ロジスティクス・レビュー

第321号 物流業界は機能サービスに留まるのか:それは料金レベルの競争―物流はロジスティクスに舵を切ったのか― (2015年8月6日発行)

執筆者  野口 英雄
(ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表)
    執筆者略歴 ▼

  • Corporate Profile
    主な経歴
    • 1943年 生まれ
    • 1962年 味の素株式会社・中央研究所入社
    • 1975年 同・本社物流部
    • 1985年 物流子会社出向(大阪)
    • 1989年 同・株式会社サンミックス出向(現味の素物流(株)、コールドライナー事業部長、取締役)
    • 1996年 味の素株式会社退職、昭和冷蔵株式会社入社(冷蔵事業部長、取締役)
    • 1999年 株式会社カサイ経営入門、翌年 (有)エルエスオフィス設立
           現在群馬県立農林大学校非常勤講師、横浜市中小企業アドバイザー、
           (社)日本ロジスティクスシステム協会講師等を歴任
    • 2010年 ロジスティクスサポート・エルエスオフィス 代表
    活動領域
       食品ロジスティクスに軸足を置き、中でも低温物流の体系化に力を注いでいる
      :鮮度・品質・衛生管理が基本、低温物流の著作3冊出版、その他共著5冊
       特にトラック・倉庫業を中心とする物流業界の地位向上に微力をささげたい
    私のモットー
    • 物流は単位機能として重要だが、今はロジスティクスという市場・消費者視点、トータルシステムアプローチが求められている
    • ロジスティクスはマーケティングの体系要素であり、コスト・効率中心の物流とは攻め口が違う
    • 従って3PLの出発点はあくまでマーケットインで、既存物流業の延長ではない
    • 学ぶこと、日々の改善が基本であり、やれば必ず先が見えてくる
    保有資格
    • 運行管理者
    • 第一種衛生管理者
    • 物流技術管理士

目次

1.機能サービスか3PLか:顧客・市場起点で考える

  かつて流通関係のある高名な学者が、物流業界はパッシブ産業だと言った。それは荷主への機能提供が基本で、典型的なコンポーネント・サービスと位置付けたものだろう。しかしそれでは下請けのようなものであり、事業としての付加価値の創出もない。そもそも物流という機能レベルに留まるのか、それとも次の段階のロジスティクスに進むのか。そこに踏み込む3PLという新業態はもちろんリスクは大きいが、顧客の管理業務代行を含めたアウトソーシングの受託である。それは従来からの単なる物流機能レベル程度の話ではない。もちろんアウトソーシングは経営レベルの話であり、単なる外注とは違う。
  機能レベルが決して低次元ということではなく、顧客・市場起点で見ればここにも未だビジネスチャンスはある。それがアクティブ産業への道ということだ。例えば顧客のコスト変動費化ニーズに応える個建料金設定を前提にした共同配送があり、しかも複合チャネル化の流れを踏まえた垂直又は水平への展開もある。そこではネットワークやアライアンス等の高度なインフラも必要になる。もちろん個別荷主ニーズ対応も求められる。物流子会社が親会社との大胆な機能分担を行っているケースもある。

(3PLとコンポーネント・サービス)

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  単なる機能提供であればそれはプロダクトアウトであり、顧客・市場起点とはマーケットインの発想である。前者であれば料金レベルの消耗戦になり、後者では付加価値提案を顧客がどう評価するかという戦いである。ビジネスとは顧客との熾烈な競争でもある。

2.変動的な料金契約:契約方式改革と不公正な商習慣打破

  顧客が物流コストを変動費化し、ロジスティクスレベルまでも丸投げするという流れはもはや否定しようがない。結果として料金契約は、一気通貫で商品通過金額の歩率という変動方式になる。国交省は原価計算として認めない幾つかの変動形態を例示し、歩率もそのうちの一つだが、それは事業者向けであって顧客には何の関係もない。そもそも物流原価は物理的要素で形成され、商品価額に由来する部分は殆どないが、さりとてそれを拒めばビジネスチャンスを失う。
  そうであればコンペにおける前提条件の情報開示をもっと積極的に求め、後は業務委託契約でヘッジするしかない。しかし一気通貫ということはあらゆる業務を包括的に、しかも一定期間を見なしで契約することである。当然与えられた条件で業務を想定し、採算確保できるコスト設計を行うことになるが、その前提条件が許容範囲を超えた場合は契約上修正が可能かどうか、あるいは試行期間設定や契約期間そのものを短縮できるかが重要である。マーチャンダイジングでは商品構成・価格・店舗数・販売施策等が常に変動し、これをどこまで見なし部分に含められるかどうかが問われる。
  もう一つ重要なことは不公平な商習慣を打破することである。小売業は一般的に店着バイイングの前提で運営しており、物流センターを経由しても店舗納入迄が供給側の責任である。その業務受託迄を行うとすれば、荷主と物流事業者との責任分担も課題になる。例えば欠品が生じた場合の責任所在や、弁済基礎額等も明確にしておかなければ、重い責任が生じる恐れもある。コンペにおいても主催する側は歩率数字のみを横並び比較して、最も有利な提案を選択すればいいわけだが、それには膨大な業務を要するので、参加することについても何がしかのフィーが与えられるようにすべきである。

