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第33号共用送り状・共用輸送荷札の実用化に向けた取り組み~運送事業者からの標準化推進事例~(2003年05月30日発行)

執筆者 竹本 恵一
鉄道情報システム株式会社 第二営業企画部 営業開発課
社団法人 全日本トラック協会 輸送システム高度化促進研究会(TSA研究会)事務局
    執筆者略歴 ▼
  • 経歴
    • 1969年 大阪生まれ
    • 1992年 鉄道情報システム株式会社入社、貨物システム課に配属。
      JR貨物殿コンテナ情報システム「FRENS」(フレンズ)の開発業務を担当。
      FRENSは1994年に本稼働開始。その後、追加機能開発および保全業務を担当。
    • 1996年 営業開発課に異動
      主要物流関連団体で構成する「サイバー物流タウン運営委員会」を立ち上げ事務局として参画。
    • 1996年10月にインターネットWebサイト「物流タウン」を開設。
      URL:http://www.transport.or.jp/
    • 1997年より社団法人全日本トラック協会において「共用送り状・共用輸送荷札」の研究開発開始。
      発足時より「共用送り状委員会」(1997年~2000年)、「輸送システム高度化促進研究会(TSA研究会)」(2001年~)の事務局として参画。
    • 社団法人日本ロジスティクスシステム協会の「高度物流情報化システム開発事業(ALIS)」(1998年~2000年)に事務局として参画。
    最近の取組み 現在は、主としてTSA研究会事務局の立場で「共用送り状・共用輸送荷札」の普及促進を推進するため、JEITA(電子部品業界)、文具業界、医薬品業界など各種荷主業界とのコラボレーションを積極的に展開中。
    また、「物流タウン」のWebマスターとしてコンテンツ管理およびサーバ運営業務を担当するとともに、物流関連団体・企業のWebサイト構築もお手伝い。
    物流関連資格など
    • 物流技術管理士(第41期)
    • 日本物流同友会会員

目次

1.はじめに

社団法人全日本トラック協会では、特積みトラック運送事業者および荷主企業が共用できる「送り状」および「輸送荷札」の研究開発を行い、2000年(平成12年)度には「共用送り状・共用輸送荷札ガイドライン」を策定した。現在は、「輸送システム高度化促進研究会(略称:TSA研究会)」において、実用化へ向けた普及促進活動などが行われている。
弊社は、この「共用送り状・共用輸送荷札」の取り組みに、スタート時(1997年(平成9年)度)から事務局として参画することにより、研究開発および普及促進における「黒子」として活動のご協力をさせていただいている。なお、本取り組みと非常に関係の深い、物流EDI標準「JTRN」(ジェイトラン)の開発・普及促進についても、弊社は事務局として深く関わっている。
今回はこの場をお借りして、実用化に向けて本格的に動き出した「共用送り状・共用輸送荷札」の活動状況などについてその一端をご紹介させていただく。

2.送り状・荷札の標準化の必要性

現在広く使われている送り状(運送状)および荷札の様式、送り状番号および記載内容(情報)は、トラック運送事業者各社で異なっており、その運用にあたってはさまざまな問題点が発生している。 例えば、荷主企業における問題点として下記のような実例がある。

  • 荷主企業や倉庫事業者では、複数の運送事業者に輸配送を委託している例が多い。(例えば、地域・方面別に運送事業者を割り当てるなど。)
  • 運送事業者ごとに異なる送り状を使用する必要があるため、複数台のプリンタを設置したり、1台のプリンタで運用を行うため、頻繁に用紙の架け替え作業などを行っている。

他方、運送事業者においても他社から中継連絡運輸が行われた際、受取り時に(他社送り状があるにも関わらず)自社送り状を新たに作成(再起票)したり、他社送り状がそのまま使えたとしても、送り状番号(各運送事業者における荷物管理のためのキー)はそのまま使えないため、自社用のバーコードシールを貼付するなどの無駄な作業を行っている事例がある。
前述のような問題点を解決するため、一部荷主企業においては、荷主企業が作成した指定送り状への置き換えを進めるなど、運送事業者側の負担は増大する傾向にあった。ちなみに、送り状(運送状)は、運送事業者が用紙を荷送人に提供したり、荷送人に代わって作成しているケースが大部分であるため意外と知られていないが、商法および標準貨物自動車運送約款では「荷送人が運送人(運送事業者)の請求により交付するもの」と定められていることを知っておいていただきたい。
一方、トラック運送事業においても運送事業者同士が系列を越えて互いに連携して事業を行う形態が増大する傾向にあり、その他取り巻く環境(標準化動向、IT技術の進歩、荷主要請の変化など)も刻々と変化していた。
これらの状況に対応するためには、運送事業者と荷主企業が共通に使用できる「業界標準」として共用送り状の開発、さらには送り状レス化へ向けた展望の確立、共用輸送荷札の開発が急務となってきた。そこで、社団法人全日本トラック協会では、1997年(平成9年)度に特積み運送事業者や運輸省(現国土交通省)などの担当者で組織する「共用送り状委員会」(2001年(平成13年)度から「輸送システム高度化促進研究会(略称:TSA研究会)」に改組)を設置し研究開発がスタートした。

3.共用送り状・共用輸送荷札の概要

「共用送り状・共用輸送荷札」開発にあたってのポイントは、図表-1のとおりである。

図表-1 共用送り状・共用輸送荷札開発のポイント

このポイントに基づき、共用送り状・共用輸送荷札を作成するための基本要件(枠組み)が「共用送り状・共用輸送荷札ガイドライン」として定められている。ガイドラインは普及状況などを踏まえ適宜見直しを行っていくこととされており、現時点での最新バージョンは、「Vre2.1」(2003年(平成15年)3月発行)である。このガイドラインの規定に沿って作成した共用送り状・共用輸送荷札の印字サンプルを、図表-2に示す。

