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| 2.2 デコンストラクションによる物流業界の変貌 |
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内田(1998)は、デコンストラクションが発生するのは、1.既に強固なビジネスモデルが存在する業界 2.規制業界 3.ローカルな事業を展開している業界 4.技術革新の可能性の高い業界 5.非効率な業務を抱える業界 などの5つの枠組みがあると主張し(pp.118-119)、こうしたフレームに則して考えると、物流業界もいくつかの点でデコンストラクションが起こりやすい業界のひとつであると指摘する(pp.143-144)。さらに彼は、航空業界の例をあげて、新たなプレーヤーの業界参入、航空会社間の合従連衡、ネットによる航空券販売の動きなどを示し、物流業界でも既にデコンストラクションが起こり始めていると言及する(pp.143-144)。
またエバンス=ウースター(1999)は、デコンストラクションは、従来の「事業構造・産業構造を変貌させ、それによって競争優位を生み出す源泉も変わってくる」のであり、また「変化が生じるペースや影響の強弱は産業ごとに違うだろうが、デコンストラクションの対象となる事業や産業である限り、その変化がもたらす結果は同じである」と述べている(p.81)。
どうやらデコンストラクションの波は、物流分野そのものにも押し寄せつつあると考えられ、それにより、物流の産業構造自体も大きく変化してくる可能性が高いと思われる。引き続き、以下に今後の物流の業界構造の変化の中味について考察していこう。 |
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| (1) 牧田(1998)の主張 |
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牧田(1998)は、情報化の進展と同期して、物流業界では業務領域の「分解と拡張」および「編集」という動きが生じていると指摘する(pp.157-163)。つまり、情報化の進展により、従来一体不可分であった物流サービスの実行と、物流サービスのデリバリーが「分解」され、また顧客自身が行ってきた物流に関する業務を取り込む物流業者が現れるといった「拡張」が生じている。あわせてこうした動きにより、分解・拡張され、多様化した物流サービスを、今度はサービス提供者側および顧客側それぞれに軸足を置いた形で、再度「編集」するという変化が生まれているというのである。こうした分解,拡張,編集といった一連の動きは、エバンス=ウースター、および内田におけるデコンストラクションの内容と、ほぼ同義と考えてよいと思われる。
続けて彼は、物流機能を構成する個々のサービスを提供する者を「コンポーネント」、サービス提供者側に軸足を置き、顧客に訴求する物流サービス商品を作る者を「パッケージャー」、そして顧客の視点から最適な物流サービスの提供者(コンポーネント,パッケージャー)を選択する者を「エージェント」と呼び、今後の物流業界では、こうした新たなプレーヤーが活躍すると主張している(pp.157-163)。 |
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| (2) 内田(1998)およびエバンス=ウースター(1999)の主張 |
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内田(1998)は、デコンストラクションのプレーヤーは、1.レイヤーマスター(専門特化型企業) 2.オーケストレーター(外部機能活用型企業) 3.マーケットメーカー(取引市場創造型企業) 4.パーソナルエージェント(購買代理店型企業) などの4つに分類できると述べ、「自分の業界のどの辺でデコンストラクションが起きるのかを見極めた後は、それを実現するようなプレーヤーが誰であるのかを把握する」と同時に、「自分がどのタイプのデコンストラクターになるかを決めなくてはならない」と主張している(pp.74-78,pp.196-197)。
一方、エバンス=ウースター(1999)は、デコンストラクションにより選択肢がある限度以上に増えすぎれば、必然的に「ナビゲーター(案内役)」企業が登場することとなり、「独立したビジネスとしてのナビゲーターの登場が、デコンストラクションにおける最も劇的な場面の一つになるのは確実」であり、また「既存の産業の多くにおいて、最も多くの価値を手にするのは‘ナビゲーター’である」と言及している(pp.87-94)。
以上、3者が使用する用語やその意味するところを詳しく振り返ることは紙面の関係で割愛するが、上記より共通項を抜き出す形で、いわゆるデコンストラクションによる物流業界の変貌を整理すると、次の表2-2の3つのポイントが挙げられると思われる*3。 |
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| 表2-2 デコンストラクションによる物流業界の変化 |
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| 1. |
