ロジスティクス・レビュー

第35号ロジスティクスにおいて競争優位に立つためには~外資系企業のロジスティクス戦略と日系企業のロジスティクスへの取り組み~(2003年07月04日発行)

執筆者 木村 徹
西濃シェンカー株式会社 課長
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1985年4月 渋沢倉庫株式会社入社
      配属部署(通関部門・貿易代行部門・海外引越部門・大井埠頭の保税倉庫)
    • 1997年2月 同社退職
    • 1997年3月 リーボックジャパン株式会社入社 ロジスティクス部 課長代理
    • 1999年10月 同社退職
    • 1999年11月 マースク株式会社入社
      マースクロジスティクス株式会社 SCM課 課長
    • 2002年8月 同社退職
    • 2002年8月 西濃シェンカー株式会社入社 ロジスティクス部 課長
      現在に至る。
    所有ライセンス 通関士、ジェトロ認定貿易アドバイザー、危険物取扱者、海技士(Navigator)他
    誌紙出稿
    • 流通設計21(旧 ロジスティクスジャーナル) (2001年1月より現在連載中)
    • ジェトロセンサー (2000年11月&2002年2月)
    講演実績
    • サカタウエアハウス ワークショップ
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:貿易取引と為替決済)
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:ロジスティクスの実際)
    • (財)静岡県国際経済振興会 (内容:物流企業の生残り)
    • ジェトロ埼玉 貿易実務講座 (内容:ロジスティクスの実際) 他
    所属学会
    • 日本貿易学会
    • 日本物流学会

目次

1.序章

 中国はWTOへ加盟後、誰もが知っているように世界の工場としての地位を不動のものとしその勢力を今もなお加速度的に増加させている。
 また欧州域内でのE.U.は東欧諸国にまで広がりつつあり、安価で競争力のあるコストがもてはやされている。自動車産業の場合で考えると自動車製造の中心的役割であったドイツから東欧にシフトしつつあり、ドイツの雇用問題を深刻化させておりUn-employee率も10%近くにまで増加している、これは10人に1人が職がないことを指している。東欧の製造品質や、労働に対する意識が未だに低い地域があるもののこれらは年を経るに連れてパフォーマンスが上がって来ることは間違いないであろう。
 日本も、規制緩和の波を受け、水際ではNACCS、TEDIや港湾EDI等のe-化の波が押し寄せてきている、また陸上では官の独占業務であった郵便の民営化が2003年4月より始まり、郵便局ではトヨタ方式を取り入れようと講師を招いて改革に努めている。

 これらの変革に乗り遅れないようにするためにはどのようにしたらよいのであろうか。
 また、経営資源を何に投資したらよいのであろうか。世間ではITと騒がれて久しいがどのようなソフトや機能が自社にとって重要でありかつ必要なものなのであろうか。ERP、SCMソフトや在庫管理ソフトを導入したが活用方法がわからず、また運用が上手くいかず何億円または何十億円と投資をしたが価値を見出せない企業も少なくないであろう。

 この変革の時代の波に巻き込まれ、翻弄され、そのうねりから脱出出来ない企業も多いに違いない。
 ここでは、より小さくなった地球を舞台にビジネスを行う場合の”物流(ロジスティクス)”にフォーカスして、グローバル・ロジスティクスの舞台でいかに生き抜くかの参考にしていただけたらと思う。

2.SCMからSCIへ

 SCM(Supply Chain Management)は、「供給連鎖」と和訳されており「全体最適」のことを指している。これは調達物流または販売物流において、必要な物を、必要な数量を、必要な場所に、必要な時に供給することを意味しており、トヨタ自動車が実践している「かんばん方式」とコンセプトは殆ど同じであると言っても過言ではないであろう。

 このかんばん方式とSCMの大きな違いは何かというと、前者は工場の自動車組み立てライン上で部品数量の減少により発注が必要になったときに”かんばん”と呼ばれている発注表(板)を工場の「人間」が回収して決められたポストに入れておくと、部品メーカー(下請け会社)がそれを回収し、その部品を製造もしくは調達して工場にかんばんと共に納入するという方式である。後者であるSCMはこれをコンピュータ化したものである。
 これら両方のコンセプトは共にバリューチェーン(価値連鎖)の発展形であると言うことも出来るであろう。このバリューチェーンとは付加価値連鎖のことをいい購買活動から最終消費者への販売やサービスまでの一連の動作を分割して考え、各々のファンクションを個別に分析することによりそれぞれの優劣を容易に判定・究明できるものである。
ポーターはこれを9つの価値創造活動に分割して表している。以下に、この9つの価値を記載する。

