ロジスティクス・レビュー

第334号 米国3PL企業にみる輸送管理情報システムの特徴(2016年2月16日発行)

執筆者  吉本 隆一
(オフイス・ロン代表)
    執筆者略歴 ▼

  • 略 歴
    • 1980年法政大学大学院博士課程経済学単位終了。経済理論・財政論
    • 1983年から2005年まで(財)日本システム開発研究所。
    • 2005年から2013年2月定年退職まで日本ロジスティクスシステム協会、主幹研究員
    主な研究開発実績
    • 国際輸送システムの調査研究(基盤整備、パフォーマンス分析、国際陸送制度)
    • 物流情報システムの標準化・調査研究・技術開発(ITS、AIDC、輸配送システム等)
    • 公共事業整備に伴う社会経済的影響評価
    • 立体道路整備、道路一体型物流施設整備等の複合的事業手法開発
    • 物流拠点整備・共同配送等、物流効率化・高度化事業手法の調査研究等

目次

はじめに

  我が国では、基幹系情報システムと実行系情報システムの連携が弱く、その相乗効果が活かされていないと指摘されている。また、輸送管理情報システムにおける配送計画や車両位置の動態管理は、運送状況把握に主眼が置かれており、輸送効率以外のコスト削減策の適用には、あまり使われていないようである。
  他方、米国では、個人事業主としてのオーナーオペレーターが大手運送事業者の情報システムに参画し、その支配車両となって動くという業態の大きな違いがあるものの、3PL事業者の輸送管理情報システムには、個々の企業内システムを超えたサプライチェーン管理が含まれる。本稿では、米国の3PLコンサルタントとして有名なアームストロング&アソシエーツ(A&A)社のウェブサイトに紹介されている3PL個別企業事例資料をもとに、その輸送管理情報システムの特徴を紹介する。

1 米国3PLの概況

  A&A社資料によると、2013年度の米国GDPは、15.9兆ドルで、ロジスティクスコストは1.36兆ドルと8.5%を占め、3PL市場は、その10.6%、1,464億ドルを占めている。ちなみに、日本の数値をみると、GDP6.1兆ドル、ロジスティクスコスト0.52兆ドル(8.5%)、3PL市場はその10.5%、543億ドルであり、米国の3分の1程度と推計されている(http://www.3plogistics.com/3PLmarketGlobal.htm)。
  また、2014年の売上高をみると、米国3PLの上位10社は、C.H.ロビンソンを筆頭に表1にようになっている。なお、後述するペンスク・ロジスティクスは31位、売上高11億ドルとなっている。日本企業では米国日通が、8.95億ドルで35位、米国郵船ロジスティクス、8.91億ドルで36位と推計されている。

表1 米国3PL企業の売上高上位10社

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2 C.H.ロビンソン

(1)会社概要
  C.H.ロビンソンは3PLの世界ランクでは5位に位置している。そのネットワークは世界各国285の事業所と約12,000人の従業員によって運営されており、北米、欧州、アジア、南米に及んでいる。純収入は18億ドルである。5万以上のプロバイダーをかかえる契約運送業者と共に、収入の76%は、関連する国内輸送部門で確保している。2012年にはフェニックスインターナショナルを買収し、海運フォワーダー事業を通じて国際的な輸送管理能力の向上を図ろうとしている。

(2)TMCの概要
  A&A社2008年資料によると、C.H.ロビンソンの秘密兵器は、輸送管理センター(TMC)にあるとされている。TMCのシカゴ本部は、1999年に設立され、ロビンソンの成長にともなって規模を拡大している。TMCは、統合された、透明性の高い、実運送業者から中立的な輸送管理手法を用いており、従業員130名以上、対象とする運送事業収入で11.5億ドル規模となっている。事務所は、シカゴ本部の他に、ミネアポリス、アムステルダムに事業所がある。
  TMC事業の中心は、大手荷主向けの、最適輸送網の構築に関するコンサルティング、モデリング、シックスシグマアプローチ、日次の輸送計画・管理・改善、従業員とITの活用にある。TMSの顧客の多くは、自社の複数の契約運送事業者を利用しており、運賃交渉や運送管理を行っている。主要顧客には、コカコーラ、ジョンディア(農業耕耘機、世界最大の農機具メーカー、正式社名はディア・アンド・カンパニー)、オーシャンスプレイ、テトラパック(飲料包装)等がある。
  TMCの輸送計画ソフトは、顧客の日次の輸送の最適化と実施を管理するソフトウェア群から構成されている。その統合輸送管理システムの最も印象的な部分は、TMCが開発し、知的所有権を有するオンライン・ビジネス・インテリジェンス・ツールである。企業のデータウェアハウスの支援の下に、同ツールは、運用の改善や輸送コスト節減に必要な最先端情報を荷主に提供している(図1参照)。

