ロジスティクス・レビュー

第83号サプライチェーンのRFID実験コラボレーション――ドイツ・メトロRFID実験報告から――(2005年9月8日発行)

執筆者 鈴木 準
有限会社サン物流開発 代表取締役社長
    執筆者略歴 ▼

  • 学歴
    • 東京経済大学商学部卒業。
    • 産業能率短期大学生産管理科卒業。
    • 日本電子専門学校電子計算機科卒業。
    職歴
    • セーラー万年筆(株)経営企画室主任。
    • (株)長崎屋 物流部・電算部部長・システム本部副本部長。
    • (株)サン商品センター代表取締役社長。
    • (有)サン物流開発代表取締役。
    • 現在に至る
    講師
    • 専修大学講師・早稲田大学講師及び
    • 早稲田大学アジア太平洋研究センター講師経験
    • JILS 物流現地フォーラムコーディネーター
    • 日経ビジネススクール講師
    • 文化ファッションビジネススクール講師
    • 中小企業事業団登録専門指導員経験。
    資格・所属団体等
    • 物流管理士
    • 販売士1級
    • 日本物流学会会員
    • 国際物流管理士
    その他
    • 海外物流視察70回
    • 内外合わせて1,000施設視察
    連絡先
    • 事務所 〒135-0033東京都江東区深川1-1-2-701
                TEL.03-3642-3762
    • 住 所 〒274-0822千葉県船橋市飯山満町3-1761-105
                TEL.047-467-1077
    • メール BZN00530@nifty.com


  2004年6月及び2005年6月に、ヨーロッパの物流と情報システムを視察した。特にヨーロッパの流通業におけるRFIDの現況を知るため、ドイツMETRO(Future Store ,Innovation center)、イギリスTESCO、Marks & Spencer(日配品)の店舗と物流センターを訪問し、RFID実験の現場を視察し、レクチャーを受けた。このレポートは主としてドイツの流通業メトロ社の物流と店舗に於ける実験の報告である。
  小売業のサプライチェーンにおいてRFID(無線自動認識)の利用は、商品がメーカーから卸売業者,小売業者、そして、消費者までのサプライチェーンにおいて多くの改革、効率化の可能性を有している。生産と販売の協働、情報の共有により、品切れを防止し、無駄な在庫を減少し、流通コストの低減が可能であると見込まれている。RFIDはICタグに情報を書き込み、RFIDタグが発信する電波又は磁気を読み取ることにより、瞬時に大量の情報を得ることができるので、現在のバーコードの欠陥を補うものと云われている。 RFIDはバーコードのようにスキャナーをシンボルに接近する必要がなく、無線で電波を照射するだけで多くの固体の情報を自動的に読み込むことが出来る。例えばRFIDのスキャナーを荷受場の入り口に置くだけで、そこを通過する入荷商品の情報を瞬時に取ることが出来る。しかし、金属、水分、タグの重なりやリーダーとの角度が障害になると言われている。
  ドイツでは、METRO GroupのスーパーマーケットExtraが Future Storeと称してRFIDの実用実検をしている。RFIDのICタグをパレット、ケース、そして単品の商品に取り付け、工場の製造ラインからお客様までのサプライチェーンで実用化の実験をした。 Future Store での実験は限られたスケールであるが、複数のメーカーとのかかわり合い、倉庫、配送センター、バックルーム、および陳列棚などで、RFIDの使用がどのようなインフラストラクチャを必要とし、どのような影響を与えるか等、最も包括的な情報をサプライチェーンの各ノードに提供しようとするものである。
  メトロのRFID実験はRetail Forward、M-研究室、IBM, SAP, Intel、Siemensと日用品のGillet,及び食品メーカー2社による共同研究である。店内、バックルームでの在庫認知や物流作業における生産性の向上等を調査研究し、RFIDが小売業に効果をもたらすことを確認した。在庫の実態が目に見えるように分かることから在庫最小・売上の機会損失最小の極限に迫ることが可能となり、サプライチェーンに利益をもたらす。また、物流センター内での実験ではフォークリフトがパレットを掬う時間まで分かり、生産性向上のポイントが判明した。なお、これと同様のシステムを数年前に実施した日本の企業がある。それは松下物流(現松下ロジスティクス株式会社)と富士ロジテック株式会社である。
  メトロの報告書では、パレットレベルとケースレベルでRFIDを使用するための過程と利益モデルが詳細に説明されており、サプライチェーンのRFID導入可否の判断に、最新、最高の情報である。
  サプライチェーンにおけるRFIDのメリットは次の通りである。

