ロジスティクス・レビュー

第400号 中小卸の業種の枠を超えた物流連携・協業化を考える。(後編)(2018年11月20日発行)

執筆者 髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)
    執筆者略歴 ▼

  • 職歴・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他 :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

目次

*前号(2018年11月8日発行 第399号)より

4.投資負担の少ない成果重視の方策の追求・模索(3段階方式)

  中小・中堅企業の事業活動を身軽にするために管工機材、機械器具、鋲螺、建設機械の異業種卸企業連合(組合)が配送部門を分離、物流部門の充実と商物分離で物流コストの低減を目指したフィジビリティスタディ(企業化調査)を実施することになりました。
  沢山の異業種卸企業の物流連携・協業化には難題、課題が山積していますが、頑張ることによる成果物を得る喜びの要素が沢山潜在していると思われます。即、成果の出るもの、時間をかけて物流改善・物流改革力を醸成しながら成果物を享受するものなど、長い目で見るスタンスが必要だと考えました。そして、物流連携・協業化が実現したからと言って、歴史的に形成されてきた商慣行(帳合と仕入条件、規模と仕入価格、リベート、etc)がすぐに改善するものではありません。工夫を凝らし同業他社よりも有利な条件を醸成するための努力が必要です。さらに、空いた配送車両、物流拠点を集約化した場合の空いた拠点の有効活用・返却、転用などを早期に図る必要があります。
  物流連携・協業化で在庫の一元化(共同化)が実現した場合、在庫負担の軽減を積極的に意識するとともに中小卸企業単独では対応しにくい豊富な品揃えを行い、メリットなどを享受するために流通・物流の近代化、合理化の実現を目指したいものです。さらに深掘りすると参加企業の利害が絡む費用(土地、建物、物流設備、コンピュータハード・ソフト)運営費(人件費、維持管理費)を軽減するだけでなく納得のいく重点配分が最も重要です。さらに、得意先との配送条件(物量・大口・小口、納品回数・多頻度、曜日と時間指定、近距離、遠距離、異形状、重量)などの諸条件の改善に積極的に取り組むことで物流力・輸送力の基盤強化に繋げるとともにコスト低減に取り組みたいものです。
  商品コード体系、受発注〆時間、伝票類、作業帳票、管理資料等々の統一、荷姿の統一(標準化)商物分離など、様々な変革を実践でレベルアップを図ること、物流連携・協業化に欠かせない情報システムの共通プラットホームの醸成、整備、さらに、物流連携・協業化を核に立地選択、拠点配置、施設規模、自動化や作業者とマテハン機能、情報システムを有機的に結合できるシステム(仕組み)などの導入につとめることが物流力の向上に必須と考えます。
  配送体制、人員、在庫、走行距離、台当り積載率、入出荷車両の改善(大型化、並びに削減)に努めること、中小卸が業種・業態の垣根を越えて事業体として協力しあい、1地域事業から複数地域・全国拠点事業へと事業変革で新たなビジネスチャンスと業容拡大・商圏拡大を試みることのできる物流連携・協業化を目標にしたいものです。そのための中小卸企業を引っ張る旗振り役や強力な推進組織、牽引役企業が必須と考えます。強力な推進組織がなければ、物流連携・協業化は進みません。総論賛成、各論反対に終始する傾向に陥りやすくなります。連携・協業化は参加企業の共通の成果を目指す絶対的な目的が必要です。
  今回は、近畿圏を主要商圏とする個口数47%を占める自社便(配送)の取り組みに主眼を置き、物流連携・協業化の方策を検討、その際、目標の中に成果を参加卸だけが享受するのではなく、納品先、及び輸送業者の協力度合いを勘案した成果配分を考慮する新しい試みを実現したいものです。

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  国交省関係各機関においても輸送、保管、荷役、包装等のそれぞれの流通活動の分野で、施設の近代化、輸送方式および経営方式の合理化などで、より生産性の向上に繋がる諸施策を支援してくれています。チャンスがあれば、支援を得ることも考えたいものです。支援ありきはご法度です。国や地方自治体は、毎年、予算や税制など様々な支援策を用意しています。
  但し、重要なことは、大手卸業は、独自の物流拠点(物流センター)などの構築やシステム(仕組み)でコストの低減、ローコストの運営を実現していますが、中小卸企業は、投資、並びに、運用費用などから判断すると独自に構築するのは、非常に厳しいものがあると考えます。
  従って、最も投資負担が少なく今回のフィジビリスタディでの効果が得やすい近畿圏主体の自社便での連携・協業化の第一展開、関東・東海圏の配送は、関東・東海圏に納品拠点を持つ事業者に一括委託したい第二次展開、それ以外の納品は、従来と同様、路線便を活用する第三次展開、発送する前に小ロット商品の同梱などで付加価値を高め、どの地域にも発送できる全国配送ネット網を構築したいと考えました。

5.中小卸の物流連携・協業化の進め方(3段階)

  中小卸の物流の連携・協業化の目的は、コスト削減と顧客に新しいサービスを生み出すことと考えます。既に大型物流施設では、荷物を方面別に自動仕分けする機械の導入が進んでいます。さらに、人工知能(AI)で効率的に配送ルートを組み立てる本格的なシステムの導入がはじまりました。これからは、経験の浅いドライバーでも無駄なく効率的に配達ができるようになり、配達量と納品先数を増やし、ドライバーの負担軽減や配達予定時間内に届けやすくなると思われます。これまでの中小卸は、自前主義が強かったがITの活用時代が本格化すると外部の企業と連携する「オープン化」がキーポイントになると思われます。最先端の技術を持つ企業・大型物流施設との連携を模索してこれからの物流業界での変革に対応した新しいサービスを研究していきたいものです。