図1 TMCの荷主向け提供情報例

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(3)テトラパックの導入事例
  TMCは、アジアではムンバイ(2009年設立)と上海(2010年設立)にグローバル管理センターを設けている。テトラパックにおけるTMCとの提携以前の輸送管理は各地域に任されており、輸送管理システムはなく、大半の輸送管理業務は手作業で行われていた。出荷状況は可視化されず、運送業者の管理は理想にほど遠く、運送業者の輸送能力を支援するための検索にもムダな時間が多かった。地方の工場は手作業で運送依頼を行い、トラック出荷後の状況は把握できなかった。運送業者の配送完了確認も手作業であり、不適切な運賃請求や支払いのプロセスは、運賃の二重払い等を発生させていた。加えて、事業情報の管理報告や運送状況管理に関する情報もなかった。
  TMCの支援を得て、テトラパックのグローバルな輸送活動における運送依頼から運送状況管理、配送完了確認、運賃精算プロセスは、全て自動化された。加えて、日次の輸送計画や輸送形態選択は体系的に最適化された。輸送計画から運賃精算にいたる包括的支援の結果、テトラパックでは、製品販売のトレーラー・コンテナ利用率の向上(有効重量の増加)、運送業者の輸送経路の改善、航空便利用の減少、緊急出荷費用の削減、指定時刻納品率の向上といった効果が見られた。

(4)ジョンディアの導入事例
  2007年以前には、ジョンディアの調達物流輸送はその数千社におよぶ各サプライヤーが管理しており、コストの増加と調達サプライチェーン上の不整合が課題になっていた。
  TMCとの会合や予備分析の結果、TMCは、調達輸送管理プログラムの開発によって、一層のコスト削減の可能性があることを確認し、ジョンディアの協力を得て、全調達物流をサプライヤー管理からTMCとジョンディアの管理に移行し、TMCが、輸送網分析、輸送最適化、配送計画やコスト削減手法の適用を通じて調達物流費削減の提案を行うこととなった。
  TMCはジョンディアの協力の下に中央集権化された輸送管理センターを設立し、ネットワーク分析、輸送モデル開発、プールポイントプログラム、TMSの適用を含む支援サービスとジョンディアの国内輸送戦略の管理と実行を行った。この第一段階では、北米の調達資材出荷、ジョンディア物流センターへのサービス部品出荷及びサプライヤーへの通い容器出荷を対象に輸送網データ分析と評価が行われ、輸送管理システムの開発、クロスドッキング及びプールポイントネットワークの開発、特定フリートの利用、マルチストップ貸切便の構築、LTL便混載の遂行といった改善方策が提案された。2007年に、ジョンディアの全調達物流取引はTMC輸送管理システムプラットフォーム上で運用されるようになり、サプライヤーは出荷データをTMCオンラインシステムで送信し、TMCは出荷データをもとに、輸送最適化情報に変換し、運送業者へ最適出荷指示が行われるようになった。この結果は、輸送コストの全般的削減をもたらした。その方法は、計画最適化ツールの適用であり、効率化プロセスの適用であり、発注データの可視化、ジョンディアのサプライヤーベースにわたるパフォーマンス指標の開発と適用によるサービス水準の改善によるものであった。

3 ペンスク・ロジスティクス

  ペンスク・ロジスティクスは、BMWやフォード、ダイムラー、GM等の自動車メーカーを中心に、GEやカーディナルヘルス等を主たる顧客とする3PL企業である。アイ・ツー(i2)テクノロジーの試験サイトとして有名である。ここでは少し古い資料であるが、2001年、2002年のA&A資料から、その情報システムの概要を紹介する。

