ロジスティクス・レビュー

第354号 特別積合せ運送の光と影(前編)(2016年12月20日発行)

執筆者  長谷川 雅行
(株式会社日通総合研究所 経済研究部 顧問)
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1948年 生まれ
    • 1972年 早稲田大学第一政治経済学部卒業 日本通運株式会社入社
    • 2006年 株式会社日通総合研究所 常務取締役就任
    • 2009年 同社顧問
    保有資格
    • 中小企業診断士
    • 物流管理士
    • 運行管理者
    • 第1種衛生管理者
    活動領域
    • 日本物流学会理事
    • (社)中小企業診断協会会員
    • 日本ロジスティクス研究会(旧物流技術管理士会)会員
    • 国土交通省「日本海側拠点港形成に関する検討委員会」委員ほか
    • (公社)日本ロジスティクスシステム協会「物流技術管理士資格認定講座」ほか講師
    著書(いずれも共著)
    • 『物流コスト削減の実務』(中央経済社)
    • 『グローバル化と日本経済』(勁草書房)
    • 『ロジスティクス用語辞典』(日経文庫)
    • 『物流戦略策定のシナリオ』(かんき出版)ほか

目次

1.特別積合せ貨物運送

(1)特別積合せ貨物運送とは

  「特別積合せ貨物運送」は、1990年までは「路線事業」と言われていた。
  1990年以前は、トラックを1台貸し切って荷主の貨物を輸送するのが「区域事業」であり、不特定多数の荷主の貨物をトラックに積合せて、一定の輸送ルートを輸送するのが「路線事業」であった。
  複数の荷主の貨物を積合せて貸切輸送することは、「積合せ区域」と言われたが、その免許は限定されていた。
  それが、1990年の物流二法により、トラック運送が「道路運送法」から切り出されて、「貨物自動車運送事業法」となった際に、一般貨物自動車運送事業の一形態として「特別積合せ貨物運送」が定められ、旧・路線業者は特別積合せ貨物運送事業者となった。
  貨物自動車運送事業法では、次の①から③のいずれも満たすものを、「特別積合せ貨物運送」といい、特別積合せ貨物運送を行う事業者は、その事業計画を国土交通省に申請して、「事業許可」を得なければならない。
  逆に、①から③の事業要件さえ満たせば、一般貨物自動車運送事業者は誰でも、事業計画の変更申請をすることにより、特別積合せ運送を行うことが可能になった。

起点(運行系統の発地をいう)及び終点(運行系統の着地をいう)の営業所又は荷扱所において、必要な仕分け(起点が一運行系統のみにかかわるものである場合は、起点における集荷又は配達を行う事業用自動車(以下「集配車」という)から運行車への貨物の積換えを含む。以下同じ)を行う。
集貨された貨物を定期的に運送する。
①及び②を自ら行う。


  具体的には、次のAからEの事項を満たさなくてはならない(下線は筆者が付した)。

A 運行の往路、復路それぞれに複数の荷主の輸送需要が確実にある。
B 運行の往路、復路それぞれに定期的に運行することが必要な程度の輸送需要が確実にある。
C 取り扱う貨物の種類が積み合わせて運送することが不適当なもの(例えば、土砂、長大物等)でない。
D 営業所又は荷扱所において仕分けを行う。
E 運行系統が異なる地域的な経済圏相互間を結ぶ(例えば、同一最小行政区画又は周辺の最小行政区画との間の運行系統のようなものでないもの。ただし、これらのものであっても、事業形態上、ターミナルを複数に分けるもの(いわゆる横持ち)については事案において判断)。


  さらには、最近では貨物追跡管理体制の整備など、情報システムの導入も必要とされている。
  特別積合せ貨物運送を図示すると、以下のようになる(図1。以下、業界用語にならって「特別積合せ貨物運送」を「特積み」という)。

図1 特別積合せ貨物運送のイメージ

(出所:神戸市「トラックターミナルについて」から筆者作成)
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(2)特積み事業の特性

  上記の事業計画上の許可条件から、特積み事業には、仕分け及び集配車・運行車の接続のために、取扱貨物量に応じた規模のトラックターミナルが必要となる。
  一方、1台のトラックに複数荷主の貨物を積んで、仕分けを行わず、そのまま輸配送を行う形態の「積合せ貨物運送」の場合は、ターミナルは不要である(図2)。