「五つの主要活動」
 ①購買物流
 ②製造
 ③出荷物流
 ④販売とマーケティング
 ⑤サービス

「四つの支援活動」
 ①調達活動
 ②技術開発
 ③人事・労務管理
 ④全般管理(インフラ)

 然しながらかんばん方式とSCMの間に大きな違いが一つある、それはかんばん方式にはお金の流れが伴っていないが、SCMとして機能するためにはお金の流れも伴わなければならず連動していなければならないからである。つまり「物の流れ」、「情報」そして「会計(お金)」が一つになって繋がってこそ真のSCMといえるのである。
 SCMは、ERP(Enterprise Resource Planning)やSCP(Supply Chain Planning)ソフトを活用することによって生産予測・物流等を人間の手を介さずに機械的に行うことでミスを最小限に抑え、かつ一番コストのかかる人員の削減も一緒に行うことによってトータルコストの削減を行おうというものである。また、それを行うことによって在庫数量の圧縮にもつながるためキャッシュフローマネージメントも効率的に行うことが可能になり、企業の運転資金の調達、在庫を保管していたスペースの削減等、色々な利点が複雑に絡み合いながら全体的に企業の業績を伸ばしていくツールの一つである。
 今までの物流やロジスティクスという次元ではあくまでも一つの会社内での取り組みであったが、SCMは企業という枠を飛び越えた企業間のコラボレーションがなしえたものであり、コラボレーションが生み出した産物と言ってもよいであろう。

 アメリカにおいてSCMの推進を行っている「サプライ・チェーン・カウンシル」ではSCMのことを次のように定義づけている、「顧客に価値をもたらす製品、サービス、情報を提供するビジネスにおいて、原材料の供給者から最終需要者に至る全過程の個々の業務プロセス全体を一つのビジネス・プロセスとしてとらえ直し、企業や組織の壁を越えてビジネス・プロセスの全体最適化を継続的に行う、製品・サービス」。

 但し、現在世間で使われているSCMという言葉は本来の形で使われているであろうか?
 製造業者(荷主企業)、流通業者や物流企業では「SCMがキーワード」となっているが、SCMの本質がなんだか分らない中で何でもかんでも、ビジネスにSCMという名称をつける事によって言葉のファッションに乗り遅れまいと頑張っているように見受けられる。これに関しては荷主企業も物流企業も大差がないであろう。
 ファッションではなくリアルなものとしてのSCMを実践するためにはSCP(Supply Chain Planning)とSCE(Supply Chain Execution)に細分し、それぞれの差を明確にすることによってそれを実践するとより分りやすくなる。

 SCMの中での物流企業の役割を見た場合、荷主企業が作り上げたSCMシステムの物流部分のJIT(Just In Time)を実現させるために、その業務を遂行するという意味合いが強い。
 そのために物流企業は自社で開発した、または市販ソフトを活用したトラッキングシステム(貨物追跡システム)や倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)を活用することによって、今までのような単なる物流(後処理型物流)ではなく、IT情報を活用した物流と情報を同期化させたサービスを行うことが顧客獲得の一つの要件となりつつあり、今後それらが加速されていくのは間違いない事実である。
 そして自社のトラックや倉庫等のアセットだけにこだわらない真の3PL(Third Party Logistics)プロバイダー、4PL(Fourth Party Logistics)プロバイダーとして顧客にトータル・ロジスティクスをサービスすることでその付加価値が増幅されていくことであろう。その意味では、システム面で見た場合に物流企業はSCM、SCPというよりもSCEということが言える。

 しかし、これらSCM,SCPやSCEよりも「SCI(Supply Chain Integrator)」という言葉を用いてはどうであろうか。トラック、貨物船(コンテナ船)、航空機等のさまざまな輸送手段を駆使して貨物を時間的、費用的に一番効率的に移動させ、それらをWMSが完備されたTC(Transfer Center)やDC(Distribution Center)といわれる倉庫において物流加工を行いエンドユーザーへ出荷する。
 そしてこれらを行うための手段は自己の道具に限定をしないということであれば、サプライ・チェーンをロジスティクス面で統合してマネージをしていると言え、SCMよりもより明確になるのではないかと思う。しかし若し出来るならばSCLI(Supply Chain Logistics Integrator)といいたいところであるが、3文字言葉が主流なのであえてSCIとした。

