムを構築してきました。
1990年代以降は、物流センター向けの自動化・省人化にも本格的に取り組むようになりました。当初はメーカーの物流センター向けが中心でしたが、自動倉庫だけでなく、ロボットやコンベヤ、仕分け設備などを組み合わせた物流システム全体をご提案してきました。その技術やノウハウは、現在では3PL事業者をはじめとする物流センターにも広がっています。

――サービスの強み
当社の強みは、製造業向け物流システム事業で長年にわたり培ってきた現場力とエンジニアリング力です。
製造工程や物流工程を深く理解し、現場で実際にどのような作業が行われているのかを把握した上で、自動化・省人化をご提案してきました。
また、自社製品だけにこだわるのではなく、海外メーカーを含めた最適な設備を組み合わせ、一つの物流システムとして構築するエンジニアリング力も当社の大きな特徴です。当時は「ソリューション」という言葉は一般的ではありませんでしたが、現在でいうシステムインテグレーションを早くから実践してきました。
一方で、2000年代以降になると、物流を取り巻く環境は大きく変化しました。EC市場の拡大や多品種・小ロット化が進み、自動化設備を導入するだけでは柔軟に対応できない場面も増えてきました。
そのため現在では、「すべてを自動化する」という考え方ではなく、「物流全体を見渡し、ボトルネックを改善して全体最適を実現する」という考え方へシフトしています。
さらに、何十年にわたって設備をご導入いただいてきた多くのお客様がいらっしゃいます。その実績は当社にとって大きな資産であり、新規設備の導入だけでなく、既存設備の能力向上やアップグレードをご提案できることも強みです。
当社は設計・製造・導入・保守・メンテナンスまで一気通貫で対応しています。設備を納入して終わりではなく、お客様の物流現場を継続的に改善し、高度化をご支援できることが、当社ならではの強みだと考えています。

課題解決事例として、一つご紹介いたします。
2021年頃から、EC市場の拡大に伴い、EC化率はさらに高まり、小口・多頻度配送への対応が求められるようになりました。その結果、物流現場では、よりきめ細かな在庫管理や出荷管理が必要になっています。
こうした課題に対して、当社ではEC対応の物流システムをご提案していますが、それに加えて、新しい取り組みも進めています。
その一つが、物流施設のデベロッパーと連携した「物流設備のシェアリング」です。
近年、マルチテナント型物流施設が数多く建設されていますが、その施設内で複数の荷主企業が共同利用できる物流システムを構築しました。
実際のオペレーションは3PL事業者が担いますが、一社専用の設備ではなく、不特定多数の荷主企業に対応できる物流インフラとして運用しています。
この仕組みにより、設備投資を分散できるだけでなく、人手不足や物流施設不足への対応にもつながります。
現在は、人材確保が難しく、物流施設用地の確保や建設コストも上昇しています。そのような環境の中で、物流設備を共同利用するという考え方は、物流業界が抱える課題を解決する有効な手段の一つになると考えています。
こうした「物流設備のシェアリング」は、当社が取り組んできた課題解決事例の一つです。

――物流現場のボトルネックは、どのように把握されているのでしょうか。
本来の理想は、お客様からご相談をいただく前に、私たちが現場を把握し、能動的に改善提案を行うことです。
ただ、これまでは長年設備をご利用いただいているお客様を中心に、サービスメンテナンス担当が定期点検などで現場へ伺い、営業担当も含めてお客様とコミュニケーションを重ねる中で課題を把握してきました。
例えば、「設備導入当時はSKUが300程度だったが、現在では1,000SKUまで増え、当時の仕組みでは運用しづらくなっている」といった現場の困りごとを伺い、それに対して改善提案を行うというのが従来のスタイルでした。
しかし、その方法では、お客様からいただいた課題に対して対応することが中心になります。
もちろん、その課題に対して「本当の原因は別のところにあります」とご提案することはできますが、課題の発見そのものは、お客様からのご相談に依存していました。
そこで現在は、その考え方を大きく変えようとしています。
設備の稼働状況だけでなく、物流業務の流れやデータの動きまでモニタリングし、その分析結果から「どの工程がボトルネックになっているのか」を私たち自身が把握できる仕組みづくりを進めています。
その上で、お客様からご相談をいただく前に、「この工程を改善すれば物流全体の効率が向上します」と、私たちから能動的にご提案していくことを目指しています。
現在、この取り組みを「最適化サービス(仮称)」としてご提供できるよう準備を進めています。
また、こうしたサービスを実現するため、社内体制も見直しています。
従来は営業、設計、サービスメンテナンスといった部門ごとに対応していましたが、新たにイノベーション部門のような専門組織を立ち上げました。
この組織では、お客様の物流データを継続的にモニタリングし、課題を抽出した上で、私たちから改善提案を行うことを専門に担っています。
これまでの「お客様から課題をいただいて改善する」というスタイルから、「私たちが課題を発見し、改善をご提案する」というスタイルへと進化していきたいと考えています。

