物流共同化

第539号 「物流共同化の過去・現在・未来についての考察」~物流共同化実態調査研究報告書より~(中編)~(2024年9月5日発行)

執筆者 浜崎 章洋 (大阪産業大学 経営学部商学科 教授)  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。 著書 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社) 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社) 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所) 『通販物流』(共著、海事プレス社) など サカタグループ2024年3月15日開催 第27回ワークショップ/セミナー「ロジスティクス戦略の新動向」の講演内容をもとに編集しご案内しています。 今回大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋様の講演内容を計3回に分けて掲載いたします。 *前号(2024年8月20日発行 第538号)より   目次 2.物流共同化研究 3.物流共同化を阻害する要因 4.近年の物流共同化の事例    2.物流共同化研究 *画像をClickすると拡大画像が見られます。   では、具体的に、我々が行っている物流共同化の研究について、紹介していきたいと思います。私は日本物流学会に所属しておりまして、2006年から、今から20年近く前から物流共同化のプロジェクトを開始しました。一番最初に報告書を出したのが2008年です。 2008年に先ほどお話した津久井英喜先生、東京経済大学の中光政先生他が中心となって、『物流共同化実態調査研究報告書』を出されました。この報告書は、作成するために、大体2年ぐらい前から調査を始めています。 私はちょうどこの2005年に、東京に単身赴任していたこともあって、津久井先生にお声がけいただいて、このプロジェクトに一メンバーとして参画させていただきました。物流学会で初めての調査だったので、2008年の報告書が出る以前の、過去数年間の事例をさかのぼって全部調査を行って、このような報告書が出来上がりました。 次に、第2次ということで、2009年から2012年まで、東京経済大学の中先生、そして津久井先生、関西では当時、立命館大学におられた土井先生が、集まって2012年に『物流共同化実態調査研究報告書』を出しました。 これは、事例を集約したもので、実際に物流共同化を行っている企業の個別事例を調査して報告書を書いたり、物流共同化の効果算定をしたり、物流の共同化あるいは共同配送等に関する文献、要望について調査を行ったものです。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。   これも報告書がでています。このときも私はメンバーとして参画しています。2018年、今から5年程前に報告書を作成しました。このとき事務局は我々が担当し、前回と同様に事例を収集して、実際に物流共同化をされている企業様13社に調査をさせていただいて、報告書を作成しています。物流共同化に関する書籍、論文、業界誌の記事を全部集めて整理し、報告書にとりまとめています。 そして今、正に、2023年度の調査報告書を作成しているところです。実は今日も、行きの新幹線で原稿の最終チェックをしていて、来週早々に入稿し今月末に発刊する予定です。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。    これ以外に日本物流学会の一つの研究会として、関西共同物流研究会があります。この中では、物流共同化をされている企業の方を講師に招いて、講演会形式で研究会を行っています。2013年から7年間実施してきましたが、その後コロナの影響で開催を中断しています。物流共同化の、実際の事例を発表して講演いただく研究会という趣旨のため、オンラインにそぐわないということで、クローズドで開催しています。現在少し中断していますが、この2023年度の報告書が完成後、再開したいと思っています。 もう一つは、関西共同物流研究会の幹事のメンバーが集まって、関西物流共同化ネットワークという活動を行っていまして、ここで2ヶ月に1回、「物流共同化研究」という機関誌を発刊し、PDFデータをメール配信しています。例えば、新聞、ビジネス誌、ネット記事に出てきた、物流共同化、共同配送、貨客混載等の物流共同化に関するキーワードの記事を集めて、日付順に並べて掲載しています。 