(1) 店舗と物流センターの作業の自動化により省力化が可能となり、利益を増大
する。リードタイムの短縮により在庫回転が向上し、利益が増加する。
(2) 先入れ、先出し、賞味期限の管理、返品、リコールの管理ができる。
店、バックルームの在庫が保管場所別にリアルタイムに見られ、店内の欠品を無く
し、発注を正確にするので、売上の機会損失を無くし利益増になる。
(3) 検品、検収など入出荷作業の省力化によるコストダウン
(4) ピッキング精度の向上と生産性の向上
(5) トレサビリティによる顧客の信頼確保
(6) センサー付きICタグによる商品の品質保証
(7) 減耗(万引き・盗難・事故)の減少

  ここでシュリンケージ(万引き)について述べておく。RFID導入の理由に万引きや従業員による盗難が上げられているが、欧米については2桁のパーセントと云われているが、かなりオーバーではないかと思う。米国におけるシュリンケージについてはフロリダ大学が1991年より調査を行っており、2002年には22の異なる小売市場からなる118社の小売業者からアンケート調査を行っている。これによると、2002年は1.7%である。イギリスでは1.6%前後でアメリカと変わらない。日本では業種によって異なるが1~2.5%である。日本の小売業の経常利益率は2~3%だからばかにならない金額である。現在高額品には万引き防止の磁気タグが付けられ、効果を上げているが、平均単価300円のスーパーマーケットの商品にICタグをつけたら万引きより高くつく。(ABC Magazine) 

★RFIDの実験に参加した企業の概要

  物流で実験に参加したのは、国際的な食品メーカー2社である。社名は仮名とするが1社はFoods Manufacturers Ltd(FM)である。同社は年間売上高が200億EUR(約3兆円)で、製造商品は200種類あり、その工場の大部分は中央ヨーロッパにある。それらの工場で作られた商品は欧州諸国の300箇所に送られている。1年間で扱うパレット数は30万枚になる。もう1社はGlobal Foods Inc(GF)で、世界中で知らぬものはい有名メーカーである。年間生産量は約5万トン。工場に隣接して物流センターがあり、75%はフルパレット(1パレット1アイテム)で輸出され、25%はEC域内に出荷されるがその50%はミックスパレット(混載)である。
  小売業はRetail International Corp.(RI)社で、20カ国で事業を展開する国際的小売業者である。(METRO)同社では食品を中心に日用品を主力としているが、家電をも扱っている。実験の対象は中型規模のスーパーマーケットである。このスーパーマーケットの商品の80%は同社の物流センターから供給される。残りの20%は温度帯別など、商品特性別専用センターから配送される。物流センターからの商品供給は週3回、ヨーロッパスタンダードの1200×800のパレットを使っている。RI社のドライグロサリー物流センターからの年間総出荷量は33万パレットである。

○パレットレベルの実験

パレットにRFIDタグを付けてサプライチェーンで使用するにはいくつかの方法がある。この共同実験では、パレットのRFIDタグにElectronic Product Code(EPC)を使用した。EPCは従来のEANの欠点を補うもで、データー量の多さとシリアルナンバーが特徴である。ユニークコードとEPCによるRFIDタグを使うことにより、流通過程でのパレットの識別やトレサビリティが出来る。現在パレットにバーコードで使用されているSSCC番号は直接RFIDタグに移し、二つのコードを使うことも出来る。

