ロジスティクス・レビュー

第38号循環型社会作りに貢献するリバース(SCM+循環)ロジスティクス・システム(2003年08月22日発行)

執筆者 菅田 勝
リコーロジスティクス株式会社 業務改革本部 副本部長(兼)改革推進室長
    執筆者略歴 ▼

  • 略歴
    • 1971年 大阪府立大学工学部 経営工学科卒業
      株式会社リコー入社 コンピューター事業部 生産技術配属
    • 1985年 社長室 経営企画
    • 1988年 英国製造会社出向 アドミニストレーション本部
      経営計画・生産管理・資材・経理人事・情報システム・ISO(英国BS)等
    • 1997年 研究開発本部 事業企画部 R&D計画(含新規事業企画)・
      全社R&D推進事務局・知財・情報システム・ISO・人事総務等
    • 2000年 リコーロジスティクス(株)出向  業務改革本部 全社コスト構造改革&業務システム改革・CSM・物流LT技術・輸配送システム・ISO 等
    • 2004年 同上 経営管理本部 全社CSR・ISO(EMS/QMS)・情報セキュリティーISMS/CP・総務(法務・安全・広報・管財・購買) 等
    所属団体
    • 日本生産性本部JQAC認定 経営品質セルフアセッサー
    • R―ISAP社認定 ISMS/CP内部監査員
    • 日本ロジスティクスシステム協会 ロジスティクス経営士 企画委員
    • 同上 環境会議 企画委員(兼)リバースロジスティクス専門委員会 委員長
    • 経産省/国交省 グリーン物流パートナーシップ会議ワーキングG 広報企画委員
    • 日本物流学会 正会員
    専門
    • コスト管理/品質管理/生産管理/物流管理に関する業務
      IE/VA、コスト管理、生産管理(SCM)システム、品質統計管理 等
    • 経営計画管理に関する業務
      経営戦略、事業計画、予算編成管理、財務経理(含管理会計)、BSC/CSM 等
    • ISOに関する業務
      ISO9000シリーズ、ISO14000シリーズ、ISMS/CP、CSR 等

目次

 昨今の深刻な地球環境問題に直面し、これからの21世紀経済社会では、経済と環境の統合を目指す循環型社会システムへの早期転換が望まれている。地球温暖化防止CO2削減や有限資源の循環活用に資する為、消費者に使われなくなった使用済製品・旧式商品・容器包装物等を有価資源として積極的に、かつ丁寧に分別回収し、再度別の消費者(別の国も有りえる)にて再使用(Reuse)したり、部品ユニット・原材料や、熱資源として再生利用(Recycle)、産廃物の発生抑制(Reduce)等の「3Rリサイクル目的の循環物流」が、環境対応面からも必要不可欠となってきた。

 現在物流業界で話題になっている、材料部品メーカー段階から最終製品メーカー・卸売業・小売業店頭段階に至る、新しい商品を消費者に届けるディマンドチェーン(SCMサプライチェーン)物流に加えて、さらに地球環境対応や有限資源の再活用の為のリバース循環物流である(これらは、回収物流とか、人体の血液流に例えて静脈物流とも呼ばれている)。
 2年前にスタートした家電リサイクル法(4製品)に加え、来年平成16年12月には自動車リサイクル法が施行予定であり、本格的な循環型経済システムが動き出しつつある。今後も続々と各種環境法規制の追加制定や行政の関わり強化が予定され、リバース「エコSCM+循環物流」対応がロジスティクス改革面で最重要のテーマに成ってきた。

 一般的に、3Rリサイクルの高度化と共に、リバース(循環)物流の方が、収集から運搬~遵法廃棄物処理に至る情報処理(排出質重量データや帳票類)を含めて、不規則複雑かつ煩雑化の傾向にあり、関連法令の厳格運用化も絡んで、重要性が高まりつつある。新製品の軽薄短小化と日本経済の低迷縮小化予測の下、新品物流は減少傾向、反面リバース(循環)物流は社会ニーズ高揚により、将来の成長が期待されている。

1.物流事業者の収集運搬業への参入

 廃棄物の抑制・減量・再利用を進める為、政府は平成12年「循環型社会形成推進基本法他全6法」を制定、目指すべき持続可能な社会の姿を明示、迅速な構造転換を推進している。この動きに呼応するように、産業廃棄物処理業(収集運搬業と処分業)への参入が相続き、特に収集運搬業は6年間で倍増と、顕著な伸びを示している。

 物流事業者の収集運搬業参入が顕著であるが、ただ単に空車や空荷スペースを提供し、言われた通り廃棄物を中間処理場や最終処分場に運び込むだけでは差別化が難しく、付加価値も低く、収益化は簡単ではないであろう。多種多様な使用済み製品や産廃物特性に適合する高度な3Rリサイクルを提案、コーディネーションできる運営システムやノウハウの蓄積提供が必要である。