――これまでメーカーや荷主企業向けの物流システムから、現在では3PL事業者向けにも幅広くご提案されていますが、荷主企業と物流事業者では提案内容に違いはあるのでしょうか。
案件ごとに物流の形態や課題が異なるため、一概に「こう違う」と言い切ることは難しいのですが、それぞれに特徴があります。
メーカーや荷主企業向けの場合は、生産計画や販売計画といった上流工程があり、「何を、いつ、どれだけ生産するか」という計画に基づいて物流が組み立てられています。
そのため、そうした計画を踏まえながら物流システムを設計し、「どれだけ作業を効率化できるか」「どれだけ生産性を向上できるか」という観点でご提案することが中心になります。
また、工場には設備保全部門や生産技術部門があり、設備に関する知見を持つ方が多くいらっしゃいます。
そのため、設備仕様や安全性などについても非常に細かなレベルまで議論しながら提案を進めるケースが多いのが特徴です。
一方、卸売業や3PL事業者向けになると、考え方が少し変わります。
私たちは物流事業者様へご提案しますが、その先には荷主企業やドラッグストアなど、多くのお客様が存在します。
つまり、物流事業者様だけではなく、その先のお客様の事業計画や物流戦略まで見据えて提案する必要があります。
例えば、現在250店舗へ配送している物流センターであっても、将来的には500店舗、あるいは1,000店舗まで拡大する可能性があります。
そのため、「現在の物量を処理できる設備」を提案するだけでは十分ではありません。
将来の事業拡大や店舗数の増加を見据え、設備の拡張性や将来的な処理能力まで考慮した物流システムをご提案する必要があります。
この将来を見据えた提案は非常に難しく、各社の提案力の差が最も表れやすい部分でもあります。
私たち自身も「物流全体の最適化」を掲げていますが、こうした将来を見据えた提案力については、今後さらに磨いていかなければならないと考えています。
決して私たちが万能というわけではありません。お客様と一緒に将来の物流を考えながら、より良い提案を続けていきたいと考えています。

――以前は効率化や自動化の要望が多かったと思いますが、現在はお客様から物流センターの拡張や処理能力向上に関するご相談も増えているのでしょうか。
はい、そのようなご相談は非常に増えています。
新規のお客様はもちろんですが、既存のお客様からも「今後の物量増加に対応したい」「処理能力をさらに高めたい」といったご要望を多くいただいています。
一方で、現在は人手不足が深刻化しています。
以前のように、人員を増やせば物量も処理できるという時代ではありません。事業は成長させなければならない一方で、人員は増やせず、むしろ限られた人数でより高い生産性を実現することが求められています。
そのため、お客様からも「人を増やさずに生産性を向上させたい」というご相談が中心になっています。
物流設備の導入においては、以前から価格が重要な選定要素の一つであり、現在もその傾向は変わっていません。競合各社との比較の中で、価格が評価ポイントとなるケースも少なくありません。一方で、近年は価格だけではなく、導入後の生産性向上や省人化効果、ランニングコスト削減といった投資対効果を総合的に評価されるケースが増えています。
仮に初期投資額が高くても、長期的に見て生産性が向上し、ランニングコストを削減できるのであれば、結果として投資回収が早くなります。
例えば、1時間当たり200ピースだったピッキング能力が600ピースまで向上すれば、人員配置や運営コストを含めた総合的な費用対効果は大きく改善します。
そのため現在では、「設備価格が安いこと」よりも、「導入後にどれだけ効果を生み出せるか」「どれだけ早く投資回収できるか」といった観点も重視されるようになっています。私たちも、設備価格だけではなく、運営まで含めた総合的な価値をご提案する機会が増えています。
そうした意味では、価格だけではなく、物流全体を最適化する提案力が評価される時代になってきていると感じています。

――先ほど、既存のお客様の物流プロセスをモニタリングし、ボトルネックを見つけて改善提案につなげるというお話がありました。仕組みについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
これまでは、物流システムやWMSを導入し、お客様にご利用いただいた後、営業担当やサービス担当が定期的に訪問し、「現在の運用はいかがですか」「改善したい点はありますか」といった形でヒアリングを行っていました。
また、設備については別途ご契約いただいたお客様を対象に、以前から稼働状況をモニタリングし、稼働実績データを収集して、お客様の保全計画や設備運用の改善に役立ててまいりました。しかし現在は、設備だけではなく、物流現場全体をデータで把握し、改善につなげる仕組みづくりを進めています。
その中核となるのが、「IULink®」「L-Sync®」というシステムです。