物流業界は、大きくは次の3つの層(レイヤー)に分類されるようになる。 |
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(1) コンポーネントあるいは専門特化型企業
(2) パッケージャーあるいは外部機能活用型企業
(3) エージェントあるいは購買代理店型企業 |
| 2. |
物流リソース等を取り引きする新たな市場、およびこうしたマーケットプレイスで活躍するマーケットメーカー(取引市場創造型企業)も登場してくる。 |
| 3. |
エージェントあるいはナビゲーターのような、より顧客に近い立場で活躍するプレーヤーが、今後、大きな価値を手にする可能性がある。 |
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| 出所:エバンス=ウースター(1999),内田(1998),牧田(1998)をもとに筆者が作成 |
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| 3.2 Eロジスティクス戦略と主要「技術」としてのIT |
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ところで、経営戦略においては「技術」ファクターが非常に重要な意味を持つ。例えば、成長戦略の策定に際して、「技術シナジー」を利用して事業多角化をはかるといったことは周知のモデルであるし、また、特許により自社の「技術」を守り、他社事業が容易に参入できないような障壁を作るといった競争戦略も、一般的によく見られるケースである。ここでEロジスティクス戦略に目を向けてみると、当たり前ではあるが、情報の「技術」、すなわちITが、とりわけ重要な意味を有していることに気がつく。では以下に、物流分野におけるITの活用方法について整理・検討を加えることにより、Eロジスティクス戦略を考察する際の指針としてみよう*8。
コトラー(2000)は、「今後10年間に、マーケティングのすべてがリエンジニアリングの対象になるだろう」と述べ、コンピュータとインターネットによって、販売および購買活動といったマーケティングは、大きな変貌を遂げると指摘する(p.320)。情報化の進展により、「従来、企業にとって多大なコスト要因であり、かつ取引の障壁にもなっていた時間と距離の縮小のインパクトは計りしれない」ものとなり、「いままで通りの販売方法を継続する企業は、やがて市場から姿を消すだろう」と主張するのである(p.321)。
また小川(1999)は、今後の「ネットワーク経済社会における商取引では、取引情報がモノに先行する」ことにより、「100年間にわたって続いてきた‘売り手優位’の仕組みが大きく揺らぎ始め」ることになると指摘する(p.3)。つまり「20世紀に事業の優位性を規定してきた生産技術と販売経路を保有することが、21世紀的な情報優位の枠組みのなかでは、必ずしも強みにならない」のであり、商取引にかかわる情報革命の進行により、マーケティングの世界も大きく変化してきていると主張するのである(p.5)。
一方コトラー(2000)は、こうした、いわゆるEマーケティング時代において今日の企業が成功していくためには、1.顧客データベースを構築し積極的に利用する 2.インターネットの利用に関する明確なコンセプトを持つ 3.関連のウェブサイトにバナー広告を掲載する 4.アクセスが容易であり顧客からの問い合わせにすばやく対応する といった4つの原則が重要になると述べている(pp.334-341)。
特に彼は、インターネットの利用に関しては、表3-2の7つの利用法があると指摘しているが、これは、今後のEロジスティクス戦略立案におけるキーファクターとなる「技術」を確認していくためにも、極めて有用であると思われる。なぜなら現下の物流情報化においても、インターネットは主要な「技術」としての中心的地位を有しているものであり、これをベースに、他のEDI等の技術活用を加味していけば、Eロジスティクス戦略の具体的な方策を明確化しやすいと思われるからである。 |
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| 表3-2 7つのインターネット利用法 |
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| 1. |
調査 |
| 2. |
情報提供 |
| 3. |
フォーラムの運営 |
| 4. |
トレーニングの提供 |
| 5. |
オンライン上での売買の提供 |
| 6. |
オンライン上でのオークションあるいは交換の場の提供 |
| 7. |
デジタル情報の提供 |
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| 出所:コトラー(2000) ,p.334 |
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| こうしたコトラーの指摘をベースにすると、物流分野におけるキーファクターである「技術」としてのITは、主として、1.情報の提供 2.オンライン上での売買の提供 3.オンライン上でのオークションあるいは交換の場の提供 の3つへの活用に関連して整理することができると思われる(表3-3参照)。 |
