ロジスティクス・レビュー

第97号輸送改革の進め方 (2006年4月6日発行)

執筆者 平野 太三
有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴 昭和61年 甲南大学法学部卒業
    同年     ユーザックシステム株式会社入社
    物流担当システム営業として100社を超える物流現場分析に携わる。
    平成12年 Dr.SANTAのネーミングで物流コンサルティング(物流コスト削減、物流指標
    の作成、物流サービス向上、物流プロジェクトの運営)を開始。
    平成15年にユーザックシステム株式会社を退社後、
    有限会社SANTA物流コンサルティングを創業。
    中小企業大学校東京校 物流担当講師
    講演回数年間50回
    所属団体 日本物流学会正会員
    日本物流同友会理事
    主な論文、著作 「3ヶ月で効果が見え始める物流改善【現状把握編】」(㈱プロスパー企画)等
    包装タイムス、物流ニッポン、マテリアルフロー等で「Dr.SANTAの物流講座」の連載を
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目次

1.輸送改革の種類

  企業は無駄な物流コストを削減していかなければならないが、多くの企業はまだ物流改善が途中段階ではないだろうか。物流コストには「輸送費」「人件費」「保管費」「資材費」「情報システム費」「通信費」「消耗品費」「水道光熱費」等があるが、その中で輸送費が約半分近くを占める場合が多い。一般的には物流現場では、上司から「配送費を下げなさい」と指示された時、担当者は途方にくれるということをよく聞く。まずは運送会社を集めて、相見積りを取って安い方を選ぶ方法が浮かぶが、改善の自信が無いのである。勿論、運送会社の提案を求め、最適な輸送方法を検討するこの方法も必要である。しかし、この手法は長年ずっと続けてきており、大きな効果にはならない場合も多い。何故なら、今まで輸送改善の努力をやりつくしているからである。そのため、改善はしないといけないと感じていながらも大きな手をうてていないのが現実ではないだろうか。
  しかし、次の視点でアプローチすれば無駄な輸送費は削減出来るのである。削減手順をお話する前に、まず初めに、輸送費を今一度整理してみよう。大きく分けると、①納品輸送(配送)費、②移動輸送費、③返品輸送費、④調達輸送費、がある。(一般的には①は配送費と言われている場合が多いので、これ以降は「配送費」と呼ぶことにする。) 次に各輸送費毎に、3つのSTEPで考えてみる。「第1STEP:本当に必要な輸送か?」「第2STEP:どういう輸送手段が良いか?」「第3STEP:輸送効率はどうか?」の手順である。

2.輸送改革の目的

  企業としては、「物流コストを下げる」(今回の場合は輸送費)ことも必要であるが、お客様に対する「物流サービス」が低下すれば売上が減少する可能性もある。「物流コスト」と「物流サービス」のどちらを優先するか、そのバランスをどう調整するかは非常に難しいところである。ところが、それは輸送する商品のマーケットにより違う。価格の安さを最重視するマーケットに販売する商品であれば、商品そのものが持っている付加価値を損なうことが無ければ、どういう手段で輸送をしても構わない。その場合は輸送効率(輸送単価)を最重要視して、次にその輸送方法で顧客満足が実現できるかを比較・検証すれば良いのである。
  一方、産地直送の野菜や魚等の生鮮食品の中で、輸送費よりも納品スピードを最優先する商品もある。この場合は、商品の付加価値を最大に実現する輸送手段をまず考えて、次に輸送コストを考慮して検討すれば良いのである。更に、宝石やブランド品等の著しく高価なものは、破損や紛失が出ないことを第一優先をする。以上のことをまとめると、皆様の取り扱っている商品のマーケット・及び購入者を考えた上で、どの場所で物を作り、どの場所で保管し、どの様な方法で輸送し、購買者に届けるかを考えれば「最適な物流ネットワーク」を構築することが出来る。製造~保管~最終販売までの間に複数の会社が入ることも当然あり得るが、仮に1社として考えた場合の物流ネットワークを描くのである。