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――IULink®
「IULink®」は、お客様のWMSと連携し、物流センター全体の情報を収集・分析するプラットフォームです。
従来は設備の稼働状況が中心でしたが、現在では在庫情報、入出荷情報、作業実績、人の動きなど、物流センター内のさまざまなデータを一元的に取得できるようになっています。
これらのデータを継続的に蓄積することで、物流センターの運営状況を可視化できるだけでなく、将来の改善にも活用できる貴重なデータベースとなります。
例えば1年、2年とデータを蓄積していくことで、商品の出荷傾向や季節変動、物流量の推移などが見えてきます。
私たちはそれらを分析し、将来の物流需要を予測することで、お客様に最適な物流運営をご提案しています。
例えば、ある商品カテゴリーが夏場に大きく出荷量を伸ばすことが分かれば、その時期に合わせて在庫配置を変更することで、ピッキング効率を向上させることができます。
一方、出荷頻度が低い商品については、保管場所を見直すなど、物流センター全体のレイアウト最適化につなげることができます。
このように、蓄積した物流データを可視化・分析し、現状の課題把握から将来の需要予測、物流オペレーションの改善提案まで継続的に支援できることが大きな特徴です。

――L-Sync®
もう一つのシステムが「L-Sync®」です。
こちらは、人とマテリアルハンドリング設備を含め、物流センター全体の作業計画を最適化するシステムです。
自動倉庫やコンベヤ、AGV(無人搬送車)など、センター内にはさまざまな設備があります。
L-Sync®では、それらの設備だけではなく、人の作業も含めて全体を最適に制御し、「どの設備を、どのタイミングで、どのように動かすか」を計画します。
その結果、物流センター全体の生産性向上やボトルネックの解消につながります。
私たちは、これらの仕組みを「最適化サービス(仮称)」としてご提供しています。
従来から設備の導入後も保守・メンテナンスや運用支援を行ってきましたが、現在はさらに、設備の稼働データや物流データを継続的に収集・分析し、その結果をもとに改善提案まで行うサービスへと進化しています。お客様は月額サービスとしてご利用いただき、物流データの分析や将来予測、改善活動に継続的に活用いただけます。
つまり、「設備を販売する会社」ではなく、「物流を継続的に改善するパートナー」として、お客様をご支援することを目指しています。
マルチベンダー環境にも対応
さらに、物流センターには当社製品だけでなく、他社製のマテリアルハンドリング設備が導入されているケースも少なくありません。
そのため、IULink®やL-Sync®では、メーカーを問わずさまざまな設備と連携できる共通インターフェースの開発も進めています。
物流センター全体を一つのプラットフォームとして統合し、人・設備・物流データを総合的に最適化することが、現在私たちが目指している物流DXです。

――お話を伺っていると、物流DXは「導入検討」ではなく、今後は必ず取り組むべきものになっていくという印象を受けました。その認識でよろしいのでしょうか。
その通りだと思います。
DXは非常に幅広い概念です。マテリアルハンドリング設備を導入することもDXですし、物流全体を見据えた最適化の仕組みを構築することもDXです。将来的にはヒューマノイドなどのロボットが物流現場で活躍することも、その一つになるでしょう。
一方で、物流量は今後もなくなることはありません。しかし、人手不足はさらに深刻になり、取り扱う商品の種類やお客様のニーズはますます多様化していきます。
そのような環境の中で、物流事業者も私たち設備メーカーも成長を続けていくためには、DXは欠かせない取り組みになると考えています。

――人口減少によって市場規模が変化した場合、貴社ではどのような対応を考えられているのでしょうか。
確かに人口減少によって総需要は減少していく可能性があります。
しかし一方で、お客様のニーズは多様化し、SKUは増え、小口配送や即日配送への要望も高まっています。物流センターの役割そのものは、今後も重要性を増していくと考えています。
ただ、私たちが単に機械を製造・販売するだけでは、将来的には市場が縮小する可能性もあります。
そこで取り組んでいるのが「最適化サービス(仮称)」です。
物流データを継続的に収集・分析し、お客様の物流改善に役立つ情報を提供することで、設備導入後も継続的に価値をご提供していきます。
また、物流センターにはさまざまなメーカーの設備が導入されています。
私たちはインテグレーターとして、それらを一つのプラットフォームで連携させ、最適な物流システムとして統合する役割も担っています。
海外メーカーや新しい技術が次々と登場していますが、お客様から見れば「長期的に安心して使えること」が重要です。
私たちが間に入ることで、設備の保守や運用を含めた安心感をご提供できることも、大きな価値だと考えています。