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| 表3-3 Eロジスティクス戦略と主要「技術」としてのITとの関連 |
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| 1. |
情報提供に関するもの |
| 2. |
オンライン上での売買の提供に関するもの |
| 3. |
オンライン上でのオークション/交換の場の提供に関するもの |
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| 出所:コトラー(2000) ,p.334をもとに物流分野に関して筆者が整理 |
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| 以上の2節より、今後のEロジスティクス戦略の枠組みを整理すると、次の表3-4のように取りまとめることができると思われる。こうしたスキームにもとづき、いよいよ次章以降にて、具体的なEロジスティクス戦略の内容について考察していこう。 |
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| 表3-4 Eロジスティクス戦略のスキーム |
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視 点 |
概 要 |
関係する自社の立場 |
第1 スキーム |
物流業界そのものの変貌に関するもの |
デコンストラクションによる変貌する物流業界における自社のポジショニングの明確化 |
提供者 (調達者) (第三者) |
第2 スキーム |
情報提供に関するもの |
インターネット等による物流情報の提供 |
提供者 調達者 第三者 |
第3 スキーム |
オンライン上での売買の提供に関するもの |
Eコマースを支える物流サービスの提供 |
提供者 (調達者) (第三者) |
第4 スキーム |
オンライン上でのオークション/交換の場の提供に関するもの |
物流リソース,サービスのオークション/交換の場の創出と活用 |
第三者 (提供者) (調達者) |
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| 5.2 ITを利用した物流情報の提供例 |
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| (1) ホームページ開設 |
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| 物流やロジスティクスに関連する企業が、ウェブ上にホームページを開設し、社内外に物流関連情報の提供を行うものである。提供する情報の中味としては、自社の物流サービスやリソースの案内的なものから、顧客への物流アドバイスや質問コーナーの設置など、様々なものが考えられる。 |
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| (2) 電子メール活用 |
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| 電子メールの活用により、物流に関する情報を社内外に提供することは広く行われている。例えば最近では、事前入荷情報や出荷完了情報などを電子メールで送受信したりといったことが実施されている。 |
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| (3) 貨物追跡情報 |
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| トラッキングやトレーシングに関する情報を、インターネットを利用して提供する運送会社は増えている。また最近では、かなりリアルタイムに近い貨物追跡等が可能となりつつある。 |
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| (4) 在庫情報 |
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| 倉庫や物流センターなどの物流拠点にある引き当て可能な在庫情報を、インターネット等を利用して、携帯端末にてリアルに、顧客や自社営業マンに提供したりするといったものである。 |
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| (5) 受発注(入出荷) |
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| 受発注の情報化は従来かなり取り組みがなされてきたが、特に最近の動きとしては、ウェブEDI、あるいはインターネットEDIにより、従来型の汎用コンピュータ等を利用した(大がかりな)EDIによらなければ実施が困難であった物流情報の送受信が、PCなどによるコミュニケーションツールをベースに展開することが可能となってきている。またこうしたインターネットEDIは、従来型のEDIが主としてB to Bの取引を主眼としていたのに対し、B to Cの取引も包含していることにも特徴がある。 |