図2 積合せ貨物運送のイメージ

(出所:中小企業庁ほか「物流総合効率化法の活用ガイドブック」)
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  すなわち、特積み事業は、トラックターミナル・情報システムへの投資が必要不可欠であり、労働集約型のトラック運送事業のなかでは、資本集約型の事業形態となっている。
  約5万7000社ある一般貨物自動車運送事業(以下、「貸切」という)では、その99%以上が中小企業であるが、約300社の特積み事業の中小企業比率は約90%と、中小・零細が多い業界のトラック運送業界のなかでは、比較的経営規模が大きいのは、設備投資が必要な事業特性によるものと思われる。
  なお、宅配便は「企業や一般消費者のニーズに応えて、1口1個30kg以内の少量貨物を、特別な名称(例:「宅急便」など)を付して、地域別の個建て運賃で配送するサービス」で、特積みの一形態であるが、対象貨物・輸配送システム等が異なるので、今回のレビューでは必要最小限の記述にとどめることとする。
  約300社の特積み事業者のうち、企業グループとして全国ネットワークを保有しているのは、セイノーホールディングス・福山通運・日通グループなど一握りだけである。その他の特積み事業者は、他事業者のネットワークを相互利用する「連絡運輸」か、他事業者のネットワークに一方的に依存する「他業者差込み」で、荷主に全国輸送を提供しているのが実態である。
  自社で全国ネットワークを構築しなくても、他事業者のネットワークを相互利用することが広がったのは、2015年に解散した(一社)日本路線トラック連盟が構築した特積み貨物追跡システム(貨物情報トランスファーセンターシステム=Fitシステム)によるところが大きい。それまでは、各事業者バラバラの情報システムのため、他業者に引き渡した後の追跡管理ができなかったが、Fitシステムでは参加会員各社間では相互に貨物追跡情報を共有化できるようになり、他業者への引き渡し後も、自社ネットワークと同様に、輸配送状況が把握できるようになった(図3)。

図3 貨物情報トランスファーセンターシステム(Fitシステム)

(出所:日本路線トラック連盟のホームページ)
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  日本路線トラック連盟が解散した後も、Fitシステム協議会が同事業を継承し、従来通り、参加会員各社のサーバーをつないで貨物追跡を可能としている。
  なお、Fitシステム協議会は、2016年4月から一般社団法人に衣替えした。

(3)公共ターミナルと専用ターミナル

  上述のように、特積み事業にはトラックターミナルが必要となる。
  トラックターミナルは、地域間輸送を行うための拠点施設である。地域間輸送の効率化を図るため、大型車やトレーラを使用するが、域内輸送では交通混雑、交通規制などに対し、集配効果のよい小型車(2トン車・4トン車)を使用する。
  地域間輸送では、一部、後述するような鉄道コンテナ(JR貨物)やフェリーを利用している。
  そこで、トラックターミナルで積替え・仕分け作業を行い、積載率の向上と交錯・重複輸送の無駄を省く。そのため、トラックターミナルには広い貨物仕分けスペースと、多数の大型車・小型車が同時に接車できるバース並びに駐車スペースが必要となる。
  特積み事業者専用のターミナル以外にも、仙台・東京・大阪など全国の主要都市に国や地方自治体・輸送協同組合等が出資した公共トラックターミナルがあり、特積み事業者は、専用ターミナルを運営するほど取扱貨物量がない場合は、公共トラックターミナルに入居するケースも多い。
  公共ターミナルの中で特に大規模なのは、日本自動車ターミナルが運営する京浜(平和島)・板橋・足立・葛西のトラックターミナルと、大阪府都市開発が運営していた北大阪・東大阪のトラックターミナルである。いずれも近隣に大規模な倉庫団地があり、複合的な流通センターとして機能している。
  トラックターミナルは、上述の目的から平屋建てが多かったが、東京などでは高層施設に建て替えが進められており、上層階を荷主の物流センターとして3PL事業を展開している特積み業者も増えている。
  2015年6月に竣工した、日本自動車ターミナルの京浜トラックターミナル(平和島)新7号棟は、地上5階建て・延床面積約36,000㎡の規模を持つ大型複合物流施設で、1階は特積み事業者のターミナル、2階以上は商品の一時保管・流通加工などを行う物流センターから成る。2階へは専用スロープにより40ftコンテナ用トレーラが直接乗り入れできる。
  さらに、同社は同年7月に、延床面積10万㎡の大型複合物流施設を建設することを発表した。これで、京浜トラックターミナル内での、一連の施設更新は終わることになる。
  北大阪・東大阪のトラックターミナルを保有していた3セクの大阪府都市開発は、2014年に施設を南海電鉄に売却した。南海電鉄が、今後、東京の各トラックターミナルと同様に、新たな複合物流センターに転換するか、大手物流企業をグループ内に持たない南海電鉄が、どのような経営施策を打ち出すか注目されるところである。
  一方で、札幌・仙台・金沢・岡山・広島など地方の公共ターミナルは、特積み事業者が自社ターミナルを整備するなど撤退が続き、貸切事業者の入居が増えている。

