第570号 これからの物流について一緒に考えましょう(後編)~物流2024年問題、物流統括管理者(CLO)など~(2025年12月16日発行)
| 執筆者 | 浜崎 章洋 氏 大阪産業大学 経営学部商学科 教授 |
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執筆者略歴 ▼
*サカタグループ2024年10月23日開催 第28回ワークショップ/セミナーの講演内容をもとに編集しご案内しています。
*今回、大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋 先生の講演内容を3回に分けて掲載いたします。
*掲載内容は、講演が開催された時点でのデータや情報を基にしているため、現在の状況と異なる場合があります。
*前号(2025年12月4日発行 第569号)より
目次
- ちょっと一息
- 2.物流2024年問題について 2)2024年問題の影響
- 2.物流2024年問題について 3)2024年問題への対策についての例
- さいごに
(以上中編)
本論文は、前編、中編、後編の計3回に分けて掲載いたします。
ちょっと一息 (参考)
ここで、ちょっと一息なのですが、「グリーン物流」が今から20年ぐらい前に流行りました。
このとき、荷主の経営層が積極的に採用したのです。これはなぜかというと、ちょうど、CSR(企業の社会的責任)とか、「環境報告書」 *2 が流行った時です。国交省の2023年度統計値では、運輸部門から日本の温室効果ガス排出量、CO2の約20%が排出されていて、これを削減すると消費者に大きくPRできるので、物流の効率化、CO2の削減、モーダルシフトをどんどん進めていこうということで、荷主の経営層が理解を示してくれました。
さらに今から10数年程前に、「ホワイト物流」 *3 が流行りました。
【注】
*2. 環境省hp,「もっと知りたい環境報告書」 https://www.env.go.jp/policy/hairyo_law/post_160.html
*3. 「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト https://white-logistics-movement.jp/
倉庫で働く人やドライバーさんとか、物流部門で働く人の、長時間労働を是正していきましょうとか、きちんと休みを取らせてあげましょう、というホワイト物流という言葉(取組み)が出てきたのですが、それって物流部門の役割でしょうとか、物流会社で解決しなさいということで、荷主の経営層は、あまり関心がありませんでした。
今この、「2024年問題」ということで、当初、ちょうど1年6ヶ月程前、2023年の年度が始まった2023年4月ごろは、荷主の経営層はあまり関心がなかったと思います。このときは、1年後に2024年問題が始まりますといった、ニュースとか新聞の報道が、「宅配の荷物を受け取れなくなる」という報道に偏重していた、ということもあると思います。
「これだけ通信販売が増えているのに、宅配でモノが運べなくなります、皆さんどうしますか」、みたいな報道ばかりだったのです。去年の秋頃、ちょうど1年ぐらい前から、例えば、九州の宮崎県から農産物が運べないとか、北海道からの水産物が東京の豊洲市場のセリに間に合わなくなる、みたいな報道が増えてきて、そのあたりから荷主の経営層の方々も、物流は大丈夫なのかと言って、多分、(物流関係者である)皆さんのところに声がかかったのも、ちょうど1年ぐらい前ではないかと思います。
私は去年の秋、ちょうど1年ぐらい前の今頃、2024年問題バブルとなり、いろんな会社から講演依頼とか、社内研修の依頼をいただきました。これは、何を言いたいのかというと、物流2024年問題について、我々物流関係者、物流会社、あるいは関係省庁が、いろいろ言っていましたが、荷主の経営層はあまり関心が無かったのです。
半年位前から、ようやく動き始めたという印象を、非常に強く持っています。多分皆さんの会社でも、大なり小なり、似たりよったりではないかなと思います。
2.物流2024年問題について 2)2024年問題の影響