大体25ページ位ありますが、2ヶ月に1回発刊しメール配信してます。これを5年分整理したものを、先ほどの日本物流学会が出している、『物流共同化実態調査研究報告書』に入れています。 また、文献整理として、調査対象期間に発刊、発表された物流共同化に関する書籍、論文、雑誌の記事の一覧表を作っています。例えば、本の中の数ページに、物流共同化とか共同配送の記載があれば、全てチェックしていますので、我々は、物流とかロジスティクスに関する書籍は、ほぼすべて目を通していると思っています。 その他に、2012年の報告書では、物流共同化の用語の整理とか、物流共同化の効果算定などを実施しています。共同物流に関するいろいろな事例を5年分ぐらい集めてパターンごとに整理し、例えば共同出資で共同物流を始めているとか、組合を作っている等、そういったパターン毎に整理しています。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。    今日はその中で、どのような事例があるのかご紹介したいと思います。2012年と2018年発刊分と、現在準備中の2023年の事例を集計してきました。 大体、通常500以上ある記事の中から整理しています。2012年は合計88事例で、2018年は250事例、2023年は531事例ということで、若干の期間の差はありますが、傾向としては、物流共同化に関するニュース、記事が、明らかに増えていることがわかるかと思います。 では、実際にどんなパターンがあるのかというと、例えば荷主企業が、共同出資して共同の物流運営会社を作りますというパターンは今でもあるのですが、そんなに多くはないのです。あるいは、株式会社ではなくて、協同組合とか協議会とかを作って取り組んでいく、これも今でもあるのですが、そんなに多くはないのです。また、流通業の方が一括物流を始めることは、今当たり前になってきたので、特に記事にならないのかもしれません。物流会社さんが主導し、共同化を推進していくというケースは、件数としては多くなってきています。 物流会社さんではないですが、個別の企業が複数集まって共同化に取り組んでいこうというケースは、130件あります。例えば、将来の経営統合とかを含めて、物流共同化を進めていきましょうというケースは、増加傾向にあるのです。 2012年にはなかったのですが、貨客混載、例えば路線バスで宅配の貨物を運ぶとか、ハイウェイバスで産地の名産品を運ぶとか、旅客電車で貨物を運ぶとか、そういった貨客混載というのは、2018年の調査から出てくるようになりました。現在、非常に件数が多い状況です。 今回、この5年間の調査で新たに出てきたことは、製造業とかサービス業の1企業が、物流共同化を始めていくというケースで、合計49件あります。 これはどんなことかというと、イメージで言うとAmazonさんが自分たちで物流網を持っています。うちの物流網を活用してもらっていいですよ、この指止まれ、みたいな感じです。あるいは、全く荷主企業でも何でもない、例えばITベンチャー企業さんが、物流マッチングサービスを始めますとか、共同配送のプラットフォームを作りますから皆さん参加してください、みたいなケースが、案件としてすごく増えています。このような傾向がでてきています。 それと、9番、これも今回の新たな例として出てきたのですが、例えば、経済産業省や都道府県、あるいは、ロジスティクスシステム協会が、物流共同化の取り組みについて賞を出しますよとか、補助金を出します、という事例は、今回件数が非常に増えています。この9番については、いきなり出てきたのではなくて、既に実施されていたもので、以前はこの1から8のどこかに入っていたものと思います。 物流共同化に関する、報道の記事として、今回非常に件数が多かったので、新たに(パターンを作成して)取り上げている次第です。実際に、本、論文とか雑誌の記事とか、どうなのかと言うと、物流共同化というタイトルではなくて、物流とかロジスティクス、サプライチェーンに関連する書籍の中で、例えば、文章中の章や節に、物流共同化とか共同配送とか、貨客混載とかが入っている、もしくは、サブタイトルで入ってたりする、そういったものを全てでチェックして集計しています。 *画像をClickすると拡大画像が見られます。    書籍でいうと、2012年だと25冊、2018年では40冊、2023年だと41冊位あります。ということで、10年前に比べるとやはり、物流共同化に関連する書籍も増えているということがわかると思います。 […]

