ロジスティクス・レビュー

第42号物流ABC/ABMシステム導入のポイント(2003年10月17日発行)

執筆者 吉井 宏治
株式会社サカタロジックス シニアマネジャー
    執筆者略歴 ▼

  • 略歴
    • 1989年 サカタ産業株式会社入社、工場内物流管理業務を担当。
    • 1990年 サカタウエアハウス株式会社(大阪本部)に異動。
      情報サービス部門に配属。
    • 1991年 鐘紡(現・カネボウ)株式会社 情報統括室コンピュータ部に1年間出向。
    • 1995年 サカタウエアハウス株式会社(門真営業所)に異動。
      アパレル物流管理業務を担当。
    • 1998年 株式会社サカタロジックスに異動。
      物流改善,物流情報システム構築,物流ABC導入,
      物流アウトソーシング等の提案営業およびコンサルティングなどを担当。
      現在に至る。
    主な資格
    • 物流技術管理士
    • 第2種情報処理技術者
    • 倉庫管理主任者

目次

 物流センター構内のマテハン機器の導入や情報システム化の推進により業務改善、作業の効率化に取り組んでいる企業において、次のステップとして改善効果等を把握するうえでコスト管理が重要なテーマとなってくる。コスト管理手法として、ABC/ABMによるコスト管理が活動別のコストを把握する上で有効である。
 ここではABC/ABMを導入後、システム化をはかり、継続的なコスト管理を実施する場合どのような点について留意すべきか、弊社における経験や今後の弊社のシステム化計画等について紹介する。

1.物流ABC/ABMによるコスト管理の目的

 物流コストの把握、管理の目的として以下の点があげられる。

(1) 活動別単価基準の設定

 活動別の標準原価単価を算出し単価基準を設定することにより、現行契約単価と比較し単価ベースでの採算性の把握や、物流サービス別単価を設定する事が可能となる。

(2) 活動別採算性の把握

 活動別原価単価と処理量を乗算し活動別コストを算出することにより、物流サービス別採算性の把握や、販売部門別コストの把握が可能となる。いわゆるコストの可視化が可能となり、これにより個別の業務に対するコスト低減目標を設定し改善策を検討したり、販売部門のコスト意識を高める等の施策が実行できる。

(3) 作業改善後の活動別単価、コストの予測

 作業改善後または、不採算の活動をなくした場合の活動別単価、コストを予測し、工程や工数の削減により、作業コストをどれくらい低減できるかを試算することが可能となる。ただし、不採算の活動をなくした場合でも全体の稼働率が低下したり、あるいは間接コストの配賦比率が高くなることにより、必ずしもコスト低減ができるとは限らない。

(4) 継続的なコスト管理の実施

 物流ABCによる活動別の標準原価単価、コストを、会計システムや在庫管理システムから得られる費用や、処理量、使用量から直接または間接的に配分できる計算方法として確立した段階になると、これらをシステム化することにより、継続した仕組みとしてABCを導入することができ、いわゆるABCからABMの段階へと進むことが可能となる。これにより、より正確なコスト指標の作成、意志決定支援システムとしてABC/ABMシステムを活用することができる。
 また、コストは日々の処理量の変動や、取り扱い商品の変化等の業務内容の変化により常に変動するため、一ヶ月間に一定期間の計測を継続的に実施し管理することにより、処理量の増減や新規業務に対するコスト予測が可能となる。

2.ABC/ABMシステム構築に向けて

 ABC/ABMシステムの内容等については、多数の専門書やパッケージソフトが販売されており、また平成15年4月に中小企業庁から発表された「物流ABC準拠による物流コスト算定マニュアル」に詳説されているので、ここでは詳しい説明は省略する。
 ABC/ABMシステムの導入、運用にあたって、必要と思われるサブシステムについて、弊社において今後開発を計画している仕組み等を交えて紹介する。