2.リバース・ロジスティクス・システムへの取り組み動向サマリー

 新しい「3Rリサイクル目的の高度な循環物流」が立上りつつあるが、物品の個別特性と法規制の厳格運用化による複雑・煩雑化は否めず、個別品目毎に、新品(エコSCM)物流を含めた適切な物流モデルを構築する必要がある。何が正しいか?をなかなか見つけ出しにくい分野でもあり、試行錯誤が必要で、本格運用までには手間が掛かる覚悟が必要である。国、自治体、企業間等の連携によるリバース・ロジスティクスも活発化しつつあり、概要動向を述べる。

(1)業界共同化

 家電リサイクルに代表される、業界レベルの共同化取り組みの動きが加速しつつある。これらは、循環物流のコスト高防止、業界全体の取り組みを統一し適正処理を行なう、更に規制緩和や取り組み支援の為の行政機関への共同働きかけが背景にある。

(2)同業者や異業種専業者との共同物流

 循環物流の目的や地域を同一にする複数企業が連携し、循環物流の幹線運行(航)の共同化や都市内共同集配・収集引取交換の共用等(例:複写機の交換センター)を実施する事例が増加しつつある。

(3)トラック単独から、鉄道・内航海運等モーダルシフト化の選択

 往復物流の必要性が少なく、静脈物流単独でかつ時間的制約の少ない場合には、CO2排出量抑制する為に、モーダル化の取り組みも活発化しつつある。コストメリットある500km以上の長距離だけでなく。100~200km程度の中距離輸送でも、モーダル化の取り組みが開始され、リサイクルポート計画の本格化(後述)により更なる活発化が予想される。

(4)新品のSCM動脈物流と循環静脈物流を融合したIT情報システムの構築

 (OA機器3Rリサイクルの場合が典型的事例であるが)新品の納入据付時に使用済製品を同時回収する場合が多い。これらは同一ユーザー・同一場所でも、回収製品毎の3R処置区分・法規制対応が異なり、新品との入替時に、関係部門との情報交換や連携が多岐に亘る場合が多く、電話やFAXではミスも発生しがちである。更に排出質量データ把握の必要性も高く、メーカー・販売会社・販売店・サービス会社・物流会社・リサイクル拠点・処理業者間等の緊密連携を可能にするリサイクル情報ネットワークシステムの構築が不可欠になっている。

(5)総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)の指定と開発計画

 平成15年4月第2次指定で、全国18港指定(国交省港湾局)。環境に優しく、安全低コストな広域(海上)輸送ネットワークを作り、全国規模の再資源化インフラを実現する構想である。重厚長大産業に代わり、将来性見込める21世紀環境産業の振興を図る狙いがあり、循環型ロジスティクスのハブ拠点にもなると予測される。 リバース・ロジスティクス産業への参入を考える物流企業としては、当核指定港の開発計画をウオッチングし、当計画にも整合できるビジネスモデルを考察する必要がある。

3.リバース・ロジスティクス・ビジネスへの進出にあたり

 循環型社会形成を目指し、官民一体となった取組みが求められている。物流業界も大きな環境負荷を発生させており、よりエコロジーなSCMシステム構築を目指すと同時に、有限資源の循環再利用の為のリバース・ロジスティクス・システム構築にも注力すべき時期に差し掛かっている。

 前段で述べた通り、物流事業者の収集運搬業への参入増による競争激化、並びにリサイクルビジネスは儲からないという収益性環境認識の下、参入事業者が収益を確保し,成長し,勝ち残る為には非常に難しいハードルをクリアーする(参入障壁が高い)必要がある事を認識すべきである。

 リバース循環物流ビジネス成功の第1ステップは、多数の法規制や行政3R施策、個別物品毎の製品特性やビジネス特性、廃棄物処理業界の特質・課題、収集運搬業界の特質・課題等の深い理解である。  これらの理解に基づくノウハウ蓄積により、自社の強みを活かした差別化戦略の立案(ドメイン・優位性コンピタンス・施策等)と実施を進めるべきである。車両を提供し、「単に運びます、運ばせてください」だけでは駄目、儲からないし勝ち残れないであろうと肝に命ずるべきと考える。

 荷主(排出事業者)や処分業者に、バラツキの少ない安全安定高品質(含遵法)な広域複合(エコSCM+循環)ロジスティクスサービスを提案・提供できるコーディネーション力ある物流事業者が求められている。環境対応がロジスティクス高度化を進め、経済効果を高める認識で、産官学のコラボレーションを含めて、質の高い物流活動展開が重要である。

以上



(C)2003 Masaru Sugata & Sakata Warehouse, Inc.


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