第538号 「物流共同化の過去・現在・未来についての考察」~物流共同化実態調査研究報告書より~(前編)~(2024年8月20日発行)

執筆者 浜崎 章洋 (大阪産業大学 経営学部商学科 教授)  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。 著書 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社) 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社) 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所) 『通販物流』(共著、海事プレス社) など サカタグループ2024年3月15日開催 第27回ワークショップ/セミナー「ロジスティクス戦略の新動向」の講演内容をもとに編集しご案内しています。 今回大阪産業大学 経営学部商学科 教授 浜崎 章洋様の講演内容を計3回に分けて掲載いたします。   目次 0.はじめに 1.物流共同化が注目されている理由       皆さんこんにちは、只今ご紹介いただきました大阪産業大学の浜崎です。 本日は物流共同化のお題をいただきましたので、私が所属している日本物流学会において、これまで長年にわたり物流共同化の研究を行ってきましたので、このことを踏まえてお話していきたいと思います。 では、最初に簡単に自己紹介をさせていただきます。 大学を卒業後、京都のタキイ種苗とういう会社に勤めた後、日本ロジスティクスシステム協会に転職し、そのときに社会人大学院に通っていました。その後、物流会社、コンサル会社を経て、現在、大学の教員を勤めています。 また、本の執筆を行って、日経ビジネスに取り上げていただいたり、最近では、『「物流コストの算定・管理」のすべて』(創成社, 2024年)を出版しています。 0.はじめに はじめに 1)商取引における物流の重要性 *画像をClickすると拡大画像が見られます。   まず、はじめに、商取引における物流の重要性についてですが、ご承知の通り、商取引には、物の取引とサービスの取引があります。サービスの取引、散髪に行くとかマッサージを受けるとかですね、サービスの取引の場合は物流は発生するでしょうが、微々たるものです。物の商取引の場合は、実際に物を売買するので、物流が発生します。   企業経営にとって、商流と物流という、大きな役割・機能が二つありますが、営業部門の方は、販売活動とか取引条件を交渉する、物流部門、もしくは、物流会社の方が、その取引条件に沿って商品をお届けする、ということなのですが、この商流と物流が完了しないと商取引は成立しません、これは、ごく当たり前のことです。   今特に、物流2024年問題が、あと2週間で始まります、トラックドライバーさんの時間外労働時間の規制に関して言うと、この物流(輸送)が、できなくなるかもしれない、ということです。企業の方々は、いろいろ危惧をされていたりとか、いろんな改革を行い対応されていると思いますが、本日のテーマである物流共同化というのは、持続可能な物流といいますか、納品を継続していくために非常に重要な役割を担うということを、お話していきたいと思います。 1.物流共同化が注目されている理由 1.物流共同化が注目されている理由 *画像をClickすると拡大画像が見られます。   なぜ、物流共同化が注目されているのかというと、労働人口の減少とトラックドライバーの減少があります。少子高齢化が言われて久しいですが、特に若年層、生産年齢人口と言われる方々の人口減少が著しいのです。   公益社団法人 鉄道貨物協会(https://rfa.or.jp/)の調査 *1 によると、今から数年後(2028年)には、トラックドライバーさんが30万人近く足りなくなると言われています。来月4月から、トラックドライバーさんの時間外労働時間の規制が始まると、これについて、何も対策を行わなかった場合は、輸送力が約15%不足する可能性があると言われています。 (注釈)*1.令和元年5月,「平成30年度本部委員会報告書」p104 4.4営業用トラックドライバー受給の予測, 公益社団法人鉄道貨物協会 (参考サイト) https://rfa.or.jp/wp/pdf/guide/activity/30report.pdf 参考:物流2024年問題とは *画像をClickすると拡大画像が見られます。   では、物流2024年問題とは何なのかということですが、この詳しい説明は省略しますが、要は、トラックドライバーさんの時間外労働時間の上限が規制され、年間960時間以内になるということなので、年960時間を単純計算し割り算すると、月80時間とか週20時間とか1日4時間以内となってしまいますが、これでもかなりの長時間労働なのです。   長時間労働については、4月1日から始まる物流2024年問題に向けて、皆さんいろいろ対応されていると思いますが、これはゴールではないのです、ここから始まりますという認識で、ぜひ今後の対応を考えていただきたいと思います。   時間外時間の上限規制については、960時間の次は840時間になって、その次は720時間になります。何年かかるかわかりませんが、今後この規制はもっと厳しくなり、これはゴールではなくて、スタートなのですということを、ぜひご承知おきください。   私は、職業柄、経営者の方々、物流会社の担当者の方、あるいは荷主企業の物流部門の方々と交流があって、昨年秋位まで、この物流2024年問題に関する相談がとても多かったのです。では、秋まで皆さん何もしていなかったのかというと、私にはすごく疑問なのです。   新聞やニュースの報道を見ていると、当初、丁度1年位前、物流2024年問題というのは、宅配が運べなくなります、こんな話ばかりじゃなかったでしょうか。通信販売が増えてきているため、このままでは宅配が運べなくなります、というニュースだとか報道が多かったように思います。きっと、企業の経営者の方々、荷主の物流部門の方々は、宅配サービスの問題だと思っていたのでしょうね。だから、宅配会社さんが何とかしてくれるだろうと考えていたのだと思います。   それが昨年秋ぐらいから、いわゆるBtoB企業間の貨物も運べなくなりますとか、特に農産物とかが運べなくなります、という報道が始まってから、私のところへ相談にくることが増えてきたのです。 […]