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| (6) 見積り作成 |
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引っ越しの見積もり作成などでインターネットが利用され始めている。またこうした例以外にも、一般的な企業間での見積書の授受にさいして、まずは電子メール等を利用して見積書ファイルを添付送信したりすることは日常茶飯となってきている。
以上は想定される一般的なケースとして、インターネット等のITを利用した物流情報の提供例を整理したものであるが、上記以外にも、例えば、従来は物流の範疇としては捉えにくかった‘決済’の機能が物流分野と融合し、こうした決済に関する情報を物流関連情報の一環として、顧客や消費者等に提供するといったことも考えられる。ITを利用した物流関連情報の提供については、今後ますます多様な利用例や活用方法が生まれてくるだろう。
いずれにせよ、Eロジスティクス戦略の第2のスキームは、上記のような、比較的われわれの身近で既に起こっている、物流に関する様々な情報の提供,送受信,授受であると考えられるのである。 |
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| 6.2 ECをめぐる物流分野の動向と今後の戦略 |
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電子商取引の進展にともなう最近の物流分野の動きを考察すると、まず基本的に、物流はあくまでEコマースを支える機能を果たしている、Eビジネスをサポートする物流サービスを提供するという位置づけにあることに気がつく。もっとも、次章で述べるように、トラックや倉庫といった物流リソースを交換する新たな電子市場が設立されたり、あるいは、物流事業者自身が、インターネットによる通信販売等を実施したりというケースなども当然あり得るが、これらは原則として、電子商取引/Eコマースの進展に伴う物流分野の動きとは、区別して考察すべき事項である。
では以下に、Eコマースの進展にともなう最近の物流分野の動きを整理してみよう。 |
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| (1) 宅配サービスの活性化 |
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Eコマースを支援する物流サービスの提供という意味において、現在のところ最も注目を集めているのは、いわゆるインターネット通販等における宅配の機能やサービスであろう。
これは原則として、B to Cの分野におけるものであることは明らかであるが、こうした動きを受けて、宅配会社がクレジット決済の機能を新たに提供したり、またウェブ上でリアルタイムに近い貨物追跡情報を提供するなど、活発なサービス提供がなされはじめている。一方で、ウェブ上にモールを開設する企業が、モールの出店者のために、一括して宅配会社と料金契約を行い、ボリュームディスカウントを引き出すといった動きなども出始めている。 |
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| (2) コンビニエンスストアが有する物流インフラへの着目 |
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宅配サービスが上記のような付加機能を提供したり、あるいは夜間配送や時間指定配送といった利便性を高める一方で、消費者の中には、家に不在がちであったり、また自宅でくつろいでいる最中に荷受け応対するのは避けたいといった事由により、宅配を好まない層が存在するのも事実である。またインターネット通販等を展開する事業者の中には、宅配料金の低減や運賃コントロールが困難なため、宅配以外の輸配送方法を検討するといった動きも出はじめている。(さらには宅配会社の中にも、先に述べたようなボリュームディスカウントの影響から、一部でインターネット通販等に対するサービス提供には慎重に対応するといった動きも見られはじめている。)こうした事情により、最近、コンビニエンスストア(以下、CVSという)が有する物流インフラ−店舗あるいは店舗への商品供給のための配送ネットワークなど−をEビジネスへ活用することに注目が集まっている。
一方、CVS以外の、既に特定のユーザーや顧客向けにモノを供給できる物流インフラを有している企業に対し、当該物流インフラを有効活用(共同物流あるいは物流業務委託を)したいといったニーズも出はじめている。Eコマースを展開する事業者の中には、一部の職域販売等をビジネスとする企業に対し、当該企業が確立してきた物流センターや輸配送ネットワークなどを利用したいと言った申し入れを行っているところもあるようである。
