ロジスティクス・レビュー

第85号輸配送コスト管理システム構築のポイントついて(2005年10月6日発行)

執筆者 吉井 宏治
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼
  • 略歴
    • 1989年 サカタ産業株式会社入社、工場内物流管理業務を担当。
    • 1990年 サカタウエアハウス株式会社(大阪本部)に異動。
              情報サービス部門に配属。
    • 1991年 鐘紡(現・カネボウ)株式会社 情報統括室コンピュータ部に1年間出向。
    • 1995年 サカタウエアハウス株式会社(門真営業所)に異動。
              アパレル物流管理業務を担当。
    • 1998年 株式会社サカタロジックスに異動。
    • 物流改善,物流情報システム構築,物流ABC導入,
       物流アウトソーシング等の提案営業およびコンサルティングなどを担当。
       現在に至る。
       株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    主な資格
    • 物流技術管理士
    • 第2種情報処理技術者
    • 倉庫管理主任者

目次

1.はじめに

  アンケート調査による統計によると物流コストの中で約58%を輸送費が占める。*1 弊社におけるシステム構築及びコンサルティングの実施経験より、配車支援システムや運送便を確定する仕組みを運送送り状や荷札ラベルの発行と連動して、何らかの仕組みを構築している企業は多いと思われるが、輸配送コスト管理の領域までシステム化し管理している企業は少ないと思われる。
  しかしながら最近、輸配送コスト管理に対する関心および輸配送コスト管理システム導入ニーズが高まってきている。本稿では輸配送コスト管理システム構築のポイントについて、弊社のソリューションおよびシステム構築経験をふまえながら紹介する。

2.輸配送コスト管理システムの導入目的

  輸配送コスト管理システムの導入目的として次のような点があげられる。

(1) 輸配送コストのチェック、管理
・自社で運賃計算を行い、運賃チェックおよび請求処理に使用したい。
・日単位で輸配送コストを計算し、基幹系システムと連動し管理したい。
(2) 配車支援システム、配送計画システムとリンクした運送計画作り
・複数の輸配送手段が選択可能な場合、納品リードタイムを満たし運賃が最も
 低い運送手段を選択したい。
・配送エリア毎に最適な運送会社を設定し、配送計画システムとリンクし日々の
 配送業務に適用したい。
(3) 管理会計システムとリンクしたコスト管理
・輸配送コストを社内の部門別・商品群別に振り分けて、コスト管理したい。
・営業部門へ売り上げに対する輸配送コストを日々伝達し、共有したい。
・管理会計システムと連動して輸配送コストを分析し、意志決定支援情報の一つ
 として活用したい。

3.弊社における輸配送コスト管理システムに関するソリューション

  弊社では、次の2つの輸配送コスト管理システムに関するソリューションを提供している。

(1) 「運賃シミュレーションシステム」
  ストラテジー&プランニングシステム*2、いわゆるロジスティクス戦略計画のひとつである、輸配送計画立案のための意志決定支援ツールとして、導入目的(2) 配車支援システム、配送計画システムとリンクした運送計画作りを支援している。具体的には、過去の一定期間の出荷データ(1ヶ月~6ヶ月程度)、運送会社の運賃タリフおよび納品リードタイム、納品先毎のリードタイムに関する要求レベル等のデータをもとに、条件を満たす最適な運送会社を選択し、運送計画マスターに登録し、日々の出荷システムに反映させる等の分析サービスおよびシステム構築サービスを実施している。システムの詳細については弊社ホームページ上のシステム案内(http://www.sakata.co.jp/jp/sys/sys-2/)を参照いただきたい。

(2) WMSや管理会計システムと連動した「輸配送コスト管理システム」の構築
  プロセシング&オペレーションシステム*2、いわゆる輸配送管理システムの中の輸配送コスト管理システムの構築例について紹介する。
  配車支援システムおよびWMS(倉庫管理システム)により確定した、実績データにもとづき、日々の運賃計算、日々の運賃の確認、部門別・商品群別の輸配送コストの振り分け、月次輸配送コスト請求データの作成を行う。
  輸配送コスト管理システムのイメージ図を以下に記載する。

(3) 輸配送コスト管理システム導入の効果

 輸配送コスト管理システムの導入効果として、次のような点があげられる。
 ・従来の輸配送会社各社からの請求書を集計し、月単位でコストを配分する方式
  に比べて、日単位で輸配送コスト管理が可能となる。
 ・営業部門に、受注1件単位で輸配送コストが提示できるようになる。
 ・新規事業の開始をする前に、輸配送コストシミュレーションができるようにな
  る。
 ・運賃請求チェック業務の自動化により、人件費の削減、および請求ミスの防止
  が可能となる。
 ・自社で運賃計算を実施することにより、輸配送コストのコストコントロールが
  可能となる。