図表-2 共用送り状・共用輸送荷札サンプル

「共用送り状・共用輸送荷札ガイドライン」で定められた内容のうち最も重要なのは、これまで運送事業者ごとに異なっていた「送り状番号」を運送事業者間で共通化すると共に、荷主企業が付番した送り状番号でも運用を可能とするという点である。ガイドラインでは、前者を「運送事業者共通送り状番号」(13桁)、後者を「統一送り状番号」(15桁)とし、総称を「共用送り状番号体系」と定義している。

4.国際標準などとの関係

輸送ラベルの国際規格として、「ISO 15394」が2000年(平成12年)に発効した(日本語翻訳規格「JIS X 0515」は2003年(平成15年)に制定)。一方、国内においてはISO 15394に規定されるラベルを国内物流業務に適用するための指針として、2000年(平成13年)に「STARラベル」(出荷・輸送・荷受一貫ラベル)の活用ガイドラインが発行されている。
「共用輸送荷札」は、これらの動きと平行して開発が進められたため、基本的にはISO 15394に準拠したものとなっているが、大きく異なる点が1つだけある。それは、荷受人、荷送人の記載順序である。ISO 15394およびSTARラベルでは、荷送人、荷受人の順序で記載することとされているが、共用輸送荷札は「お客様(荷受人)が上」という日本国内の商慣習を採用している。 なお、この相違点については、STARラベルの管理組織である社団法人日本ロジスティクスシステム協会と改良協議を進めており、2003年(平成15年)度中に、STARラベルの改良(共用輸送荷札と同じ記載順序の採用を認める)が行われ、今後は両団体連携による普及促進活動の展開が期待される。

5.実用化スケジュール

実用化にあたっては、幾つかのステップがある。各運送事業者では、既に複数種の送り状・荷札が運用されており、共用送り状・共用輸送荷札様式の採用は比較的容易である。最大の問題は、共用送り状番号体系への対応のために、現行基幹システムのキー項目である「送り状番号」を変更することである。
今後は、それぞれの企業における戦略や施策のもと、最終到達目標である「統一送り状番号の実用化」に向け、システム更新時などの機会をとらえて部分切替えや全面切替えの取り組みが、各運送事業者で行われることとなる。 全ての運送事業者が到達すべき時期の目標については、図表-3のとおり定められている

図表-3 実用化の時期

6.荷主業界と連携した実用化への取り組み

「共用送り状・共用輸送荷札」の実用化に向けて、運送事業者への普及啓発を行う一方で、各荷主業界と連携した取り組みを進めている。特に、共用輸送荷札には拡張領域として荷主領域が設けられており、荷主業界と共同開発することにより、業種横断的に共通に使用可能な輸送荷札、すなわち業界間を跨る「業際輸送荷札」を実用化することができる。この考え方は、ISO、JISおよびSTARラベルといった標準ラベルの考え方にも合致するものである。なお、運送事業者側で標準を規定し、荷主業界に標準化推進を提案するということは、物流業界の通例からみても非常に珍しいケースである。
現時点では、下記のとおり各種業界(団体)との連携した取り組みが進行中である。今後も引き続き各業界毎に連携を広めていく予定である。
①電気・電子部品業界/JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)
JEITAの「EIAJ-Dラベル」と「共用輸送荷札」をベースに共同開発を行い、実証実験を経て2002年(平成14年)度に「JEITA/JTA業際輸送荷札」が完成した。現時点での導入事例は1社であるが、2003年(平成15年)度以降、JEITA加盟企業において導入拡大が行われる予定である。
②文具業界/物流問題協議会
文具業界の物流問題協議会(加盟38社)と、2002年(平成14年)度に合同検討を実施(経済産業省/関東経済産業局の物流効率化対策事業としても認定)。2003年(平成15年)度から共用送り状の採用開始された。
③医薬品業界/医薬品物流研究会
2002年(平成14年)度に医薬品業界で検討された「M(Medicl)ラベル」案について、詳細仕様の合同検討を開始。2003年(平成15年)度中に実証実験を行う予定。

7.普及促進に向けた今後の取り組み

社団法人全日本トラック協会では、今後も更なる普及促進を目指し、前述のような荷主業界と連携した実用化の取り組みを中心に据え、その他にも様々な活動を予定している。
1つは、パッケージソフト「共用送り状・共用輸送荷札発行標準システム」の頒布である。これは、共用送り状・共用輸送荷札普及促進のための活動の一環として、出荷場所(主に中小の荷主企業)や運送事業者集荷店などで適用可能なシステムを開発し、運送事業者に限らず荷主企業など広く一般向けに頒布を行っているソフトである。改変自由のフリーウェア(著作権、版権等の権利は全ト協に帰属。)としており、頒布価格も発送実費相当分のみの安価な設定(基本セットは5,000円(税別))となっている。
その他、全国各地でのセミナー・説明会の開催を計画しており、これら開催情報や各種最新動向などについても随時社団法人全日本トラック協会ホームページで情報提供を行なう予定である。
なお、ホームページで(http://www.jta.or.jp/)は「共用送り状・共用輸送荷札ガイドライン」やパンフレットなどのダウンロードサービスも行っているので、是非ご活用いただきたい。
非常に珍しい運送事業者側からの標準化推進事例である「共用送り状・共用輸送荷札」の普及促進に向け、運送事業者ならびに荷主企業の皆様には、今後とも一層のご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。

以上



(C)2003 Keiichi Takemoto & Sakata Warehouse, Inc.

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