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3PL

第92号今一度Third Party Logistics(3PL)について考える(2006年1月26日発行)

執筆者 中谷 祐治
双日ロジスティクス株式会社 営業本部営業開発部 担当部長
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • センコー株式会社にて、業務改善、事業改善、各種コンサルティングなどを担当
    • コンサルティング系サードパーティロジスティクス会社にて、ロジスティクス再構築
      プロジェクトなどのコンサルティングを担当
    • 双日ロジスティクス株式会社にて、大手鉄鋼商社、外食チェーンのコンサルティング、
      輸送/物流センター業務の企画提案/運用管理などを担当
    主な資格
    • 物流士
    • 第2種情報処理技術者
    • 初級システムアドミニストレーター
    寄稿/講演など
    • 日経産業新聞、輸送経済新聞などへの寄稿
    • 日本ロジスティクスシステム協会での講演/講師
    • 米国ロジスティクス学会東京支部にての講演等

目次

1.はじめに

  3PLは日本の物流関係者をはじめとして、よく使われる言葉となったと感じる。しかし、残念ながら「はやりことば」としてや「営業のためのことば」として使われている場合も多い。また、その捉え方があいまいなため、本来目指すべきレベルの議論まで発展していないこともあると感じる。筆者は約10年の間3PLを追いかけ、その真っ只中に身を置いてきた。その中から、「3PL」は物流に関係する者がキーワードとして、より高いレベルを目指すために使うべき言葉と考えている。3PLについてできるだけポイントを絞って今一度考えることで、3PLの進展の一助となれば幸いである。

2.3PLの歴史

  欧米での3PLは、日本より古く1990年頃には多くの企業が設立され、市民権を得た言葉となっていた。一方、日本では、以前より物流業務を物流事業者や物流子会社に委託するなど、アウトソーシングはいろいろな形で行われていた。その委託を受けた物流事業者は、荷主に代わりきめの細かい多頻度小口配送を行ったり、荷主の元請として複数の物流事業者を束ねたりする機能を発揮する事業者も存在していた。
このような状況下において、日本にも1996年頃から3PLブームと呼ぶべき時代が到来した。1997年に閣議決定された物流総合施策大綱にも3PLは登場し、「荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」と定義づけられている。この頃から、3PLを営業上の差別化点としてアピールする物流企業が出始めるとともに他の業態からも多くの3PL企業と自らを称する企業が登場し、言葉として「3PL」は一般的となったのだ。

3.3PLの本質

●キーワード
  3PLの本質を考えるキーワードは、「ロジスティクス業務」「荷主の立場」「パートナー」である。

●ロジスティクス業務
  3PLの「L」はロジスティクスの「L」である。よって3PLは、ロジスティクス業務を対象としていることが基本である。物流業務だけなら3PPD(Third Party Physical Distribution)でもよいのではないだろうか?
  日本では「物流=ロジスティクス」という間違った理解もまだまだあり、物流会社が自社の営業上のイメージから「○○ロジスティクス」に社名を変更するようなことが行われてきているため、さらにあいまいとなっているのである。物流はあくまでも輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報の各機能を組み合わせて提供するひとつのシステムであり、ロジスティクスはさらに、生産、販売との最適な形を追及するところまで範囲を広げており、その違いは明確である。つまり、従来型の物流事業者より、扱う範囲が広いのが3PLだ。

●荷主の立場
  従来の荷主と物流事業者の立場は、いわゆる上下関係である。荷主が範囲を定め、その中で最適な物流サービスを提供することが物流事業者に求められることである。よって物流事業者に提案を依頼した場合、不明な条件があると条件提示を求めてはこなかったであろうか?
  しかしながら、荷主と3PLの関係は上下ではなく、パートナーなのであり、その視点は荷主の立場である。この視点が欠如した議論が見受けられことがより3PLを複雑なものとしている。
  元請物流事業者が3PLであるという考え方もあるが、多くの場合物流事業者は荷主に積極的に改善提案はしない。これは自社の売上/利益の減少に直結するため、少なくとも現場を預かる責任者は自分で自分が不利になるようなことはできないのである。また、物流体制変更などの場合においても自社の設備の生産性が低い場合、どうしてもそこに誘導したくなるものであり、それが文化である。
  つまり、従来型の物流事業者とは異なり、荷主の立場から改革/改善/効率化を進め、最適なロジスティクス体制を維持するのが3PLだ。