(4)輸配送コスト管理システムを構築する上での検討事項

 輸配送コスト管理システムを構築する上での検討事項の例について次に述べる。

運賃の確定
・運賃契約内容が明確に管理できていない。
・イレギュラーな出荷対応が多く、運賃が翌日以降確定する。
・自社の複数の商品を担当者の判断で混載して出荷しており、コストを振り
 分ける上での混載比率等のデータが残っていない。
・過去の運賃交渉により、複数の運賃計算方法の組み合わせ、値引き等により
 複雑な運賃体系となっており、既存の運賃計算システムへ登録時、システム
 の変更が必要である。
システム運用上の留意点
・納品先のマスター上の、距離計算に必要な郵便番号、全国地方公共団体
 コード*3が未整備なため、新規納品先が発生都度、手動による設定が必要
 である。
・運送会社により、運送距離程が異なり、新規取引運送会社が発生都度、
 データの取り寄せと登録が必要である。
・納品リードタイムと運賃から最適運送会社を選択し、輸配送体制の見直しを
 行う場合、変更当初は何らかのクレームが発生する。配送品質の評価につい
 てはシステムによる予測が困難なため、個別に対応を検討し、時間をかけて
 ベストな輸配送システムを構築していく必要がある。

(5) 輸配送コスト管理システム導入のポイント

運送手段の決め方
運賃を構成する構成する要素として、(イ)出荷ロット(個口数または重量)、
(ロ)運送距離があり、サービスレベルを構成する要素として、(ハ)納品リード
タイム がある。
これらをもとに最適な輸配送手段をシミュレーションすると、同じ都道府県の
納品先でも出荷ロットにより最適運送会社が異なり、運送会社の登録、管理が
複雑になり、運賃以外のコスト増につながる。
このため、出荷エリアに対する出荷ロットの傾向および運賃の傾向から、ある
程度エリア別に運送会社を固定することが望ましいと思われる。
システム化の範囲と運用方法
緊急出荷等の例外時の運賃処理までシステム化すると、計算方法の設定が複雑
になり、運賃確定のタイミングが例外運賃のために遅れることとなる。
これを避けるために、例外運賃はまとめて金額のみ入力し、請求締め日までに
確定する等の運用による柔軟な対応が必要と思われる。
契約運賃体系の整理
現在の運賃契約形態をそのままシステム化することは、多数の取引運送会社が
あり、かつ取引先毎に異なる運賃体系を保有する場合、システム開発費、メン
テナンス費が増加することになる。
まず既存の運賃契約形態をできるだけ単純化、整理し、その後システム化する
ことが望ましい。
また、運送会社の見直しを実施するのであれば、輸配送システムの再構築に向
けたコンサルティングを外部の実績のある企業に依頼することも必要ではない
かと思われる。

(6)輸配送コスト管理システムを導入する上での今後の課題
  品質/サービスレベルとコストは相反するものであり、品質/サービスレベル
  をあげるために、一定の輸送ボリュームのなかで複数の運送会社により、輸配
  送業務を細分化すればするほど、物流コストは上昇する。運賃コストが低下し
  ても、荷役、事務処理、情報システムにかかるコストが増加するのである。
  また、緊急出荷等の納品の場合を除いて、通常、同じ納品先へ日々異なる運送
  会社により納品をすることは、配達時間の違いや納品時の細かなサービス等が
  変更になることから、避ける場合が多い。
  これらの数値として把握しにくい輸配送サービスを考慮した上で、最初から完
  璧な輸配送コスト管理システムを構築することは困難であり、物流センターに
  おける輸配送品質向上に向けた改善活動の取り組みの一環として段階的にシス
  テムに組み込み、導入していくことが望まれる。

4.今後の輸配送コスト管理システムのあるべき姿

  3で述べた「プロセシング&オペレーションシステム」による輸配送管理と「ストラテジー&プランニングシステム」によるコストシミュレーション、および「ネットワーキングシステム」によるコスト情報共有により、サプライチェーンに関連する企業が一体となり、常にコスト、品質、物流生産性の最適なバランスを目指してPDCAサイクルの仕組みのなかで輸配送コスト管理システムを構築していくことが、今後のあるべきシステムの形であると考える。
  このようなPDCAサイクルにより、顧客、営業部門、物流部門間の情報共有と、納品先の輸配送ニーズ、コストおよび物流生産性とのバランスを考慮した、継続的な輸配送コストの管理、輸配送コスト管理指標の作成による輸配送管理システムの構築が可能となる。

5.おわりに

  商品サイクルの短期化や在庫リスクの軽減のために、企業のコスト管理の迅速化、意志決定のスピード化が求められており、情報システムのインフラとしてのERPの導入や、Webシステムの普及が進む中で、製造コストなどに比べて管理方法が曖昧であった物流コスト、とりわけ輸配送コストの迅速な把握が必要であると考える。
  また昨今ではERPによる管理会計を実施していく上で、事業別予算管理、顧客セグメント別損益管理、利益計画作成に向けた、迅速かつ正確な輸配送コスト管理へのニーズがますます増加すると思われる。
  弊社では企業(メーカー、物流子会社、卸、小売りなど)の皆様の、業種・業態別の様々な商習慣にもとづく輸配送コスト管理システムの構築、導入支援の実績をベースに、輪配送コスト管理のソリューションを提供していきたいと考える。
  本稿が企業の皆様の輸配送コスト管理システム構築の参考になれば幸いである。

以上

【註】

*1. 社団法人日本ロジスティックスシステム協会「2004年度物流コスト調査報告書」よる、アンケート調査企業の平均値。
*2. 社団法人日本ロジスティックスシステム協会作成「物流情報システム体系図」の分類を参照。
*3. 総務省が国勢調査等に用いるJIS(日本工業規格)に指定されている都道府県・市区町村・その他を識別する、6桁のコード番号。上2桁は都道府県を表し、下1桁にはチェックディジットを含む。



(C)2005 Kouji Yoshii & Sakata Warehouse, Inc.


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