(1)フォードの導入事例
  ペンスクが、フォード向けの物流事業者として成功した基礎は、シックスシグマ業務改善によるコスト削減にある。ペンスクのフォード部品及びサプライヤー管理は、フォードに年間在庫費用における数千万ドルのコスト削減をもたらしたといわれている。このために、ペンスクは、32人のロジスティクス・エンジニアを用いて週2万件以上の輸送を管理し、9つのクロスドック配送センターに割り当て、サプライヤーから配送センターへの資材輸送の管理に加えて、車両管理や輸送経路管理を行っている。
  サプライチェーン管理ツールは、SKU単位での発注及び在庫管理を行い、ウェブ追跡管理や経路選択、トレーラー管理等のモジュールからなり、同システムはフォードの在庫管理や補充発注システムに統合されている。そこでは、発注EDI、クアルコムのトラック位置管理システム、ピッキング・配送業務用PDAスキャナー、クロスドックでの無線スキャナー等が用いられている。
  品質管理情報は、常に更新されウェブサイトで確認できる。パフォーマンス指標はスコアカードを通じて管理され、サプライヤー、運送業者、工場管理者、地域管理者及びペンスクのチームに配信される。パフォーマンス指標は、図やグラフ表示された要約ダッシュボード画面で確認でき、シックスシグマレベルで各セグメントの管理に用いられている。この品質管理プロセスを利用して、3PLとしてフォード向けに工場管理の改善提案を行うことができる。この改善提案能力は、顧客に信頼される真のパートナーとしての3PLにとって重要である。

(2)ペンスク・ロジスティクス技術センター
  ペンスクは、トラックのリース業や専業契約輸送から事業を始めて、大手3PL事業者に成長した企業であり、世界全体で11,000人以上の従業員を抱えている。ペンスクの成長は、技術革新と付加価値輸送サービスの拡大にあり、2001年時点の追加収入の70%は、既存顧客への付加価値サービスの拡大によるものであった。
  ペンスクの輸送ネットワーク最適化戦略は、顧客のコスト削減、サービス水準向上、サプライチェーンの可視化の向上に貢献している。その基礎はユニークでパワフルな情報ソフト基盤にある。クリーブランドの技術センターには、280名のスタッフを有し、118名のシステム開発スタッフ、55名のロジスティクス・エンジニア、40名のシステム運用・統合スタッフがいる。
  ペンスクは、長い間i2の輸送管理ソフトの試験サイトを担っており、その運営モデルのもとで統合的なロジスティクス管理システムとi2TMSを統合することができた。このモデルは当初、ペンスクの専業契約輸送管理から始め、小口出荷の混載による輸送の最適化に利用され、コスト削減効果が見込める場合には契約運送業者の入札に適用された。専業契約輸送に運送業者選択システムを含めることによって、輸送効率の向上とコスト削減を可能にし、ペンスクのユニークなシステムの提供が可能になった。さらに、これらのシステムは、顧客のERPシステム、EDI、WMS、クアルコムの車両管理衛星通信システム、ドライバーによる配送管理のPDA端末利用等のシステムを統合することによって、飛躍的な向上を遂げた。
  全ての発注出荷状況情報は、ペンスクのウェブベースのサプライチェーン・ウィンドウ検索ツールを通じてインターネット経由で全ての関連顧客が利用できるようになっている。この技術によって、ペンスクは、顧客の高度なサービスニーズに対応でき、自動車、耐久財、コンピュータや電子機器メーカーを確保し、ダイムラー・クライスラー、フォード、GE、エアクラフトエンジン、パナソニックや米国の家電メーカー、ワールプールといった顧客向けに高度なロジスティクス・サービスを提供している。

おわりに

  このように米国3PLにおける輸送管理情報システムは、個々の社内における配送計画とその運行状況管理にとどまらず、広く顧客のサプライヤーからの調達物流管理における複数運送業者の輸送計画策定や輸送効率向上に適用されており、運賃精算までを含めることによって、顧客のコスト削減に貢献するサプライチェーン管理に利用されている点に特徴がある。運送業者側では、運送依頼の受注はウェブ上の競争入札参加方式であり、出来高に応じた収入であるため、同情報システムに参加していることにより、復荷確保も含めた実車率・積載率向上に伴う収入増が図られており、荷主側との共存共栄システムが構築されている。

以上


【参考資料(A&A社ウェブサイト)】
  • Nearshoring Accelerates C. H. Robinson’s U. S. –Mexico Border Growth, 2014年11月11日
  • C. H. Robinson Worldwide Extends its Asian Market Reach, 2012年7月24日
  • C.H. Robinson’s Secret Weapon: The Transportation Management Center, 2008年7月9日
  • Penske’s Ford Nirvana, Dearborn, Michigan USA、2001年9月11日
  • Penske Logistics Technology, Engineering and Quality Center、Cleveland, Ohio USA、2002年11月13日


(C)2016 Ryuichi Yoshimoto & Sakata Warehouse, Inc.


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