――マテリアルハンドリング設備やDXを導入する際には、導入する企業側も事前に準備しておくべきことがあると思います。
スムーズに導入を進めるために、事前に取り組んでおくべきことや意識すべき点があれば教えてください。

導入を検討されるお客様にまずお伝えしたいのは、最新の設備やシステムだけに目を向けないことです。
どうしても、「このロボットは1時間に600ケース処理できる」といった性能に注目しがちですが、設備単体の能力だけでは物流全体は改善しません。
例えば、ピッキング工程だけを自動化して処理能力が6倍になったとしても、その後工程である仕分けや積み付け、トラックへの積み込みが従来のままであれば、物流全体の効率は変わらないからです。
そのため、まずは現状の業務を正しく把握し、物流全体のプロセスを整理することが重要です。
どの工程がボトルネックになっているのか、どこを改善すれば物流全体の生産性が向上するのかを、現場・データ・物流の流れを総合的に分析した上で検討する必要があります。
設備ありきで考えるのではなく、物流全体を見ながら十分に議論を重ねることが、本来あるべき導入プロセスだと考えています。
もちろん、お客様としては「できるだけ早く導入したい」というご要望も多くあります。しかし、長期的に成果を上げるためには、導入前の構想づくりに時間をかけることが重要です。
近年では、物流コンサルタントがプロジェクトに参画し、物流センター全体の構想や要件整理を支援するケースも増えています。
お客様自身の人的リソースが限られる中で、第三者の専門知識を活用しながら物流全体を設計することで、導入後のミスマッチを防ぎ、より効果的な物流システムを構築できるようになります。
また、新たに物流センターを建設する場合には、土地の条件だけに合わせて設備を考えるのではなく、将来の事業計画や物流のあり方を見据えながら、最適な施設計画を検討することも重要です。
私たちも構想段階からお客様と議論を重ねながら、物流全体の最適化を見据えたご提案を行っています。
設備を導入することが目的ではなく、「どのような物流を実現したいのか」というコンセプトを明確にした上で、その実現に最適な仕組みを考えることが、成功への第一歩だと考えています。

――SDGsや人手不足への取り組みについてお伺いします。
実際に設備やシステムを導入したことで、どのような改善につながったのか、具体的な事例があれば教えてください。
人手不足への対応事例として、冷凍・冷蔵物流のお客様をご紹介します。
例えば、冷凍・冷蔵を専門とする営業倉庫では、入荷した商品を一度人手でパレタイズし、格納します。その後、出荷時には再びデパレタイズを行い、配送先ごとに仕分けをして、再度パレタイズするという工程がよくあります。
特に全国配送を行う物流センターでは、一度全数をピッキングした後に配送先ごとへ仕分ける作業も発生するため、同じ荷物を何度も積み替える工程が繰り返されていました。
しかも、冷凍食品や海産物などを扱う現場では、5℃前後の冷蔵庫や、場合によっては-25℃程度の冷凍庫で人が作業を行っています。
こうした現場に対し、当社では「何度も人が積み替える必要はないのではないか」という視点から改善提案を行っています。
具体的には、入荷したケースをコンベヤへ載せるだけで、画像認識機能を搭載したロボットが荷物の形状を自動で認識し、最適な方法で搬送・保管します。出荷時には、自動倉庫から必要なケースを取り出し、アーム型ロボットでパレタイズまで自動で行う仕組みをご提案しています。
この技術自体は10年ほど前から取り組んでいますが、冷凍海産物のように荷姿が不揃いであったり、バンドで固定されていたりするケースも多く、実用化に向けて現在も改良を重ねています。
また、冷凍・冷蔵物流では、無人フォークリフトの導入も進めています。
例えば、-25℃の冷凍庫と5℃の冷蔵エリアを行き来する運用では、温度差による結露が課題となります。マイナス環境専用の無人フォークリフトは実用化されていますが、異なる温度帯を往復する運用については、現在も技術開発を進めている段階です。
一方で、すでに導入が進んでいる事例もあります。
ドラッグストア向け物流センターでは、自動倉庫から出庫される飲料などの重量物を、人手ではなくアーム型ロボットがデパレタイズし、そのままケースコンベヤへ搬送するシステムを導入しました。
この設備は約8年前から稼働しており、人手不足への対応だけでなく、作業者の身体的負担軽減にも大きく貢献しています。
例えば、2リットル飲料6本入りケースは10kgを超える重量があります。こうした重量物を繰り返し扱う作業は大きな身体的負担となりますが、ロボットが代替することで、作業環境の改善につながっています。
さらに、自動倉庫やロボットを組み合わせることで、夜間など人材を確保しにくい時間帯でも設備を稼働させることができます。
24時間稼働できるロボットに夜間作業を任せ、人が集まりやすい時間帯には付加価値の高い作業へ人員を配置することで、物流センター全体の最適化を実現しています。
このように、単に一工程を自動化するだけではなく、作業時間帯や人員配置も含めて物流全体を最適化することが、人手不足への有効な対策になると考えています。
こうしたシステムは、全国の物流センターへ導入が進んでいます。
人材確保が難しい地域においても、自動化技術を活用することで、物流センターの安定した運営を支援しています。

