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物流システム

第318号 物流を強化するWMSの導入を考える。(2015年6月23日発行)

執筆者  髙野 潔
(有限会社KRS物流システム研究所 取締役社長)

 執筆者略歴 ▼
  • 職歴・履歴
    • 日産自動車株式会社(昭和36年~平成5年)
    • (出向)株式会社バンテック(勤務先:神奈川流通サービス協同組合) (平成5年~11年)
    • (独立)有限会社KRS物流システム研究所・設立(平成11年~現在に至る)
    参加組織・履歴
    • 株式会社湘南エスディ-  物流顧問(平成8年~12年)
    • 株式会社カサイ経営  客員研究員(平成12年~18年)
    • 物流学会  正会員(平成12年~)
    • ロジ懇話会・事務局(平成15年~19年)
    • 日本情報システムユーザー協会 個人正会員(JUAS) (平成15年~20年)
    • 情報システムコンサルタント(JUAS認定No161)
    委嘱(受託)・履歴
    • 通産省(現・経済産業省)  荷姿分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 運輸省(現・国土交通省) 輸送分科会委員・委嘱(平成8年頃)
    • 中小企業基盤整備機構  物流効率化アドバイザー・委嘱(平成10年~17年)
    • 中小企業ベンチャー総合支援センター 新事業開拓支援専門員・委嘱(平成13年~18年)
    • 中小企業基盤整備機構  企業連携支援アドバイザー・委嘱(平成15年~21年)
    • 中小企業大学校(関西校) 非常勤講師・委嘱(平成14年~16年、18年)
    • 海外技術者研修協会 [AOTS]関西研修センター 非常勤講師・委嘱(平成20年~21年)
    著書・寄稿・その他
    • 卸の物流協業化事例研究(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 業務革新・物流配送効率化(雑誌)・・・日経情報ストラテジー
    • 中小企業のロジスティクスは共同物流が決めて(雑誌)・・・SCAN
    • 日本のロジスティクス物流協業化事例研究(出版物・共著)・・・JILS
    • 物流共同化実践マニアル(出版物・共著)・・・日本能率協会
    • 共同物流の動向と共同物流の進め(雑誌)・・・物流情報
    • ドラック・ストア編ここがポイント!(雑誌)・・・流通ネットワーキング
    • 物流を核にした現場密着型のコンサルタントを目指して(論文)・・・JUAS/ISC
    • 需要予測で適正な発注を実現するには!(情報化相談室)・・・日経情報ストラテジー
    • 図解 なるほど!これでわかった よくわかるこれからの物流(出版物・共著)・・・同文館

 

目次


 

1.はじめに。

  WMSは、物流管理部門、物流現場部門の改善・改革のための独自のシステムであると同時に物流企業、物流部門にとっての戦略的ツールという側面も持っています。 私は、WMSが存在しなかったサラリーマン時代に現場と密着した情報システムが欲しくて基幹系と制御系システム(汎用OSを組み込み)を仲立ち(データインターフェイス)に物流現場の情報管理システム(WMS機能)を手掛けました。東洋一と言われた大小様々の自動車用サービス部品の物流拠点(倉庫)の物流現場の作業のニーズ、効率化と品質・精度、処理タイミングなどを前述の制御系システムに委ね、開発、導入に悪戦苦闘した経験があります。導入に当たってはシステムやハードの技術面だけでなく物流、営業、仕入、納品先、企画、関連部門との物流的な視点での取り組み課題、先々の業界の動向、仕入先や納品先から求められている条件、求めたい条件などを社内外からの知見を得て、物流実務面を主体にしたサービスや品質などの現状レベルの把握、分析をしながら課題改善と将来に向かった業務要件の取り込みに取り組みました。WMSの開発時の準備(業務要件など)には、関係スタッフ、現場部門の意向、意見を十分吸収して反映させることは勿論、企業全体に影響する調達、在庫管理、輸配送などの複数部門の利害関係を踏まえた上での前向きな視点が必要でした。WMSの導入や開発の目的、狙い、物流機能の有り方などを社外(仕入先、納品先、輸配送、etc)、社内部門との共有(前工程NG、後工程OK、又はその逆の繰り返し)で進めることが肝要でした。全てにおいて全部門の最適化が望まれますが完全・完璧はありません。部門毎の落とし所を見極めて最終妥協点の改善目標を設定して取り組むことがポイントになることだと考えています。

2.WMSの導入の目的と狙い!

