ロジスティクス・レビュー

第93号インターネット型データ交換(XML-EDI)(2006年2月9日発行)

執筆者 坂本 真人
財団法人 流通システム開発センター 研究開発部 上級研究員
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴 1964年2月4日 東京の下町、台東区に生まれる
    1986年 東海大学工学部 卒業
    同 年 (株)富士通ゼネラルシステムエンジニアリング 入社
         新人教育終了後 富士通(株)に特別研修生として出向
         POSシステムの開発及びフィールドサポート業務に従事
         (CVS、GMS、ファッション専門店等)
    1996年 (財)流通システム開発センターに研究員として出向
         ・流通EDI標準メッセージ“JEDICOS”開発
         ・ECR実証実験(需要予測システム等)
         ・OBN仕様開発等に従事
    2000年 (財)流通システム開発センター[http://www.dsri.jp] 入所
         ・流通標準EDIメッセージ“JEDICOS”開発
         ・流通XML-EDI標準化事業全般
         ・流通業におけるビジネスプロセスモデル標準化事業
         ・流通サプライチェーン全体最適化基盤整備/促進事業
          (次世代EDI標準の策定 など)
         ・日本GCI推進協議会事務局(XML-EDI WG担当)
          等に従事し、現在に至る。
    現在の所属及び役職 財団法人 流通システム開発センター
    研究開発部・OBN情報センター
    上級研究員

目次

1.従来型のEDIシステムからインターネット型データ交換へ

  1982年通商産業省(現:経済産業省)により流通業界の標準通信手順としてJ手順が制定された。これにより、受発注を中心とする流通VANが急速に進み、現在のEDIの基礎が構築された。J手順は、主に卸売業側の要望により、日本チェーンストア協会(JCA)内にスーパー各社と卸売業のシステム開発の代表者が集まり、当センターも協力して、スーパーと卸売業間の企業間受発注データ交換のための開発(通信手順と、受発注、請求・支払の固定長による標準フォーマット)し、80年に同協会から発表されたJCA手順を流通業全体の標準通信手順と位置付け、J手順と命名したものである。
  J手順は、今日では数10万の企業が利用しており、流通業界だけでなく、製造、運輸などさまざまな業界にも広く普及し、我が国の各産業界におけるオンラインシステムの普及に大きく貢献してきた。
  しかし、四半世紀の間に、業務システムに必要となる要素も変化を遂げ、標準フォーマットを独自に変更し使用するところが増えてきているのが現状である。また、通信技術も大きく変わり通信回線にインターネットを利用し高速回線でのデータ交換が主流となってきている。
  現在使用されているJ手順のハードウェア/ソフトウェアのなどの保守体制や機器変更時を行う際の対応機器の大幅な減少等、利用していく上で困難な状況になりつつあるのが現状である。また、漢字データや画像データの送受信も必要となっている現状から時代に合ったコンピュータ技術を有効活用し、より容易でコスト削減に繋がる新たな標準フォーマットや通信手順の制定が求められていると考えている。(図表1-1)

2.標準化の必要性

  現時点におけるコンピュータの技術標準から、通信回線はインターネット(TCP/IP網)を利用し、インターネットとコンピュータともに相性の良いXML言語で標準メッセージを定義することは無条件に選択されるものではないかと考える。
  しかし、これだけでは大きなメリットを期待することは出来ない。現在、個々の企業間やグループ企業内での情報連携は、当たり前であるが統一されており、様々な効率化の努力がされ、コストダウンが行われきた。しかし、企業間のデータ交換は、多くの企業で一般的に行われているデータ交換の受発注メッセージフォーマットは、企業ごとにバラバラである。これは、部分(企業内、企業グループ内)最適は実現されているが、サプライチェーン全体の最適化は行われていないという状況である。各企業内での効率化は、個々の企業努力により、出来うる限りの施策を実施してきたことと思われる。今後は、1対1ではなくn対nのEDIとサプライチェーン全体最適を実現することが更なるコストダウンへの最良の方法と考えている。
  この際に必要なことは、メッセージの標準化と通信手順の標準化である。J手順制定と同時に受発注フォーマットと請求・支払メッセージの標準フォーマットが定義された。しかしながら、制定後現在までの四半世紀の間、個々の業務の変化やEDI対象業務の拡大によるデータ項目の変化に対して、標準メッセージのメンテナンスが行われず、各企業が個々に独自にメッセージフォーマットを変更してきたのである。企業は相手先企業毎にフォーマット変換やコード変換のプログラムを作成し対応してきたのである。この状況を解決するためには、J手順標準フォーマットが作成された時と同じように、現時点における標準メッセージフォーマットが必要であり、その記述形式は、現時点でのコンピュータ技術標準でありインターネットや各種コンピュータとの親和性が高いと言われているXML言語により標準メッセージフォーマットを規定することが必要である。
  もうひとつが、各種データ交換メッセージを搬送する通信手順の標準化である。J手順制定前は、卸売業は多数のスーパー各社と取引を行っているため、納品先のコンピュータに合わせて、さまざまなコンピュータメーカの端末を置かなければならいという「多端末現象」である。この技術的な原因は、標準通信手順が存在せず、各社のオンラインの通信手順が細かいところで異なり、結果としてデータ交換が不可能なためであった。これに対して流通標準としてのJ手順が制定され問題が解決したように、現時点でのコンピュータ技術標準であるインターネット上での標準通信プロトコルを規定することが必要である。