また今後は、消費者に‘近い’ポジションでの物流インフラ−例えばタクシー,郵便,新聞・牛乳配達,ケータリングサービス業者など−が、従来の業界の枠や規制を乗り越えて、Eコマースを支援する新たな物流サービスのプロバイダとして注目を浴びて行くといった可能性なども、決して否定できないと思われる。 |
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| (3) 従来の卸売業が有する物流機能の再評価 |
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CVSやそれ以外の物流インフラにも注目が集まっているとはいえ、現時点でのCVSでは、店舗面積の面での制約により、本やCDといった比較的形状の小さなモノの取り扱いに限定して対応せざるを得ないというのが事実である。またCVS以外の物流インフラの活用については、まだまだこれからというのが実態であろう。ここで俄然脚光を浴びるのが、従来の卸売業等が有している物流インフラや機能である。例えば、特定の商品のEコマースに関する取り扱いに関しては、既に関連商品の物流を手がけていて、ノウハウや経験のある卸売業に、在庫管理や流通加工、ピッキング業務などの物流機能を委託するといった方法が出はじめている。
また卸売業の中には、3PLとしての事業展開を模索している企業も多く、今後、ECを展開する事業者としては、従来の卸売業が有する物流機能やインフラを有効活用するといった方向性もあり得るし、一方、卸売業としても、ECを支援する物流サービスの提供を事業のひとつにするといった方向が考えられる。さらには、卸売業以外の物流事業者の中にも、Eコマースを支援する物流サービスの提供をうたうものや、新たにこうしたサービス提供に参入する企業等もあらわれ始めている。
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| (4) B to Bを支援する物流サービスの今後 |
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以上のように、現下は主として、B to C型のECを支援する物流サービスに注目が集まり、いかにそうしたサービスを、消費者や顧客のニーズに合致させつつ、効率的にかつリーズナブルなコストで実現するための方法や手段を、各社が試行錯誤して求めている,提供しはじめているというのが実態であろう。
しかしながら、ここで思い出さねばならないのは、先に述べた、通商産業省とアンダーセンコンサルティングによる調査報告である。つまり、今後の電子商取引の市場においては、B to Cより、あくまでB to Bがより重要な位置を占めており、このB to Bを支援する物流サービスがどのようなものになるのか、またそうしたサービスを提供する主要なプロバイダやプレーヤーは誰になるのかといったことについては、今のところまだ明確な姿が浮かんでこないということである。わが国では、電子・情報関連製品や自動車・自動車部品、ならびに建設などの分野での電子商取引が伸びると言われているが、既に一部では、こうした分野のEコマースを支援する新たな物流サービスも登場しはじめており、今後、このような動きに注意しておくことが重要となるだろう。 |
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| 7.2 物流リソースエクスチェンジ/オークションの今後の展望 |
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ところで、最近の物流業界においては、インターネットを利用した「求車求貨システム」が注目を集めている。米国等での積極的な展開もさることながら、わが国でも2000年9月現在、10以上の「求車求貨システム」のサイトが登場してきている*11。これらは主に、ネット上でトラックなどの車両自体(いわゆる‘帰り便’)や車両上の空きスペースの売買を目的としたものであるが、こうした「求車求貨システム」以外にも、倉庫スペースや、(空の)海上コンテナといった物流リソースのエクスチェンジ/オークションの場も展開されはじめている。
こうしたEマーケットプレイスは、物流リソースやサービスの取引市場において‘迷子’になった情報を結びつけるには、極めて有効なソリューションを提供する可能性があると思われるし、また物流分野における環境問題への対応策のひとつとしても有効な手段となり得るものと考えられる。しかしながら、実務の上からこうしたマーケットプレイスを検証してみると、現時点ではいくつかの問題点を抱えていることも事実である。以下、こうした市場の実状や課題等について、少し整理をしてみよう。 |
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| (1) SCM概念と物流リソースエクスチェンジ/オークションは馴染まない!? |