  WMSは、物流センターの一連の業務を効率化するための倉庫管理システムです。入出庫管理や在庫管理、作業工程管理などを提供、入荷、検品、ピッキング、梱包、出荷、トレーサビリティなどの各作業に必要な情報を一元的に管理するシステムです。自動倉庫や自動コンベアシステムなど、マテハンシステムとのインターフェイスの提供、バーコードとのリンケージ、RFIDを応用したシステムなどがあります。WMSは、物流部門のみならず、営業部門、企画部門、関連部門や関係者が在庫や作業状態をいつでも見られること(見える化)が求められています。また、顧客(納品先やエンドユーザー)にも高い在庫精度を提供することが不可欠な環境条件(インターネット検索、ネットビジネス、etc)になってきています。WMSの導入を機に実務作業、SCMなどの物流ニーズを支援する様々な機能を持つこと、入出庫による在庫更新、作業状況をリアルタイムに把握すること、インターネットでWMSの在庫データの照会ができること、在庫のミニマム化、欠品を生じさせず、納品リードタイムの短縮が企業競争力のポイントになっています。さらに、コンピュータ在庫と実在庫に差異が生まれないよう、日々の努力と共にWMS(実在庫)で基幹系(帳簿在庫)をサポート(棚卸の簡略化の実現の)することが重要な使命と心すべしです。WMSには、入庫ミスやピッキングミス、誤出荷をしないシステムづくりが必須です。拠点の在庫精度は、作業だけでなく営業活動、製造、購買活動にも影響を与えます。ネットビジネスが伸びている中での強力な支え手になるのは、正確な在庫です。

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  WMSの使命は、正確な在庫の維持、生産性の向上、ミス防止などをサポートすることがコスト抑制に繋がります。また、複数拠点やエリア、ゾーン毎の在庫をリアルタイムに把握できること、作業の進捗をリアルタイムに把握すること、EDI(ASN、出荷指示、完了報告)などの組み入れ、刻々と変動する在庫状態や作業進捗状況を遠隔地でも確認(照会、配信)できること、商品の追跡可視性(トレーサビリティ)の確保など、WMSは、リアルタイム性と可視性を支援するツールとしてのマネジメント能力の向上が重要なポイントになってきました。さらに、物流の変革で物流センター(倉庫)独自の現場管理が必要になってきています。商物分離、アウトソーシングなど、日々の作業管理の中での作業情報(商品改廃、在庫、ロケメンテ、日付管理、先入れ先出し、etc)の管理、物流現場のデータ収集、分析などの必要性が高くなってきています。日々の変動している物量に応じた要員配置、的確な運用、益々高い品質や納品精度を求める厳しい(当然ですが・・・。)小売業が増えて来ました。そして、小売業毎に別々のOPが求められるようになってきました。さらに、店舗の販管費の省力化、検品、品出し、業者集約、機能集約などを小売業の改善策としての物流の改善改革が求められています。 物流センター全体の運営管理の精度向上が取引条件として必要になってきました。納品データの保証と高い納品精度、納期の遵守、納品業者別に損益管理を追求するためのカテゴリー別納品、庫内現場作業のコスト削減、情報と現品在庫の一致、過剰在庫の撲滅(市場出荷動向に合わせた在庫量の適正維持)、継続的な改善活動を支えるデータ収集(システム支援)など、数え上げればWMSの必要性はきりがありません。そのような条件下で基幹系システムでは、とてもとらえられない現場の生のデータをリアルタイムに活用した収集の独壇場としてWMSが利用されています。