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●第1次展開の概要:近畿圏(物量:47%)

  近畿圏内の各卸間を同一のトラックで巡回、積み合せ、集荷を行い、近畿圏内の納品先(顧客)にお届けするシステム(仕組み)です。自社便の共配・協業化の可能性のある平均9,373個口数/日を対象に配送代行業者(自社便含む)に委託して近畿圏の従来の自社便扱いの物量を混載ルートで配送。卸各社はピッキング後の商品をコース別、納品先別に仕分け後、各社の出荷荷捌き場に仮置き、配送代行業者が軒先で引き取り、近畿圏内の配送量の密度の高い配送頻度、走行距離の両面から配送効率の向上のためのコース設計を行うことで効果を期待、コース設定には、時間指定、早朝、夜間配送、道路状況などを勘案することをポイントに配送コースを策定することが肝要です。
  近畿圏エリアの管工機材、機械器具、鋲螺、建設機械の自家配送の物量規模に応じた物流連携・協業化に関わる事務局を置き、さらに、地域限定エリアの参加卸に限定した求貨求車システム(トラックの荷台が空いている情報、運んで欲しい情報の提供)の導入を考える必要がありそうです。さらに、システム(仕組み)の立ち上げ確認は、不慣れを要因としたトラブルを最小にするために段階的な立ち上げを前提にしたモニターラン(プレ稼働)を繰り返し、精度が確保された段階で本格稼働に繋げることが肝要と考えます。
  物流連携・協業化に参加する卸企業はアンケート結果から当初は少ないものと予測していますが、近畿圏エリアの管工機材、機械器具、鋲螺、建設機械の自家配送物量規模を100%+αを賄うことを前提にシステム(仕組み)の規模と稼働を想定して行くべきと考えます。システム(仕組み)が順調に稼働し、効果・成果が見えるようになると仲間がどんどん増えていくものだと思います。成功の鍵は、成果・効果を目に見える形にすること、自社便だけでも成功させたいものです。

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●第2次展開の概要:関東圏・東海圏(物量:26%)

  配送代行業者に一括委託したい、配送、物量の平均5,157個口数/日 を混載ルートでの配送コースを設定、卸企業各社は、ピッキング後、商品をコース別、納品先別に仕分けた後、各社の出荷荷捌き場に仮置き、配送代行業者が軒先で引き取り、関東圏・東海圏のそれぞれの拠点に横持ち輸送、その後拠点で仕分け、集約後に納品先にお届けする。

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●第3次展開の概要:全国(物量:27%)

  北海道、東北、信越、北陸、四国、九州・沖縄向け物量平均 5,355個口/日を従来と同様に路線業者に一括委託するためにトータルピッキング後の商品を各社の出荷荷捌き場に仮置き、配送代行業者が軒先で引き取り、自社に持ち帰り、集約・仕分け(納品先が同じ複数卸の同梱化の研究)作業などを行い、各拠点に発送する。中小卸では手が出せない分野を大型物流施設と連携した新しいサービスを生み出していきたい。

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6.最後に・・・。

  今後の中小卸の望ましい事業展開の1つとして数多い企業の物流連携、協業化を選択肢の一つに加えて見たく思います。特に地域卸のコストウェートの高い配送は、配送エリアを限定した多数の企業が大同団結して近距離と中・長距離を視野にそれぞれの特徴を把握して展開、困難を乗り越えて中小物流・流通業の成果の伴う変革に貢献したいものです。

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  中小規模の一社単独の荷量は、納品先が多くトラックの荷台の空きスペースが発生する悪条件が生まれます。そのような時にこそ、物流連携・協業化を積極的に進めてみるべきと考えます。納品先や配送エリアが同一の場合、荷物の集約で車の効率的な運用を図るべきだと考えます。
  中小企業には経営の余裕が少ないことを理解していますが、良い所よりも悪い所に目を向けがちで総論賛成、各論反対の姿勢をよく見かけます。今回のテーマの主役は、中小卸であり、大きく捉えると商流と物流で成り立っているのが卸企業です。従って、新しい物流連携・協業化で変革を実現するために目先の利益だけでなく先々の夢や事業の有るべき姿を想定し、社運をかけるほどの気概で取り組むことが肝要です。それぞれの責任において進むか戻るかを判断して欲しいものです。中小卸の将来を見据えて、経営改革、現場密着型の確実性・信頼性の高い物流オペレーションの確立、機械化、情報システムと業務の同期などのよりよい変革が中小卸にも強力に求められていると考えます。
  中小卸が大同団結して、物流連携・協業化で経営資源の集約化、事業規模の拡大で競争力のある卸企業に変革して欲しいとの思いを年商約360億円の化粧品・日用雑貨の地域卸の共同化・協業化を経験したものの1人として強く感じています。中小企業が大きな成果と変革を求めて連携・協業化を実践する場合、投資規模、内容いずれの面においても、その後の事業活動の成否に関わる重大な事業であることを踏まえて出資の規模などは、企業力に照らした公平・公正を旨とした中小企業の経営実態、経営条件の変化を念頭に物流を学ぶから脱却し、石橋をたたきながらでも長期的な視野に立っての実務の遂行、実践の中で中小卸の変革、今後のあり方を展望した経営戦略に取り組んで欲しいものです。

以上



(C)2018 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.


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