    パレット用RFタグラベル


― 食品メーカーのトラックへの積み込み ―

[現 状]
  フルパレット(単一品種)及び、ミックスパレット(複数品種混載)の荷揃えが出来たら、フォークリフトドライバーがパレットを出荷ヤードに運ぶ。物流センターの出荷係がパレットに貼られた出荷ラベル(荷札)のバーコードをハンディスキャナーでスキャンする。トラック・ドライバーがパレットをトラックに積み込む。現状はバーコードをスキャンしたとは言え、人手であり、間違いもある。輸送はサードパーティ・ロジスティクス・プロバイダー(3PL・運送会社)に委託している。

[RFID]
  パレットにRFIDタグをつけることにより、トラックに積む時に自動的にパレットを識別し、その結果を音や光で人に知らせる。パレットレベルのRFlDは、人手による出荷チェックを省略できるので倉庫人員を減少することが出来る。イギリスのM&S社では日配品をトラックに積むとき、積み込み口にリーダーを設置し、プラスチックコンテナに付けられたRFIDタグを読ませる。しかし、この場合、ノーリードのコンテナは分からない。この食品メーカーから1日に倉庫を出るトラックは15台。RFIDによりトラック1台に1回10分を節約することができる。1年間の営業日数は250日、1時間の賃金は25EUR、1年で16,000EUR(約200万円)が節約できる。これは1パレット20セント(EUR)の節約になる。(図―1)M&S社の投資回収は7年と聞いている。
  しかし、フルパレットの場合は、パレットレベルのRFIDタグで機能するが、ミックスパレットになると、パレット上のケースを全て読まなければならないので問題がある。この報告書でも触れているがRFIDタグの読取りは水と金属に弱いからである。改善効果を確実にするにはタグの読取を100%にしなければならない。現在のところ、読取率100%の確信はない。出荷業務の合理化は人員整理に結びつく。ドイツは労働組合が強く、労務管理の難しい国だが、共同研究の食品メーカーの出荷業務は3PLに委託しているから問題がないそうだが、社員を意識したブリーフでは、会社の目的は人員整理ではないと強調している。但し、3PLにも配慮すべきだと書いてある。

ゲート式RFタグリーダー


―小売業RI社物流センターの荷受け業務―

[現 状]
  トラックが物流センターに到着すると、パレットはトラックから降ろされる。すべての配送が納品書、注文書、現物が作業者によってチェックされる。加えてダメージ等の品質もチェックする。現在RI社では食品メーカーからASN(事前入荷情報)は得ていない。検品が終わったパレットには、IDのバーコード、納品書コード、納入者コード、1ケースの入り数、ケース数、保管場所、荷受け日時などが印刷された荷受けラベルが貼られる。庫内に格納する時はこのバーコードをスキャンし、コンピュータに送信すると保管ロケーションがフォークリフトの車載端末に通知される。

[RFID]
  RI社の物流センターでは、倉庫の入り口にRFIDタグのリーダーを付ける。荷受したパレットをフォークリフトで掬い、庫内に運ぶと、その過程でRFIDタグが読み取られ検品を終わる。RFIDタグからの発信により、コンピュータはフォークリフトにそのパレットの保管ロケーションを通知する。ピッキングする商品のパレットが何処にあるか特定することが出来る。しかし、RFIDはヒューマンリーダブルではないのでメーカーが出荷の時に貼付している荷札のラベルは従来通り小売のRI社で必要としている。
 RI社では、出荷の時、パレットをピッキングし、バーコードの印刷されたピッキングラベル(荷札)をパレットに貼る。この作業は1パレット10秒、1日の取扱パレットは1,300枚、1時間の賃金20EURで計算すると、物流センターでは年間18,000EURのコストダウンになる。1パレットあたりは5.6セント(EUR)である。なお、荷受けラベルのコストは1枚2セント(EUR)である。このラベルを廃止すると年間6,500EURのコストダウンになる。この効果からRI社はRFIDの採用する方向であるが、解決しなければならないいくつかの問題がある。まず、第一に100%に近い読取率が必要である。また、読まれた信号が担当の作業者に分かるようにしなければならない。また、現在、使っているラベルに印刷されている情報を作業者が必要としているということ。しかしこのラベルを継続するとコストダウン効果が減少する。また、全てのメーカーが一斉にRFIDを採用するわけではないので、新旧二つのシステムが共存し、RFIDの効果を相殺することが問題である。

