| 講演者 | 広井 良典 氏 京都大学 名誉教授 |
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講演者略歴 ▼
*サカタグループ2026年5月20日開催 第30回ワークショップ/セミナーの講演内容の動画をYoutubeにてご案内しています。
(見どころご紹介)
人口減少と持続可能性という、日本社会が直面する根源的課題をテーマに、京都大学名誉教授・広井良典氏が未来社会のデザインを多角的に語ります。社会構造の変化、地域コミュニティの再編、産業・物流の新たな役割など、これからの日本が進むべき方向性を示唆する内容が凝縮された講演です。複雑化する社会課題をどのように読み解き、持続可能な社会モデルを構築していくのか。政策立案者、企業経営者、地域の実務者にとって示唆に富む必見の内容です。
※本ページでは、講演の全体要約と章ごとの要約をご紹介しています。ぜひリンク先の動画もあわせてご覧ください。
目次
(全体要約)

本講演では、人口減少や少子高齢化、環境問題など社会が大きな転換期を迎える中、短期的な変化にとらわれず、中長期的な視点から未来を構想する「大局観」の重要性が説かれた。
現代は、従来の「拡大・成長」を前提とした社会から、「持続可能性」や「ウェルビーイング」を重視する成熟社会への転換期にある。豊かさはGDPだけでは測れず、人とのつながりや自己実現・世界への貢献など、多様な価値観に基づく幸福が重要になっている。
また、人口減少社会では東京一極集中から地域分散型社会への転換が求められ、ローカルの価値や日本の伝統的経営思想である「三方よし」「道徳と経済の一致」などが再評価されている。さらに、人類社会は量的拡大から質的充実へと移行しており、「生命」を中心とした価値観や、環境・経済・福祉が調和する持続可能な社会の実現が今後の方向性として示された。
日本は人口減少・高齢化という課題の最前線にある一方で、長寿企業や地域文化、共生の思想など世界に発信できる強みを有しており、持続可能な福祉社会のモデルを先導する役割が期待されている。
1.未来を考えることの意味
(テーマ要約1)
未来を考えることの重要性を「大局観」という概念で説明する。
日々の変化に振り回される現代では、長期的な視点を持つことが道を誤らないための「究極のスキル」であると述べる。また、中国古典の「生年百に満たざるに常に千年の憂いを懐く」を引用し、人間は短い人生であっても長い未来を考える存在であり、そこに創造性・イノベーションの源泉があると強調する。
さらに、「宇宙ー地球ー生命ー人間」の歴史を一貫した視野の中でとらえる試み「ビッグヒストリー」の視点を紹介し、変化の激しい時代だからこそ、中長期的な未来ビジョンを持つことが重要であり、そうした長期志向が経営の安定性や社会の持続可能性にも寄与すると述べる。
2.現在という時代をどうとらえるか
(テーマ要約2)
現代日本社会は、人口減少・少子高齢化・財政制約・地域衰退など、従来の成長モデルが前提としてきた条件が崩れつつある「大転換期」にあると指摘する。
講演では、日本の人口推移を平安時代から現代まで俯瞰し、2008年をピークに人口が減少へ転じたこと、そして「2100年には約半分になる」という長期予測を示しながら、人口減少は危機であると同時に新しい発想を生むチャンスでもあると述べる。限りない「拡大・成長」から「持続可能性(サステナブル)」へ。
また、GDPでは豊かさを測れないという議論を紹介し、ウェルビーイング(幸福)や幸福度指標(例:荒川区のGAH=グロス・アラカワ・ハピネス)など、多元的な価値軸が重要になっていると説明する。
幸福の構造を「生命/身体」「コミュニティ」「個人」の三層で捉える独自モデルを提示し、現代は特に「つながりとして幸福」と「自己実現としての幸福」が重要性を増していると述べる。さらに、近年の若者の価値観の一部には、個人の達成や成功を重視する「自己実現」よりも、社会や環境への貢献を通じて価値を実現する「世界実現」と呼べる志向が現れていると論じた。
3.ローカリゼーションと「生命」の時代
(テーマ要約3)
現代日本では地元の「ポジティブな価値」への関心の高まっている。人口減少社会では、中央集権的な仕組みから地域分散型の社会への転換が求められる。
若い世代の間で「ローカル志向」「地域への回帰」が高まっていることを挙げ、ローカリゼーションは社会の持続可能性にとって重要な潮流であると説明する。
また、AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言(日立京大ラボとの共同研究)では、「東京一極集中型より地方分散型の方が人口・幸福度・地域の持続可能性が高まる」という結果が得られたと紹介する。
働き方や住まい方、生き方を含む包括的な「分散型」社会へ。
GDP増加率の低下は「成熟経済」への移行を意味している。評価をGDPだけで測るのではなく、環境・経済・社会に加え、ウェルビーイングを含む多元的な価値軸の多元化が重要となっている。そのため、日本の(伝統的)経営思想の再評価がされている。「三方よし」、「道徳と経済の一致」、「論語と算盤」など。その具体例として、日本に長寿企業が多いことを挙げ、短期利益だけでなく継続性や社会との調和を重視する経営文化との関連が示された。
4.グローバル定常型社会の展望
(テーマ要約4)
人類史を「狩猟採集 → 農耕 → 工業化」の三つの拡大サイクルとして捉え、現在は第三の拡大期(工業化)の限界に直面し、成熟・定常型社会への移行期にあると説明する。
化石燃料依存の限界、環境負荷、資源制約などが背景にあり、これまでの「量的拡大」から「質的充実」への価値転換の必要性が論じられた。
また、歴史上の転換期(例:紀元前5世紀の「軸の時代」)に普遍的思想が生まれたように、現代も新しい価値観や人類全体、地球環境を視野に入れた新たな倫理観(地球倫理)が求められている。
さらに、幸福の基盤として「生命」を中心に据える価値観が重要であり、農業・再生可能エネルギー(例:ソーラーシェアリング)・地域コミュニティなど、生命と循環を軸にした社会モデルが求められていると述べる。 マズロー晩年の議論を踏まえ、現代は「自己超越(セルフトランセンデンス)」が重要性を増しており、若い世代の社会起業や地域活動にその兆しが見られると指摘する。
日本は、人口減少・高齢化社会のフロントランナーである。多くの問題を抱える一方、長寿企業の多さや地域多様性、伝統文化(例:鎮守の森)など、持続可能な社会モデルを世界に発信できるポテンシャルを持つと述べ、 日本は、環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」のモデルを先導的に実現し、世界へ発信していく役割を担いうると結論づけている。
以上
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