3.輸送改革の進め方【第1STEP:輸送の必要性】

  輸送改革の手順でまず「第1STEP:本当に必要な輸送か?」を考えなければならない。一番わかりやすいのは、「③返品」である。返品の理由を分析し対処方法を考えるのである。返品理由として、誤出荷による返品、不良品出荷による返品、催事による返品、シーズン修了時の返品、新製品納品時の旧製品の返品等がある。誤出荷は物流現場の問題(もしくは受注ミス)が考えられ、不良品はどの段階でチェックするかの手段を考えれば良い。的確な対策がたてられれば、返品運賃が減少することになる。催事に関しては、過去の催事返品分析をし、催事返品に関わる物流コスト(出荷返品分人件費、催事出荷返品分配送費、催事出荷返品分返品輸送費、返品処理人件費、返品棚戻し人件費)を算出し催事出荷量を今よりも数量調整すれば良い。仮に返品運賃を毎月数字で追いかけていない企業であれば、この見直しをするだけでも大きな効果が出る。数字を掴んでいなければ改善しようとする意欲が生じないからである。その他の返品(シーズン、新製品)は本当にお客様がその返品を望んでいるのか、マーケットがその返品を望んでいるのかを考えれば、大きな見直しが出来る。私は返品こそ必要悪だと考えている。返品のコストを結局はお客様に負担して頂いているのと同じであるから、その金額を納品時に安く還元して返品をなくす方がよっぽど良いと思う。営業と経営トップを交えて検討する課題だと思う。
  次に「②移動」である。移動は物流センター間移動と考えてよい。複数の物流センター(例えば東京センターと大阪センター)間の移動、ストック倉庫(過剰在庫の一次保管、及び、倉庫キャパオーバーによる一次保管倉庫)への移動、デッドストック倉庫への移動、がこれにあたる。移動の発生原因を分析すると、これも必要な移動と、不必要な移動に分けることが出来る。不必要な移動とは、物流センターへの入荷計画の判断方法を考え、会社全体の購入量が同じであってもセンターへの配分を見直せば移動を少なく出来るかを検討するのである。移動の積載率ばかり追いかけていると、本質(必要な移動かという議論)を間違えてしまう。場合によっては倉庫に保管せず、工場直送を考えた方が良い商品もあるかもしれない。
  次に「①配送」であるが、配送は得意先からの注文であるため、検討の余地が無いと考えられるかもしれないが、それは間違いである。例えば東京と大阪に物流センターを持ち、大阪物流センターに在庫が無いため東京物流センターから大阪のお客様に納品をしている場合がそれにあたる。私は「他管轄配送」と呼んでいるのだが、物流センターの在庫バランスが悪くこういう現象が発生してしまう。これも必要な他管轄配送と、不必要な他管轄配送に分かれる。管理指標を作り、毎月データを取って改善実行していくのがポイントである。
  最後に「④調達」であるが、物流センターの在庫バランスを考え、入荷調整をかける。新製品の販売の需要予測をするのは非常に難しいが、デッドストックや過剰在庫の一部減らすことはそれほど難しくない。商品計画を立てた時、どのデータをもとに、何を作ったら良いかを決める思考方法にメスを入れたら良い。全アイテムが改善することは難しいと感じるかもしれないが、1アイテムだと楽勝である。1アイテムが楽勝であれば、10アイテムだとどうか、徐々に増やしていけば良い。少し話がそれるかもしれないが、最初から売れないとわかっているが、店頭での見栄え(品揃え)をよくするための見せかけ商品が必要な場合は、小ロットで製造し、赤字で販売しても良いと思う。過剰在庫による保管費用のことを考えたり、あとで値引き販売したり、廃棄処理した時の損失金額の方がよほど大きいと思う。

4.輸送改革の進め方【第2STEP:輸送手段】

  第一STEPで必要な輸送を絞り込めば、何らかの手段で輸送しなければならない。貸切トラック便(10t、4t、2t)、路線トラック便、鉄道貨物便、船便、航空便、共同配送。色々な配送手段がある。まずは「①配送」に関して議論をしてみる。私はコンサルをしている場合、まず貸切便にメスを入れる。貸切便を使用していない顧客には、「何故、貸切便を使用しないのですか?」、貸切便を使用している顧客には「何故、貸切便を使用するのですか?」と尋ねる。要するに、貸切便と路線便の損益分岐点を知ることが必要で、何ケースの物量があれば貸切便の方がメリットがあるかを明確にするのである。2t車の場合、4t車の場合、10t車の場合をそれぞれ考えてみる。議論をしていると店着時間が必ず制約になる。ただ、店着時間は一体誰が決めたのか? 夕方の出荷繁忙時間は別にしても、それ以外の時間が何故駄目なのか考えてみたことがあるのか? お客様にメリットがなければ問題だが、現状の制約条件を変えた場合に仮に納品金額を安く出来れば、お客様にメリットがあるはずである。お客さまの入荷業者の対応の手間がかかるのであれば、入荷業者を絞れば良いかもしれない。今回は文章枠が少ないため、この程度にしておくが、同じ様な考え方で、日本中一に星の数ほどある運送業者の中で、今の運送会社を選定している理由がはっきりと明確になっていればそれで良いのである。移動、返品、調達も同じ考えでアプローチをする。
 

5.輸送改革の進め方【第3STEP:輸送効率】

  第2STEPで輸送手段を検討すれば、最後に輸送効率を考えれば良い。本当は1得意先だけで大量出荷が実現すれば良いのであるが、営業の受注が無いので・・・という話もよく聞く。共同輸送が出来ないか、共同在庫が出来ないかを考える。「④調達」も同じである。物流センターに入荷するトラックが路線業者であれば、貸切便で積載率が高く運ぶことが出来れば入荷運賃の原資を下げる(=仕入れコスト削減)ことが出来る。10t車であっても、積載率が70%であれば、もっと運ぶことが出来ないかを考える。「②移動」も同じで、長距離の移動の場合、積載率が現在満載の場合でも、重量物と軽量物をうまく混載すれば、法律に反することなく、もっと商品を運ぶことが出来る。10t車で軽量商品1台と重量商品1台の計2台で運ぶ時にうまく混載すれば1.8台で済むこともあり得る。重量商品はトラックのスペースが空いているが重量ぎりぎりで、軽量商品はトラックのスペースは目一杯詰まっているが、重量にはまだ余裕がある。自社で重量物と軽量物の組合せが無理な場合は、共同移動を考えれば良い。受注努力も必要であるが、受注が無いからといってそこで諦めてしまうと何も進まない。難しいとわかっていても、それが出来る会社と出来ない会社では大きな差が出来てしまう。難しい輸送改革であれば10の計画をして、すべて達成しなくても良いと考えるべきだと思う。10のうち3つでも成功すれば充分である。ただ、うまくいかない場合、何が原因でうまくいかないかを明確にしておく必要がある。お客様の体制転換や、IT技術の進歩により、過去出来なかったことが出来る様になることもある。パートナーの運送会社の経営努力は必要であるが、ほかにもまだまだやることは一杯ある。

以上



(C)2006 Taizo Hirano & Sakata Warehouse, Inc.


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