ロジスティクス・レビュー

第65号経営指標とロジスティクス最適化(2004年10月22日発行)

執筆者 高沖 創一
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 シニアコンサルタント
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1967年 生まれ
    • 1990年 東洋エンジニアリング入社
    • 1999年 東洋ビジネスエンジニアリングに転籍
    • 2001年 ビジネスコンサルティング部 シニアコンサルタント
    • 現在に至る
    所属団体など
    • 日本生産管理学会
    • 経営情報学会
    • ビジネスモデル学会
    主要著書・論文
    • 『よくわかるデータウェアハウス』データウェアハウス研究会共著,日本実業出版,2000年8月
    • 『ERPパッケージ導入時の留意点と導入後の効果』システム制御学会学会誌、2000年1月
    • 『中小企業のためのITマネジメント講座 在庫管理』日経IT21、2002年7月

目次

1.ビジネス環境の変化

  アダプティブ・エンタープライズという言葉は、「適応型企業」と訳され、激しいビジネス環境の変動に対して、迅速な対応ができる能力を持つ企業を指していう。近年、企業活動のグローバル化、顧客ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短縮化など、アダプティブ・エンタープライズの優位性が増している。日本では、2001年6月にダイヤモンド社より出版された「適応力のマネージメント-アダプティブ・エンタープライズ」(ハーバードビジネススクール教授スティーブヘッケル著)で紹介されている。  
  現在の日本国内においても継続的に収益を上げ続けている企業は、トヨタをはじめとする自社内に変革する仕組みを持っている企業であると言えるのではないだろうか。

2.ロジスティクスの定義

  ロジスティクスという用語は、元々は軍事用語で「兵站(へいたん)術(学)」(三省堂「EXCEED 英和辞典」より)と訳され、「戦っている最前線へ物資を供給したり、必要な連絡線を確保する後方支援の役割」を言う。
  物流視点では、ロジスティクスを「原材料・部品・完成品の在庫のフローと戦略的ストックを、企業の全体最適価値提供に結びつける、包括的な企画・実行・管理メカニズム」(宮下国生著「日本物流業のグローバル競争」を参考に筆者にて定義)と定義し、さらにサプライチェーン視点では「販売・生産・調達物流における諸活動を一貫したモノの流れと捉え、経営上の戦略的な観点からスピード、クオリティ、トータルコスト、情報管理に関して常に全体最適を求め、維持・管理するプロセス」(「図解 サプライチェーンマネージメント」を参考に筆者にて定義)と定義できる。つまり、企業内サプライチェーンである。
  色々な表現でロジスティクスは定義できるが、ここでは「マーケットに対して、製商品をいかに効率的に供給するか」とシンプルで広範囲な定義を採用する。  

3.ロジスティクスに求められる要件

  ビジネス環境の変動が激しい現在において、ロジスティクス部門に求められる要件は何であろうか?それは、ロジスティクスのネットワーク(物資を供給するためのルート)そのものを非常に高速にスクラップ・アンド・ビルド出来る仕組みを構築することだと言える。今までは、ロジスティクスネットワークをいったん構築してから、徐々に物流費用をコストダウンするようなアプローチを取っていた。しかしながら、これからはいったん構築したネットワーク上のオペレーションコストを少しずつ改善するアプローチでは環境変化に追随することが出来ない。ロジスティクスネットワークを当初から最適化した形で構築し、不要になったらすぐに廃棄してしまう。そんなアプローチが必要になっている。
  ある大手電気メーカーでは、どこで作っても同じ品質の製品が製造できる体制を整えている。市場の変動に合わせてダイナミックに生産計画と共に製造拠点を変動させ、物の調達から製品の供給までを最適な形に変更できる仕組みを構築しているのである。

4.経営指標とロジスティクス

  ロジスティクスというと、DELLやアスクルのようにそのオペレーションの卓越性により競争優位を得ている企業がある一方、ロジスティクス部門をコストセンターと捉えて、物流費をいかに安くするかを重要な評価指標としているだけの企業が多いのではないだろうか。良くてキャッシュフローの観点からスピードの重要性を評価しているくらいであろう。  
  しかしながら、ロジスティクス業務におけるオペレーションの卓越性が企業競争力になっている限り、なんとかロジスティクスにおける評価指標を定義し、その値を把握する努力が必要である。  
  そのためには、  
 1)顧客が何を企業に求めているのかを明確に定義する(多頻度配送、時間
   指定、納入リードタイムetc)  
 2)顧客は自社と競合他社に対してどのように評価しているのかを把握する  
 3)市場の評価を受けて戦略を立案する  
 4)戦略に従って素早く行動する  
  この4つを確実に行うことである。これは、ロジスティクス力を経営に活用するために、顧客(市場)の情報を的確にキャッチし対応していく仕組みといえる。

5.どんな仕組み(情報システム)が必要か

  アダプティブ・エンタープライズの重要性とともに、各企業における情報システム導入の目的が「経営の効率化・高度化」から「環境変化への適応スピード向上」へと変化している。今までの情報システムのように、情報システムそのものが業務の固定化を招いていては話にならない。 
  また、情報システムのターゲットが、「現在の定型化された(決まった)オペレーション業務の効率化」から「将来に考えられるオペレーション業務のシミュレーション」へと移っている。 
  このように、これからの情報システムには、経営方針やそれに沿った業務プロセスをより柔軟に構築することをサポートできる機能が求められる。 
  経営方針にしたがって、評価指標を決定、それを最適化するようにロジスティクスネットワークを設計し素早く変革を実行する。オペレーションの実施においては常に指標をチェックしながら市場をモニタリングする仕組みを備える必要がある。

(図1.不確定時代に必要な情報システム)

(図1.不確定時代に必要な情報システム)

以上



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