では、この物流の2024年問題はどんな影響があるのかということで、懇意にしているビジネスパーソンの方々へヒアリングをしました。加工食品系の物流子会社の方で、傭車だけでなく、自社でもトラックを保有し配送を行っている企業ですが、「近距離の配送なので、自社の配送部門は、今のところ大きな影響はないですよ」、ということでした。ただし、全国でビジネスをされていますので、年末12月と、年度末、3月にかけて幹線輸送の部分では、例えば、東名阪の東京と大阪を結ぶ高速道路とか、関東から東北、北海道、といったところの幹線輸送の部分が厳しくなると想定されているということと、長距離輸送は既に、モーダルシフト、あるいは中継輸送を導入をされつつあるということです。
それともう一つは、今、物流拠点の再編、つまり在庫拠点の増設に取り組んでいるということです。その他に、納品リードタイムの延長とか、ドライバーの付帯作業の廃止を交渉しています。この会社の非常に優れたところは、自分の会社だけではなくて、業界として取引先、つまり小売業と卸売業との交渉を行っています。何が言いたいのかというと、自社だけで小売業や卸売業へ交渉に行っても、恐らく進まないのです。
次に、アパレル卸売業の会社の方です。この企業は、いわゆるアウター商品ではなくて、どちらかというとインナー関連のコンパクトな商品を取り扱い、毎日受注し毎日発送していました。これを、受注は毎日受けているのですが、数日分をまとめて発送するように変更しましたということです。元々、大きさが小さいので、数日分でも1納品先にはダンボール1ケースで収まるということです。最初は、物流現場でもそうだし、納品先さんでも若干混乱があったそうですが、今はお互いに慣れて、落ち着いているということです。
また、現在でも、関西から西に向かうトラックの手配は厳しいと言われていました。これは実は、私も関西にいるのでよく聞きますが、九州方面行きのトラックを確保するのは、どの会社でも厳しいと伺っています。年末とか年度末に向けて、これからどんどん厳しくなっていくと言われています。
2024年問題は、2024年4月からスタートして、上半期、9月までは、皆さん何とかやっていけたと思いますが、これから12月の年末繁忙期と年度末3月の決算とかの、繁忙期を迎えてくると、対応が更に困難になる、こんな危機感を持っているのではないかと思います。
これは参考までに、タイミーってご存知ですか。今、朝ドラの主役の橋本環奈さんがコマーシャルをしている、スキマバイトのタイミーさんがアンケート調査をされました。「2024年問題」について、約4割の企業が対策のめど立たず、だそうです。燃料費とか人件費が上がってますとか、「時間外労働時間規制」で働きやすさは変わらないが、67%という結果が出ています。これは、ネットで検索すると報告書(「タイミー、物流2024年問題に関する実態調査レポートを発表」https://corp.timee.co.jp/news/detail-3651/)がありますので、興味のある方はぜひ一度ご覧ください。
2.物流2024年問題について 3)2024年問題への対策についての例
先程の、2024年問題について、中継輸送とか、モーダルシフトとか、在庫拠点の見直しとか、いくつか対策例を挙げてみました。荷主のどの部署が対応するのかということで、もちろん物流部が全部対応するのでしょうが、例えば、大阪、東京間の中継輸送では、トラックで行って帰ってくるのではなくて途中の静岡辺りで、ドライバーさんがトラックを入れ替えて戻ってくるので、日帰り運行ができます。これだと物流部が、物流事業者さんと調整すればできます。営業部とか生産部とは、特に調整が必要ないのかもしれません。
次に関東発九州行きの便を、今までトラックで行っていたのですが、今後は長時間運転ができないから、モーダルシフト、JR貨物さんで運びます、となってくると、これは物流部と物流会社さんだけの問題ではなくて、営業部にも耳に入れておかないといけないのです。というのも、パレット単位の鉄道輸送になると衝撃・振動の影響で、商品のダンボールがちょっと擦れるかもしれないとか、営業部から取引先さんへ、2024年問題に対応のため、JR貨物さんに変更しますと伝えてもらわないといけないのです。つまり、物流部だけでは完結しないのです。
在庫拠点の見直しになってくると、これは物流部や、営業部、生産部だけではなくて、投資が必要ですから、経営層へも相談しないといけません。在庫拠点の見直しというと、私が物流の勉強し始めた頃に学んだのは、上の図から下の図に変わったようなイメージです。