●パートナー
  荷主と3PLはパートナーであることはすでに述べた。これは単に上下関係でないことだけを意味するのではなくメリットもリスクもシェアする関係のことである。
  従来、荷主が腰の重い物流事業者に改善を迫り効率化を進めた場合、多くの場合その成果は荷主が享受してきた。逆にリスクはできるだけ物流事業者に押し付けてきたが、実はそのコストは物流委託料金の中に含まれる形で荷主が負担していることとなり、その損得勘定は一層と見えないものとなっている。
  一方、3PLはパートナーであり、そのメリットもリスクも見える形で共有化していくことが理想である。
  荷主側が3PL事業者を「3PL業者」と呼んでいれば、その関係がパートナーかどうかは一目瞭然だ。

4.3PLの現状と課題

●3PLの現状
  日本においても3PLは注目されている。それは企業間競争が激しく、コストダウンが至上命題の現在、今までにない形でコスト削減を期待させるからである。しかし、ロジスティクス面での先進企業は社内にそのような組織を持ち、成果をあげているため、3PL活用の必要性は低い。本当に3PLを必要とするのは、それらの企業まで体制を整えることができていない企業である。
  その3PL業務のマーケットに物流会社をはじめとし、コンサルティング会社、ソフトウェア会社、マテハン機器会社などいろいろな業種から参入があるが、本当に3PL業務と呼べるものは少なく、3PL業務を担当できる3PL事業者も少数ないのが現状だ。

●荷主側の課題
  3PLを必要とする荷主は、すでに高度化されたロジスティクスを構築している物流面での先進企業ではなく、主に中堅企業が中心と考えられる。たとえば、自家物流から営業物流へ、独自物流から共同物流へ、国内物流から国際一貫物流へ、商物一体から分離へ、個別直送物流からセンター一括物流へなど、体制を変えていきたいときに3PLを活用することが有効である。
  しかしながら、3PLを活用していく上でいろいろな課題がある。その大きな原因は、3PLがまだ浸透していないことや誤解されていることである。
  よって、ロジスティクス改革は経営課題であり、その課題解決の一方策として3PL活用が有効であることについて、経営者層へ啓蒙活動がまず必要である。
  荷主側の最大の課題はいままでの荷主文化にあり、3PL時代にはその変革が必要だ。

●3PL事業者側の課題
  3PL事業者は荷主側がパートナーとして認めるに値する実力が必要で、そのためにはまず多彩な業務内容に対応できる人材が必要である。すでに国土交通省をはじめとして人材育成が進められており、これをもとに幅広い物流の知識をつけて提案型元請物流事業者としての役割を志向することはできる。しかしながら、戦略コンサルタント、商流面やファイナンスのわかる人材なども当然必要であり、さらにいろいろな観点の違いを理解し、コーディネイトする人材も必要である。たとえば、戦略コンサルタントの支援により今後取るべき戦略が決まったとしても、そのままでは実行に移せない。戦略を決める考え方と実行計画を作る考え方を理解し、そのプロジェクトが開始したときから戦略決定、実行計画策定をスムーズに進められる人材も必要なのである。
  3PL事業者側の最大の課題は人材であり、現在の希少な人材を活用して、育成することが急務だ

5.今後期待すること

  本来経営そのものといっても過言でないロジスティクスが日本の企業の多くではまだまだ注目度が低く、地位も低いのが実態である。3PLについても、今の言葉の使われ方を見ているとこのままではその言葉の本質を理解せずに流行り言葉で終わってしまうのではないかと危惧している。
  ここまで述べてきた3PLに対する考え方は、よく使われている3PLより狭義で理想形かもしれないが、これも一つの考え方として3PLの本質についての議論を進めるべきである。
  そして、各省庁と一体となり、人材、資金、契約、3PL事業者評価、サービスの商品規格基準作りをはじめとしたロジスティクス関連の各種方策が実行されることが必要である。
  その結果として、物流/ロジスティクス業界の地位が向上することが、各企業の経営効率化につながることである。
  その大切なキーワードが「3PL」だ。

以上

(参考文献)
国土交通省 日本における3PLビジネスの育成に関する調査(2004年3月)



(C)2006 Yuji Nakatani & Sakata Warehouse, Inc.

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