第532号 物流共同化の過去・現在・未来についての一考察(2024年5月21日発行)

執筆者 浜崎 章洋 (大阪産業大学 経営学部商学科 教授)  執筆者略歴 ▼ 略歴 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。 タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。 著書 『改定第2版 ロジスティクスの基礎知識』(海事プレス社) 『物流コストの算定・管理のすべて』(共著、創成社) 『ロジスティクス・オペレーション2級』(共著、社会保険研究所) 『通販物流』(共著、海事プレス社) など  本稿はサカタグループ「第27回ワークショップセミナー」(/news/wksemi_27/)セッション1、「物流共同化の過去・現在・未来についての考察 ~物流共同化実態調査研究報告書より~」のダイジェスト版として掲載しています。 今後本セミナーの講演内容を編集し、「ロジスティクス・レビュー」へ掲載予定ですので、是非ご期待下さい。 目次 はじめに 1. 共同配送のメリットと継続の要因 2. 物流共同化の研究 3. 物流共同化を推進するにあたって さいごに    はじめに   一年くらい前から、新聞やテレビのニュースで「物流2024年問題」が取り上げられるようになったと思います。それにともない、共同配送など「物流共同化」に関する記事が増えました。筆者は、所属している日本物流学会で、2006年ごろから「物流共同化」について、先生方と共同研究をしています。 1. 共同配送のメリットと継続の要因   輸送・保管・荷役・包装・流通加工・物流情報といった物流の6つの機能のうち、共同化のメリットが大きい共同配送について、そのメリットと成功要因を整理します。 ・物流費の削減(輸送費だけでなく、例えば着荷主側の荷受け荷役費の削減など) ・物流の効率化(荷受業務の効率化、荷待ち時間の削減など) ・環境負荷の軽減(車両減によるCO2排出量削減など) このようにメリットが大きい共同配送ですが、さまざまな理由で継続できないケースが あるかと思います。共同配送が継続しているケースでは、次のような要因が挙げられます。 ・物理的な制約(百貨店など納品先側に制約がある、過疎地など1荷主では荷量が少ないなど) ・取引先/納品先からの要望(コンビニ等の一括物流など) ・エコノミーとエコロジーの両立(物流費削減と環境負荷軽減の両立) 2. 物流共同化の研究   筆者は、日本物流学会の先生方と、2006年ごろから物流共同化について共同研究をしています。その成果は、2008、2012、2018、2023の約5年ごとに、「物流共同化実態調査研究報告書」として報告書を発刊しています(2023報告書は近々発刊の予定)。 物流共同化の事例を報告書では、次のように分類しています。 ①共同出資による共同物流運営会社等を設立しているケース ②協同組合・連合・協議会等を作って共同化を図るケース ③流通業に見られる一括物流のケース ④物流事業者主導により共同化を行うケース ⑤個別企業が複数集まり共同化を行うケース ⑥業務提携・資本提携の結果、共同化が図られるケース ⑦貨客(客貨)混載サービスにより共同化が図られるケース ⑧製造業・流通業・サービス業等の1企業が行う共同化事例 ⑨賞や公的機関の取り組み事例 2018の報告書から、⑧貨客(客貨)混載の事例が急増しました。貨客混載とは、路線バスに宅配便の貨物を積載して輸送するなど、旅客と貨物を混載するものです。地域の路線バスにとっては新たな収益源の確保により路線維持に、宅配便会社にとっては効率の悪いエリアの効率化やサービス向上につながります。路線バス以外に、タクシーや鉄道を利用したものもあります。また、宅配便の貨物だけでなく、地域の特産品などを高速バスで輸送し都市 部で販売するなど、地域経済の活性化に役立っている例もあります。 […]

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