3.経済産業省委託事業での試み

  経済産業省では、消費財のサプライチェーンにおいて正確・迅速な取引情報交換と情報の共有をローコストで実現できる情報基盤(共通プラットフォーム)の構築を目指して、2003年度から3ヵ年計画で「流通サプライチェーン全体最適化促進事業」(略称:流通SCM基盤整備事業)を推進している。

  当センターでは経済産業省の委託を受けて、図表1-2に示すような基盤システム(マスターデータ同期化システム、インターネット対応標準EDIシステム)の実用化に向けた調査研究及び検討・実証を行っている。

(1)マスターデータ同期化(GDS)システム
  GDS(Global Data Synchronization)は商品や企業(事業所)情報の同期化を図るシステムのである。日本の商取引の仕組み(企業関係)とは異なる米国やヨーロッパでは、商品情報の登録環境の未整備などにより、発注データのエラーも多く、物流、決済の業務上の非効率が問題となっていた。このため、商品マスター、企業マスターを、単一のメーカ、或いは卸売業が登録した情報を取引先である企業(主に小売業)との間で同期化する仕組みの必要性が高まってきた。GDSによって、2社間のマスターの整合性を確保し、企業間データ交換の効率化が期待されている。我が国においては、標準化による個別対応の削減、マスター入力の手間の削減、新商品導入のスピードアップなどの効果が期待されている。今年度は、60社を超える企業が参加して、マスターデータ同期化システムの実証実験が行われており、2006年3月末には、実験結果が纏められる予定である。

(2)次世代EDI標準化作業の概要
  今年度は、日本チェーンストア協会と日本スーパーマーケット協会の合同WGとして、次世代のEDI標準化に向けた小売業による取り組みが本格的に始動した。
  次世代EDIとしてのIT基盤として、通信インフラ部分は、インターネット(TCP/IP網)で、通信手順についてはebXNL MSやAS2等のデファクトスタンダードを採用し、データ表現形式は、インターネットやオープン系のコンピュータ共に相性が良いと言われているXMLで記述することを前提として、使用するデータ項目やコードについて検討を行っています。検討作業は、EDIの基本形を検討する全体分科会と、特性のある商材への対応を検討する個別分科会で作業を行っております。全体分科会の対象商品群は、スーパーマーケットなどで主に取り扱われているグロサリー(加工食品とか日用品)です。個別分科会の対象商材は、今年度は生鮮の青果について検討しています。現在、殆どの企業では、発注形態等が異なる両商材に関しては異なるEDIシステムを構築し運用されています。今後は基本部分は共通化して、商材特有の部分だけ対応を取り、効率的なシステム運用を行なえるような標準化を検討しています(図表1-3)。

 また、次世代の大きなキーワードとして、伝票レスによる運用も同時に検討しています。

4.今後の方向性

  現在、我が国におけるインターネットEDIというとWeb画面しインターネット回線を使いWEB画面からデータを入出力する仕組みが主流でありますが、これは個々の企業ごとに仕組みが異なっていたり、自社システムとの連携が出来ず、人手によって取得した情報を再入力したりと言った非効率的な対応を強いられる場合も少なくありません。今後は、従来のバッチ形式のEDIを現在一般的に使用しているIT技術を有効利用し、ハード/ソフトともに、機能の拡張性があり、維持メンテしやすい環境でEDIシステムを構築することが望まれています。携帯電話やPDA、無線タグなどの機器などを有効活用し、より効率的な仕組みの実現が期待されています。これらを実現するためにも、基盤となる部分の標準化は必須条件であり、商材による特異性、業種・業態による独自性を最小限にとどめ、共通基盤を多くの人が活用可能とすることが重要です。また、標準は一度決めたら永久に変わらないのではなく、様々な変化に柔軟に対応し常に変化するものであること認識していただきたい。
  次世代EDIとしてインターネットEDIを広く普及し、サプライチェーン全体最適化を実現させ様々な部分でのコスト削減により、本来の競争部分である顧客へのサービス提供の充実が期待されます。

以上



(C)2006 Masato Sakamoto & Sakata Warehouse, Inc.


このページのトップへ戻る