例えば、メーカーさんが、全国9拠点、いわゆる、北海道、東北とか、各経済圏に物流センターを持っていたものを、関東と関西に物流拠点を統合しましょう、物流コスト削減と在庫の削減をするために在庫拠点を集約しましょう、というものです。
これは、なぜこのように拠点集約ができたのかというと、運送会社さんの輸送距離が延びたということと、卸売業さんが全国化、規模拡大をしていったので、メーカーの在庫拠点は2拠点でもいけるようになり、これでコスト削減ができます、とういうことです。
実は2拠点にすると、例えば北東北とか南九州へは、翌日午前中の納品できないから、九州とか、北東北とかに、小型の物流センター、デポを作りましょうとか、北海道にもう1拠点作りましょうというのが、今から20年から、25年ほど前の話です。これだと輸送距離が伸びるので2024年問題に対応できなくなってくると、先ほどの物流子会社さんのように、在庫拠点を今後増やしていかないといけない、ということも今後起こり得るのです。
在庫拠点を増やすということは、経営の判断ですから、物流部門だけではなくて、経営層が関係してきますということです。参考までに、これはBCPの視点からすると、日本海側にも物流センターが必要だと思います。
今、皆さんの物流センターがあるのは、関東と関西、どちらも太平洋側に設置していることが多く、中には(太平洋側の)中部圏に設置している企業もあるかと思います。これは、南海トラフ地震・東南海地震が発生したときに、確実に被災します。ですから九州の北部とか、もう一方の新潟とか、日本海側の方にも、(物流拠点が)必要ではないかと思っています。
では、納品リードタイムの見直し、となってくると、これは、営業に相談しないといけないし、取引先にも相談しないといけません。今までは納品リードタイムが、午後13時受注締め切りで、当日の午後に出荷作業をして、夕方に運送会社さんに荷渡して、翌日午前中に納品をするとなると、作業をする人もトラックも全部見込みで事前に手配しないといけないのです。ですから今後、受注の締め切り時間を夕方にして、翌日の作業の量とトラックの台数を決めてから手配をして、翌日作業をして運送会社さんへ荷渡しをして、翌々日の納品にすれば、非常に効率化できます。つまり納品リードタイムを見直す必要があるということです。
これは、物流部門だけではなくて、営業部とか取引先にも関係してくるし、経営層にも理解してもらわないといけないのです。
最後にもう1点、一貫パレチゼーションです。トラックへのケース単位でのバラ積み、バラ降ろしを止めて、パレット単位で流通させましょう、川上のメーカーから、川下の卸売業、小売業の店頭まで、同じ(規格の)パレットでフォークリフトにより、荷役をしていこうというものです。一貫パレチゼーションをすると、物流の合理化、トラックドライバーさんの荷役時間削減のために、非常に役に立ち、物流コスト削減等、作業の効率化に役立つと思いますが、これは、営業部とか生産部門だけではなくて、製品の設計部門にも関係してくるのです。
一貫パレチゼーションをするためには、「包装モジュール化」といって、このパレットのサイズに合わせて、外装箱とか、商品の外装の大きさを決めていかないといけませんから、包装設計とか製品設計の部署まで関係してくるので、これは、物流部門だけでは解決できないのです。
さいごに
つまり、これらの諸問題が解決できる、CLOは、やはり役員クラスでしか対応できないということなのです。本日はいろいろとお話させていただきましたが、このCLOにしても、2024年問題にしても、大変貴重なチャンスなのです。だから、あくまで何か規制の対応とか、物流の生産性向上とか、そういうことではなくて、自分の会社の最適化と、サプライチェーン全体の最適化を目指して、持続可能な社会の実現に向けて、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っています。
本日ご参加いただいている皆様の会社の、益々のご発展と皆さまのご活躍を祈念いたしまして、以上で私の講演を終わりにしたいと思います。本日はお忙しい中、ご清聴いただき、誠にありがとうございました。
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