(1) ABC/ABMシステム導入のポイント

 ABCによるコスト算出時に、工数がかかる作業として、人件費の直接配賦費用の算出、または配賦基準の一つとして活動別工数を調査するための活動別作業時間の計測、集計作業があげられる。ABC/ABMシステムを導入し継続的な運用を実施する場合、この部分の工数の削減およびシステム化がポイントであると思われる。
 作業時間を計測する手段としては、ワークサンプリングによる集中的な第三者による計測方法や日報による作業者自身または作業管理者による記入方法がある。弊社では後者の日報による作業時間計測を推奨している。
 作業者の協力を得ることにより作業時間の計測にかかる工数をできるだけ減らせることと、継続して実施する場合に繰り返し導入しやすいためである。

(2) 改善に向けたシステム化案

紙ベースの作業日報を集計する場合、次のような点を考慮する必要がある。

 ・記入者により記入方法が異なる。
 ・記入内容に不備がある場合、確認するために時間がかかる。
 ・集計作業(入力、チェック)にかなりの時間を必要とする。

これらの問題をシステム化により解決する方法として次のような手段が考えられる。

 ①PDA(携帯情報端末)の利用による入力
 ②携帯電話の利用による入力
 ③OCR(光学文字読みとり装置)の利用による入力
 ④グループリーダーによるグループ単位の端末入力

 いずれの方法も専用のソフトウェアの開発が必要であったり、ハードウェアを必要数準備する必要があり、規模によっては数百万円~一千万円単位の投資が必要になる可能性がある。
 弊社では、できるだけコストを低減しシステム化する方法として、グループリーダーが複数の作業者毎に作業区分、人員数、時間帯を作業カードに記入し、作業カードに記入した内容を端末に入力する汎用的なシステムの開発を計画している。(図1.作業時間管理システムイメージ図参照)ABC/ABMを含めたこれらの仕組みを複数の顧客にASP的な利用やスポットでの利用が可能な形式で提供していきたいと考えている。
 システムの形態については、クライアント/サーバシステムやWebを利用したシステム等が考えられる。

図1.作業時間管理システムイメージ図

(3) システム化により想定される効果

 作業の切り替えまたは作業者の入替り毎にグループリーダーが作業区分、人員数、時間帯を作業カードに記録し、一日の作業終了時に端末に記録内容を確認し入力することにより、作業の中断をできるだけ抑えながら導入することが可能となる。また遠隔地の複数の物流センターの入力内容を本社の管理部門で一元的に管理することが可能となる。管理者が全ての入力が完了している事を確認した上で、システムにより自動集計した結果をABC/ABMシステムに転送することにより、自動的に活動別の標準原価単価やコストを算出することができるようになる。(図2.ABC/ABMシステム全体イメージ図参照)
 これらの仕組みを販売管理システムと連動し、月次処理システムとして継続的に運用することにより、顧客別活動別の収益が迅速かつ正確に把握することが可能になる。

図2.ABC/ABMシステム全体イメージ図

3.おわりに

 ABC/ABMによるコスト管理手法が注目されるようになり5年余りが経過し、最近では物流におけるコスト管理手法として広く認知されつつある。

 ABC/ABMの導入にあたっては、顧客との取引に対してコスト管理が必要な活動を絞り込み、自社の業務にあった形で分析を行うことにより、計測にかかる工数を抑えることができ、自社の物流コスト算定の一環として取り組んでいくことが可能となる。また継続して取り組むことにより自社の物流特性にあった工夫や改善が可能となり、社員のコスト意識の強化にもつながっていく。

 長年の商慣行や競合他社との関係等により、必ずしもABC/ABMで得られた結果を活かせない場合もあるが、企業・組織内のコスト管理手法の一つとして、物流ABC/ABMによるコスト管理は非常に有効であり、更なる普及を願い今回の弊社の取り組みおよび今後のシステム化計画等の紹介が参考になれば幸いである。

以上



(C)2003 Kouji Yoshii & Sakata Warehouse, Inc.


このページのトップへ戻る