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3.WMS(倉庫管理システム)の導入の考え方

  物流拠点内で必要とする機能(現場作業)を網羅していること、コストがかかるが物流現場の作業生産性と精度を高められる業務要件に合わせたカスタマイズが必要です。さらに、自社の個々の作業をサポートするカスタマイズ率は40%以上必要と言われています。導入システムには、大別するとオーダーメイド(カスタムメイド)システム、パッケージシステム、部分システムなどがあります。オーダーメイド(カスタムメイド)システムは、在庫管理システムや入出庫システムなどの定番のシステムだけではなく、自社の特長、ビジネススタイル、商慣習を損なうことなく、業務を支援する仕組みを作り上げることが出来る点がオーダーメイドで、システムを開発する最大のメリッ トです。使い勝手は良いのですが、開発工数が多くなり、開発費用が高価になります。パッケージシステムは、メリットも多いのですが、決められた機能しか使えないため、競争力を発揮する業務プロセスがある場合は、それが死んでしまう可能性があります。 パッケージと独自開発のメリット/デメリットをよく検討し、システムの選択をすることをお勧めします。入出庫、検品、棚卸などの機能は揃っているが商品の特性、独自の機能を活かしたい場合は、カスタマイズが必須になると考えます。 機能追加などの導入費を合わせるとオーダーメイドと比較すると導入コストが大きくなることもあります。部分システムは、入出庫・検品・棚卸・ラベル印刷など、物流センター業務の主要機能だけを分離したソフト開発です。他システムとの連動を考えた場合、拡張性が悪く、長期使用には向いていない場合が多く見受けられます。

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  前述した通り、WMSの導入には、高額なコストがかかります。WMSを導入する場合は、事前に課題や問題点を洗い出し、開発する機能と運用を決定、それらのメリットと、デメリットを分析、把握することからスタートすることが肝要です。その際、課題や問題点の全てをWMSで解決するのではなく、現状の課題や問題点の根本的な検討から着手し、課題を運用系と情報系に分類します。WMSの導入は、生産性向上(ローコスト)、作業品質・精度、サービスなどの方針毎の達成度と費用対効果を勘案して、先ず基本方針としての開発体制を検討します。社内業務プロジェクト、社内開発体制、外部開発委託などを決めます。ネットワークとして、社内LAN、セキュリティに関する基本方針、ネットワーク基本要件、仮に365日、24時間稼働の場合のシステム要件、作業条件、納品条件などの時間制限にも耐えられるシステム要件と具体的な業務要件を策定します。例えば、入荷検品をするが入庫検品はしない、ピッキング検品はするが、出荷検品はしない、自動倉庫、DPS(ピッキングカート)、仕分け装置などを導入する場合、システム要件、業務要件の策定と能力のシミュレーションなどを事前に行いたいものです。さらに、既存システムから新規システムの移行有無の確認と事前に各種マスターのコード体系の変換や移植の有無の検討を行い、全ての条件が見通せたら、業務要件の開発、システム&ソフト開発、各種テスト(単体、組み合わせ、連動、総合、実地、モニターラン、etc)を経て、オペレーションマニアルの作成、本稼働、運用立ち会い、稼働後の維持管理などを勘案して総合(開発)スケジュールを作成します。WMSの導入は、外部委託の場合はコンペを行い安くて良いものを選択したいものです。

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4.WMSで使用したい(欲しい)主な機能

  WMSは、基幹系システムから伝送されてくる各種指示データ、マスターなどをもとに物流センター(倉庫)内での各種業務を実行します。在庫のミニマム化、欠品をさせない、リードタイムの短縮、入出庫によるロケ在庫更新、作業状況などをリアルタイムに処理をし、表示したり、把握したり、インターネットなどでWMSの在庫情報などの照会を可能にします。信頼できる受発注制度、入庫ミスやピッキングミス、誤出荷をしない、させない硬いシステム機能が必要です。WMSは、作業品質の確保が大前提、在庫精度や作業精度なくして作業の効率化はありえません。また、入出庫の精度が高ければ、在庫精度も必然的に向上、無理や無駄の作業が軽減できます。拠点の在庫精度は、作業だけでなく営業、製造、購買活動に影響を与えます。企業の生産活動、営業活動、ネットビジネスなどは、帳簿在庫(基幹系)と実在庫(WMS)に差異が生じない前提で成り立っています。
  WMSの使命は、物流実務の生産性が出せる仕組み、ミスが起きない仕組みが必須条件です。コスト抑制は、作業工数を圧縮することが重要、また誰が作業してもミスが起きない仕組みとして、未熟練者でも一定の精度と生産性が出せる仕組みが求められます。関係者が在庫や作業状態をいつでも見られるようにリアルタイム性と可視性を支援するツールとしてのWMSが不可欠になってきています。先ず、複数ヶ所在庫や拠点別在庫をリアルタイムに把握出来ること、作業進捗をリアルタイムに把握出来ること。作業者がいつでも確認できるように現場表示(端末、アンドン,etc)が行えることです。EDI(ASN、出荷指示、完了報告)を組み入れること、インターネットの活用(刻々変動する在庫状態や作業進捗状況を遠隔地(営業や仕入・購買部門)からでも照会、配信を可能にすることです。
  荷物を物流センター(倉庫)から輸配送、納品先(顧客)に届くまでを追跡可視性(トレーサビリティ)を確保するなどの要求が増えています。物流機能のレベルアップのために自社の物流業務にマッチした適正なシステム(理論と実務が適合していること)を導入したいものです。

