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物流コスト

第131号物流コストの動向と今後の見込み(2007年9月6日発行)

執筆者 久保田 精一
社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)
JILS総合研究所
研究員
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1971年熊本県生まれ(35歳)
    • 東京大学教養学部教養学科卒。
    • 財)日本システム開発研究所(シンクタンク)等を経て、現職。
    • 物流や地域開発等のテーマでの公共団体からの委託研究、民間企業のコンサルティング、自主研究などを数多く実施。

目次

  (社)日本ロジスティクスシステム協会では、毎年「物流コスト実態調査」を実施している。今回はこの調査結果を中心に、物流コストの動向について紹介したい。なお、「物流コスト実態調査」は西澤脩委員長(早稲田大学名誉教授)をはじめ委員の方々からのご指導を受けてとりまとめている。この場を借りて御礼申し上げたい。

物流コストは最大の関心事

  さて、物流コストは言うまでもなく、企業の物流担当者の最大の関心事である。コストの削減は、一般的には削減額と同額の利益を生む。物流コストは業種によって異なるが、概ね売上高の3~10%を占めている。純利益率は平均的には3%前後であるので、物流コスト削減の余地が多少でもあれば、それによる利益アップの効果は大きい。経営者はこのような視点から売上高物流コスト比率の削減を求め、物流部門はそれを受けてコスト削減に取り組む、といいうケースが多い。

  そこで物流部門では、まずは自社の物流コストを集計してみることになるが、集計結果を利用する段階になると、「自社の物流コストは高いのか?」「物流コストの削減目標をどう設定するか?」といった疑問が生じてくることになる。物流コスト実態調査では、業界平均の物流コスト比率等のデータを提供しており、そのような際にこの結果を利用して頂くことができる。

物流コストが売上の10%を超える業種も

  さて、物流コスト実態調査の直近のデータとなる2006年度の調査結果(2005年度の実績値)では、売上高物流コスト比率は5.01%であった(全業種、図1)。

図1 売上高物流コスト比率(業種大分類別)


資料:JILS「2006年度物流コスト実態調査」

  業種別に見ると(図2)、「通販(小売業)」、「紙・パルプ製造業」ではコスト比率が高く、10%を超えている。通販は小ロット・短リードタイムの物流であるし、紙・パルプは、原紙などは重量物であるうえ重量当たりの単価が安いことなどからコスト比率が高くなっているものと思われる。
  また、卸売業の各業種(繊維衣料品系、日用雑貨系、食品飲料系)も、コスト比率が7%台後半以上と高い。このような消費財系の卸売業では多頻度・小ロット化が高度なレベルに達しており、コストを増大させているようである。

図2 売上高物流コスト比率(業種小分類別)


資料:JILS「2006年度物流コスト実態調査」

物流コストが増加に転じる

  次に、物流コストの推移を見てみよう(図3)。99年度以降、売上高物流コスト比率は低下傾向であった。物流は規制緩和による運賃下落、地価や人件費の低迷、各社のコスト削減への取り組みなどがあって長期的に見て減少トレンドにあったと考えられる。ところが、06年度調査ではわずかながら増加に転じている。

図3 売上高物流コスト比率の推移


資料:JILS「2006年度物流コスト実態調査」

  物流コストの上昇傾向は、他の資料からも裏付けられる。なお、物流コスト全体について調査した資料はJILS調査以外にないが、輸送コスト、運賃等の価格水準については個別に調査がなされており、主要なところでは、国土交通省(物流センサスなど)、日銀、日通総合研究所、全日本トラック協会などから資料が公表されている。また、有価証券報告書ベースの物流コストが、「流通設計21」で毎年、公表されている。
  これらのうち日銀の統計(企業向けサービス価格指数)から輸送コストの動向を見てみよう。「道路貨物輸送」の価格(単価)で見ると、2005年度の後半から、増加に転じていることが分かる。輸送コストは言うまでもなく物流コストの6割程度を占める最大の費目であり、物流コスト全体への影響は大きい。なお紙面の都合上掲載しないが、倉庫、内航海運、航空貨物等のコストも上昇している。なかでも内航海運も上昇幅が大きい。このように、他の資料から見ても、物流コストの増加傾向を伺い知ることができる。

図4 「道路貨物輸送」の価格水準


資料:日銀「企業向けサービス価格指数」 2000年平均=100とする指数。

なぜ物流コストが上昇しているのか?