(4)特積み事業のビジネスモデル

  特積み事業の収益源は、不特定多数の荷主から収受した少量貨物を、大ロットにまとめて輸送することによる、収受運賃と輸送コスト(車上運賃ともいう)との差額(混載差益ともいう)である。
  航空フォワーダーが航空会社からスペースを買い取って、不特定多数の貨物をロット化して航空会社に託送する、海運フォワーダーが海運会社のコンテナに、複数荷主の貨物をコンテナ混載して、仕立て差益を得るのと同様である。
  それには、積合せ運賃制度を活用して、できるだけ多くの貨物を幹線車両に積載することが有利となる。積合せ貨物運賃は、容積勝ちの貨物については1㎥を280㎏として換算する容積換算重量制度がある(容積換算された重量は運賃計算の基本となるもので、「運賃計算重量」といい、「実重量」とは異なる)。
  重量勝ちの貨物(水物・機械類など)を積むと、トラックの荷台いっぱいにならなくとも、重量的には車両の標記トン数(車検証に記載された積載限度重量)に達してしまうが、まだ、荷台スペースは空いている。そこに、軽量で容積勝ちの貨物(繊維製品など)を積むことにより、実重量は標記トン数以内であっても、容積換算重量では標記トン数を上回る積載が可能となる。これで、10トン車でも10トンを超す運賃を収受する。この重量貨物(荷主)と軽量貨物(荷主)を上手に積合せることが、特積み事業のビジネスモデルである。特積み各社は企業秘密である積載率は明らかにしていない。線区にもよるが、80%前後が損益分岐点と思われる。
  また、特積み事業は、その定時性・迅速性が大きな売り物となっている。そのためには、全線高速道路を利用して、大型トラックやトレーラで地域間輸送をしている。荷主には「営業案内」として、輸送日数や配達時刻を明示している。特積みを利用する荷主としては、他の輸送モードと比べると運賃は若干高めだが、定時定型輸送による短リードタイムでの納品や在庫の極小化というメリットがある。
  特積みは宅配便と異なり、小ロットのB to B、つまり企業貨物・商業貨物をターゲットにしている。配達先は個人ではないので、宅配便では約3割と言われる不在持ち戻り=再配達がない。ただ、最近は、開店(10時)前に届けてほしいという時間指定要望や、高層ビル内・地下街等、配達に手間が掛かるケースも増え、配達効率が低下している。
  配達形態は、ほとんどが軒先渡しで、開梱・検品・陳列や、廃材・古品の引き取りなど、煩雑なことはほとんどしない。なかには、家電品のセッティングや、単身引越などの付加サービスもあるが、付加サービスのほとんどは商業貨物とは別シフトとなっている。
  前述のように幹線車両の積載効率を高めるため、ロールボックス(カゴ台車)等は使わないケースが多い。そこで、ロールボックス輸送については、ボックスチャーター社という専門会社を、主要な特積み会社が出資・設立して、同社に委託している(後述の図10参照)。
  一部では、カンガルー宅配便(セイノーHD)やフクツー宅配便(福山通運)のように、宅配便(両社ともに約1億2000万個。シェアは各3%程度と少ない)も取り扱っているが、それもB to C中心で、ヤマトHD・佐川HD・日本郵便の3強に比べれば数量は少なく、特積み事業ほど積極的ではないようである。
  筆者のように、全国各地でトラック運送事業者にヒアリングしたり、トラックターミナルを訪問すると、何とはなしに、特積み事業者の「個性」や「特徴」のようなものが感じられる。個々の事業者についてのコメントは避けるが、各社のターミナルを見ると、経営状況や、客ダネが一目瞭然である。
  ターミナルは構造上、「ホーム上」と「ホーム下」がある。「ホーム下」貨物とは、いわゆるゲテモノと称される、裸貨物、長尺物、袋物、ロット物、積合せ困難な貨物などである。
  ホーム下貨物が多い会社、ホーム上も段ボール貨物の少ない会社、段ボール貨物でも、食品・水物のように、重量品・ロット物が多くケース単価が安い会社、繊維・機械など軽量品が多く、一口当たり個数の少ない会社というように、「垂直分布」している。もちろん収益性は後へ行くほど高くなる。