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5.パッケージ(WMS)導入時のチェックポイント

  複数のWMS仕入先を対象にRFP(見積依頼書、提案依頼書)を基本に説明会(現説)を開催、その結果で、WMS仕入先(コンペ参加企業)から提案回答書(見積仕様書&見積書)を入手します。提案回答書のフォーマットは、横並びで比較検討し易いように各社同一とします。RFPにとらわれず、参加企業の実績やノウハウを駆使したVA(価値ある)提案も別途依頼したいものです。(コンペ参加企業は、3~4社に絞るのが望ましい)導入のポイント&チェック項目として、要件定義とパッケージシステムの機能(プロセス毎)の乖離度をチェックすること。また、ハード、端末などの仕様などを綿密に確認すること。コンペを実施した場合、参加企業毎の導入する基本パッケージシステム費(ライセンス、標準、オプション、etc)、カスタマイズ費、ランニング費、ハード機器費、据え付け配線工事費、システム調整費、保守費(ソフト、ハード)、etcなどの内容と価格を綿密にチェックすると共に、疑問点や質問を質問書にしてコンペ参加企業全社にもオープンにすること。機能の拡張性が高いことも重要なポイントです。パラメーター数、設定などで変更できる項目などを比較、処理スピード(ex.在庫引当時間、ディスプレイ表示時間)の確認なども検討対象としたい項目です。作業者にストレスを与えないために人とWMSのやり取りのレスポンス(応答時間)の速さを重視したいものです。(アイテム数10万点以上の物流センター(倉庫)のレスポンスをMAX3秒以内と指定した経験がございます。)細かい項目になりますが作業やオペレーションの変化に柔軟に対応できるようにパラメーターやフラグで任意に変えられるシステムが望ましいと思っています。さらに、導入実績を重視すること、導入実績(業種・業態)の多さは、良いパッケージシステムの選択に繋がります。同業他社に多数の導入実績があれば、同業種の課題や必要な機能が標準装備されていることが想定(しっかりと確認すること)できます。どの業種を中心に導入経験が多いか、標準機能の充実、使い勝手が良く自社の業務要件に照らして利用が可能か否かの説明を十分に受けること(お願いすること)をお勧めします。最後に、保守体制がしっかりしていること、保守要員(ソフト、ハード)が30~60分位で駆けつけられる距離に所在していることが望ましい、導入後のサポートレベルが重要です。特にWMSについては、不具合時の対応など、導入後も供給先との付き合いが続きますので供給先サイドの担当者の能力や人間性も重要な選定ポイントになります。

6.最後に

  WMS(物流管理システム)は、倉庫や物流センターの入出荷管理、検品、在庫管理、棚卸業務、物流コスト管理などを担っていますが業種業態や扱う商品などによって物流の現場は様々な運用形態が求められます。その業務を支援、管理していくためのWMSを上手に使いこなし、その多様性を導き出し、上手に対応することで作業品質・作業精度により在庫精度を高め、作業のスピードアップ、簡素化でローコストの追求ができます。さらに、物流センターの力量を様変わりさせることができます。自社独自の要件が必要な場合は、追加費用が発生しますが、カスタマイズで自社にとって最適な物流機能(WMS)を見極め、つくり出すことが肝要です。WMSを導入する際は、多種多様なWMSの中から自社の求める物流機能を高める実績のあるWMSを探し出し、WMSを自社の業務改善、改革のパートナーにする決断をしたいものです。昨今、クラウド型倉庫管理システム(WMS)が登場してきました。安価で倉庫管理を容易にできるということで注目を集めています。特徴は、インターネットを経由してリアルタイムに物流管理が可能ということです。クラウド型倉庫管理システム(WMS)は、開発の負担を軽減するとともに、人件費の抑制にも一役買うことができ、管理がしやすく精度が高いと言われています。これからますます主流になっていくことでしょう。WMSの導入を検討している方には、ぜひ注目して頂きたいシステムではないでしょうか。

以上



(C)2015 Kiyoshi Takano & Sakata Warehouse, Inc.

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