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3.付加価値向上と事業リスク回避:日常業務リスク対策~危機管理

  収受料金が変動的になるとしたら、業務のコスト構造も同じようにしなければ採算管理もやりにくい。物流ビジネスにおいてもアウトソーシングを積極的に行い、そしてミス・トラブル等に伴うコストロスを最小化する。コア管理を自社で十分に行うことは言うまでもない。一方で稼働率を高め単位時間当たりの固定費を削減し、究極は365日・24時間のフル稼働を目指す。つまり高密度な共同配送を組み立て、コスト効率を高める。しかし業務リスクは拡大し、これをどう管理状態に置けるかが事業としての生死を分ける。

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  ミス・トラブル防止は日常業務リスク対策そのものであり、基本は業務品質管理のレベルということになる。最終的には保険等でヘッジする。危機管理は日常リスク対策を前提とし経営としての部門間連携が基本になるが、これも定期的なメンテナンスやシミュレーションが必要となり、それがBCPに繋がっていく。

4.品質管理活動を業務改革に繋げる:ブランドの確立

  品質管理活動はそれ自体が目的ではなく、上位概念に繋げなければ意味がない。それは業務改革であり、さらには経営計画の実現である。そして物流事業にとっても顧客にアピールするブランドが重要であり、それは品質保証に裏打ちされて初めて成り立つ。そのためには業務に携わる全員の参画が必要であり、それが小集団活動の意味である。ただ自主性に任せるだけでは遠大な時間ばかりが掛り、マネジメント主導のトップダウン型活動と組み合わせてリードしていく。

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  ブランドとはニックネームやシンボルを設定することだけではない。そこに従業員のマインドや行動がリンクし、品質保証が行われてこそその意味が実現する。顧客接点を担うのがドライバーであり、一人業務では品質管理活動ができないとしたら意味がない。それは一人でも可能な活動であり、ITの進展でそのツールが多く用意されるようになった。

5.業界紙は業界応援団か:ロジスティクス・メディアとしての役割

  現在この世界のメディアで、ロジスティクスという言葉を冠しているのは1誌だけである。かつて「日経ロジスティクス」という月刊誌もあったが、今は殆どが物流次元のネーミングである。その中で寄稿を頼まれたこともあったが、ある社でロジスティックスという表現は一切使わないでほしいと言われ、直ちに遠慮することにした。この業界ではロジスティクスも物流と同程度に考えられていて、そのような表現を使うと分かりにくくなるので、相も変わらぬ物流である。これは官庁でも同じである。
  業界紙の存在意義は業界と官庁の繋ぎ役で、物流業界が主たる読者層であり、そこに支持されなければ経営が成り立たないのだからこれは当然であろう。いわば業界の応援団であり、そこを批判するようなことになれば忽ち顧客を失ってしまう。だが応援団であれば時には厳しい叱咤激励も必要ではないか。物流事業の経営が改革性を失っているなら、それを打破する提言を行うべきである。一方で荷主側や政・官にも提起すべきであるなら、遠慮せずに主張していく。
  最大の役割は、物流業界のステータスが上がらずロジスティクスにも展開できない根本原因を探り、またその意味を世の中に知らしめ条件整備に力を貸すことである。前述した不公正な商習慣打破や、コンペの在り方等である。それは世の中にロジスティクスの概念を広め、それを通じて産業活動の改革にも繋げられるはずだ。このままでは3PLという新業態も育たず、業界紙そのものも単なる業界の付属物になりかねない。

以上



(C)2015 Hideo Noguchi & Sakata Warehouse, Inc.


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