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| まず、物流リソースやサービスの取り引きは、実務の世界においては一般的に継続性あるいは反復性のあるものが多くなる。とりわけ最近のSCM概念の進展のもとでは、物流サービスプロバイダには、当該サプライチェーンを構成する重要な一事業主体としての役割を果たすことが求められることとなり、そうした事由から、より一層密接な取引が継続的になされるようになってきている。‘取り引き’から‘取り組み’へと言われるものである。つまり、昨今のSCM概念の進展のもとでは、物流リソースやサービスには、当該サプライチェーンにおける‘共有情報’にもとづく一定の品質やサービスレベルを実現することが何よりも重要な事項となっている。にもかかわらず、残念ながら現段階のEマーケットプレイスで取り引きされる物流サービスやリソースは、この点をクリアすることが非常に難しいと言わざるを得ないのである。よって、物流リソースのエクスチェンジ/オークションの場は、現時点では、あくまでスポット的な取り引きのための市場に限定されてしまうと考えられるだろう。 |
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| (2) クローズドな‘オープンマーケットプレイス’しか成功しない!? |
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次に、実務の世界では、物流リソースがマーケットプレイスで円滑に取り引きされるためには、‘上場’されるサービスに対する‘目利き’の機能が必要不可欠となる。一般的に物流サービスには、規格化されているものが少なく、一部の‘物流商品’を除いて、なかなかモジュール化,ユニット化しにくいというのが物流サービスの特性でもある。さらに上記でも触れたように、物流品質やサービスレベルの面では、現段階でマーケットプレイスに‘上場’される物流サービスは玉石混淆になりがちであり、‘入札’希望者としても非常に危うい橋を渡ることとなってしまう。
よって現時点では、サイトの構築者自身が目利き役を果たすとか、あるいはマーケットプレイス上の参加者が互いに相手をよく見知っているといった信頼関係を形成していることが何より重要となる。不特定多数の物流サービスやリソースがマーケットプレイスに登場すると、目利きや信頼関係の確立が非常に困難となり、取り引きが円滑になされない可能性が高くなるのである。逆説的ではあるが、現段階で成功するマーケットプレスというのは、一定要件のもと、ある程度クローズドなものにならざるを得ないと考えられるのである。 |
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| (3) 物流マーケットプレイスの成功するビジネス・システムとは!? |
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ところで、現時点で登場してきている物流リソースのマーケットプレイスには、参加する買い手や売り手が誰なのか、また、そうした参加者(あるいは参加者以外)の誰から、どのように料金・代金を徴収するのかなどの点において各々相違がある。言い換えると、マーケットプレイスの課金の仕組み自体が異なるサイトが存在し、その意味で様々なビジネス・システムが登場してきていると言える。
一方、情報の価値を収益に結びつけるモデル、すなわちインターネット等のデジタル・ネットワーク上に情報を提供する事業者のビジネスモデルには、今日いくつの分類がなされて捉えられ、物流リソースのマーケットプレイスの多くも、そうした例に漏れず、入会金や会費、売買が成立した場合の手数料、その他の広告料といったものが収益の柱となっているが、一般的な他のマーケットプレイス同様、その事業化には相当の困難が伴うことが予想される*12。とりわけ先にも触れたように、現段階で物流リソースのマーケットプレイスを存立させるためには、スポット的な取り引きに限定し、目利きの機能を設定し、さらに、ある程度クローズドな市場とするといったことがサイト事業者に求められるが、これは、いたずらに売上高を追い求めず、かつ維持管理の面で相応のコストをかけることを事業者に強いることを意味する。
サイト事業者は、最終的には、マーケットプレイスにおける情報を存在させたいと考える人々から資金を得ていくことが基本になると思われるが、物流リソースのエクスチェンジ/オークションの場が存立していくためには、(上記に見てきたような諸般の事情や特性により)一般的なマーケットプレイスより、一層厳しい制約条件が課せられていると言っても過言ではなく、今後、ビジネス・システムの確立自体が問題とされるだろう。
以上、物流リソースのエクスチェンジ/オークションの場について、少々辛口の考察となったが、本章の冒頭にも述べたように、こうしたマーケットプレイスは非常に有用なものであり、一定の条件のもとでは、存立可能なものであることには相違ないと思われる。よって、物流リソースやサービスの提供者,調達者あるいは第三者にあっては、こうしたマーケットプレイスの創出や活用は、各自のEロジスティクス戦略の中で重要な意味を有することに変りはなく、今後も注視していく価値は十分あると考えられる。 |
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| 【注】 |
| *1 |
本稿では、「情報革命」という言葉を、これらの言葉の代表として用いることとする。 |