―小売業RI社の入庫作業―

[現 状]
  RI社物流センターでは、通常、入荷したパレットはフォークリフトによって庫内に運ばれ、ピッキングスロットの近くの上段の棚にフリーロケーションで格納される。また、ピッキングする商品は下段(床上)の固定ロケーションに置かれる。
  1フォークリフトドライバーは、パレットを庫内に格納するために、荷受け場でパレットに貼られた入荷ラベルのバーコードをスキャンする。この情報はホストコンピュータに送られ、コンピュータはフォークリフトの車載端末に保管ロケーションを通知する。フォークリフトドライバーはパレットを格納する時に、パレットが正しく格納されたことを確認するために棚のアドレスのバーコードをハンディスキャナーで読み取る。

[RFID]
  荷受け場ではフォークリフト・ドライバーが入荷パレットの一つに接近すると、そのパレットのRFIDタグの情報が読み取られ、コンピュータに送られ、コンピュータからフォークリフトの車載端末に格納場所が指示される。フォークリフトが指定の格納場所にパレットを置くと、その位置が正しいかどうかRFIDタグの発信情報により確認する。この場合、棚とフォークリフトの両方にスキャナー(リーダー)があると、正確さが増し、作業時間時間も短縮される。
  RFIDの採用により、手でバーコードをスキャンする作業をなくすことができる。これにより、バーコードに比較して作業時間が1パレットに付き、5秒節約できると見積っている。1日に1,300枚のパレットが扱われているので、年間18,000EURのコストダウンになる。これは1パレット5.6セント(EUR)である。また、フォークリフトの台数が減少するのでこのコストダウンも経済的効果として算入されるべきである。入出荷の工程で、パレットやロケーションが正しいかどうかは信号を出すことで確認できるようにする必要がある。また、読取できない場合の対策としてラベルをパレットに貼ることも考えなければならないがこれはRFID導入の効果を減衰させる。しかし、RFIDタグの読取りが良くなければならないが、読み取り範囲が広いと読むべきでないRFIDタグが読まれてしまう問題もある。

―小売業RI社の出荷作業―

  出荷バースでパレットの列が近接していると、誤読の恐れがある。このとき出荷のミスが発生する。パレットにRFIDタグが付いていればで、個別のバーコードを付ける必要は全くないはずだが、人の目で見える情報がない。RFIDタグが読めない場合、パレットを特定するのは難しくなり、これが問題を起こすかもしれないので、会社は安全対策としてバーコードラベルを使うかも知れない。

[現 状]
  食品メーカーFM社の倉庫では正確な出荷のために出荷のパレットに貼られた荷札のバーコードをスキャンしている。小売業のRI 社も同様である。なお、店への配送の60~70%は3PLである。RFIDを導入してもバーコードとラベルはやめられないようである。実際にバーコードを併用している例を目にしている。

[RFID]
  ピッキングの終わったパレットが出荷バースのトラックに近づくと、パレットの RFIDタグが読み取られ、チェックされ、これで、トラックに積み込まれる。トラックの荷台の入り口にリーダーを置くと良いが投資が多くなる。ケースレベルの場合、コンベアーを使ってケースを1個づつトラックに積み込むと、ノーリードのケースが確定できるが、ユニットロードにならないので積み込みコストが上がりRFIDの効果を減少する。 1日に1,300パレットを取り扱っているので、RFIDの利用により、年間5,500EUR(約77万円)のコストダウンになる。これは1パレット1.7セント(EUR) 労働時間で275時間になる。1人時の賃金は20EURである。
  しかし、現状のバーコードラベルを併用すれば、RFIDの効果は減衰する。そこでRFIDタグの読取率は100%で無ければならないが、ミックスパレットではその保証は無い。以上、パレットにRFIDをつけた実験の紹介とそのコメントを記載したが次にケースにRFIDタグを付けた場合の問題点と効果をメーカー、小売の物流過程から紹介する。