2.市街化調整区域における開発行為

(1)特積み事業の利点

  特積み事業は、上述のように「不特定多数の荷主の少量貨物を取り扱う」ということから、公共性が高い事業とされている。
  そこで、貸切事業者には原則的に許可されていない、都市計画法に規定された「市街化調整区域での開発行為」、すなわち営業所・ターミナルの建設が認められている。
  かつて、国土交通省からは経団連の「市街化調整区域開発行為を一般貨物自動車運送事業者や倉庫業者にも認めて欲しい」とする規制緩和要望に対し、

「特別積合せ貨物運送事業は、不特定多数の荷主の貨物が大量に持ち込まれる事業所間においてそれらの貨物を組み合わせて長距離にわたり定期的に運送する物流の幹線としての役割を担う極めて公益性の高い事業であり、事業許可に当たっては(中略)、特別積合せ貨物運送事業以外の一般貨物自動車運送事業に比べ厳しい条件が課せられているものであり、また倉庫業は許可制ではなく登録制となっておりその公益性に応じた規制、特例の差が設けられているものと考えられ、公共の利益となる事業の用に供する場合において土地を収用又は使用することができる強い私権制限が認められている土地収用法の収用適格事業としても、特別積合せ貨物運送事業のみが認められ、それ以外の一般貨物自動車運送事業や倉庫業は位置づけられていないものとなっており、公益性には差があるものと認識している」

と回答されている(下線は筆者が付した)。
  「地価の安い『市街化調整区域』に、トラックターミナルが建てられる」というのは、特積み事業にとって大きなアドバンテージであり、今や、後述するように積合せ貨物運送・共同配送などから市場を侵食されている特積み事業にとって「唯一の利点」でもある。
  「荷主専用の物流センターが、特積みのターミナルなのか」という点については、冒頭の特積み事業の3条件(①仕分け、②定期的な運送、③自ら行う)をクリアすれば良いと考えられる。②の定期的な運送は、1日1回でなくとも、極論すれば週に1回でも、車種も大型車でなく2トン車・4トン車でも、自社車両で運行していれば、事業計画上は問題ないことになる。
  2005年に施行された「物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」では、全国で、既に200件近い物流施設が認定されているが、市街化調整区域の開発については「配慮する」とだけされていて、認定施設イコール開発行為が可能ではない。それだけ、特積み事業は公共性の名の下に、施設の立地に関して配慮・優遇されているといえよう。

(2)狙われる特積み事業

  ところが、この「利点」は特積み事業者にとって、両刃の剣でもある。それは、一つには、特積み事業が荷主からの要請に基づき、市街化調整区域に荷主専用物流センターを建設・賃貸して収益性を高めることができたという「光」の側面である。首都圏だけを見ても、埼玉G出版社物流センター(埼玉県)、Kホームセンター物流センター(千葉県)、A紳士服物流センター(神奈川県)など、多数の事例がある。
  「影」の部分としては、逆に特積み事業に対するM&Aの最大誘因となってしまったことである。貸切事業者からのM&A事例としては、ハマキョウレックスによる近鉄物流(現・近物レックス)の買収、SBSグループによる伊豆貨物(現・SBSフレイトサービス)の買収などがある。いずれも本業の特積み事業を買収するというよりは、特積みの市街化調整区域開発「特権」を買い取ったとみるべきであろう。
  近鉄物流については、大手倉庫業者も買収に乗り出していたようである。
  ハマキョウレックスは、取得した特積みの市街化調整区域開発「特権」などにより、荷主専用物流センターの開発を進めており、近々25カ所になると報じられている。
  最近の特積み事業者による営業所開設では、安全輸送(本社:横浜市、車両400両弱。2002年特積み事業開始)が、横浜市瀬谷区に新規営業所(1600㎡)を開設すると報じられている。

※次号へつづく


(C)2016 Masayuki Hasegawa & Sakata Warehouse, Inc.


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