3.ベンダー・マネージメント

 ここでいうVender(s) Managementとは一般に言われているVMI (Vender Managed Inventory)の事ではなく、物流企業から見た観点で物流企業が荷主企業のために行う「Vender(輸出者)のManagement(管理)」を意味している。

 今までのロジスティクスレベルで行っていた物流の場合(ここでは、EXW at Factory Basisとして考える)は、輸入者(荷主企業)から指示された輸出地でのベンダー(製造工場や輸出者)から貨物の引取作業、輸出通関、コンテナ詰作業、コンテナ・ヤードへのコンテナ運送(ドレイジ)等のFOB作業、海上輸送や航空輸送、輸入地での輸入通関、コンテナ運送(ドレイジ)、コンテナからの荷卸作業等を荷主企業からの別々な指示に従って期日までに行うという従属的作業であった。

 しかし、ベンダー・マネージメントのコンセプトでは、輸入者に代わって全ての物流をLSP(物流業者:Logistics Service Provider)がLSPの判断で取り行うというものである(当然、内容によっては輸入者(荷主企業)もしくは輸出者の判断を仰がなければならないものもあるが)。

 このベンダー・マネージメントを簡単に説明すると、LSPは輸入者がおこなった工場への発注情報を輸入者から全て入手し、その情報を元に輸出地にて各ベンダーから貨物を集荷して輸出通関を行い、船積みを行うというものである。ここでのポイントは、物流についてはLSPが輸入者に代わって全てコントロールするという事であり、LSPは物流に関しては輸入者側から全権委任されていると解釈することが出来る。

 これをオペレーション単位で説明していく。

 これが出来るのもロジスティクスがe-化により発展してきたからであるといえる。
 そして現在のロジスティクスはEDI(Electronic Data Interchange)に始まり、Bar-Code、Track & Trace、Internetが必須であり、これらなくしてグローバル・ロジスティクスを行っていますと標榜することは恥ずかしいことであろう。
 また、輸出地もしくは輸入地の貨物受入施設つまり倉庫には倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)が備えられているのが常識となっており、貨物の入庫日、出庫日はもとより、エージング(倉庫へ保管されている日数)をコンピュータ上で管理したり、最適棚割りをコンピュータではじき出すことも可能になってきている。これらの情報はインターネットで荷主が閲覧できると同時にインターネットを通じて倉庫への出荷オーダーを行うことも可能である。また物流企業にとっては何千種類、何万種類もある商品管理を少ない人数で効率よく出来る、最適棚割り機能にいたっては倉庫内労働者の動線を最小のものとすることも出来るので倉庫内作業の効率化にもつながる。

 また、ここ数年以内に非接触タグ(RFID:Radio Frequency Identification)が主流となっていくことは間違いないであろう、それにより、より一層e―化が加速度的に進化していくと同時に流通形態にも変化が見られることは間違いない。
 しかしながら、このベンダー・マネージメントという手法は外資系企業では多く用いられているが、日経企業で扱われている比率は少ないようである。これについては次の章で記載する。

4.外資系企業の戦略と日系企業の戦略

 アジア地域は世界の工場として製造場としての屋台骨である、それは生産コストが安価であるという事実に加えて製造に対するパフォーマンスが上がってきているからである。これは中国がWTOに加盟したことによってより明確化されてきた。

 一般的にこれらアジアの国々における製造業者の選定について、多くの外資系荷主企業は協力業者(工場)やEMSを活用している、これは製造に対するアウトソーシングと言えこのような荷主企業はファブレス企業と言われている。
 この協力業者とは案件ベースで製造委託を行うというレベルのものであり、商標権の使用についての許諾、製法の開示、金型の貸与、製造管理者の派遣を行ったり、守秘義務等を含めた契約書を取り交わすことによる関係である。そしてこれらの企業の間に資本関係は無いのが一般的である。