★ ケースレベルにおけるRFIDタグの利用

ケースの上のRFIDタグは、近い将来、包装材料と統合されるか、または生産過程の間のいつか、どこかで取り付けられる様になるだろう。しかし現状は実験を除いてはRFID タグが大量に使われることはないだろう。RFIDタグはシリアルナンバーのついたEPCコードか、SSCCと紐付けにしたGTINが使われるだろう。物流上では、ケースにRFIDタグを付け、トラックの積み下ろしに利用すると物理的には最適で、最高の効果が出せるが、ケースにRFIDタグを付けるコストが問題である。RFID タグのコストを50円としても、書き込み取り付け費用を10円、計60円とすると、メトロも日本も1ケース3,000円なので2%になる。ここでスーパーの営業利益は消えてしまう。他の作業や管理の改善と併用しても利益の増加はおぼつかない。タダのITFで十分だと思う。

―現状の物流センター作業―

[現 状]
  物流センターでは最初に荷受けし、納品書、注文書と商品を照合する。同時に商品のダメージをチェックする。商品そのものの品質検査は抜き取りで別途行う。ASNはない。

[RFID]
  ケースに付けられたRFIDタグにより、商品の数量を自動的にカウントする。しかし、パレット上のケースのRFIDタグが全て読めたかどうかはタグから発信された信号で判定する。 しかしながら、これには、どんな商品のケースがどのパレットに載せられたかという情報の発信を必要とする。また、EPCにより、賞味期限が分かるようにして、先入れ、先出しを可能にする。
  フルパレットの検数と検品は1枚に付き3分掛かる。RFIDにより検品だけで良いので時間は1分になり、2分節約になる。1パレットには80ケースが載っており、RFIDタグによる検品と検数は1個10秒の省力化になる。1人時の賃金は18EURであり、1パレット当り0.3EURの節約になり、年間のコストダウンは72,000EUR(約1,000万円)になる。ケースレベルのRFIDタグの読取率が高いことはRFID 導入の絶対条件である。しかし、一部に読み取りの悪い商品もある。例えば、液体や金属である。これらは従来のバーコードラベルを使うようになり、新旧が並存することになり、RFIDの導入を妨げる要因になる。また、メーカーがASN(事前入荷情報)を小売業の物流センターに送ることと、パレット上の商品の個数を自動的にカウントするシステムを開発することで解決する。


RFタグリーダー付きラック


―小売業RI社のケースピッキング―

[現 状]
  店はEDIでRI社の物流センターに注文する。物流センターでは、これらの注文に基づいてコンピュータでピッキング計画を作成する。ピッカーにピッキングが指示される。ピッキングのハンドリフトトラックにはモニターの付き無線端末が付いている。ピッカーはハンドリフトトラックに2枚のパレットを刺しピッキングエリアに入る。1パレットには平均80ケースが積載される。ピッカーはターミナルのディスプレイを見てピッキングする商品のロケーションに行く。ピッカーはモニターを見て商品と数量を確認し、ピッキングする。ピッキングは多かったり、少なかったり、商品が違っていたりする。ピッキングエラーは0.5%である。検品には多くの労働時間が掛かる。
  現在、小売業のRI社では出荷商品は1%の抜き取り検査をしている。同じ商品を二人で別々に検品し、もし間違いを発見するとその作業者の担当を変える。物流センターと同じ様に店でも検品の手間が掛かる。また、品不足は店での欠品になり、売上の機会損失を引き起こす。物流センターから店への配送は週3回であり、納品ミスを正すには2~3日を必要とする。第二に;、店で扱っていない商品を配送した場合、その商品の適正な措置は期待できない。盗まれたり、捨てられたりすることがある。そして、防止できなかったピッキングエラーは店の在庫を狂わせ、さらに発注を誤らせる。なお、ケースピッキングはケースにラベルを貼ってピッキングする例が多い。

