ロジスティクス・レビュー

第34号VMIのニーズと求められるSCM対応型ロジスティクスシステム(2003年06月13日発行)

執筆者 鈴木 伸彦 
株式会社近鉄エクスプレス 開発部SCMセンター 所長
    執筆者略歴 ▼

  • 経歴
    • 1956年 長崎県佐世保市生まれ
    • 1982年 獨協大学外国語学部英語学科卒業
    • 1982年 株式会社近鉄航空貨物(現 近鉄エクスプレス)入社
    • 1987年 米国近鉄エクスプレス ニューヨーク支店 セールスマネジャー
    • 1991年 同 ボストン支店 スタッフマネジャ
    • 1996年 株式会社近鉄エクスプレス 銀座MNC支店 第一課長
    • 1998年 同 輸入営業部 課長
    • 2001年 同 開発部 SCMセンター 所長
      現在に至る
    講演
    • 日本ロジスティクスシステム協会主催セミナー
    • サカタウエアハウス主催セミナー 等

 昨今VMI(Vender Managed Inventory)のニーズが非常に高まるなか、そのニーズに対応するロジスティクス・システムとは一体どういうものなのかを当社システムをもとに纏めてみた。

 当社には昨年より色々なお客様からVMIを検討しているといった声を多く聞くようになった。VMIと一口に言っても、その内容により幾つかに分類できる。

 大きく分けてVMI倉庫つまりロジスティクスの構築を日本国内で行うものと、それを海外で行うものとがある。前者は貨物が海外から入ってくるため当社では「輸入型VMI」と呼び、後者は逆に日本から貨物が海外のVMI倉庫に出ていくため「輸出型VMI」と呼んでいる。輸入型VMIではさらにそのニーズの主体者がどこにあるかにより、日本のPCメーカー等所謂ユーザー主体のものと、主に米系のメーカーであるベンダー主体のものとに分けられる。 

 最近当社に寄せられるVMIのニーズの一例をあげると下記の通りとなる。このうちの幾つかはすでにロジスティクスを構築してオペレーションを開始している。

輸入型VMIのニーズ

輸出型VMIのニーズ

 輸入型VMIはほとんどが製品(完成品)または半完成品であるため、SMI(Supplier Managed Inventory)と言える。 また、輸出型VMIは海外(最近では大半が中国)にその生産拠点(工場)を移している日本のメーカーからのニーズであり、その工場への部材の供給のための倉庫をVMIとして工場の近くに置くという、調達物流のなかでのロジスティクスの構築である。そのためVMI倉庫は最近のニーズでは大半が中国の工場近くであり、そのなかでも保税の展開が容易な上海や華南の深?、あるいは国際輸送の窓口となる香港でのニーズが際立っている。

 実はこの4月に輸入型VMIにおいて大きな変革をもたらす事象があった。それは関税法の第95条により日本に居住する代理人(税関事務管理人)をたてて、非居住者であるベンダー名での通関や保税蔵置場への倉入れ申請が可能となったことだ。つまり、今まではベンダー名で保管するロジスティクス形態であるVMIの構築が日本国内では困難であったのが、今後は問題なく行えることとなったのだ。この関税法の改正によりこれからますます日本側でのVMIニーズが増加してくるとが予想される。

 既に当社では、関連会社の(株)近鉄e-サポートが輸入者(物品の売買は行わないベンダーのパートナー)となり、米系通信機器メーカー(A社)のVMIロジスティクスモデルを日本で構築している。

 さて、それではVMIにとってどのようなロジスティクスITが要求されるかというと、まず第一にサプライチェーン全体のvisibilityを可能にしたシステム、つまりサプライチェーン全体の流通在庫やカーゴ・トラッキング情報といったものが求められる。これは、もともとVMIがユーザー側の在庫をベンダー側に移すことにより、ユーザーにとっての大きなメリット(在庫を持たずに製品納入までのリードタイムは最小ですむ)があるのに対して、ベンダーにとってもそのサプライチェーン・ロジスティクス全体をコントロールすることにより、全体の流通在庫の削減やボトルネックを極力抑えた全体最適化が可能になることになる。このため、当社では流通在庫全体が見える仕組み作りとして、発地側と着地側の倉庫の在庫の一元管理に加え、輸送中の貨物も流通在庫として捉えてサプライチェーン全体の流通在庫を一元で管理できるシステム「G-SCM」を開発した。

 勿論輸送中の貨物も流通在庫として見るためには、その詳細情報をシステムに反映させる必要がある。こうしてできたシステム「G-SCM」はインターネットを通してどこからでも見ることができる。 (下記画面イメージ参照)

さらに、ベンダーがSCMを進めていくためには需要予測をより正確に把握して最適な生産計画を作り上げる必要がある。それらは、最終的にはベンダーが自社の生産能力や部材調達状況、販売戦略や環境変化といった色々な状況を加味して決定されものであるが、ロジスティクスのシステムにおいてはそれらを最大限にサポートする仕組みが要求される。

 下記はそれらをサポートする「G-SCM」の機能の一例である。

それぞれのアイテムごと、倉庫ごとの在庫状況が
どのように変化してきたかを見るStook Movement機能

 

それぞれのアイテムごとに在庫日数を月別に一覧で表示、
不良在庫を検索する機能

 

 その他VMI独自の機能として、複数のベンダー(或いは複数のユーザー)から在庫検索をもとに、それぞれのベンダーだけの(あるいはユーザーだけの)在庫情報を提供する機能や、VMI倉庫にユーザーからプル(シップメントオーダー)が掛けられる仕組みや、出庫時点でベンダーに売りが立つ仕組み等が求められる。これらの機能に加え「G-SCM」では、シップメントオーダーのデーターをそのまま送り状や輸出のインボイスに変換していくSDS(Shipping Documentation System)を備えている。

 サプライチェーン・マネージメントを追求していくことにより、ベンダーにとっても大きなメリットを見出すロジスティクス形態であるVMIは、そのサプライチェーン・ロジスティクス全体をロジスティクス・サービス・プロバイダー(LSP)にアウトソーシングすることにより、さらに大きなベネフィットをベンダーにもたらしていくこととなる。 それは、ベンダーとユーザーの間に立つLSPがいかに有効に機能し、本当の意味でのパートナーシップとなって、両者の物流のみならず商流をもどれだけサポートしていけるかに大きく関わってと思われる。それを支えるロジスティクスのITシステムはその需要に合わせて日々開発や改良を繰り返してしていく必要がある。

以上



(C)2003 Nobuhiko Suzuki & Sakata Warehouse, Inc.


このページのトップへ戻る