ロジスティクス・レビュー

第344号 物流業界のおける人材不足の対応に関する考察(後編) (2016年7月19日発行)

執筆者 浜崎 章洋
(大阪産業大学 経営学部商学科 教授)
    執筆者略歴 ▼

  • (略歴)
    • 1969年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
    • タキイ種苗、日本ロジスティクスシステム協会、コンサルティング会社設立を経て現職。
    • 2004年度、2013年度日本物流学会賞、第12回鉄道貨物振興奨励賞特別賞受賞。
    (著書)
    • 「ロジスティクスの基礎知識」(海事プレス社)
    • 「ロジスティクス・オペレーション2級」(共著、社会保険研究所)
    • 「Logistics Now 2005」(共著、輸送経済新聞社)
    • 『通販物流』(2014)海事プレス社 など

目次

前号(2016年7月7日発行 第343号)より

【はじめに】

  前編では、浜崎ゼミの学生が昨年実施した就職活動を終えた関西の大学生を対象にした陸運会社のイメージに関するアンケート調査結果を紹介した。本号では、浜崎ゼミの学生が本年に実施した物流会社・物流子会社に就職した若手社員に対する就職活動時のアンケート調査結果について紹介する。

【アンケート調査概要】

本年度(平成27年度)、浜崎ゼミの学生が、物流会社・物流子会社に就職した若手社員、具体的には入社1~2年目の社員を主な対象に、就職活動時のことについて、アンケート調査を実施した。アンケート調査概要は以下の通りである。

・対象: 物流会社・物流子会社に入社した若手社員
・方法: 物流会社・物流子会社の採用担当者を通じて対象となる社員にアンケート用紙を配布いただき、回答者にはメール
等で我々に直接返信いただいた。
(生の声を聞くため、採用・人事担当者を経由せず回収。一部例外あり。)
・内容: 就職活動時の状況について
・回答: 132名(男子85名、女子47名、42社に依頼、うち23社から回答を得た)

【アンケート調査結果】

調査結果について、以下、抜粋して紹介する。

1. 物流業界、就職した会社の志望度
物流業界が第一志望だった方は約42%、第二志望、第三志望は少数で、特に志望なしという方が約36%と両極端な結果となった。
また、就職した会社が第一志望だった方は約39%、特に志望していなかったという方が約38%と、こちらも両極端な結果となった。
物流業界が第一志望、就職した企業が第一志望だったという方が約40%おられることは嬉しくもあり正直驚いた。一方で、特に志望していなかった方も40%近くいることも興味深い結果である。
2. 就職活動前、就職活動中の物流会社のイメージ
<良いイメージ>
・世の中の基盤、必要不可欠なインフラ
・多くの業界との付き合いがある
・礼儀正しい など
<悪いイメージ>
・体育会系、男社会、体力勝負、しんどそう
・ハードワーク、長時間労働
・裏方、地味、目立たないなど
悪いイメージについては、前号で紹介した大学生に対する結果とも合致している。
3. 物流業界を就職先として意識し始めた時期
就活開始前、就活開始時、就活中盤、就活後半の4つの選択肢では、開始時が約52%と多く、また後半は約23%と次に多かった。就活前から意識していた方は約17%であった。
4. なぜ、物流業界に入社したか
希望の業種・会社だった、就活中に良い会社・業界と感じた、学校等から勧められたなどの選択肢からは、就活中に良い会社・業界と感じたからという方が約50%であった。また、内定時期が早かったからという意見もあった。
5. 物流業界に入社して良かったか
良かったと回答した方が86%と非常に高い結果が出た。その理由としては、
・単純作業ではなく仕事内容が毎日新鮮
・様々な方面で多くの人との出会いがある
・人々の役に立っていると感じやりがいがある
などの意見があがっていた。
一方、良くなかったと回答した14%の方は、「長時間労働」、「想像以上に時間に追われる」などが上がっている。

【調査結果より導きだされるアイディア】

  「就活中に良い会社・業界と感じた」が約50%、「物流業界に就職して良かった」が86%もおられることから、大学生に会社説明会や採用選考に参加してもらえれば物流業界の良さを伝えられるのではないだろうか。また、会社に入ったら物流の仕事に満足度が高いこともあり、物流企業の採用担当者は、大学生に自信を持って物流業界を薦めても良いのではないだろうか。
  物流業界は他の業界に比べ認知度や人気は低いが、就活中や就職後に魅力を感じる業界だと思われる。ただし、人気や認知度が低いという事実も見逃せない。人気や認知度を高めるためには、各社が個別努力をするだけでなく、業界全体で取り組むことが必要であろう。

【小括】

  今回の調査で、物流業界に就職した86%の若手社員にとって物流業界は魅力がある職場であるという結果が出た。これは、物流業界にとって明るい兆しではないだろうか。ただし、前号で紹介した昨年実施した大学生へのアンケート調査では、物流業界の会社説明会に参加した学生はわずか10%程度であった。よって、物流業界が優秀な学生を採用するためには、就活前、就活中の大学生に対して物流業界の認知度を高め、会社説明会や採用選考に参加してもらうことが重要と思われる。
  「そのために何をすべきか」については、物流業界の各社は、若手社員や内定者の意見やアイディアを聞かれてはいかがであろうか。
  (筆者のゼミ生たちもアイディアを出しているが、読者諸賢の会社が独自で取り組まれることで、より面白いアイディアが出てきそうなので、本稿ではあえて紹介を控える)

【最後に】

  本稿で、「物流業界に就職して良かったと回答した若手社員が86%」と紹介しているが、1つ注意いただきたい。アンケートに回答いただけた多くの方が、「物流の仕事をして良かった」ので積極的に協力してくださり、「良くなかった」方の多くはアンケートに回答してくださらなかったという可能性があるということだ。この点については、来年度の調査で、確認していきたいと考えている。
  なお、本調査は、平成27年11月に開催された第7回物流関連ゼミ生による研究発表会(NS物流研究会)において、浜崎ゼミの学生(井川君、大野君、酒井君、田中君)が調査・発表した内容をもとに筆者が整理したものである。誤謬は全て筆者に帰するものである。

以上


【参考文献】
  • 井川名人、大野綾子、酒井啓輔、田中裕子(2015)『物流会社に就職した若手社員への就活アンケート分析による物流会社の採用に関する一考察』(第7回物流関連ゼミ生による研究発表会、発表資料)


(C)2016 Akihiro Hamasaki & Sakata Warehouse, Inc.


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