――物流業界全体では、現在どのような取り組みが進められているのでしょうか。
大きなキーワードは「標準化」です。
物流センターだけではなく、工場から配送先までを含めたサプライチェーン全体を最適化するためには、規格や情報の標準化が不可欠です。
現在は行政や業界団体とも連携し、物流設備や包装資材、ロボットが扱いやすい荷姿などについて標準化を進めています。
例えば包装資材はコスト削減のため年々薄くなっていますが、人では荷運び可能でも、ロボットアームで把持すると破損してしまうケースがあります。
そのため、物流事業者、設備メーカー、荷主企業、行政が一体となって、「物流全体として最適な標準」を検討しています。
また、人手不足に対応するため、設備導入や工事に関する制度の見直しについても、業界として行政へ提言を行っています。
物流を取り巻く課題は一社だけで解決できるものではありません。
だからこそ、物流業界全体で連携しながら、より効率的な物流の実現を目指しています。

――今後、AIやロボティクスは物流業界をどのように変えていくとお考えでしょうか。
AIやロボティクスによって物流現場が劇的に変わるというよりも、「物流全体がより最適化される」方向へ進んでいくと考えています。
WMSやWES、マテリアルハンドリング設備、ロボットなどが連携し、それぞれがAIによって最適な動きを判断することで、物流センター全体の効率がさらに高まっていきます。
また、AIは蓄積された物流データをもとに、繁忙期や荷主構成の変化などにも素早く対応できるようになります。
これまで人が時間をかけて行っていた業務設計や改善も、AIが支援することで、より短期間で最適化できるようになるでしょう。
2030年、2040年に向けて、人手不足がさらに進む中でも、物流を支える仕組みとしてAIやロボティクスはますます重要な存在になっていくと考えています。

――最後に、資機材や人件費の高騰への対応についてお伺いします。昨今の社会情勢によりさまざまなコストが上昇していますが、貴社ではどのような影響があり、どのように対応されているのでしょうか。
資機材価格や燃料費の上昇に加え、近年は特に人件費の上昇が大きな課題となっています。これは当社だけでなく、多くの企業が共通して直面している課題ではないかと感じています。
こうした状況を受け、当社では事業環境の変化を踏まえた適正な価格設定に努めています。また、お客様にも市場環境やコスト構造をご理解いただきながら、継続的に安定したサービスをご提供できるよう取り組んでいます。
近年は、社会全体で適正な価格転嫁への理解も進んできており、企業が持続的に事業を継続していくための環境が整いつつあると感じています。
そのため、当社では契約時に価格条件や見直しの考え方をあらかじめ共有し、資機材価格や人件費などの変動にも適切に対応できる仕組みづくりを進めています。
事前にルールを明確にしておくことで、お客様との認識のずれを防ぎ、長期的な信頼関係の構築につながると考えています。
また、適正な利益を確保することは、安定した製品・サービスの提供や継続的な技術開発にもつながります。結果として、お客様へ持続的な価値をご提供できる体制づくりにも寄与しています。
資材調達についても、安定供給を維持するための取り組みを進めています。
一時的に一部資材の調達が難しくなった際には、調達先との連携を強化しながら必要な資材の確保に努め、生産への影響を最小限に抑えてきました。
また、半年先、一年先を見据えた調達計画を立てることで、安定した供給体制の維持にも取り組んでいます。
さらに、当社単独ではなく、IHIグループ全体の購買ネットワークを活用できることも当社の強みです。
グループ各社が連携することで調達力を高め、必要な資材を安定的に確保できる体制を構築しています。こうしたグループシナジーを生かしながら、お客様への安定した製品・サービスの提供に努めています。

――お忙しい中、インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
(聞き手:サカタウエアハウス株式会社 営業開発部)


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