 一方、日系企業の場合は外資系企業のような協力業者ではなく自社資本を投資した製造業者(会社)に日本人を駐在させ、自分達の手で全ておこなうという方法をとっている企業が多く見受けられる、当然物流についても製造と同様に自社で自社社員のコントロールのもとにおこなうのが一般的である。
 この場合グループ企業としての結束力が高まるのは言うまでもないことであるが、物の価値の移り変わりが激しく人の意識も変わりやすい現代ではフレキシビリティーがないともいえるであろう。
 そのために、外資系企業のような物流のアウトソーシングが、なかなか進んでいないという現状が多く見受けられる。
 どちらが良いかはその企業の戦略や戦術によって左右されるので一概には言えないが。自社で資産を持って人を雇って運営を行っていくのは今の時代リスクが大きいのではないのであろうか。

 このような意識の違いはどこから生じてくるかというとアウトソーシングが出来るか出来ないかの一言に尽きる。完全な形での物流のアウトソーシングを行っている企業の場合は、効率的なベンダー・マネージメントのアウトソーシングが可能である。完全な形でなければ、荷主企業と複数の物流企業との間での発注情報のインターフェースの同期化を完璧に取らないと、ベンダーに対する指示がどこから出てくるか分らないという事態が起こりうるからである。まさに、「船頭多くして船動かず」という状況に陥ってしまうであろう。

 今後、日系企業も製造に対するアウトソーシングという意識がより強くなっていくに違いあるまい。そのときは当然物流に関してもアウトソーシングが活発になっていくであろう。物流に関して言えば製造よりも比較的容易にアウトソーシングを行うことが出来る。そのためにもLSPはそれに対応することが出来るインフラを備えることによって、荷主企業に対してもコンペティター(競争相手)に対してもより有利にビジネス展開が出来るようになる。 そのためにもLSPは真の3PLプロバイダーもしくは4PLプロバイダーとしての効率的提案型ロジスティクスを行うことが出来る企業への変換が要求されている。

5.外資系企業の情報を活用した戦略と日系企業の情報の重要性に対する認識

 外資系企業の場合、ロジスティクスから生じる各種の情報を重要視しておりこの情報を戦略的に活用している場合が多い。
 ここで言う情報とは、

 ①工場にて製造された商品が何日間工場内に蔵置されているか、
 ②工場出荷から本船へ積み込まれるためのリードタイムは何日であったか、
 ③どの船会社の船に積まれどのルートを通って何日で最終船降港に到着したか、
 ④最終船降港到着後輸入通関に何日費やしたか、
 ⑤その後最終仕向け地へ配達されるまでに何日もしくは何時間かかったか、
 ⑥最終仕向け地が倉庫であった場合、そこに何日間保管されていたか。

等の情報を単位ごとに分類したものである。当然これらの情報は船積単位であり、発注番号(P/O)単位であり、そして商品番号(SKU(Stock Keeping Unit)単位でなければならない。

 商品の購入には当然のことながら決済が伴う。CIPよりもCFR、CFRよりもFCA,FCAよりもEXWと輸入者による責任範囲が広がれば広がるほど輸入者は商品単価を安く購入することが出来ると共に、船積も輸入者のコントロール下で行うことが出来る。しかし、それに伴い商品代金の支払いは早くなるので輸入者による金利負担が大きくなることも検討要因の一つとしなければならない。この金利を少しでも減らすためには少しでも早く商品を売却することが必要である、そのためにはより早くより確実に運送を行うという必要性が生じてくる。
 それを、輸出入を伴う状況でいかに管理をするか考えたときに、これらの情報が必要になってくるのである。言い換えれば船積における「ABC分析」を恒常的に行うための情報の収集と蓄積と言えるであろう。

 また、ASN(Advanced Shipping Notice)という方法を用いて貨物が輸出地を出港したと同時に輸入地にロジスティクス情報を送る手法をITを駆使して行っている企業も多い、特にERPを使用している企業ではそれが顕著である。
 輸入地の倉庫ではASNからの情報を受けて、どの商品が積載されている、どの海上コンテナが、いつどの港に到着し、いつ輸入通関の許可が得られ、そしていつ倉庫へ到着するのかがスケジューリングされているので、倉庫では出荷トラックを早い段階で手配しておくことが可能であり、保管という機能も倉庫での保管から、船の上での洋上在庫としての保管に代えることが出来てきている。それによってリードタイムも倉庫での保管もミ二マイズすることが可能となってくる。
 そのうえ、洋上にて貨物の最終仕向地変更のアレンジすることも可能である。それらの無駄な動きを極力排除した運営は環境にも貢献するであろうし、キャッシュフローを考えた経営にもつながっていくことは間違いない。