[RFID]
  RFIDタグをケースにつければ、ピッカーの数量の確認を省くことが出来るので労働時間が節約される。ケースがピッキングされ、パレットの上に載せられると、RFIDタグの情報がリーダによって読まれ、作業者はその情報でピッキングの結果を知ることが出来るので、ピッキングエラーは減少する。ピッカーが違った商品や間違った数量をピッキングすればアラームでピッカーに知らせてくれる。そして、1%の抜き取り検査も廃止できる。ピッキングエラーの減少はRI社の店にとっても利益になる。また、ラベルでピッキングしている会社はラベルを無くせるので、ラベル代と人件費が節約できる。
  1日にパレットで1,300枚のピッキングが行われる。1パレットのケース数は80個、時間は35分、このピッキング作業で1パレット4分の節約が出来る。これにより年間43万EUR,1ケース1.7セント(EUR)のコストダウンになる。1%の抜き取り検査では1パレット75分掛かる。この人件費は年間81,000EURになる。1ケース0.3セント(EUR)である。また、間違ったデリバリーの損失や欠品による機会損失は計算に入れていない。


RFタグ付きケース入荷


―RI社物流センターのたな卸し―

[現 状]
  たな卸し作業は完全にマニュアルであり、1回1,800人時を要している。

[RFID]
  物流センター内の全てのパレットまたはケースのRFIDタグの発信する電波を捉えるリーダーを設置する。これにより、何時でも庫内の在庫を的確に把握することが出来る。現在のたな卸しでは1,800人時掛かっている。たな卸しにRFIDを使うと年間およそ3万6000EUR(約500万円)の節約が可能になる。しかし、ここでも100%の読取率が求められるが、これは不可能と報告書に記載されている。加えて、アンテナなどのハードとアプリケーションソフトに相当の投資が必要である。

★店内でのRFID利用

―小売業RI社の陳列棚の補充―

[現 状]
  RI社には店が配送を受け取る特定のタイムスケジュールがある。パレットは最初に、バックルームに置かれる。アルバイトの従業員が店内に運び陳列棚に補充する。棚が一杯で補充できなかったケースはバックルームに持ち帰る。在庫商品がどこにいくつあるか、大部分の店員は分からない。RI社は他の小売業同様、在庫をなるべく持たないようにしている。従ってバックルームの在庫はケースを開けたものである。ケースを開けていない大量の商品は特売品である。
  陳列棚の商品は店員によってモニターされている。回転の速い商品は特に注意している。従業員は陳列棚の在庫が少なくなると、速やかにバックルームから補充する様に指導されている。商品の補充と発注は従業員の記憶と判断により行われるので欠品は4%もある。欠品による売上の機会損失は1%と推定されている。

[RFID]
  RFID タグのリーダーをバックルームの棚と店内の陳列棚、そして、バックルームと店内の間、及び荷受け口に設置することによって、どの商品が何処にあるか、何を店内に補充しなければならないか、リアルタイムに知ることが出来る。また、店内の陳列棚に補充した商品の残りをどこに置くかも知ることが出来る。これにより、店員はバックルームの状況を詳細に知ることが出来るので、適切な補充と発注が可能となり、在庫回転を上げ、売上を増大することが出来る。店でのRFID タグ利用によりRI社では品切れの50%をなくすことを予定している。これは品切れを2%にするということである。また、物流センターからの誤配を少なくすることにより店の販売効率も上がると推定する。
  この改善は小売店の販売を0.5%増加させる。結果として、粗利は25%アップになると予測し、商品1個の利益は0.5%上昇すると推定している。アメリカの食品業界の団体であるFood Marketing Institute、(FMI)の2001年の調査によると米国スーパーマーケットのグロスマージンは28.4%である。これらの数字から1ケース当りの利益を換算することが出来る。
  RFID導入により、1ケース当り5.0セント(EUR)、1店あたりの12,000EURの追加利益を発生させることができる。品切れをなくすと店の売上は2%増加し、メーカーは0.7%の売上増になると推定する。FM社に付いて利益増を試算すると年間100万EURになる。バックルームと店内の在庫を同時につかみ、的確に補充するには携帯端末を使用すべきである。
  単品にRFIDを使用するのはタグのコストに加えて取付けコストが掛かり、メリットはない。特に現在予想される1個50円では。RFIDタグをパレットに付けると1ケースに付きメーカーは0.5EUR、小売業は0.16EURの利益が出ると言うことが報告されているが、メーカーに利益は無かったと聞いている。しかし、メーカーは小売業の適正な在庫管理により、1ケースあたりの7セント(EUR)の間接的利益があると推定された。また、小売業者に関しては、ケースにRFID タグを付けると、1ケース当り9セント(EUR)の利益をもたらす可能性があると報告されている。これらの数値は基本の利益であり、これ以上のメリットが期待出来るそうである。また、店舗における労働の生産性向上のメリットは効果の試算に算入されていない。