  では、なぜ物流コストは上昇に転じたのだろうか。上記の「物流コスト実態調査」では、委員会での議論を踏まえ、物流コストが上昇に転じた理由として以下の4つを挙げている。

  (1)燃料高騰
  (2)人件費・雇用需給の変化
  (3)サービスレベルの上昇
  (4)大量消費から個別消費への変化/BtoBからBtoCへの変化

  このうち、(1)と(2)について少し詳しくみてみよう。

  (1)燃料高騰については周知のとおり、7月時点で軽油価格が120円に達している(図5)。これは2004年と比べて1.5倍の水準である。一般的には燃料費はトラック事業者のコストの1割前後を占めているから(国交省「自動車運送事業経営指標」を参照)、単純計算で運賃を5%押し上げる計算になる。ただし実際には、トラック事業者の経営努力、エコドライブ、人件費の削減などでコストアップの相当部分が吸収されており、運賃に価格転嫁されているのは一部分に過ぎないと思われる。しかしトラック事業者の経営体力も限界に近づいており、今後、運賃への転嫁が進んでいくであろう。

  (2)人件費・雇用の問題も深刻である。特にトラック事業者では、人件費の削減圧力があると同時に、人手不足の状況に陥っている。図6に全産業の労働者過不足状況を示したが、この図から分かるとおり、産業界全体がバブル崩壊以来の人手不足に陥っていることが分かる。これは労働集約的産業ではかなり深刻な状況であると言えるだろう。図には記載していないが、特に物流関係では人手不足の傾向が強く出ている。なお、雇用環境は地域差が大きく、首都圏および中部地区では非常に影響が大きい反面、影響のみられない地域もある。
  人手不足は人口構成の変化の影響が大きいことから、今後もタイトな雇用環境が続くであろう。トラック運送業の場合、コストの約5割が人件費であり、人件費が上がり出せばコストへの影響は大きいはずである。

図5 軽油価格の推移


資料:(財)日本エネルギー経済研究所 石油情報センター
図6 労働者の過不足状況(雇用形態別)


資料:厚生労働省「労働経済動向調査」
「不足」から「過剰」を引いた指数。

今後も物流コストはあがるのか?

  価格は一般に需要と供給のバランスで決まる。これは物流コストについても同様である。物流サービスの供給サイドにある原油の高騰や雇用環境の問題は、構造的な問題でもあり、当面は高水準を維持すると思われる。一方、需要サイドの物流量自体は、国内需要の低迷、製造業の海外移転の進展などから長期的に減少傾向であるが、近年は輸出主導で国内の経済も潤っている状況である。将来の予測は難しいが、この経済環境が続く限りにおいては、供給サイドの要因から、物流コスト増加傾向が続く可能性が高いだろう。
  なお、物流コストと同じレベルで商品価格も上昇すれば、売上高物流コスト比率は増加しない。しかしながら、消費者物価指数は6月時点でもわずかながらマイナスであり、コスト上昇を価格上昇で吸収するのは困難な状況である。従って、今後は各社とも物流コスト増加への対策を迫られることとなると予想される。

物流コスト算定の必要性

  ところで、周知のとおり物流コストは財務諸表には掲載されておらず、その算定は各社の管理会計として任意に行われる。物流コスト実態調査で調査している物流コストも、各社の管理会計の中で把握されているものである。有価証券報告書では、製造原価や販管費の内訳として「運賃」「荷造費」「保管料」などが掲載されている場合があるが、これは物流コストの一部に過ぎない。
  図7は、実際にある業種について、物流コストの構成を見たものであるが、有価証券報告書に掲載されたコストは全物流コストの半分程度に過ぎなかった。このように、物流コストの全体像を知るためには、(多少面倒ではあるが)管理会計の仕組みを作り、物流コストを算定してみることがぜひとも必要である。

図7 ある業種における物流コストの構成


資料:JILS「2006年度 物流コスト実態調査」と
各社有価証券報告書より作成。

在庫保持コストの把握も必要

  話がわき道にそれるが、昨今、コスト削減の一環として在庫削減に取り組む企業が増えている。在庫はキャッシュフロー面での効果もあるが、在庫削減による、保管コストをはじめとした在庫保持コスト削減の効果も大きい。在庫保持コストは、資本コスト、保管コスト、陳腐化等の在庫リスクに関わるコストなどであるが、保管コスト以外は物流コストとして認識されない場合が多い(図8)。しかしながら、各種推計によると5%の物流コストのうち1%程度が在庫保持コストであり、陳腐化のスピードの速い業種では、さらに高い比率を占めると思われる。輸送コストの削減余地が限られるなか、在庫保持コストもコスト管理の対象として意識することが必要であろう。

図8 在庫保持コストと物流コストの関係


定義上は在庫保持コストも物流コストに含まれるが、
実際には保管費など一部しか管理されていない。

物流コスト調査への協力を

  以上、物流コスト実態調査の結果を中心に紹介してきた。調査結果の概要はJILSホームページ((公社)日本ロジスティクスシステム協会/物流コスト調査)でも紹介しているので、ご参照いただきたい。なおホームページでは概要のみを紹介しているが、調査にご協力頂いた荷主企業には、詳細をまとめた報告書をお送りしている。今年度も秋以降に調査を実施する予定であるので、物流コスト管理にご関心のある企業は、ご協力いただければ幸いである。ご連絡先は上記のJILSホームページに記載しているので、ご遠慮なくご連絡いただきたい。

以上



(C)2007 Seiichi Kubota&Sakata Logics,Inc.

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