 多くの外資系企業はこのようにロジスティクスから生じた物流情報を単なる物流という観点でとらえているのではなく経営の視点から見て有効かつ効率的に活用している。

 今までは輸入に視点を置いて話してきたが、輸出ビジネスについて考えた場合FCA契約で輸出する場合にはインコターム上では商品が船会社、フォワーダー等に貨物が引き渡された時点で輸入者に責任が移転する、また輸出のための船舶を決定するのも輸入者の責任において行われるべきものであるので、多くの場合フォワーダーに貨物を引き渡した時や本船に積載しB/Lが発行されればそれでビジネスは終わりであるという考えを持っている人が多いがそれでよいのであろうか。
 顧客満足(CS:Customers Satisfaction)を追求した場合、船積を行った後の航海日数や海上運賃(もしわかるのであれば)やその他の情報を他船社や他フォワーダーと比較したものを輸入者(買受人)に情報として提供することで、リピート購入を喚起する事につなげる事も可能であろう。ここで重要なことはただ単に情報収集するということではなく、集積した情報をどのように活用するかと言うことである。活用されていない情報は「紙くず」同然の価値しかない。いや「紙くず」以下の価値しかない、何故かというとそれをデータストレージしておくという大きな無駄がありそれに要するコストが発生しているからである、不要なものを、また使用しないようなものをわざわざ大事に保管しておく必要はない。
 情報を集めることで満足しているコレクターは競争優位に立つことは出来ない。

 この外資系企業と日系企業の違いがどこから生じてきたかというと、情報に対する金銭的認識の違いからであろう。日本では水道の蛇口から出る水は非常に安価であり、また日本国中飲めない水道水というものは殆どない、それにより日本人の意識として水はいつでもどこでも無料で手に入るものであるという認識である人が多い。
 日本人の思考として、情報に関しても水と同じ考えである人が多いように見受けられる。そして、多くの日系企業は物流会社に言えばロジスティクス情報は無料で手に入ると考えている人が多い。
 それと比較して外資系企業の場合は、必要な情報は対価を払ってまでも入手しようとする。それは、その情報にそれだけの価値があることを知っているからである。

 当然、物流会社も対価を得ることが出来る場合と出来ない場合では必然的に収集することが出来る情報の内容にも差が生じてくるといえる。そしてこの情報というものは蓄積されていくことにより、より大きな価値を生み出していくものである。

 ちなみに、このロジスティクス情報を上手に戦略として活用しているのがウオールマートである。彼らはこの情報を分析し実務に活用することによって、今までコストセンターであると認識されていたロジスティクスをプロフィットセンターとしてとらえることが出来、世界で一番の売上を誇る企業になったのである。
 これから日本に進出してくる際にもロジスティクス情報を活用したビジネスをおこなうであろう。言い換えれば、ロジスティクス情報を用意・収集することが出来ない物流企業はウオールマートとの取引が出来ないのではないであろうか。また、ウオールマートに認められた物流企業はどのシーンにおいても一流であるというお墨付きをもらったともいえるであろう。

6.情報の入手方法

 今まで記述してきた中で、VMI, SCM, SCP, SCEやSCIを推進していく上で一番重要なことは「情報」である。この情報をどの段階でどこからどのように入手し、それをどのようにコンピューターシステムに取り込み、それらの情報のデータ・マイニングをどのように行いどのように活用するかが重要である。

 いくら情報が豊富にあるといっても活用しなければ全く価値がないということは前述したとおりである。そしてこれらのデータも蓄積させるほどに意味が出てくるので、早い段階で必要データを抽出して同じフォーマットでデータを蓄積させ、高度な統計解析手法を用いてより高い時限での戦略を練ることがロジスティクス情報を活用した勝ち組みになるための道である。
 なぜならばロジスティクスから生じるデータは調達段階と販売段階また静脈物流等企業の根幹を担っている部分から生じるものであり、生の一番重要なデータがあるからである。