| *2 |
エバンス=ウースター(1999)は、デコンストラクションは、「情報の経済原理とモノの経済原理との分離」と、情報の経済原理の枠内での「リッチネス/リーチというトレードオフの消滅」の、2つの要因によって生じると述べている(p.56)。 |
| *3 |
彼らの主張をベースに考えると、最近の物流業界でのサードパーティ・ロジスティクス(以下、3PLという)の隆盛などは、コンポーネントベースの企業が顧客業務を取り込む形で拡張し、専門特化型企業に近づいていく、あるいはパッケージャー(外部機能活用型企業)に展開しつつあるというように解釈してよいと思われる。また、一部のノンアセットベース3PLプロバイダの中には、エージェント(ナビゲーター)に近いポジショニングを狙っているような動きも認められる。 |
| *4 |
こうした、「情報の流れとモノの流れとを一旦分離して捉え、ロジスティクス面におけるバリューチェーンを合理化」しようとする動きこそが、いわゆる最近の「サプライチェーン・ロジスティクス」といわれる考え方の中味であると考えてよいだろう。 |
| *5 |
物理的なサービスに専念する企業、つまり物流サービスプロバイダにあっては、こうした物流戦略の新動向を踏まえ、ロジスティクスそのものに関する情報化の進展に努め、かつ顧客に対し新たな物流分野における的確なバリューを提供できるような、プロバイダとしてのEロジスティクス戦略を確立していくことが必要となるだろう。 |
| *6 |
こうした経営戦略の考え方については、伊丹敬之=加護野忠男『ゼミナール経営学入門』日本経済新聞社,1989年.や、坂下昭宣『経営学への招待』白桃書房,1992年.などに詳しい。 |
| *7 |
実務の世界では、第三者として純粋に情報のみを取り扱うビジネスを展開する企業を別として、あらゆる企業は、物流リソース,サービスの調達者と提供者という2つの立場をミックスして、自らのEロジスティクス戦略を検討する必要に迫られることになると思われる。なぜなら、自社が物流サービスやリソースの提供者として、今後の新たな物流業界の中の一プレーヤーとして事業展開していく場合においても、自社単独で全てのサービス等を提供するのではなく、業界内より必要とされるサービスやリソースを調達することが大いにあり得るからである。とくにパッケージャーなど にあってはそれが顕著である。一方、自社が顧客の立場として、新たな物流サービスを調達する立場である場合でも、全ての物流に関する業務を外注化するのでない限り、一定の物流に関する業務や機能は、依然としてインハウスで実施する、果たす可能性も残されているからである。よって、Eロジスティクス戦略は、どのような立場の企業にあっても、成長戦略と競争戦略の両方の意味を有すると考えてよいだろう。 |
| *8 |
ITとは何かについては本稿の主題ではないので詳しくは触れないが、筆者はITはツールであると同時に、(単なるツールに止まらず)新たなビジネス・システムを構築する、あるいは従来にない新しいビジネス・システムを生み出す‘ドライバー’になる場合とがあると考えている。後者の意味において、ITはビジネス・ドライバーであり、これは成長戦略としてのEロジスティクス戦略を策定する場合には、非常に重要な視点になると思われる。 |
| *9 |
http://www.jipdec.or.jp/chosa/andersen/ を参照のこと。 |
| *10 |
こうしたオークションについての考え方は、経営情報学会「ロジスティクス情報」研究部会での岡本明雄主査の発表や、メンバー各位の議論によるものである。なお、同研究部会のHPは次の通りである。http://www.ohta.is.uec.ac.jp/~hikaru/logiinf.htm |
| *11 |
「求車求貨システム」については、『流通設計』NO.363,2000年 8月号に詳しい。 |
| *12 |
インターネット等のデジタル・ネットワーク上に情報を提供する事業者のビジネスモデルは、國領二郎『オープン・アーキテクチャ戦略』ダイヤモンド社,1999年.あるいはエスター・ダイソン『未来地球からのメール』集英社,1998年.などに詳しい。 |
| 【引用・参考文献】 |
| 伊丹敬之=加護野忠男『ゼミナール経営学入門』日本経済新聞社,1989年. |
| 伊藤賢司ほか『電子商取引のすべて』NTT出版,1996年. |
| 内田和成『デコンストラクション経営革命』日本能率協会マネジメントセンター,1998年. |
| 小川孔輔『マーケティング情報革命』有斐閣,1999年. |
| 加護野忠男『<競争優位>のシステム』PHP新書,1999年. |
| 坂下昭宣『経営学への招待』白桃書房,1992年. |
| 滝沢哲夫『企業間インターネット取引所のしくみ』明日香出版社,2000年. |
| フィリップ・エバンス=トーマス・ウースター『ネット資本主義の企業戦略』ダイヤモンド社,1999年. |
| フィリップ・コトラー『コトラーの戦略的マーケティング』ダイヤモンド社,2000年. |
| 牧田俊一「物流業界−真に筋肉質な業態への転換」『The McKinsey Quarterly(日本語版)』Vol.18,1998・12. |