  Auto-IDセンターの白書は、RFIDタグの価格が急速に低減すると予測しおており、これも導入効果に算入すべきである。企業は当面はリサイクル可能なパレットでの利用で利益を出す方針である。

    RFタグの自動貼り付け装置

―利益があってもコストが無い―

メトロにおけるRFIDの効果試算

050908-7


(1)∈135円 2005.06.01
  実験報告書にはRFID タグ導入の利益は微細なものまで計上しているがコストは見当たらない。RFIDタグのコストは1個当り、ユーロで30~70セント(1ユーロ135円)と言われているが、ユーザーの購入量、メーカーの先行投資、市場戦略により変化するので実際の単価は分からない。また、マスコミの紙上に言われている単価は工場出し価格である。そして、タグを再利用できるのはパレットレベルであり、ケースレベルではRFIDタグの利用はワンウエイである。リサイクルならばコストは低下するがリサイクルのコストが問題である。ICタグの価格は毎日のように低下していると聞いているが、取付け費用も見積もっておかなければならない。サプライチェーンの物の移動には人の読める表示は必要であり、RFIDを導入しても、多くの物流過程でラベルは元よりバーコードも無くせないだろう。このことは単品にも言える。そして、JAN,ITFはコストゼロ、物流用のラベル(荷札)が除去できないとすれば、そのラベルにバーコードを印刷するのもタダ同然である。単品では高級ブランド、ハイファッション、宝飾品、DVD等の高価格商品で万引き防止との併用でコストが吸収できるが、ウオルマートやメトロのような単価の低いドライグロサリーで、かつパレット単位の物流ではバーコードラベルのユニークバーコードかITFで十分である。しかし、RFIDを店内の在庫管理に利用すると、欠品の大幅減少、適正な発注、在庫回転の向上などに、大きな効果が期待出来るが、単品にRFIDタグが付いていなければ、これは不可能である。
  無線ICタグのコストより問題なのは店内と物流センター内の棚に取り付けるアンテナのコストである。メーカーに聞くと、90㎝幅の陳列棚の各段に2個のアンテナを設置しなければならず、アンテナの数は膨大になり、このコストも大きな問題だ。同時に棚に設置されるアンテナについても考えておく必要がある。また、スチール棚は通信障害をもたらすのでこの対策も必要である。
  EAN(JAN)、ITFのコストはゼロ同様である。また、二次元コードを含めて、バーコードテクノロジーは成熟し、安定している。今、RFIDの導入に挑戦する小売業については、30年前にPOSを導入したアメリカのジャイアントフードと同じように敬意を表するが、バーコードの過程を経ずにRFIDにジャンプするのはいかがなものかと思う。また、欧米では現在の物流や店舗の管理のクオリティが低いために減耗の問題が大きく、この問題の解決にRFIDの利用の狙いがあるようだ。現在のRFIDフィーバーはマスコミとRFID関連企業の市場戦略で演出されたものだ。日本の物流は世界のトップレベルにあり、物流品質はppm,ミス百万分の一を追及している。日本は、RFIDの導入効果に商品の盗難が上げられる国とは違う。そして、日本はオリコンの詰め合わせが多いので、それこそ、ノーリードがppmで無ければならない。むしろ、日本のサプライヤーの物流品質は世界一高いので、ノー検品でよい。物流於けるRFIDの導入は欧米の実験結果をじっくり見てから決めるべきである。
  2005年6月にはMETROのRFID研究所 Innovation CenterとMarks & Spencer の日配品でのRFID実用化のセンターを視察した。機会があれば本誌上で発表したい。

以上



(C)2005 Jun Suzuki & Sakata Warehouse, Inc.


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