 これらのロジスティクスから派生してくる情報の入手はどのようにすればよいのであろうか。
 一つはロジスティクスに関するデータを自社内で自社のスタッフを活用してデータ・マイニングを行う方法であり、もう一つはアウトソーシングを行うことである。アウトソーシング先としては自社に蓄積されたデータをIBMのような会社に委託するのも一つであるがその場合はしっかりとしたデータが用意されている場合のデータ・マイニングということになるので今回はこの委託先は考慮しないでおく。
 その場合、ロジスティクス・データの入手が容易に出来るのはやはりLSPである。しかし、従来の物流レベルでのロジスティクスの場合は輸出地でのFOB業務、海上(航空)輸送、輸入地での輸入・保管・配送業務等を別々のLSPに委託しており、また各々の業務もその中で何社にも委託されているというのが現状である、その場合データは何社からも違ったフォーマットで送られてくるのでデータ・マイニングを行うことの難しさが生じてくる。

 そこで3PLや4PLといわれている会社が荷主企業の物流部門という位置付けでそれらの全ての会社や物の流れを管理することによってデータのマイニングが容易になってくるのである。そのためには3PLプロバイダーや4PLプロバイダーはロジスティクスの管理と共に、これらのロジスティクス・ソフトの構築が荷主企業を取り込むための差別化戦略のために必要となってくる。

 そしてそれらの情報が海や国境を越えた物の動きの中でのASNとして活用することも出来、それが洋上在庫の把握、JIT、キャッシュフローマネージメントやCRM(Customer Relationship Management)にもつながってくる。

7.企業の変革

 物流企業にしても荷主企業にしても、大きな変革無くして優位に立つことは出来ないであろう。ビジネス・リエンジニアリングについてはマイケル・ハマーが次のように言っている。
 「一言で言うと「初めからやり直す事である」。既存のものを修正したり、既存的な構造には手を付けずに斬新的な変化を起こすと言う意味でもない。また、パッチワークのような修正や、既存のシステムを応急手当することでもない。そして、「リエンジニアリング」をきちんと定義づけすると次のようになる「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」。そしてこの中には4つのキーワードがある、それは「根本的」、「抜本的」、「劇的」、「プロセス」である。」

 BPR(Business Process Reengineering)を行っている会社も多くあるであろう。しかしマイケルのいうようなパッチワーク的な修正に終わっている事が多いのではないであろうか。
 「BPR=スクラップ・アンド・ビルド」であるというコンセプトで、企業が行うのではなくそこで働いている人達によって「成功」を手に入れていきたい。

8.結び

 これらロジスティクス・データのコンピュータへの入力という作業は必ず付きまとい誰かが行わなければならない。
 アウトソーシングという観点から考えるとLSPが行う事になり、それらは一般的にはOrigin Countryといわれている輸出地の従業員によって行われている。
 工場への発注情報等のいくつかの情報は、すでに荷主企業よりEDI等で入手していることと思う、またいくつかの情報はバーコードや非接触タグからデータとして電子的に取り込むことが可能であるが、多くの情報は人海戦術で入力しなければならないのが現状である。
 現在、多くの工場はアジアに集中しておりデータのインプットも安い人件費でまかなうことが出来ているが、これらのアジアの国々は発展途上であり、これらの国々でさまざまな分野での雇用機会が上昇してくると人件費が上昇してくるのも間違いない事実であり、それを回避するために人件費を含めた総コストを低減させるための新しい手法を構築する必要も生じてくる。

 「しかしながら、社会の重心が知識へ移行していった三つの段階、「産業革命」、「生産革命」、「マネジメント革命」の根底にあったものが、知識における意味の変化であった。こうしてわれわれは、一般知識から専門知識へと移行してきた。かつての知識は一般知識であった。これに対して、今日知識とされているものは必然的に高度の専門知識である。」とドラッカーも説いている。

 そして、最近のコンピュータ技術の発展はまさに高度の専門知識の集合体であると言っても過言ではないであろう。現在行われている人海戦術によるデータインプットも近未来的には手による入力ではなくマイクを通じて行う声音による入力やその他の方法による簡易的な入力方法が一般的になるであろう。
 そのとき、これらがロジスティクス・コストへどのように反映してくるか、その費用がロジスティクス・データとしてのコスト・パフォーマンスにどのように影響してくるかの検討も今後必要になってくる。

以上


 【参考文献】
  • P.F.ドラッカー『プロフェッショナルの条件 』ダイヤモンド社,2000年.
  • M・ハマー=J・チャンピー『リエンジニアリング革命』日本経済新聞社,1993年.
  • M.E.ポーター『競争優位の戦略』,ダイヤモンド社,1985年.



(C)2003 Toru Kimura & Sakata Warehouse, Inc.


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