| 講演者 | 伊藤 友昭 氏 セイノーホールディングス株式会社 特積み(O.P.P.)戦略部 担当部長 |
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講演者略歴 ▼
*サカタグループ2026年5月20日開催 第30回ワークショップ/セミナーの講演内容の動画をYouTubeにてご案内しています。
(見どころご紹介)
物流業界では、ドライバー不足や高齢化による「2030年問題」、物流関連法令の相次ぐ改正、地政学リスクなど、単一企業だけでは解決が難しい複合的な課題が顕在化している。本セミナーでは、こうした環境下で物流インフラを持続可能なものとして次世代へ引き継ぐため、セイノーホールディングス株式会社が進める「Team Green Logistics(TGL)」の考え方と、業界の垣根を越えた「協創」の取り組みを紹介する。
特に注目されるのは、これまで競争関係にあった物流会社同士が、拠点や輸送網などの経営資源を共有し、共同配送や中継輸送などに取り組む実践事例である。さらに、全国の物流ネットワークを業界共通のインフラとして活用する「Open Public Platform(O.P.P.)」や、将来的な「フィジカルインターネットの実現」に向けた構想にも触れ、競争から協創へという物流業界の新たな方向性を示す内容となっている。
※本ページでは、講演の全体要約と章ごとの要約をご紹介しています。ぜひリンク先の動画もあわせてご覧ください。
目次
- 1. セイノーホールディングス株式会社の概要と輸送事業の現状
- 2. 物流業界が直面する複合危機(2030年問題・法令改正・地政学リスク)
- 3. TGL / O.P.P. が描く業界協創モデル(フィジカルインターネット構想)
- 4. 協創の実践事例と2030年に向けたビジョン
1. セイノーホールディングス株式会社の概要と輸送事業の現状

(テーマ要約1)
セイノーホールディングス株式会社は1946年に岐阜県大垣市で創立され、現在は100社を超えるグループ企業と3万3,000人以上の従業員を擁する総合物流企業へと成長している。特積輸送を中心に、貸切輸送、倉庫、物流システムなど幅広い物流機能を展開しており、輸送事業がグループの中核を担っている。
輸送事業では、トラックによる特積輸送「カンガルー便」をはじめ、航空輸送を活用したエクスプレス便、貸切輸送など、多様な輸送サービスを展開。また、物流事業者同士をつなぐマッチングなど、新たな物流機能にも取り組んでいる。
一方で、物流を日本経済の重要なインフラと位置づける同社にとって、輸送力の維持・確保は大きな課題となっている。これまで自社内で輸送効率化を進めてきたものの、今後は一社だけでは解決できない課題が増えており、同業他社との「協創」が重要になっている。
2. 物流業界が直面する複合危機(2030年問題・法令改正・地政学リスク)

(テーマ要約2)
物流業界では、①構造的な人手不足(2030年問題)、②法令の激変、③地政学リスクという三つの課題が同時に進行している。
ドライバーの高齢化や人手不足は深刻化しており、対策を講じなければ2030年には需要に対して輸送能力が34%不足するとの見通しも示された。また、2024年問題によってドライバーの労働時間が制約される中、輸送力をどのように維持するかが大きな課題となっている。
加えて、物流関連法令の改正により、特定荷主へのCLO選任や中長期計画の策定、適正原価の設定、実運送体制管理簿など、新たな対応も求められている。こうした制度変更は物流企業だけでなく、荷主企業にも物流への関与を促すものとなっている。
さらに、国際情勢や地政学的な変化によって、物流網そのものが影響を受けるリスクも高まっている。こうした複合的な課題に対して、単独で対応するには限界があり、業界全体で「協創」する必要性が強調された。
3. TGL / O.P.P. が描く業界協創モデル(フィジカルインターネット構想)

(テーマ要約3)
こうした課題への対応として紹介されたのが、**「Team Green Logistics(TGL)」と「Open Public Platform(O.P.P.)」**である。
セイノーホールディングス株式会社では「ロードマップ2028」を掲げ、その中で「Team Green Logistics」をスローガンとして、競争だけではなく、他社との協力によって物流業界の社会課題を解決する方向へ舵を切っている。場合によっては、これまで競争相手だった企業とも連携し、物流を持続可能なものにしていく考え方だ。
その先に描くのが「フィジカルインターネットの実現」である。インターネットのように、企業の垣根を越えて物流資源を共有し、業界共通の仕組みによってモノを効率的に運ぶことを目指す。その実現には、デジタルプラットフォームだけでなく、全国に存在する物流拠点や輸送網などの「リアルアセット」をオープンに活用できる仕組みが必要となる。
O.P.P.とは、**「オープン=業界・業種を超えたオープンな連携」「パブリック=誰もが利用できるパブリックな基盤」「プラットフォーム=全国の特積ネットワークをインフラとして開放」**という考え方で構成される。セイノーホールディングス株式会社が構築してきた全国約893拠点のネットワークを自社だけのものとせず、公共のものとして同業他社や異業種にも活用してもらうことで、物流インフラ全体の維持・効率化を目指している。
4. 協創の実践事例と2030年に向けたビジョン

(テーマ要約4)
協創の考え方は、すでに具体的な取り組みとして動き始めている。
代表例として紹介されたのが、セイノーホールディングスグループの日ノ丸西濃運輸と、福山通運グループの山陰福山通運による合弁会社「TGL山陰株式会社」である。これまで競争関係にあった両社が連携し、一方の営業所から相手企業の拠点へ荷物を持ち込み、相手側のネットワークを活用して配送する取り組みが行われている。
また、JPロジスティクスとの取り組みでは、九州西濃運輸の営業拠点を共同利用し、互いの配達を振分けることで、生産性向上とCO₂削減を目指している。
さらに物流コンソーシアム 「baton」では、11社の参画企業による企業横断型中継輸送の実証実験を実施。13,000便のデータを分析し効率的な路線を選定。従来、神奈川県から関西への輸送はドライバーが一泊し運んでいたが、静岡県で中継することで、日帰りできる輸送方法を実現した。これは単なる輸送効率化だけでなく、ドライバーの働き方や家族との時間を改善する取り組みとして紹介された。
この考えは、サカタウエアハウスのテーマである「三方よし」に通じるものがあり、セイノーホールディングスグループの「三方よし」とは荷主様、ドライバー、社会が良くなる取り組みであると紹介された。
これらの事例から示されるのは、2030年に向けて物流企業が単独で効率化を進めるだけではなく、「競争」から「協創」へ発想を転換し、企業の垣根を越えて輸送網・拠点・データなどを共有していく必要性である。最終的には、こうした協創を積み重ねることで、「持続可能な物流=持続可能な社会」を実現し、物流を止めない持続可能な社会インフラを次世代へ引き継ぎ、フィジカルインターネットの実現につなげていくことが示された。
以上
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