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グリーン・ロジスティクス

第399号 中小卸の業種の枠を超えた物流連携・協業化を考える。(前編)(2018年11月8日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(33年間)
    • (出向)株式会社バンテック(7年間)
    • (起業)有限会社KRS物流システム研究所(平成11年~)
    組織・履歴
    • 神奈川流通サービス協同組合・物流システム研究所所長(5年間)
    • 株式会社湘南エスディ-・物流顧問(5年間)
    • 株式会社カサイ経営・客員研究員(7年間)
    • 物流学会・正会員(8年間)
    • 物流学会・ロジ懇話会事務局(5年間)
    • 日本情報システムユーザー協会・個人正会員(JUAS-ISC)(9年間)
    • 日本情報システムコンサルタント協会(JISCA:東商会員)正会員・理事(平成25年~)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省) 荷姿分科会委員・委嘱(1年間)
    • 運輸省(現・国土交通省)輸送分科会委員・委嘱(1年間)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(8年間)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(6年間)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(6年間)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(4年間)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(2年間)
    • 座間市観光協会・事務局長(2年間)
    • 座間市・都市計画審議会委員(2年間)
    著書・講師・履歴
    • 日本のロジスティクス (共著:日本ロジスティクスシステム協会)
    • 物流共同化実践マニアル (共著:日本ロジスティクスシステム協会・日本能率協会)
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流 (共著:同文館)
    • 雑誌掲載:配送効率化・共同物流で大手に対抗(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:情報化相談室回答担当者(日経情報ストラテジー)
    • 雑誌掲載:卸の物流協業化・KRS共同物流センター事業(流通ネットワーキング)
    • 雑誌掲載:現場が求めるリテールサポート・ドラックストア-編(流通ネットワーキング)
    • その他  :執筆実績多数
    • 講師(セミナー、人材育成、物流教育・etc):実績多数

 

目次

1.はじめに。

  企業の目的は、利益を追求し、成果(利益)を上げることです。そのための方法は、売り上げを増やすこと、成熟した経済、及び長い間、競争相手が存在する業界に於いて売り上げを伸ばすことは、大変難しく、並大抵の努力では達成できないのが現実です。そこで、売り上げを増やす代わりに物流の連携・協業化でスケールメリットを享受できる条件づくりを行い、第3の利潤と言われて久しい物流費のコストダウンを狙いたいのです。技術や特別な製品、商材などを持たない中小卸にとって物流の連携・協業化は、大きなコストダウンの手段になると考えます。少子高齢化が目前に迫ってきています。そして、ボクシングのジャブの如く昔からある老舗の流通・物流・卸などの中小企業にじわじわと社会変革の波が押し寄せてきています。景気が上向き傾向にある中小企業にとっても今が変革のチャンス、将来を見据えた変革が求められているように感じます。超低金利時代ですが、長雨、寒さが影響していると言われ、生鮮野菜が高くなり、ちょっぴりインフレの傾向を感じるようになりました。インフレはともかく在庫を減らし、固定費の削減に取り組むとともに今まで培ってきた事業基盤を引き継ぎながら事業の変革をする時代が訪れているような気がします。現在の厳しい環境を背景に新たな成果物を生み出していかないことには、成長もなく生き残りの保証もされない時代となってきました。そんな環境を意識した管工機材、機械器具、鋲螺、建設機械の中小企業主体で業種の枠を超えて新たな事業展開で変革の時代を乗り越えるために物流連携・協業化の可能性を探る機会を10年前に頂きました。
  各企業の事業における変化、特に輸送トラック台数の削減、積載率の向上、物流コストへの影響などを調査するために物流連携による効果を予測する役割と纏めを担いました。大手卸業は、大規模な自社の物流・流通センター機能を整備し、組織的な生産性の向上と物流コストの削減、物流品質の向上、納期の精度アップなどの実現に努めていますが、多くの中小企業は、投資負担、人材の確保などから独自の運営が困難になってきつつあることを考えますと中小企業が結束し、個々の企業の負担を極力少なくし、物流連携・協業化での変革に踏み出すことを期待したいと思っています。商流は競合、物流は協業を旗印に日本の中小卸の物流連携・協業化の新たな在り方を模索してみることにしました。

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2.中小卸企業の物流連携・協業化の狙い。

  フィジビリスタディ(事業化調査)を対象にした中小企業は、重量・長大な特殊商材(荷物)をはじめ、一般の管工機材、機械器具、鋲螺、建設機械の中小卸でした。輸配送を中心に、保管、物流加工、グローバル物流サービスなどのあり方、納品先のニーズに合わせた中小卸としての強い結束を核に物流連携を実現していくべきと狙いを定めました。
  今の時代は、ロボット、AI、IOT、自動化、etcと産業界に於いて、とてつもない変革が始まろうとしているのではと強く感じています。物流においても物流拠点の無人化・自動化、省力化、人手不足による輸・配送の変革が始まろうとしています。そのためには、コスト削減だけでなく売上アップを実現できる強い卸に変革するための連携、協業化を模索すべきと考えます。卸の主要業務である物流を核に売り上げ増大のための変革を実践すること、勿論、商物分離で身軽な事業活動の体制を作ることが肝要と考えます。
  中小卸の現状を考えてみますと、従来の消費増大・発展を前提に「それいけドンドン」の環境が一変、これからは、日本の産業を支える中小規模の卸業であっても変革が求められる時代が来ています。特に中小卸の物流の対応力と環境対応力(高齢化、少子化、適正な人材の確保、生産性向上、etc)の必要性が高まってきています。物流で求められる高い水準の「物流品質、生産性向上&ローコスト、納期厳守、IT化、etcが社会変革の要請で中小卸企業といえども高いレベルでの様変わり、変革をする方向に向かわざるをえないと考えます。社会の変革(構造)に会わせた強い企業づくりが求められていると思います。前述の人口減少などの環境変化と共に間近に迫った高齢化の中で中小卸としての益々の企業の成長を目指せる企業基盤づくりと成長戦略が急がれています。
  日本の技術力の高い中小企業のモノづくりは、日本の製造業独自の技術の強みに同調することができますが独自の技術を持ち合わせていないと思われる中小卸は毛利元成の3本の矢の如く企業同士が大胆に力を束ねて物流の強みを発揮できる連携・協業化システム(仕組み)を構築したいものです。

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3.物流連携・協業化、参加企業の現状

  物流連携・協業化を目指している各卸企業の共通の課題・問題点は、①小口注文の増加、②個々の配達量の減少、③配達頻度の増加、④物流コストの増加、⑤交通事情の悪化、⑥事務処理の煩雑化、⑦その他でした。大手卸企業は、独自の物流・流通拠点を構えてコスト、サービス、生産性、品質・精度、納期順守、etcの物流実務を当然の如く実践していますが、中小卸は、単独で大手並みの売り上げ比率で投資、人材確保などは、難しい局面が多くあり、中小卸が協力して物流連携・協業化(特に配送業務)を実践することで前述の①~⑦の課題、問題点の改善・解消に努力していきたいものです。

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  今回の物流連携・協業化を検討する対象企業の従業員規模は、19人未満が57%、20~29人が11%、30~49人が12%、50~99人が8%、100人以上が12%と様々な企業規模でした。その中小卸を主体に物流連携・協業化の可能性を探ろうとフィジビリスタディを行いました。今回は、中小卸の困りごとである多頻度・小口納品、物流コスト、トラックの積載率などの課題解決のための物流連携・協業化に的を絞って研究することにしました。

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※後編(次号)へつづく



(C)2018 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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